少女の手のひらに降り立った悪魔   作:双葉蓮華

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2話

リビングに行くと、そこにはセバスが立っていた。

 

「暖かいココアをご用意致しました、ご主人様。で、異父兄(あに)とはどのようにすれば?」

 

今まで経験したことの無いエスコート。自分に丁寧に話しかける男。澪美(れみ)は痛む頭を抑えつつ、椅子に深く腰掛けた。

 

「ひとまずご主人様はやめて。それ外で言ったらどんなプレイだよって2度見されるから」

「かしこまりました」

「それからその敬語も。実際兄がいた事ないからよくわからないけど、多分、敬語使ったりなんてしないでしょう?普通でいいよ」

「わかりました。では、なんとお呼びすれば?」

「澪美でいいよ。その硬い喋り方もなしで」

「わかりました。ですがこの喋り方は今更変えられそうもありませんから、このままにさせてください。改めまして澪美、よろしくお願いします」

 

セバスは対面に腰掛けると、にこやかに手を差し出してきた。澪美もそれに応えようと右手を伸ばす。と、その腕をぐっと掴まれセバスに引き寄せられた。突然のことに驚きで目を見開く澪美。机にあったマグカップが倒れ、ココアの染みが広がっていくのが視界の端に映っていた。

 

「この腕。ここに逆ペンタクルが刻まれているでしょう?これは黒魔術の印で、私との契約書でもあります。私の左手の甲にあるものと同じです。この印が目に付くところにあるほど、結び付きは強くなり、強い執行力をもたらします。あなたはただ私に命令すればいい。ただそれだけで、望みを叶えられるのです」

 

セバスの手がゆっくりと印をなぞり、それに従って印の部位が少しずつ熱を帯びる。紅く怪しく瞳が光り、その光に飲み込まれそうになったその時、澪美の意識が戻ってきた。

 

「あっ…」

「まったく。この程度の誘惑に負けてどうするのです?あなたは復讐するのでしょう。あなたを苦しめてきた人間達に。これしきのことで動じるようでは復讐など夢のまた夢。我が主たるもの、このくらいのことで動じてどうします」

「ご、ごめん。…ていうか、この机どうすんの!ココア零れちゃったじゃん!!」

「それは失礼致しました。ああ、その印、普段は隠していてくださって構いませんから」

 

そう言われ、印を自分でもそっと撫でてみる。先程のようなじんわりとした熱は感じない。

 

「さっきの、あれは悪魔の力?」

「えぇ、まぁ。そのようなものです。それで澪美、あなたが復讐したいのは誰ですか?」

「私が復讐したいのは…みんな。私を産んで逃げた母親も、私を見捨てた父親も、私をいじめたアイツらも、私を裏切ったあいつも、見て見ぬふりしてた担任も、みんな」

「でも復讐なんてどうするの?確かに、殺したいほど憎んでる奴らばかり。だけど、殺してしまえば私は捕まるし死刑になる。アイツらの為に死刑になるなんて真っ平だ。何度も思った。アイツらみんな死んじまえ!って。でも…」

「澪美、私のことをお忘れですか?私は悪魔。あなたが望むなら、あなたを苦しめてきた人間達を皆、殺すことなど容易い。しかし、あなたはそれを望むのですか?」

 

そう問われ、思わず言葉に詰まった。確かに死んでほしい。だけど、それ以上に、自分の手で殺してやりたかった。

 

 

 

 

「自分の手で、地獄に突き落としてやりたい。自分は幸せです!って面を吹き飛ばして、絶望に変えてやりたい」

「ならば私は、そのお手伝いを致しましょう。my lady」

 

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