とある艦隊の日常   作:クレイモア

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いよいよ慰安旅行に向かう基地の者達、指揮官は少女達がバスに入るのを確認していた。
※バスは四列縦隊の四十四人乗りです。
※今回で指揮官の隣を獲得した()が出ます。今までの話で出なかったキャラですので意外だと思います。
※今回から後書きに話に出たキャラを書きます。


夏の休暇 出発編

夏の早朝、蝉の鳴き声が響く中、指揮官は外にいた。すでに数台のバスには基地の少女達が乗っており中にはまだ眠たそうな者もいれば今から行くのが楽しみな者もいる。

そんな中、指揮官は送迎バスの運転手の一人一人に挨拶をしていた。彼は今対面している五十代の人物に頭を下げていた。

「本日はよろしくお願いします。」

「残暑の中御苦労様です。中は冷房が効いていますので快適な旅を楽しんでください。」

お互い軽く挨拶を交わし、指揮官は各号車の入り口にいる少女達のところに行き点呼の確認をした。

「閣下、各号車の点呼が完了しました。」

指揮官に声をかけた少女、ロンドンは和やかに言った。各号車には重巡、戦艦、空母の内一人を点呼係を頼ませている。つい先程他の号車からは全員乗ってるのを報告して今話しかけてるロンドンが最後だった。

「分かった、外は暑いからお前も早く中に入れ」

「了解しました」

労いの言葉をかけるとロンドン(彼女)は敬礼し自分が乗るバスに入った。

「では乗るか」

そう言って先日クジで決めた一号車に乗った。

 

 

 

 

 

 

少女たちはバスの中で盛り上がっていた。普段見ない景色を眺める者、これから向かう場所について話し合う者など少女達の反応は様々であった。

そんな中、指揮官の隣席になった少女(空母)、グラーツ・ツェッペリンは楽しそうな様子だった。

「グラーフ、随分と嬉しそうだな。」

指揮官から声を掛けられた彼女(グラーフ)はフッと笑った。

「そうだな、我々(われわれ)はかつて(ふね)であった。そして今は人になった。それは心や感情を持ち、こうして話す事が出来る。指揮官よ、(けい)にはこの意味が分かろう?」

彼女(グラーフ)の問いかけに対し指揮官は難しい顔をした。

「難しいな、生憎(あいにく)哲学は専門外ではない。だが人になって得ることがあると思え。かつて戦った相手と共に戦うという状況に不思議と奇縁を感じるというのも分からなくない」

「我は彼処(基地)での生活が楽しいぞ。大戦時(あの時)(ふね)として戦うことが存在意義であった。しかし現在()は人としての生活を送るが決して悪くはない」

「そうか。今回の旅行で存分に堪能すれば幸いだ」

彼女と会話をし続けていると指揮官は欠伸(あくび)をした。

「眠いのか? なら我の膝を貸そう。日頃から(けい)には感謝してる。そういえば【重桜】では膝枕という言葉があるらしいが試してみるのに良い機会だ」

しかしグラーフの提案に指揮官は拒否した。

「有難いお誘いだが遠慮する」

「分かった」

グラーフは窓の方に顔を向けて窓の外の風景を見続けた。

そして指揮官は眠りに就いた。

 

 

 

 

 

 

指揮官が寝て数分経つと一人の少女、【ロイヤル】のネルソンがカメラを持って指揮官の方に歩いた。

「まったくロドニーったら、私に指揮官の寝顔を撮ってきてほしいってこれ《カメラ》を押しつけながら言って…」

(ロドニー)に憎まれ口を叩きながらもネルソンは歩いたが、彼女も指揮官()の寝顔に興味が湧く。

「さっさと撮って終わろう」

溜息をつきながらもネルソンは車内の通路側で写真を撮ろうとする。乗ってるバス(一号車)は振動が小さく微動な程しか伝わらないのに運転手の技術の高さを物語っていた。他のバスも同様に振動はが微動であった。

「先ずは試し撮りね。その後は好きなように撮ろ」

通路側で斜めの位置に立ちカメラの高さはなるべく水面にして撮った。

「どれどれ…まぁ、及第点ね」

撮った画像を確認するとちゃんとした位置で撮れていたので今度は別のアングル(位置や角度)を試してみた。

(意外と良い感じに撮れてる…って私のバカ‼︎ あの子(ロドニー)に頼まれてるのに何で楽しんでるのかしら⁉︎)

途中で悶々とした様子になったネルソンだが徐々に気持ちを落ち着かせると写真を撮るのに再開した。

(とりあえずコイツ(指揮官)の寝顔を数枚撮ったら元の席に座って確認しよ。あと自分用に何枚か撮ろ)

指揮官は軍帽を(かぶ)っているのでネルソンはそれ(軍帽)を取って彼の膝の上に置き、写真を撮った。後日、ネルソンはロイヤル陣営(自陣)の皆に追いかけられることになったのは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

指揮官が寝てるのを良いことにまた彼の元に来る少女がいた。最近新しく近代化改修(改造)を受けたフォックスハウンドである。先日のクジ引きで指揮官の真後ろの席で本人が喜んでいた彼女(ファックスハウンド)は尻尾をぶんぶんと横に振り、ご機嫌な様子だった。

「ふっふー、えい」

すると彼女は寝ている指揮官に抱きつき服の匂いを嗅嗅いだ。

「〜〜♪ 良い匂い」

そう言いながらもフォックスハウンドは尻尾を振りながら指揮官の服に顔で頬ずりをした。その様子に一号車の全員(少女達)は騒然とした。しかしそんな中、ある一人の少女が座席から立ち上がった。

「フォックスハウンド、そこまでにしてもらおう」

ヨークタウン級航空母艦二番艦、エンタープライズはフォックスハウンドを引き離した。

「エンタープライズさん、(ひど)いよ。折角の指揮官と密着できるチャンスだよ」

「気持ちは理解できるが指揮官が寝ている。あまり迷惑は掛けないでほしい」

「はーい。」

エンタープライズの言葉でフォックスハウンドはしょぼんとした表情で自分の席に戻るのを確認すると彼女(エンタープライズ)も自分の席に戻った。

「まったく、折角の基地全員総出の外出だ。指揮官には苦労をかけたくない」

ちなみにエンタープライズの座席は(指揮官)の近く、正確には右斜め後ろで彼女の隣は姉のヨークタウンだった。

(しかし指揮官の隣ではないとはいえ近くになると、緊張するな)

普段から執務室で篭りっぱなしだが艦隊運営はかなり気を遣ってる(指揮官)。基地では色々世話になってるし日常生活に不満がないと言えば嘘になる。

(偶にでいいがあの人(指揮官)からスキンシップをとってほしいものだ…でもアレ(赤城と翔鶴)がいるしな。それにしても奇縁か)

エンタープライズは指揮官とグラーフ(二人の話)を思い出した。彼女も奇縁という言葉(ワード)についてそう感じていた。かつて、大戦時(あの時)戦った艦《相手》とこうして共に過ごす。そのような状況に当時の彼女は戸惑いはしたが時間が経つにつれ今は慣れている。

(瑞鶴たちとは今は競いあう好敵手(ライバル)だし、それに姉さんがいる。指揮官には感謝しないと)

ふと隣座席のヨークタウン()を見ると顔を窓側に倒して寝ていた。窓ガラスで姉の寝顔を見ると幸せそうな表情をしていたので思わず頰が緩みエンタープライズは姉の頬をつついた。

「こうやって平和に過ごすのも悪くない…か」

エンタープライズは窓に顔を向けてそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

場所は変わって三号車、縦二列目の二十二番目のアークロイヤルは悶絶していた。自分の周りが駆逐艦だらけになってることに興奮していた。

(なんだあの睦月たんの可愛い顔は!? 窓の光景を無邪気な瞳で見るなんて…私に向けてくれないか!?)

アークロイヤルは窓の方に顔を向けてる睦月を見て思わず手を出しそうになったが後ろにいる戦艦が注意した。

「アークロイヤルさん、駆逐艦に手を出してはいけません。自重ください」

その戦艦はネルソン級戦艦のロドニーであった。彼女がアークロイヤルの後ろになった時に指揮官に呼ばれてあることを言われた。

『アークロイヤルを見張っとけ』

同じ《ロイヤル》として()の陣営に迷惑かけさせない為でもあるし指揮官に頼られて嬉しくなった彼女はしっかりと役目を果たそうと心の中で決意した。

「し、しかしだなロドニー、駆逐たんは可愛いぞ」

アークロイヤルは焦った表情を浮かべて言うが、ロドニーはニコッと笑った。

「ええ、そうですね。ですが栄光あるロイヤルネイビーとしての振る舞いをしてください」

窘めるような言い方をするロドニーに近くにいるロイヤル陣営は感心した様子だが、アークロイヤルは威圧的に聞こえた。

「わ、分かった」

そうして目的地に到着するまでアークロイヤルは駆逐艦に触れることは無く、悶々としていた。




後日指揮官の写真は指揮官の知らぬ間に明石が購買で売り捌いていた。
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