IS 楽しむことは忘れない 転生者の物語   作:滝温泉

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「で、生徒会の出し物って何やるんだ?」

あの後、俺は一年一組の教室に戻ってきていた。そこには職場放棄人間こと生徒会長の楯無がいたので俺は生徒会の出し物について聞いていた。

「演劇よ、観客参加型演劇」

「シーユー」

取り合えず嫌な予感しかしなかったのでその場を去ることにした。

「だが、逃げられない」

「進路方向を塞ぐだけならまだしも何故抱きつく?それに俺許可してないし、観客参加型演劇って何だよ?それに許可してないぞ俺」

「勝手に決定してもいいじゃない。生徒会長だもの」

「辞退したっていいじゃないか、社長だもの」

「だーめ♪」

そこで抱きつく力を強くされても困…って痛い!結構本気だよこの人!?

「……はぁ、わかったよ」

「ん、それじゃあ本人の正式な許可が出たことだし、決定ね♪あ、一夏君とデネブ君も」

「「え?」」

「あのー、先輩?さすがに全員も連れて行かれると、ちょっと困るんですけど……」

執事服を着て接客していた一夏とデネブがこっちを向く。そして、近くにいたシャルは楯無に許可が出せないらしい。

「そうだシャルロットちゃん、あなたも来なさい」

「ふえ!?」

「おねーさんがきれーなドレス着せてあげるわよ~?」

「ど、ドレス……」

どうでもいいが、言葉だけなら誘拐犯となんの変わりもないな。もしくは不審者。

「じゃ、じゃあ、あの……ちょっとだけ」

「ん~。素直で可愛い!じゃあ箒ちゃんとセシリアちゃんとラウラちゃんもゴーね」

「「「はっ!?」」」

聞き耳を立てて様子をうかがっていたらしい三人が、同時に驚きの声をあげる。

「全員、ドレスを着せてあげるから。それに、一夏君たちの王子姿が見れるわよ?」

「そ、それなら……」

「まあ、付き合っても……」

「ふ、ふん。仕方がないな……」

それでいいのか、乙女たち。気がつくと俺の横に一夏とデネブも来ていた。

「なあ、亜久斗。俺たちに決定権は無いのか?」

「あのメンツに嫌だと言える勇気があるんならあるんじゃないか?」

「………だよな」

「それで、ちなみに演目って何ですか?」

ぱっと扇子を開く楯無。そこには『迫撃』と書かれている。

「シンデレラよ」

「」

「」





六十三話 灰被り姫・奪われた「白」取り戻す「ゼロ」

 

現在は第四アリーナの更衣室。そこに俺と一夏、デネブはいた。言わずともがな、いかにも王子様という感じの衣装で、だ。この衣装からシンデレラの王子役だということがわかる。

 

「ああ、なんでこんなことになったんだろう……」

 

「それは俺たちも思っている。もっとポジティブに考えるしかないぞ」

 

「そうだぞ、例えば何故王子役をすることになったか、と考えるよりも、逆に王子役で良かったと考えた方が楽だぞ」

 

「ああ、楯無なら俺たちにシンデレラ役をやらせてもおかしくはないからな」

 

「そりゃあそうだけどよ……何故王子役が三人もいるんだ」

 

「三人ともちゃんと衣装着たー?開けるわよ」

 

「開けてから言うなよ」

 

「なんだ、ちゃんと着てるじゃない。おねーさんがっかり」

 

「……なんでですか」

 

「はい、王冠」

 

「どうも、って楯無は制服のままかよ」

 

「あら?おねーさんのドレス姿が見たかったのかしら?」

 

「そんなわけないでしょう!」

 

「俺も実を言うと普通にドレス姿の女性なんてたくさん見たことあるからそこまで興味は無い」

 

簪?あれはそんじょそこらの女性と同じにしてはいけない。ましてやウェディングドレスだったしな。比べたら簪に失礼だ。

 

「あらら、おねーさん傷ついちゃうわ、およよよ……。さて、そろそろはじまるわよ」

 

「あのー、俺たち脚本とか台本とか一度も見てないんですけど」

 

「大丈夫、基本的にこちらからアナウンスするから、その通りにお話を進めてくれればいいわ。あ、もちろん台詞はアドリブでお願いね」

 

「あの、それって成功するんですか…?」

 

「どうにも大丈夫とは思えない」

 

「大丈夫よ、生徒会長の言うことは絶対なのよ。私を信じなさい」

 

……不安だ。これほどまでに自信満々に堂々と言っている人に対して初めて不安を持った。成功とか失敗とかとは違うベクトルで。

 

いい知れぬ不安を抱きながら俺たちは舞台袖に移動する。にしてもこのアリーナいっぱいに作られたセットはかなり豪華だな、階段とか背景の絵とかよくできてる。セットの全てがとても強固で頑丈に作られているな。………ん?

 

「さあ、幕開けよ!」

 

ブザーが鳴り響き、照明が落ち、セット全体にかけられた幕が上がっていき、アリーナのライトが点灯した。

 

「むかしむかしあるところに、シンデレラという少女がいました」

 

まあ普通の出だしだな。特に問題は無いのかもしれない。俺たちはセットの舞踏会エリアへと向かう。ちなみに同じところからというのもあれなので一夏はそのまま舞台袖から、俺は階段の上、デネブは舞台袖の反対側から移動する。そういえばシンデレラって誰なんだろうか?やはり先程呼ばれていたシャルたちの誰かなのか?

 

「否、それはもはや名前ではない。幾多の舞踏会をくぐり抜け、群がる敵兵をなぎ倒し、灰塵を纏うことさえいとわぬ地上最強の兵士たち。彼女らを呼ぶにふさわしい称号……それが『灰被り姫(シンデレラ)』!」

 

……は?

 

「今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜がはじまる。王子たちの冠に隠された隣国の軍事機密を狙い、舞踏会という名の死地に少女たちが舞い踊る!」

 

「は、はぁっ!?」

 

「もらったぁぁぁ!」

 

いきなりのことでわけがわからず大声を出した一夏の下に、白地に銀のあしらいが美しいシンデレラ・ドレスを身に纏った鈴だった。

 

というか楯無のアナウンスと鈴の行動から察するに、恐らく呼ばれた専用機持ちのメンツが俺たちの冠を奪うという内容だろう。

 

鈴は一夏の冠取ろうとしてるし、何故か中国の手裏剣、飛刀を投げつけてるし、セシリアや箒も一夏を狙っているな。

 

あ、一夏が冠外そうとしたら電流が流れてる。

そこへ、再び楯無のアナウンスが入る。

 

「王子にとって国とは全て。その重要機密が隠された王冠を失うと、自責の念によって電流が流れます」

 

恐ろしいもん作ってんじゃねえよ!え?じゃあこれ外せないじゃないか、ツール器具でもあればいいのに……。

 

「一夏王子!俺も助太刀するぞ、シンデレラたちから冠を守りきるのだ!まだ俺たちの国が滅ぼされるわけにはいかん!」

 

……デネブ、ノリノリだな。そしてちょっと言葉が古いぞ、それでは時代劇だ。そんなことを考えていると俺の方にもシンデレラ・ドレスを着たシャルとラウラが来ていた。二人ともドレス姿が様になっている。さすがだと思うぞ。

 

「王冠は私がいただく」

 

「ご、ごめん亜久斗、その王冠渡してくれると嬉しいんだけど……」

 

「とは言ってもこれ外すと電流が流れるしな……。悪い」

 

「そ、そんなぁ!?困るよ!」

 

取り合えずダッシュ、安全地帯に逃げることにする。一夏はデネブに任せた。

 

 

 

 

 

 

俺こと織斑一夏は、シンデレラたちから逃げる途中に引っ張られてセットから転げ落ち、誘導されるままに更衣室へとやって来ていた。一緒にいたはずのデネブもいなくなっていた。

 

そして改めてその人を見ると、今日学園祭休憩時に名刺をくれた巻紙礼子(まきがみれいこ)さんだった。

 

「あ、あれ?どうして巻紙さんが……」

 

「はい。この機会に白式をいただきたいと思いまして」

 

「……は?」

 

「いいからとっととよこしやがれよ、ガキ」

 

「えっと……あの、冗談ですか?」

 

「冗談でてめえみたいなガキと話すかよ、マジでムカツクぜ」

 

いきなり口調が変わったことについていけずにいると、思い切り腹を蹴られた。なんとか、手で腹を守るがその衝撃でロッカーに叩きつけられる。

 

「くっ!あ、あなたは一体……」

 

「へぇ、よく防いだじゃねえか。私か?企業になりすました謎の美少女だよ。おら、嬉しいか」

 

そういって俺に向かって二発蹴りをかましてくる。だが俺は体勢を立て直し、蹴りをかわして巻紙さんから距離をとった。

 

「(あ、危ねぇ、デネブとの特訓が無かったら間違いなく喰らっていた……)」

 

「ちったあやるじゃねえか、なら、こいつでならどうだ?」

 

「!?」

 

スーツを引き裂いて、巻紙さん、もとい目の前の女の背後から鋭利な「爪」が飛び出す。それも、クモの脚に似たそれは、黄色と黒という禍々しい配色で、刃物のような先端を持っている。

 

その刃を見た瞬間、俺の本能が働いた。こいつは敵だと。俺は白式を展開した。

 

「なんなんだよ、あんたは!?」

 

「ああん?知らねーのかよ、悪の組織の一人だっつーの」

 

「ふざけん____」

 

「ふざけてねえっつの!ガキが!秘密結社『亡国機業(ファントム・タスク)』が一人、オータム様って言えばわかるかぁ!?」

 

その言葉が、戦いの引き金となり、俺と亡国機業、オータムとの戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

「はっ!この音は!?一夏が危ない!!」

 

突如更衣室の方向から響く銃声を聞き、デネブは一夏の下へと走りだした。

 

手には一つのベルトとカードを持って。

 

 

 

 

「くそっ!?白式を返しやがれ!ふざけんじゃねえぞ!!」

 

戦闘を繰り返した俺はオータムとの戦いで大きなダメージを負ってしまい、«剥離剤(リムーパー)»という道具とせいで、白式を奪われてしまった。俺は白式を失うもオータムに立ち向かった。が、

 

「だから、遅ぇんだよ!」

 

白式の無い俺はオータムによって蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられる。手で咄嗟に防御するが、ISの蹴りを防ぐことが出来ず、壁に勢いよく叩きつけられる。

 

「がはっ!?」

 

「じゃあな、ガキ。お前にはもう用がないから、ついでだし殺してやるよ」

 

オータムはニヤリと笑い告げる。

 

「あば「でやあ!!」何っ!?」

 

オータムは『アラクネ』の脚を俺に降り下ろそうとするが一つの影によって跳ばされた。影の正体は、デネブだった。

 

「てめえ……!よくもやってくれたじゃねえかよ!」

 

オータムは蹴り跳ばされてヨロヨロと立ち上がる。体勢が崩れただけで、ダメージは無いようだ。

 

「一夏!これを使うんだ!」

 

そう言ってデネブが俺に渡してきたのは自動改札機を象っているベルトと切符型のカードだった。カードに走る溝が緑色の面のカードだった。

 

「白式が無いんだろう!だったらそれを使って奪い返せ!使い方は頭に流れ込んでくるはずだ!」

 

「デネブ……ああ!わかった!」

 

俺はベルトを腰に装着する。するとISを初めて触れた時のように頭の中にデータが流れ込んでくる。

 

「変身っ!」

 

アルタイルフォーム

 

俺はバックル部の「クロスディスク」にカードを挿入する。そして緑の基本カラーの牛の頭のような仮面の形状、そしてベルトのバックル部分には「A」の文字が浮かび上がった。その名、仮面ライダーゼロノス・アルタイルフォーム。

 

「なんだそりゃあ?ISか?」

 

デネブはオータムから距離をとり、俺の後ろに走ってきた。

 

「最初に言っておく、白式は絶対に返してもらうぜ!!」

 

「やってみなガキが!そんなちっぽけなISでこのアラクネに敵うと思うなよ!」

 

「喰らわねえよっ!」

 

オータムはアラクネの脚についた刃で俺を切り刻もうとする。だけど俺はゼロノスのベルトにセットされている「ゼロガッシャー」を連結させ、「セロガッシャー・サーベルモード」の形態にきて構えて脚を防ぐ。

 

「おらあ!」

 

「なっ!?てめえアラクネの足を!?」

 

俺はゼロガッシャーのオーラサーベルをアラクネの駆動部分、つまり装甲が薄い部分を狙ってゼロガッシャーを降り下ろし、脚を叩き切った。

 

「俺の白式はっ!返してもらうぜ!」

 

俺は脚が切れたことにより、アラクネの動きが一瞬止まった瞬間に懐に入り込み、オータムが手に持っていた白式を奪い取る。

 

「デネブ、これを持っていてくれ!」

 

「わかった!」

 

俺は剥離剤(リムーパー)によってコア形態となった白式をデネブに託した。白式を奪われたオータムの顔には焦りが見える。

 

「てめえ!よくも奪ってくれたな!」

 

「元からお前のじゃないだろうが!!」

 

俺とオータムはお互いの格闘用ブレード、ゼロガッシャーで切り合う。だがオータムは脚を一部だけ切られたことによりバランスが悪く、力が弱くなっている。

 

「でやあ!」

 

「ぐっ!?」

 

俺はオータムを切り飛ばし、壁に叩きつけた。

 

「さあ、止めだ!」

 

フルチャージ!

 

俺はベルトのバックル左上のフルチャージスイッチを押して、フリーエネルギーをゼロノスカードにフルチャージする。そしてそのカードをそのままゼロガッシャーのガンパーツに付属されている「ガッシャースロット」に装着する。

 

「終わりだぁぁぁ!!」

 

俺は「スプレンデッドエンド」フルチャージしたゼロガッシャー・サーベルモードを振り抜き、オータムに向かって至近距離でフリーエネルギーの斬撃を飛ばす。

 

「く、くそ……ここまでか……!」

 

そのとき、プシュッ!と圧縮空気の音を響かせて、オータムのISが本体から離れ、光を放ちはじめる。

 

ま、まずいっ!

 

「デネブゥゥゥゥ!!」

 

俺は危険を察知し、デネブを守るようにして覆い被さり、爆発から守った。

 

「……大丈夫か。デネブ」

 

「ああ、無事だ一夏」

 

「そうか、よかった……はっ!あの女は!?」

 

「あいつなら、自分のISの装甲だけを爆発させて逃げたみたいだ」

 

「そうか。あ、これってどうやって解くんだ?」

 

「カードを抜き出してベルトを外せば元に戻るぞ」

 

「こうか?あっ、戻ったな……はぁ」

 

俺は危険が去ったことを確認すると床に座り込んだ。

 

「ほら、一夏。お前のISだろう?しっかりと持っておいたぞ」

 

「ありがとうデネブ、これ、返すぜ」

 

デネブは白式のコアを、俺はゼロノスベルトを渡す。

 

「いいのか?これからもこういう時のために必要になるかもしれないぞ?」

 

「いいんだよ」

 

俺はふっと微笑む。

 

「それはテネブのだ。俺には白式がある。それに、強い力は持っているだけで慢心しちゃうからな。俺は白式が無くなった時、自分が無力だった。だから、俺はこれ以上の力は必要ない、俺はこれから頑張って強くなって、もう白式が奪われないようにする。だからさ……」

 

 

 

 

 

 

 

 






「また、俺を鍛えてくれよ、デネブ。俺はもっと、強くなるからさ」

「一夏……ああ!」

俺たちは固い握手を交わした。新たな決意を噛み締めるように。

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