それでは本編スタート!
現在日曜日の休日午前十時ごろ、俺は楯無の買い物に付き合うこととなり駅前のとある店の壁に持たれかかりながら楯無が来るのを待っていた。ちなみに約束の三十分前にはもう来ている。
「そこの貴方」
「ん?」
どこからか声がしたので周りを見る。だが見えるのは大通りを忙しいそうに歩くスーツの男、バーゲンバーゲンと連呼しながら走るおばちゃんたち、ラーメン屋の行列に並んでいる人々。女の子のような声の主は見当たらなかった。
「空耳か……」
「ねえ聞いてるの?貴方よ貴方」
また聞こえた、誰か早く答えてやれよと思いつつ首を回して声の主を確認しようとするがやはり誰もそれらしき人物が見当たらない。
「やっぱり空みm「呼んでるんだからさっさと気がつきなさい!」おふっ」
今度はいきなり腹に衝撃が来た。どうやら声の主は俺の目の前にいたようだ。それも腹にパンチを喰らわせるぐらい近くにいた。まあ対してダメージは無いが、俺は自分の手前下の方を見る。
「まったく、私が呼んでいるんだから早く気がつきなさいよ」
そこには、金髪をなびかせ白の生地にピンクのラインの入った服、その子の身長に合うようにオーダーメイドされたブランド物の鞄を肩に下げた女の子がいた、髪の色からして外人だろう。身長は百四十センチほどだろうか、これなら首を回すだけじゃ気づかないわけだ。小さいもの。
「えーと、どちら様で?」
「私の名前は宝丞アリサ(ほうじょうありさ)よ。貴方の名前は?」
「俺は夜霧亜久斗だ」
「そう、夜霧亜久斗。私の下僕になりなさい!」
ビシッ!と俺に指差し、いい放つ少女宝丞アリサ。
……ああ、なるほど。
「さようなら」
「えっ、ちよっと待って!」
俺が一刻も早くこの場から去ろうと足を進めると、なぜか少女も付いてきた。残念だが俺は特殊な性癖を持っているわけじゃないし、下僕宣言をする少女なんかに構っている暇はない。というか関わりたく無い。
「ねえっ!はぁ、待って…はあっ…たらぁ…ねぇ…!」
「………」
俺を追ってきた少女だったが体力はからっきしのようで、息が荒い。それから追いかけつこを繰り返すこと二分。
「………」
「ねぇ…お願いだからぁ…待ってよぉ。私の下僕になりなさいよぉ……グスッ」
とうとう少女は膝をつき、泣き崩れてしまった。なんか俺が悪いことをしたみたいじゃないか。そこのおっさん、俺をそんな目で見るんじゃない、あんたもだおばさん。
「ねぇ…下僕になってよぉ…」
「あぁもう、話しくらいは聞いてやるから、だから泣くな」
「グスッ……うん」
少女にハンカチを差し出し涙を拭わせる。
……なんだろう。俺は何も悪くない筈なのに罪悪感が込み上げてくる。
「まあここではなんだからそこら辺のファミレスでも入って話すぞ」
「あっ……」
俺は少女の手を取り店へと引っ張る、入ったのは○ストという店だ。取り合えず席は誰もいない一番奥、禁煙席にした。
「(…メールメール、今日は立て混んでて用事が出来ました。終わりしだい連絡しますっと)で?何でそこまで俺を下僕にしようとするんだ?」
俺は携帯電話で楯無にドタキャンメールを送り、少女へと問いかける。理由も無しに下僕にされてたまるか。いや理由があってもならないが。
「こほん、改めて名乗るわね。私は宝丞アリサ、ヤクザの娘よ」
「………マジで?」
まさかのヤクザだよ……。ここ最近なんなんだ本当に。
「それである日外を出歩いていた私は敵組織に誘拐されてね。人質として囚われていたんだけれど隙をついて逃げてきたのよ」
「朝から随分と重苦しいなおい。誘拐されたにしては服とか綺麗じゃないか?」
「そりゃあ私はヤクザの一人娘だしね。大切に扱うってのが礼儀でしょ」
「……ふーん」
うわー、本当に面倒臭い出来事と遭遇しちゃったよ。何?朝出会った少女はヤクザの娘で人質に囚われていたところを逃げだしたところで俺と遭遇しましたって?なんてご都合的な展開だ。
「それで貴方には私の下僕となって私をお父様のところへ連れてってもらうわ」
「決定事項かよ……。でもなんで俺なんだ?」
「丁度いい位置にいたからよ、強いて言うなら誰でも良かったわ」
無茶苦茶だな、何故俺がせっかくの日曜日にヤクザのアジトにお邪魔しなくちゃいけないんだ。
「いや下僕なんかになりたくないし」
「ええっ何で!?こんな可愛い美少女のお願いなのに!?」
「自分で美少女っていうなよ。だってし下僕なんてなりたくないからな。まあ連れていくだけならまだいいが……」
「本当に!私をお父様のところに連れてってくれるのね!」
「あ、ああ。それと声がでかいぞ。で、お前の家はどこにあるんだ?」
ちなみに現在位置は東京だ。色々言いたいことはあるだろうがここは本当に東京なんだ。
「金沢よ」
………ん?
「金沢って石川県の県庁所在地の金沢か?」
「そうよ、そこ以外に何があるのよ」
「……なんで東京にいるんだよお前」
「し、仕方ないでしょ!元々は遊びで埼玉に行くつもりだったのに途中で襲われたんだから!」
「まあ。ところでお前を連れ去ったヤクザってあいつら?」
「へ?」
俺が窓ガラスの向こうを指差すと少女もそっちを向く。そこにはをガタイのいいおっさんたちがいた。もの凄い顔で何かを探している。まあこの宝丞アリサを探しているんだろうがな。
「そ、そうよあいつらよ!私を誘拐したの!」
「そうか、じゃあ早くこの店を出るか。幸い何も頼んでないからすぐに出られる」
「そ、そうね……」
俺と少女はファミレスを出て、ヤクザたちに見つからないようにこっそりと離れようとする、が。
「いたぞ!宝丞家の娘だ!」
「わっ!ばれちゃった!?」
「これもう本当なんてドラマ?」
「きゃ…!」
「我慢してろ」
取り合えずヤクザから逃げる。だが宝丞の体力がないので俺が運ばないといけないのだ。お姫様だっこで、疲れるがこれが一番運び易いのだ。
「待てえー!」
「その娘を置いて行け!」
「嫌だね!待てと言われて待つやつがいるか!」
◆
俺たちはある駐車場に来ていた。ヤクザのおっさんたちはまだ追ってくるが一旦撒いたようた。
「はぁ、はぁ、取り合えず、このままじゃいずれ捕まる。移動手段を変えるぞ」
「どうやって?ここには自販機ぐらいしかないわよ?」
「こうやってだ」
この駐車場には一台の自販機が置いてある。俺はその自販機の前に行き、セルメダルを入れる。すると自販機はバイクに変形した。これは仮面ライダーオーズに登場したライドベンダーである。もしもの時の場合に備えて、数は多くないが本州各街には一台ずつ普及してある。
「ど、どうなってるの?それ、さっきは自販機だったわよね……?」
「まあそんな事はどうでもいいだろ。ほら、早く乗れよ」
少女はヘルメットを被り、ライドベンダーの俺の後ろに乗る。ただ俺に抱きつくような形になってしまうが。
「じゃあ行くぞ、しっかり掴まっておけよ!」
俺たちは、街へと飛び出した。
亜久斗「そういえばお前っていくつ?」
宝丞「見てわからないの?中学二年、十四歳よ」
亜久斗「マジで?」