「なんかさ、私料理の腕がド下手になってる気がする」
ある雨の朝、起きたばかりの
「ほら、セバスがきてからほとんど料理も何もしてないし。お菓子作りは元々したことないからいいにしても、ご飯まで作れなくなるのは流石にまずい気がする。たまには作ってみようかな」
そんなこんなで、今日の昼食作りを任されることとなった澪美。そしてその時はやってきた。
「洋食じゃあんたに適いっこないし、和食にしてみた!さぁ、どうぞ」
「え、私が食べるんですか?」
「当然でしょう?」
いつもとは逆、机についたセバスはポカンとした顔で、楽しそうに給仕する澪美を見上げた。
「誰かに手料理食べてもらうなんて初めてだよ。私が食べられたくらいだから、そんなに悪くはないと思うけど。ちなみにこれはカツ丼ね」
「カツ丼…丼ですか。懐かしいですね」
「え?」
「あぁいえ、なんでもありません。それでは、いただきます」
スラリと長い指で器用に箸を動かすと、カツ丼をつまみ、口へと運ぶ。吸い込まれるように口に入り咀嚼される。と、その動きがピタリと止まり、セバスは口元を押さえ固まってしまった。
「こ、これは…」
「え、どうしたの?まずい?ご、ごめん。味見はしたんだけど…」
「不味いなんてとんでもない!美味しいです、澪美。とても美味しい。私は少々日本食を見くびっていたのかもしれません」
「え、そこまで?」
想像していたよりもはるかに美味しかったのか、心なしかプルプルと震えつつ咀嚼を進めていくセバス。手の動きも段々とスピードが上がってきて、最後には見えなくなるほどの早さで完食してしまった。
「ごちそうさまでした」
「お、お粗末様です…」
「それにしても本当に美味しいですね、これ。どうやって作ったのですか?」
「これ水で割ってちょっとみりん足して玉ねぎ煮込んでトンカツを卵で綴じただけだけど?」
澪美が冷蔵庫から取り出したもの。それは…
めんつゆ
そう!お湯で割ればうどんや蕎麦の汁となり、水で割れば素麺の汁となり、混ぜるだけであっという間に美味しい煮物ができてしまう、主婦の心強い味方、めんつゆである。
「これ便利なんだよね。普段かつお節使ってるけど、いちいち丼物にまでだし汁とって調味料いれて〜ってやるの、面倒じゃん。これだと味に失敗ないし」
ドヤ顔でめんつゆのボトルを見せつけつつ、自分の分のカツ丼を平らげていく澪美。差し出されたそのボトルを手に取ると、セバスはそれを凝視した。
「めんつゆ…こんなものが…」
以前の主人に仕えていた時にはおよそなかったであろう、めんつゆ。と言うより国自体違ったため、冷蔵庫にあるのは認知していても使い方までは知らなかったセバスにとって、これは新たな衝撃だった。
豊かな香りとコクのある後味を引き出し、トンカツの旨味を閉じ込めつつ油っこさを消し、且つご飯と具材との調和を生み出しためんつゆ。
めんつゆに魅了されてしまったセバスによって、次の日から毎日のようにめんつゆを使用した料理が出されるようになってしまい、怒った澪美に頭をはたき落とされたのは、また別のお話。
お久しぶりです。
暫く更新せずに色々考えてはいたのですが、なかなかいい感じのストーリーが浮かびません。
そんな訳で、今日の夕食で作ったカツ丼が自分史上1番の出来だったため、小説内でもカツ丼を食してもらいました。
世界のカツ丼LIFEに幸あれ!\(^o^)/