「丸一日...」
僕はそんな長い時間意識がなかったのか。
でも、由菜はそれを知っている...つまりは僕の意識と分離はしているのか...
─そうだよ。禍月
だが由菜の言いぐさが妙だ。何故僕はの"は"を強調するのか。由菜は...何か知っている...
「ねぇ、由菜。君は...僕の意識がないその丸一日の行動を覚えているのかい?」
─そうだね...朧げに、でも鮮明に覚えてる。─
どっちだよとも思ったけど僕のあずかり知らぬところで由菜は僕の行動を覚えている。そっちのほうが重要だ。
─でも、話したくない。─
「なんでさ...どうして...!?」
─それはね、禍月のためだよ。私は知らないけれど、私に会う前の禍月も、気づいたら一日経ってたなんてことあったでしょ?─
そんなことあっただろうか。僕の記憶は五年前初めて由菜に会ったあの時からの記憶がほとんどだ。それ以前の記憶なんて...いじめられていた頃の思い出したくもないものばかり...でも、そういえばある時からぱったり無くなったような...
「そんなの覚えてないよ。思い出したくもない。由菜は僕の記憶を見ることはできるんだろう?ごめん、自分で探してくれないかな...」
─...じゃあ、なおさら教えられないよ。─
由菜が言いたいことは多分、自分と向き合えってことだと思う。確かに僕はそれが出来てない。
それに、自分で自分を見たら、きっとそれだけで嫌気がさす。なんでこんなのがのうのうと生きているんだと。なんで由菜は生きてないんだと。
「そっか...わかったよ由菜。」
─ならよし。そうだ、気分転換にテレビでも見ようよ。まだ朝のニュースの時間のはず。─
「ニュースなんて...久々だな...」
実際はテレビをつけるのも久しぶりなんだけど、そこは何も言わないで通す。
テレビのリモコンを握り、電源ボタンを押すと、少しの時間差の後に黒い液晶画面に色がつく。
色のついた画面の向こうで、アナウンサーと思われる女性がニュースを読み上げた。
『続いてのニュースです。昨日の早朝に起きたパトカー事故の原因は、同乗者が人為的に起こしたものではないかという新たな考えが浮上したことが、捜査関係者への取材で明らかになりました。』
次の瞬間には事故で壊れたパトカーの映像と、その事故で亡くなった警察官の写真と名前。僕はその人に見覚えがあった。
「黒川冬弥巡査...あれ、この人って...」
そう思った時にはテレビが消えていた。
意識も遠のいていった。
最後に聞こえたのはこの声だ。
『余計なことすんじゃねぇよ、死に損ないの不完全な三人目のくせによぉ!』
その言葉の意味は、さっぱりわかんなかった。