それでは本編スタート!
そして又時は立ち、月曜日。いよいよクラス代表決定戦当日となった。
「「……なあ、箒」」
「なんだ、一夏、亜久斗」
この数日で一夏と箒も初日の名前で呼び会う仲に戻っていた。それと、箒が不機嫌だった理由は一夏が部屋に入った際に、箒の風呂上がりのバスタオル一枚の姿を見たかららしい。話を聞いた後に一夏の頭を教科書で叩いた俺は悪くないと思う。
「気のせいかもしれないんだが……」
「そうか。気のせいだろう」
今現在、本当の問題はそこではなかった。肝心な問題を見逃していたこととなってしまっていた。
「ISのことを教えてくれる話はどうなったんだ?」
「…………」
「目 を そ ら す な」
箒が一夏にISのことは自分で教えると見栄をはってから今日までの間、箒は剣道の稽古以外何もしていないらしい。案の定、俺の予感は当たっていた。
「俺が一応理論知識だけは教えておいたが。……他に何か教えることは無かったのか?」
「し、仕方ないだろう。お前のISもなかったのだから」
「でも、訓練機を予約していれば一週間に一度は借りられたんじゃないか?」
「それはどうかわからないが。にしてもこの前の「一夏には私が教える」と大見得を張っていたのはなんだったんだ……」
「…………」
「「目 を そ ら す なっ」」
つまりこういうことだ。あの日、放課後に一夏を剣道場に呼び出した箒は、一夏の腕が鈍っていないか確認するために試合を挑んだ。が、あまりにも腕が衰えていたらしい一夏に腹を立たせた箒は、ISのことをほったらかして剣道の稽古ばかり一夏にしていたということ。そして二時間にも及ぶ稽古の後、俺の部屋にボロボロになりながら頼み込んできた一夏。勲章を与えてやりたかったほどだ。
そして、一夏に与えられる専用機は、まだ来ていない。
「一夏、一から十まで選ぶとしたら?」
「なんだよ、急に……八だ」
「そうか……」
「「「………」」」
部屋に、三人の沈黙が流れた。こういう時の沈黙というのは、一人の時よりも辛い物なのだ。
「お、織斑くん織斑くん織斑くんっ!」
連呼しても何も起こりませんよ先生、一回で充分聞こえます。
第三アリーナ・Aピットに駆け足でやって来たのは副担任の山田先生。本気で転びそうな、見てるこっちがハラハラする足取りで慌てふためいてやってきた。
「山田先生、落ち着いてください」
「そうですよ、はい、深呼吸」
「は、はいっ。す~は~す~は~」
「はい、そこで止めて」
「うっ」
一夏の言ったことを本当に実行して息を止める山田先生。この人はオレオレ詐欺の標的になったら絶対に騙されるんじゃないだろうか。
「一夏、何やってんだよお前。山田先生、これは一夏の冗談ですから本当にやらなくていいんですよ」
「……ぶはあっ!そ、そうなんですか?酷いですよ織斑くん!」
「目上の人間には敬意を払え、馬鹿者」
パァンッ!
突如としてピットに響く弾けるような打撃音、この喰らったが最後、地味に痛いどころでは済まなくなるような出席簿を降り下ろすのは織斑先生だ。
「ち、千冬姉……」
パァンッ!
「織斑先生と呼べ。いい加減学習しろ、さもなくば死ね」
うわぁ……。絶対に姉が弟に言うセリフじゃないな、良太郎のお姉さんを見習え、電王を一話から見ることをオススメする。
「そ、それでですねっ!来ました!織斑くんの専用機!」
やっとか。ギリギリじゃないですか、もうちょっとなんとかならなかったんですかね
「織斑、すぐに準備をしろ。アリーナを使用する時間は限られているからな。ぶっつけ本番でものにしろ」
無理に決まっているだろう、初心者だぞ。
「この程度の障害、男子たるもの軽く乗り越えてみせろ。一夏」
ほう、ならお前はできるのか?とは言わないでおこう。
「え?え?なん……」
「「「早く!」」」
ピット内の三人の女性の声が重なった。
「一夏、不憫だと思うな。宿命だと思えば楽になる」
「……なんか嫌な宿命だな。でも、悪くはねえな」
ごごんっ、と鈍い音がしてピット搬入口が開く。斜めに噛み合うタイプの防壁扉は、重い駆動音を響かせながらゆっくりとその向こう側を晒していった。
そこにあるのは、飾り気の無い白を纏ったIS目を凝らして見れば、薄い灰色にも見えなくは無いが。それは「一次移行(ファースト・シフト)」すらしていないからだろう。
「これが……」
「はい!織斑くんの先生IS『白式(びゃくしき)』です!」
「体を動かせ。すぐに装着しろ。時間がないならフォーマットとフィッティングは実戦でやれ。出来なければ負けるだけだ。わかったな」
織斑先生にせかされて、一夏は『白式』に触れる。
「背中を預けるように、ああそうだ。座る感じでいい。後はシステムが最適化をする」
かしゅっ、かしゅっという空気を抜く音が響く。そして白式は一夏に繋がった。
「あ」
「ISのハイパーセンサーは間違いなく動いているな。一夏、気分は悪くないか?」
あの織斑先生が、一夏を生徒ではなく、弟として心配をしている。何だかんだ言っても、姉弟なのだろう。
「大丈夫、千冬姉。いける」
「そうか」
「一夏」
「ん?」
俺は一夏に声をかける。このIS学園に来て一番初めに出来た「仲間」、いや、「友達」に。
「頑張ってこい、応援してるからな」
友達にかける言葉なんて、シンプルに、伝えたいことを芯から伝えることが出来るのなら、それでいい。
「ああ。……箒、亜久斗」
「ん?」
「な、なんだ?」
「行ってくる」
「あ……ああ、勝ってこい」
「今言ったばかりだろ?二度も同じことは言わない」
一夏は首肯で応えて、ピットゲートに進み。オルコットとの試合に向かっていった。
その姿は、まるで騎士のようだ。
◇
そして、結果から言えば、一夏は負けた。エネルギー切れという呆気ない結末だった。一夏のIS『白式』の唯一の武器、«雪片弍型»はその性能の割りに比例してエネルギー消費が激しいようだ。一夏は試合中に「一次移行」をやってのけ、オルコットを寸前まで追い詰めたという大健闘を果たした。
まあ、そこの姉と幼馴染みに色々駄目押しされていたがな。
そして一夏の試合終了から三十分後、俺は第三アリーナの十メートルほど上空で、専用機「仮面ライダー」を展開させ浮遊していた。一夏の『白式』とは違う白のボディカラーに黒のライン、その装甲は普通のISよりも薄く、小さい。膝や肘だけでなく、体の至る部分が駆動型となっていて、しなやかな動きが可能となっている。
目の前には先程一夏と試合をしていた、セシリア・オルコット。だが一夏の試合の時のような慢心とした態度ではなかった。
「夜霧さん」
「なんだ?」
そういえば、オルコットに名前を呼ばれたのは初めてだったな。
「戦いの前に、これまでの非礼について。御詫びを申し上げます。すいませんでした」
「……以外だな。どうしたんだ、急に」
「自分でもよくわかりませんわ。ですが一夏さんとの試合でわかりましたもの。私が思っている男とはちがうと」
「それはよかった。だが手は抜かないぞ」
「勿論ですわ。わたくしこそ本気ですわよ」
試合開始まで、後三十秒。
「オルコット」
「どうしました?」
「行っておくが、驚いて呆気を取られて負ける。なんて辞めてくれよ、俺は本気のお前と戦いたい」
「ええ、勿論。わたくしもですわ」
「ならよかった。……来い、電王」
声に反応するかのように、俺の腰にデンオウベルトが装着される。左手には、黒を基本としたカラーのパス・ライナーパスが現れた。
「さあ、初めようか。変身!」
右手で四色のボタン「フォームスイッチ」の一番上、赤色のボタンを押す。すると、電車のミュージックホーンのような効果音が発生。更に左手のライナーパスをICカード専用改札機を象ったバックル部「ターミナルバックル」にセタッチする。
SWOD FORM
そしてISの装甲が電王・プラットフォームへと転送変換され、ターミナルバックルから装甲が展開。変型・回転をしながら俺の体に装着される。電仮面
は桃のレリーフが顔のデンレールを伝わり俺の眼前で収まり、中央から割れた状態で固定、桃の葉の部分はチークガードのように移動した。
赤い装甲の基本カラー・桃を現すような電仮面・手には専用武器「デンガッシャー・ソードモード」を装備した仮面ライダー。
その名、電王。ソードフォーム
「俺、参上!最初からクライマックスで行くぞ!」
普通ならイマジンとの契約をして変身する電王だが、この世界にはイマジンはいない。ならば、何故変身できるのか?
ノリと、根性、そしてテンション。この三つをクリアした時に、変身できた。
「……ええ、わたくしもイギリスの代表候補生。その実力を見せて差し上げますわ!」
オルコットは変身後に驚いた表情になるが、直ぐに戦闘体制に入り六十七口径特殊レーザーライフル«スターライトmklll»を握りしめ、俺に構えた。
そして俺に放たれる高速のレーザー。キュインッ!とそれに伴い耳をつんざくような音が聞こえた。だがそれに反応したはならない。思考判断が鈍くなるからだ。目の前に放たれるレーザーを俺はデンガッシャー・ソードモードの刃「オーラソード」でレーザーを弾き、後ろに流した。
「これぐらいの攻撃なら、簡単に避けれる」
「なるほど、小細工は要りませんのね。ならお行きなさい!ブルー・ティアーズ!」
そしてオルコットのISのスカート部分から四つの自立起動兵器«ブルー・ティアーズ»が現れる。その機体と同じ名を持つそれは、フィン状のパーツに直接特殊レーザーの銃口がついている。
刹那。ティアーズ、スターライトmklllから弾丸の雨が俺に向かって降り注ぐ。だが俺はその一つ一つの位置を見極め、デンガッシャーで弾く、又は体を左右上下にずらしながら避け続け、徐々に進んでいく。だが進むべきは本体ではなく、その周りに浮いている«ブルー・ティアーズ»。
「あらよっと!セイッ!」
体を捻らせ、アクロバットのように動かしながら勢いを付け、ブルー・ティアーズをデンガッシャーで叩き切る。回転動作で力が加えられた一撃でブルー・ティアーズは撃墜させられる。
そして反応するかのように、他のティアーズは俺から離れていく。だが、俺のリーチはそんな距離なら簡単に届く。
「離れさせるのは失敗だオルコット!」
Full Charge!
ライナーパスをもう一度ターミナルバックルにセタッチし、フリーエネルギーをフルチャージさせる。それにより強化されたオーラソードを本体から分離させる。
「これがエクストリームスラッシュだ。覚えておけ!」
オーラソードを遠隔操作して、円状にいたティアーズ二機に直撃させる。オーラソードが直撃したティアーズは爆散し、撃墜された。
「なっ……やはり、一筋縄ではいきませんのね」
「ああ。ついでにサービスだ、見ていけ」
ROD FORM
右手で上から二番目の青のフォームスイッチを押し、再びミュージックホーンのような効果音が発生する。そして同じようにターミナルバックルにライナーパスをセタッチする。
赤だった装甲が剥がれ、変型・回転して今度はデンレールを海亀のようなレリーフが頭部から伝い眼前で固定されると、ヒレが逆転して角上のアンテナ・ストレイダーに可変される。甲羅部分はヘキサゴンスキャンアイを象っている。
青の基本カラーの装甲、ボディの装甲は変型してショルダーガードとなった海亀を現すような電仮面。「デンガッシャー・ロッドモード」を装備した仮面ライダー。
電王。ロッドフォームとなった。
「お前、俺に釣られてみろよ。すぐに終わらせてやるからさ」
「言ってくれますわね。……そろそろ、終わりにしましょう。ブルー・ティアーズ!」
今度は三機へと数を変えるブルー・ティアーズ。その銃口は俺に向いている。
「いいよ。第二ラウンド、開始といこうか!」
降り注ぐ弾雨を、槍の形態をしたデンガッシャー・ロッドモードでそれを弾く。だが、たえまなく放たれるレーザーはいくつか俺に当たって、エネルギーを徐々に削っていく。
「……これじゃあジリ貧だね。奥の手と行こうか」
ロッドを竿形態に変型させ、持ち手にあるデンリールを回転させることでロッドヘッドからオーラの糸、オーララインを伸ばす。全てのティアーズを捕まえるように、斜め横にしならせて。
「なっ___」
「一本釣りィ!」
捕縛した三機のティアーズをオルコットに向けて投げつける。本体にこそダメージは大きくなかったものの、三機のティアーズを撃墜することに成功した。
「これで、ティアーズはもういない。これで終わりだよ!」
Full Charge!
ターミナルバックルにライナーパスをもう一度セタッチすることでフリーエネルギーがフルチャージされる。
俺はロッドをオルコットに向けて突き刺してオーラキャストに変化させて、オーラを亀甲縛りのように捕縛する。
「さあ、終わりだ!」
空気を蹴るようにして飛翔し、オルコットよりも数段高い位置にまで跳ぶ。そしてそのまま体を一回転させて前方に勢いをつけ、ソリッドアタックを喰らわせた。
『試合終了。勝者______夜霧亜久斗』
オルコットのシールドエネルギーが継ぎ、試合終了のブザーがアリーナに鳴り響いた。
「俺の勝ちだな。オルコット」
俺はベルトを外して変身を解除し、元のISの姿でオルコットに向けてそう言った。
「ええ。ですが、次は負けませんことよ」
「勿論。次も楽しみにしている」
青い涙(ブルー・ティアーズ)VS電仮面(電王)
勝者・電王