IS 楽しむことは忘れない 転生者の物語   作:滝温泉

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三話 騒動波乱、セシリア・オルコット

「____であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ____」

 

二時間目、すらすらと教科書を読んでいく山田先生※さっき聞いた。クラス内の女子たちは時々頷いてはノートをとっている。そう、「女子たち」は。

 

「(ぜ、全然わからん……)」

 

「(……フォーゼ、ゼ、ゼロノス、スキャニングチャージ、G3X、ストロンガー、アギト、トリニティ……)」

 

男子の方は正反対であった。織斑はどっかりと積まれた教科書五冊を時々みるが、まったく理解していない様子。逆に亜久斗の方は既に知っていることばかりなので暇をもて余している状態。一応ノートはとっているが覚えたことをもう一度やる必要はないと思い、表面上真剣な顔をしながら、脳内では仮面ライダー用語でしりとりをしている。

 

「織斑くん、何かわからないところはありますか?」

 

「あ、えっと……」

 

一通り説明を終え、区切りを入れて織斑を指す山田先生。だが織斑は困惑状態、しどろもどろな口調になっている。

 

「わからないところがあったら訊いてくださいね。なにせ私は先生ですから」

 

えっへんとでも言いたそうに胸を張る山田先生。貴女が胸を張ると健全な男子高校生の目に毒なのです。そんな山田先生に二人は。

 

「(おお、もしかしたら頼れる先生なんだろうか、よし訊いてみよう)」

 

「(……イクサ、サイガ、ガイ、インペラー、ライア、アマゾン、あ……)」

 

織斑は表情を変えて返事をしようと考え、亜久斗はまだしりとりを続けていたがどうやら終わったようだ。

 

「先生!」

 

「はい、織斑くん!」

 

「ほとんど全部わかりません」

 

「(………マジ?)」

 

「え……。ぜ、全部、ですか……?」

 

山田先生の顔が困り果てたかのようになり引きつっている。織斑先生は呆れ顔になっている。

 

「(織斑は俺よりも早くIS学園に行くことが決定したから勉強期間は多かった筈だが……)」

 

「織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 

織斑はその質問にいい笑顔でこういった。

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

パアンッ!

 

「(……何やってるんだこいつ……)」

 

答えた織斑の頭に出席簿が火を噴いた。今日で織斑の頭の細胞は一万は死んだだろう。思わず亜久斗も顔が引きつっている。

 

「あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」

 

「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと……」

 

「やれと言っている。返事は?」

 

「……はい。やります」

 

「(頑張れ織斑、へこたれるなよ)」

 

「夜霧、お前までわからないということはさすがにないだろうな?」

 

「いえ、大丈夫です。問題ありません」

 

「そうか、では山田先生、授業の続きを」

 

「は、はいっ!」

 

そう言って山田先生は教壇に戻って____こけた。

 

「うぅ、いたたた……」

 

「「(大丈夫か?この先生)」」

 

 

 

 

二時間目の休み時間、一番前の席に座っていた織斑と、先程の休み時間で織斑と廊下にででいた女子が俺のところへ来た。

 

「俺は「織斑一夏」え?何で知ってるんだ?」

 

「あれだけニュースで騒がれたんだ。世界中の人がお前を知っていると思うぞ。俺の名前は夜霧亜久斗だ、一応「RIDE」の社長をやっている。社長とか堅苦しいのは無しで頼む」

 

「あ、ああ、よろしくな。織斑一夏だ。こっちは幼馴染みの箒」

 

「…篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

 

「ああ、こちらこそよろしく、篠ノ之、織斑。気軽に亜久斗でいいぞ。どうせ同じ男同士、付き合いは長くなるだろうしな」

 

「そっか、じゃあ俺も一夏でいいぜ。箒は?」

 

「私も名前でいい」

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「へ?」

 

突然、会話の中に金髪ロールのお嬢様のような雰囲気を持つ女子が割り込み、話しかけてきた。

 

「どうしたんだ?」

 

「どういう用件だ?」

 

「………」

 

俺たちが答えると、目の前の女子はわざとらしく声をあげた。

 

「まあ!なんですのそのお返事は。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのでなないかしら?」

 

「「「………」」」

 

ああ、こういう奴か。女尊男卑の影響で成り上がったタイプの女子。こういう奴がいるんだよなぁ、おかげで会社の取り引きも大変なんだよ。男が社長やっている会社と話す気はないわ!的な感じで。まあそれは今話すことじゃないが。

 

「悪いな。俺、君が誰か知らないし」

 

「それに初めてあった奴にその態度はないんじゃないか?」

 

実際俺は自己紹介の時に教室にいなかったから知るわけがない。

 

「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試首席のこのわたくしを!?」

 

知るわけがない。俺は今日、自己紹介の後に来たんだ。そんな大きな声で捲し立てられても知らないものは知らないんだよ。

 

「あ、質問いいか?」

 

一夏が尋ねるとその女子、オルコットは上から目線で、見下したように答えた。

 

「ふん。下々のものの要求に答えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

あまりそういう態度はよくないぞオルコット。見ろ、箒なんか青筋立てて怒り丸見えだぞ。しかも関わりたくないような顔してるし。

 

「代表候補生って、何だ?」

 

がたたたっ

 

一夏の言葉に、その場で聞いていた者全員がずっこけた。

 

「あ、あ、あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」

 

「おう。知らん」

 

「……信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら……」

 

多分こいつが知らなすぎるだけだと思う。それとテレビはあるに決まっていんだろう。日本の歴史を調べてから出直してこい。

 

「一夏……。代表候補生って言うのはな、国家代表IS操縦者の候補生のことだ、言わばエリート。名前から想像できるだろう?」

 

「そういわれればそうだ」

 

俺の言葉に反応してオルコットが復活し、一夏にびしっと人差し指を向けた。

 

「そう!エリートなのですわ!」

 

エリートねぇ……。あ、箒が自分の席に逃げた。

 

「本来ならわたくしのように選ばれた人間とクラスが同じだけでも奇跡なのですから、その現実を理解してくださる?」

 

「そうか。それはラッキーだ」

 

「……馬鹿にしてますの?」

 

「自分でエリートエリート言ってるのに何言ってるんだか、それに、世界最強のIS操縦者と言われた織斑先生の生徒になれた方が幸運なんじゃないか?」

 

俺はそこまでそうは思わないがな。だがオルコットは俺の言葉に応えたようだ。

 

「だ、大体、あなたたちISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。世界で二人だけ男のIS操縦者と聞いていましたけど、とんだ期待外れですわね」

 

言いたい放題だなオルコット。

 

「俺に何かを期待されても困るんだが」

 

「過剰評価して勝手に幻滅されてもな」

 

「ふん。まあでも?わたくしは優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ」

 

逆に、これが優しさならどんなに良かっただろうな。

 

「ISのことでわからないことがあれば、まあ、泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ、何せわたくし、入試唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

ISのことでお前に何か聞くことは恐らく無いだろう。あと唯一やらエリートやら、強調して言うんじゃない。目敏いだけだ。

 

「あれ?俺も倒したぞ、教官」

 

「は……?」

 

オルコットは目を見開き驚いている。にしても一夏、教官を倒したのか、ISを操縦したばかりなのに、やるな。

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

 

「女子ではってオチじゃないのか?」

 

そうだろうな。

 

「あなた!あなたも教官を倒したって言うの!?」

 

オルコットはそう言い、今度は俺に指を差して来た。

 

「いや、俺は試験は受けてない。今日来たばかりでそんなことしてる暇なかったしな」

 

キーンコーンカーンコーン。

 

そこで丁度チャイムが鳴る。一夏の顔は喜びが浮かんでいてわかりやすい。だが一夏、それは失礼だ、気持ちはわかるがな。

 

「……。また後で来ますわ!よろしくって!?」

 

別に来なくていいぞ。ノット、ウェルカム。

オルコットは自分の席に戻っていった。あ、

 

「一夏、後ろを見てみろ」

 

「え?」

 

パアンッ!

 

「さっさと席につけ、馬鹿者」

 

「は、はい……」

 

一夏は織斑先生の一撃を受けて、消沈しながら席に戻っていった。

 

 

 

 

「では次の授業を始める前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める」

 

クラス対抗戦?つまりあれか、IS使って戦うってことなのか?だとしたらぜひ立候補____

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会に出席してもらうクラスの長のことだ。ちなみに、一年間変更はないからそのつもりで」

 

はしないでおこう。そんなのはお断りだ。休み時間を潰してまで代表者なんてやりたくない。

 

クラス内は色めき立っているが誰も手をあげようとはしない。

 

「誰かいないのか?いなければ自薦他薦でも構わんぞ」

 

ちょっ、それを言ったら……。

 

「はいっ。織斑君を推薦します!」

 

「私もそれがいいと思います!」

 

ほら、優先順位的に男である俺たちが推薦されるに決まってるじゃないですか……。見てくださいよ、一夏なんて現実逃避してますよ?

 

「では候補者は織斑一夏……他にはいないか?」

 

「お、俺!?」

 

ここで目を覚ました一夏が立ち上がる。そして一夏にはクラス中からの視線が降り注いだ。

 

「織斑。席に着け、邪魔だ。それに、自薦他薦は構わないと言ったはずだ。指名されたのなら相応の覚悟を持て」

 

「くっ、なら俺は亜久斗を推薦します!」

 

何言ってんのお前!?諦めてクラス代表になれよ!

 

「私も夜霧君に賛成です!」

 

「私も私も!」

 

「彼ならクラス代表としてカリスマ性を発揮してくれると思います!」

 

「お待ちください!納得がいきませんわ!」

 

ここでバンッと机を叩いて立ち上がったのはオルコットだった。

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

酷いいいようだな、そこまで言うのならイギリスに帰れ。

 

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、それはわたくしですわ!物珍しいからという理由でこんな極東の猿にされるのはおかしいですわ!」

 

物珍しいという理由でクラス代表にするのは間違いだが、言い過ぎだ。織斑先生を見ろ、額を抑えて呆れてるぞ。

 

「わたくしは島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!それに大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」なっ……!?」

 

あ、一夏が切れた。我慢するなら我慢しろよ。オルコットの顔がモモタロスみたいに真っ赤になっているじゃないか。いやそれは言い過ぎか。

 

「あっ、あっ、あなたねえ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

「先に言って来たのはそっちだろ!」

 

二人の言い合いはどんどんヒートアップしていく。取り合えず、止めよう。

 

「おい、二人ともやめろ。というかオルコット、お前IS開発したのは日本人だぞ、それに後進的っていうけどさ、どの国も軍事力以外は対して変わらないぞ。それと一夏、イギリスにも上手い料理はある、一時期の感情に流されるなよ」

 

「「はい…」」

 

「それに、お互いに不満があるなら決闘して決めたらどうだ?ハンデ無し、あとくされも無しで、それで決めればいいだろう」

 

「……それもそうだな」

 

「ええ、それで構いませんわ」




二人が静まったところで織斑先生がぱんっと手を打って話を締める。

「話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコット、それと夜霧はそれぞれ準備しておくように」

「え?俺もですか?」

「当たり前だろう、お前も推薦されたんだからな。自薦他薦によって選ばれたお前ら三人で勝負してもらうぞ」

「……まあ、構いませんが」

むしろ大歓迎だ。なんせ、楽しめそうだしな。
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