南極に行きたいと呟いたら、優しいお兄さんが送ってくれました   作:タイト

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そして独房へ

拝啓、お母さん、お父さん。夏の暑さがまだ続く日頃ではございますが、いかがお過ごしでしょうか。暑さで夏バテなどはしていませんか。熱中症などによく注意して、クーラーなどは使い惜しみしないように心掛けてください。

 

さて、実は僕は今、日本の外にいます。どこの国かって?それが実は日本の外ではありますが、どこの国にも所属していない場所なのです。夏の暑さが酷い日本とは違い、ここはとてもヒンヤリとしていて、避暑としては非常に良い場所であること請け合いです。

 

ええ、本当に涼しいですよ、南極。

 

え?南極ですよ南極。細かく言うなら、南極の中心、地球の西度0度に建てられた、人理継続保証機関フィニス・カルデアの拠点。その中にある独房です。

 

もう一度言います。独房です。ついでに手足は拘束済みです。

 

…ははは、寒いなぁ…。

 

 

 

さて、そういう訳で、俺もとい具田立花。ただいま絶賛拘束中な訳だけど。

 

どうしてこうなった。いや、そんなの一つしかないんだけどね。

 

どうやらこのカルデアは既に冬木を突破し、次の特異点に突入しようとしていた…つまり、所長及びカルデアの職員、マスターのほとんどが爆破により爆死や大けがをし、その後冬木へレイシフト後、特異点をなくした後に突如現れたレフ教授の口から人理焼却を企てた何者かがいる、という事を匂わせられた…というところまで進んだカルデアだったらしい。

 

今はドクターロマンを中心に施設中を職員たちが走り回ったり、唯一生き残ったマスターの調整だったりマシュの調整だったりでちらっと見ただけでもあわただしかった。

 

うん、そこで問題。そんな場所に突如として一人の少女が転移させられてきたとすると、どんな扱いを受けるでしょうか。

 

答え。この手かせ足かせ。

 

はー…マーリン死すべしふぉーう。

 

「フォウ!マーリン殺すべしフォーウ!」

「ふぉーう…」

 

ちなみに発見され拘束されてから数時間。何故かフォウ君は俺の部屋に来ていた。俺と同じマーリンの被害者のフォウ君としては、何か思う所があるのかもしれない。

 

「並行世界のマーリンとはいえ、お前の主人はどこでもクソ野郎だね…」

「フォウ…」

 

可哀想な目で見てくるフォウ君。自分の事を顧みないで心配してくれるなんて、ええ子やで。いや、それ以上にフォウ君にそんなことをさせるマーリンのクソ野郎っぷりが恐ろしいといった方がいいのだろうか。

 

しばらくフォウ君と遊んでいると、独房のドアがウィーンと音を立てて開かれ、中に数人の人が入ってきた。

 

「やあ、ご機嫌はどうだい、不法侵入者君?」

「いやぁ…その呼び方さえどうにかしてくれれば最高潮なんですけどね…ははは」

 

中に入ってきたのはダ・ヴィンチちゃんことレオナルド・ダ・ヴィンチ。そして現カルデアでの最高責任者であるドクターロマン。さらにその後ろからはマシュとぐだ男、そして弓エミヤがその姿を現した。

 

マシュは俺の膝の中で眠りこけているフォウ君を見て、「フォウさん!?」と驚愕していた。

 

「呼び方に関しては君の発言次第で撤回しよう。実は君に聞きたいことがあってきたんだが、どうだろう。少しお話してくれるかな?」

「断る事なんてできないでしょう?」

「何、どうしてもというのならこちらとしても譲歩しよう…時間に余裕があるときだけだけどね」

 

それ、今は絶対逃げられないってことじゃないですか、やだー。

 

「悪いが今、僕らに時間的な余裕はないんだ。どうしても喋らない、というのであれば、多少手荒な真似はさせてもらうよ」

「ドクター、少し落ち着きたまえ。彼女が言った通り、断る事なんて状況的に無理さ。つい先ほど、質のいいボディーガードも入った事だしね?」

 

そういって弓エミヤをちらりと見たダヴィンチちゃんは、俺に向かって笑顔を浮かべた。

 

「さて、まずは第一門。君の名前は?」

 

名前か…実は男の俺の名前はいかにも男らしい響きをしていて、現状で名乗るのはちょっと…というか、かなり抵抗がある。というか、マーリンのあの発言からこの身体の事を結び付けて考えると、俺のこの身体は俺がFGOで使っていた、『具田立花』の身体である可能性は高い。

 

という訳で名乗らせてもらう。何、嘘はついていない。

 

「名前は…具田立花」

「どこから来た?」

「日本から」

「何の目的でこのカルデアに?」

「誘拐されたんで知りません」

「どうやってカルデアを知った?」

「誘拐されたときに少々」

「…誰が君を誘拐したんだい?」

「マーリンに無理やり」

「ぶふっ」

 

ドクターロマンが噴き出した。ダヴィンチちゃんは首をかしげて、そしてエミヤを見た。

 

「彼女は嘘は言っていない。それは保証しよう」

「マーリンだって!?アーサー王伝説でアーサー王を育てた、あの詐欺師野郎…いや、大魔術師!そんな奴がなんたって君を!?」

「そんなの知らないよ」

 

本当に知らないよ。俺は疲れた声でうなだれた。

 

「ふーん…確かに嘘はついていないようだ」

「あの…普段人に懐かないフォウさんが、あんなに懐いてリラックスしているのを見るに、彼女は危険な人物ではないのではないでしょうか」

「ふむ…本当に、何も知らないのかい?例えば…人理焼却の犯人とか」

 

やべっ、そこやっぱり聞かれるよな…。

 

どういうべきか。俺はFGOの第一章はすべてプレイ済みだ。だからあれやこれやは知っているっちゃ知っている。だけどその情報をここで彼らが知ることは、とても危険な事のように思える。何故って、カルデアがゲーティアに打ち勝ったのは数多くの偶然と奇跡と幸運を重ねたうえでの偉業だからだ。そこに俺が持っている情報をもたらすことは、バタフライエフェクトよろしく未来に影響を与えかねないのではないだろうか。

 

だが、ここにエミヤやダヴィンチちゃんがいる限り嘘は付けない。あれ、これって詰んでない?

 

下手に嘘をつくと俺の疑いがさらに深まるだけだ。ここは正直になるしかあるまい。ただしすべての罪はマーリンに擦り付ける。

 

「…知ってます。マーリンが言ってました」

「ほう?」

「なんだって!?」

「!」

 

ぐだ男とドクターロマンが目を見開いて驚く。

 

「それは、一体何だい?」

 

ダヴィンチちゃんの視線が弓矢で射貫くような鋭さで俺の目を射抜いた。美女の真剣なまなざしって怖え。漏らしそうだ。

 

「言えません」

「何故?」

「名前を出すと呪われるかもしれないからです」

「…」

「嘘は言っていない」

 

エミヤはそういう。

 

「じゃあ、ヒントを出すことはできるかい?」

「それは…あの…」

 

ここでいう訳には…!ドクターロマンが最後まで隠しきった秘密だ。俺が答えに困って視線をくるくるしていると、ダヴィンチちゃんは何かに気づいたように後ろを振り返った。

 

「済まないが、ロマニ以外は出て行ってくれないか?彼女が言いにくそうにしている」

「え?ダ・ヴィンチちゃん、でも、それは…その、流石に不用心ではないでしょうか?」

「大丈夫だよ。彼女が本当にマーリンの被害者というだけなら、そう危険はないはずだ」

「では、何故ドクターも一緒に残るのでしょうか」

「何、彼はこう見えても医療のスペシャリストだ。ちょっとした精神ケアも必要だろう。ね、ドクター?」

「あ、ああ…確かに…うーん…そう、かも?」

「…ふむ、では私達はドアの前で待つようにしよう。何かあればすぐに呼びたまえ」

「あの、それでは失礼します」

「あ、えっと…じゃあ俺も失礼します」

 

そうしてその場にはドクターロマンとダ・ヴィンチちゃんが残った。

 

「さて、これで多少は言いやすくなったかな?」

「…」

 

え、何この人。どうして俺が言いにくそうにしてるの分かったの?何なの?怖い。

 

「驚いているようだね。私ほどの天才ともなると、表情や視線の動きだけである程度の感情や思っていることは分かるのさ。ちなみにここまで来たのだから、さっきまで隠そうとしていた事も洗いざらい話してもらうよ?」

「え”」

「さっきの彼もいっていただろう?嘘『は』言っていないと」

 

もうかなわねえ。俺はその後の「喋ってくれるね?」の言葉に、ただ首をこくこくとうなずかせるしかなかった。




ドクターロマンを差し置いてレオナルドが動いていますが、それだけ立花の事を警戒しているという事でどうか一つよろしくお願いします。
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