僕はテレビをつけていたと思ったらテレビが消えていた。何を言ってるかわからないと思うし、僕も何を言ってるかわからない。一体全体どういう事なのか。
「あれ、由菜。テレビは...?」
─ダメ、付けちゃだめ...─
状況の説明を由菜に求めるも、由菜の声音はあまりにも弱々しくて、僕はテレビなんかよりもそっちのほうが心配でしょうがなくなった。
「由菜、どうしたの、何かあったの...?」
─禍月...禍月は優しいね...ごめん、ちょっと身体借りるよ。─
そう言って由菜は僕の身体を台所へ移動させ、冷蔵庫にあった卵と冷凍保存されていた食パンを取り出していった。
「まずこれをトーストして...フライパンはあるね、目玉焼きを作って...っと。」
由菜に預けた僕の身体は手際よく料理を作っていく。由菜の手料理かぁ...でもこれ僕自身が作ってるから外見は普通に自炊だよなぁ...
─出来たよ禍月。─
そんなこんな考えてるうちに完成していた。目玉焼きとトースト。これってもしかして。
「乗せて食べろってことだね。由菜らしいや。」
─どういうことよ...─
とまぁ、こんな調子で和気あいあいと朝ごはんを食べることにした。でもトーストだからすぐ食べ終わるわけでありまして。
「ごちそうさま、由菜。」
─お粗末さま。ちゃんと食器は洗ってよ?─
「そうする。そしたら昼寝するよ。」
─まだ朝10時台だよ。掃除とかしたらいいじゃん...とも思ったけど、その必要性はないわね...─
皿を洗いながら由菜と会話する。
まるでちゃんと一緒に過ごしているかのように。でも由菜は死んでいる。僕の記憶が生み出した『偽物の』由菜だ。今ここにいる香澄由菜は本物そっくりの贋作、模造品、不完全。それゆえに本物よりも、『本物』であ──
ガシャン!!
「あ...」
─なにやってんの禍月、皿洗いながらぼーっとするからそうなるって...しかも右手少し血出てるよ。とりあえず洗って。絆創膏貼るから...─
紅く染まった右手を見る。目に映るのは間違いなく僕の手だ。今は何も持ってない。流水の感覚だけが手にある。でも、ある映像が視界に重なって見える。その映像はノイズがかっててよく見えないけれど、紅く染まった僕の手には、何かが握られている。それが何かはわからない。でも、それってもしかして...
─禍月!?ねぇちょっと聞いてる!?あーもう、もっかい身体借りるよ!─
由菜に引っ張られるように僕の身体は動いていって切れた右手に絆創膏を貼る。
─いったいどうしたの、禍月...─
「僕は...ねぇ由菜、僕は...僕は人の命を...」
「奪ったことがあるのかな...?」