とある艦隊の日常   作:クレイモア

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食堂で夕食を摂った後、指揮官のもとに【ユニオン】の空母、ヨークタウン型二番艦エンタープライズは指揮官に話がしたいと言ってきた。しかし彼女の様子が可笑しいと感じた指揮官は彼女を執務室に連れて行った。
※今回は指揮官が癒します。(癒すというより愚痴の相手になりますけど)


エンタープライズと愚痴

夕食を終えた後浴場でいつもと同じく一人で浴場に行きを体を洗おうかと考えた時、とある艦船少女は指揮官に声を掛けた。

「指揮官、少し付き合ってくれないかな。」

振り向くと、軍帽をかぶる【ユニオン】の空母、「幸運艦」と呼ばれてるエンタープライズは憂いの表情をしていた。普段は凛々しく真面目な性格の持ち主だが、今の彼女は瞳の奥に少し曇りがあるように見えた。同じユニオン陣営の姉妹艦であるヨークタウンとホーネットはエンタープライズが少し様子が可笑しいと感じたのかずっと見ていた。

相談事と思った指揮官はこの場で話すのは良くないと判断し、彼女を連れて執務室に向かった。

 

 

 

 

 

 

エンタープライズを執務室に入れると指揮官は机の左にある二段目の引き出しからある用紙を取り出した。それはこの基地で主に艦船少女達が使用する外出許可書である。外出する日や場所、艦船少女の名前などを記入して指揮官に提出すれば一日だけ自由に外出できる代物。エンタープライズは何故それを出したのか疑問に思うと指揮官は外出許可書もボールペンを彼女に差し出した。

「指揮官? これは…」

「一先ず外出するぞ。此処だと話を盗み聞きする者もいる。俺に悩み事を打ち明けるならみんなの目がない所が良い。」

「そうか、ありがとう…」

感謝の言葉を言ってエンタープライズは外出許可書に自分の名前を書いて指揮官は印鑑を押した。

「少し此処で待ってくれ。隣の私室で着替えてくる。」

そう言って指揮官は執務室から退出するとエンタープライズは視線を床に向けた。

 

 

 

 

 

 

数分後指揮官は再び執務室に入ったが彼女はまだ悲しげな表情を浮かべていた。しかし指揮官は気にせずに基地にある購買の裏側に行くとバイクがあった。

「指揮官、それは?」

「バイクだ。しかし明石に頼んで皆んなに秘密にしていたご見せるとはな。エンタープライズ、この事は内緒にしてくれ。それと…これを頭に被ってくれ。」

指揮官はエンタープライズにヘルメットを渡すとバイクに跨り、右手でブレーキを押しながらエンジンをかけると、ヘルメットを被る。彼女は帽子を外してほしいと頼まれたがこの様な理由だったと知り、意外だった。

「エンタープライズ、後ろに乗ってくれ。あと抱きつかないと振り落とされるから注意だ。」

「指揮官に抱きつく……」

あまりピンとこなかったがよく考えたら少し赤面した。エンタープライズは真面目で凛々しい艦船少女だが彼女は指揮官に思いを寄せてる乙女の一人でもある。

「エンタープライズ、ヘルメットを着用したか?」

指揮官の掛け声で彼女は妄想に浸った思考が戻り、指揮官の方を見て頷き、指揮官の後ろに乗った。

「では行くぞ。」

 

 

 

 

 

 

エンタープライズは初めてにバイク乗って移動した。車と同じように早く疾走し、風で自分の後ろ髪がなびくが、とても気持ち良かった様子だった。エンタープライズは指揮官にあることを聞いてみた。

「指揮官、貴方は辛いと思ったことはあるのか?」

「……無いと言ったら嘘になる。」

 

彼女の質問に指揮官は少し間を空いて答えた。どんなことかと聞いてみたかったが、あまり聞かないほうが良いと彼女は判断した。

「そうか、そういえば指揮官は隠し事をあるのか?」

「色々、だな。このバイクもその内の一つといったところだ。まあ隠し事と言っても大半は趣味みたいなものだ。」

何気ない会話でしながら移動すること数分、目的の街に着くと、近くにある駐車場にバイクを停め、歩き出した。時間帯は丁度夜なのでどこもかしこも店前で灯りを点けていた。あまりこういった場所に行かないエンタープライズだが、彼女の瞳には眩しく感じた。

「綺麗…」

「確かにな。歩いて数分のところに店があるから話はそこで構わないか?」

普段は基地で過ごしてるエンタープライズは歩きながらキョロキョロしながら周りの店を見ていた。

「ああ…しかしこんなところがあるとは。指揮官、以前此処に行ったことがあるのか?」

「あの基地で指揮官としてなりたての頃、ちょっとした息抜きにバイクでツーリングする時に偶々此処に通りかかった。色々な店があってな、よく甘い物を買ってきて欲しいってせがまれたしな。そういえば、ヨークタウンも実は古参組の一人だったな。」

「姉さんが?」

エンタープライズの問いかけに指揮官は頷き、ゆっくりと大きく息を吐いた。

「まあな、今から話そうと思ったが店にそろそろ着くから話は店内で話すぞ。」

辿り着いた先はこじんまりとした喫茶店である。木造建築の店だが、出されるメニューは豊富で非常に美味しく、通の間では人気の店である。店内に入ると店員が気づき近づいた。

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

四十代程の男性店員に二人と言い、店のカウンター席に座った。指揮官は男性店員からメニュー表を見るとエンタープライズがそっと耳打ちをした。

「指揮官、他の店員が見かけないのだが…」

「この店は二人で切り盛りしてる。さっきの男性はこの店の店長。もう一人は店長の娘。以前ここに来た時に色々聞いたからな。それよりメニューは決めたか?」

まだメニューを決めてなかったエンタープライズはメニュー表に目を向け、頼もうとするメニューを考えた。するとあるメニューに目をつけた。

「私はこれにする」

彼女が指差したメニューを見ると彼は成る程、と頷いた。

「ホットエッグノッグか。確か西洋版のたまご酒だった筈。俺は紅茶に決めてる」

エンタープライズはふも気になることを聞いてみた。

「指揮官、酒は飲まないのか?」

「苦手なだけだろ。飲めないわけではないが二日酔いになると執務に悪影響になる。それに煙草も吸わない」

「指揮官らしい理由だな。普段から嗜好品とか持ってないのか?」

「持ってないな。毎日の執務で忙しいし要望書に書かれてる嗜好品は大半が【ロイヤル】が占めている」

「そんなのか」

「毎日のティータイムもお茶会用の茶葉、洋菓子類などを発注するからな」

まあそれでも何不自由なく過ごすなら構わない、と指揮官が言ったところで頼んできたメニューが来た。小さい少女が二つのカップが乗せらてトライを持ってきてくれた。

「はい! このみせとくせいのこうちゃとおさけです。とてもおいしいです!」

小さい少女は和やかな表情をし明るい声で言った。トライに乗せてる二つの容器を指揮官が取り、ホットエッグノッグをエンタープライズに渡した。

「ありがとう、ではいただくか」

エンタープライズはホットエッグノッグを、指揮官は紅茶を口にした。ホットエッグノッグはアルコールがあるが酔うほどの量ではなく、口当たりは甘かった。

「美味しい。」

お世辞ではなく自然とそう思った。それに体が温まっていく感覚がした。

「そうか。そういえば俺に何か相談事があるのか?」

その言葉を聞くと、エンタープライズは目線を下に向けた。

「指揮官、実は夢を見たんだ。」

「夢?」

どんな夢か、とは指揮官は言わず黙ったまま紅茶を飲み、数秒経つと彼女の口が開いた。

「ヨークタウン姉さんが沈む夢。私とヨークタウン姉さん、ホーネット、同じユニオン陣営の三人と出撃し敵艦隊を撃破した後、隙を突かれて奇襲を受けたんだ」

「……」

「慌てて艦載機を発艦しようとするが敵艦隊の大砲が私に向けて一斉放射したんだ。でも姉さんが私を庇って損傷を受け、発艦出来なかった。姉さんを守りながらも戦ったが戦況はどんどん不利になり、姉さんは私達を逃がすための囮になった。そして私達は海域から脱出したが姉さんは敵艦隊の砲撃で沈んでいくのを見てしまった」

彼女の夢の内容を聞いた指揮官はそうか、としか言えなかった。艦隊を束ねる者として夢の中のヨークタウンの判断は確かに合理的だが、それは単なる自己犠牲としか思えなかった。彼女の言いたいことは理解してるが、感情論や気合いだけでは戦況を覆すことはできないと彼は身を以て体験している。

「指揮官、何故私は『運が良い』のか分からない。私はただの空母なのに偶々運が良かっただけで武勲艦になったのが分からない。」

「……」

「指揮官、私はどうすればよいのだ?」

生憎(あいにく)その質問に対する答えは持ってない。だが愚痴を聞く相手ぐらいならなってやる。部下の悩み事を聞くのも指揮官としたの務めだからな。だから一人で抱え込まなくていい。」

指揮官はそう言って残っている紅茶を飲み干した。

「エンタープライズ、そろそろ会計したいが…」

「あ、す、すまない。急いで飲む」

急いで飲もうとするが指揮官は軽く息を吐いた。

「いや、ゆっくり飲んでくれて構わない。俺はトイレに行く。」

ゆっくりと立ち上がった指揮官は店にあるトイレまで歩いた。

「……」

一人だけになったエンタープライズは少し残ってるホットエッグノッグをゆっくり飲み、深呼吸した。指揮官との会話で心がだいぶが和らいだ。もし他の艦船少女に夢の話をすれば「ただの夢」と言われて冷やかされそうになるが指揮官は真面目に聞いていた。そのお陰か気分が和らいだ。数分後、トイレから戻ってきた指揮官はエンタープライズを見るとすでに注文の品を飲み終わっいた。

「そろそろ出るか。店長、美味しい紅茶ありがとうございます」

指揮官は財布から代金を支払うとこの店の店長に向けて綺麗にお辞儀をした。店長は照れたのか右手を胸の高さまで上げて左右に振った。

「いえいえ、またのご来店をお待ちしてます」

「はい。」

指揮官は短く返事してエンタープライズと一緒に店から出た。すでに時間は深夜になっていたが、就寝から少し経った時間辺りなので急ぐ程ではない。二人はそのままバイクに乗るが、エンタープライズは体の向きを横に向けていた。振り落とされる心配はしたがそれは杞憂だった。帰路に就く途中、エンタープライズとお互い振り向かずに会話を挟んだ。

「指揮官、今日はありがとう。打ち解けたお陰で気持ちに整理がついた。それと、もしよかったら…皆んなには内緒でまた私と二人で出かけないか」

「いつになるかは分からないぞ? それでも良いのか?」

「ああ、構わない。それに指揮官のことが知りたくなった。」

「知っても俺の面白くない情報しかないぞ。」

「それでも私は知りたい。」

「そうか。いつか話すと思うがな。」

「私はそれがいつになるのかは楽しみだ。」

エンタープライズは微笑みながら夜空を見上げた。




エンタープライズって『幸運艦』として言われてますが『運が良い』とい視点から考えて見れば史実の時雨や雪風みたいに『自分だけ生き残った』や『幸運ゆえに他の艦は不幸になる』という感じがします。(筆者の独特というか変わった見方ですけど。)
(閑話休題)
エンタープライズは真面目で社交性のある艦船少女です。姉であるヨークタウンにはかなり慕っておりお姉ちゃん大好き。(百合ではなく親愛的な意味で) 最近は瑞鶴と訓練所でお互い良き好敵手として競ってます。あと恋愛に関しては初心(うぶ)なので異性(というか指揮官)からの接吻(キス)やハグの耐性無し。
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