せめて、好きだけは。   作:Feldelt

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第5話

また夢を見た。

由菜が死んでいる夢だ。

でも、車に轢かれていない。

どういうことだ。僕の手のひらも赤い。

由菜には触っていないのに。

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 

───────

 

 

─どったの禍月...また夢...?─

「そうみたいだ...」

 

でもいつもと違う。車じゃない。

あの赤い手は何だったんだ、僕が由菜を...?

 

「っ...考えてもしょうがない...まずは何か食べないと...」

 

時刻は朝の八時。いつもより起きるのが2時間早い。一日三食食べないといけないパターンだと思って部屋の隅にあるいつもの非常食っぽいレンチンするタイプのご飯を取ろうとして...ダンボールの中身が空であることに気づく。

 

「あ、無くなった...」

─ご飯?部屋から出たらいいじゃん。─

「それもそうか...ここから出るのは前にご飯が切れた時以来だね...やれやれ、行こうか...」

 

久しぶりに部屋から出て業務用スーパーに食料補給に向かおうとする。親はいない。

 

─禍月...外出るなら着替えようよ...─

 

 

───────

 

 

気を取り直して外に出る。

 

「眩しい...暑い...やだね、夏って...」

─いや、もう私は暑さを感じないからね...そんなこと言われても、だよ。─

「それもそうか...」

 

財布の場所を確認しながら台車とともに業務用スーパーへと足を向ける。

 

思考は今日見た夢で埋め尽くされている。

どうして由菜の死因が変わったのか。

どうして僕の手が赤かったのか。

どうして、夢の内容が変わったのか。

 

─禍月、右に曲がって。─

「え?あ、うん...」

 

由菜の指示が無かったら通りすぎていた。

いくらなんでも考えることに没頭しすぎたね。

ともあれ業務用スーパーが見えてきた。

 

─禍月、人が来たよ。─

「人なんて、スーパーなんだからいるでしょ...」

 

と思ったが由菜が言ってるのは僕の方に目的をもってやってきた人のことだ。

 

「朽葉禍月君ですね。」

「...誰ですか。」

 

見たまま警察官の大人が僕に話しかけた。

僕は何も悪いことはやっていないのに。

 

「黒川冬弥巡査です。香澄由菜さん殺害事件についての任意同行をお願いします。」

 

頭を殴られたような衝撃。

由菜は...殺された...?

 

「由菜は...事故じゃなかったんですか...」

「詳しいことは署でお話します。」

 

一考する。

 

「わかりました。ただ...ご飯をくださいませんか?買い出しに来ていたところなので...」

「それは申し訳ないタイミングでした。上に計らっておきます。それでは、どうぞこちらに。」

 

黒と白の車体の上に赤のパトライトが映える警察車両。まさか乗ることになろうとはね...

 

 

───────

 

 

気がついたら家にいた。

何が起こったかわからない。

僕は任意同行をしていたはずなのに。

そして目の前にはハンバーガーがある。

自作感満載だ。パンはあったんだとも思う。

同時に腹の虫も鳴る。

 

「よくわかんないけど、とりあえずこれ食べよう...いただきます。」

「ダメ!」

 

え、と思う間も無く、僕が掴んだそのハンバーガーは僕の意に反してゴミ箱に放り投げられる。

 

「由菜...!?食べ物を粗末にしちゃダメだよ!」

─禍月...ごめん、それは食べ物じゃない...─

 

ますますわけがわからない。

 

「じゃあ、パンはあるみたいだからそれを食べることにするよ...」

 

由菜の動揺の理由がわからない。

だが僕はそこで気づいた。時計が()()()()を示していることに。

 

「あれ、時計...おかしいな、止まった?」

 

いや、秒針は動いてる。どういうことだ?

 

─禍月は、ね。丸一日、意識が無かったの。─

 

 

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