セバスが作ってくれる料理は、普段自分が作るものと比べられないほどに美味だった。
「セバス、あんた本当に執事やってたの?料理人て言われても信じられるレベル」
「本当に執事をやっていましたよ。もうかれこれ数百年前になるかと思いますが。美味しい料理、満たされた生活、そして果たされた望み。それらがあなたの魂を更なる美味へと導く。その為の下ごしらえですから、面倒でも手抜きはできませんよ」
「あんた、私の下僕とかいう割りに毒舌よね?」
「えぇ、
澪美は
朝起きるとまず身支度を整え、そしてセバスが作った朝食を食べる。
今日は新学期。自分をいじめた奴らに復讐することができる。そう思うと、いつもは憂鬱な学校が、少し楽しみな気がしていた。
「それでセバス、どうやって復讐するの?」
「その方法は澪美が考えることですよ。どうやって死んでほしいのです?」
「そうだね…アイツら、田沼葉子と沖宗二。いじめの主犯であるあの2人は憎いけど、それ以外は正直どうでもいい。よくいるでしょう?リーダーに引っ張られると逆らえない奴。みんなそうだったから。だから、あの2人は絶対に殺す」
いい事を思いついた。それを口にすれば、セバスもまた悪魔らしく、ニヤリと口角をあげた。
「私も
美しく微笑むセバスに見送られ、家をあとにする。
学校に着く。新学期だというのに、いつも通り汚された靴箱。思わずため息が出る。こんな事のために、アイツらはわざわざ早めに学校に来ているのか?そう思うと、呆れて言葉も出なかった。
教室に入る。誰もが澪美を遠巻きに見ている。
《援交女》《キモい》《しね》
毎日のように投げかけられる、チープな言葉の羅列で埋められた自分の机。どうやら朝1番に来ているはずの担任は、いつも通り見て見ぬふりを決め込んでいるようだった。
「あれ〜?あんた、学校きてたの?夏休み中に死んだかと思ってたのに」
「相変わらずぶっさいくな女だな。お前も葉子みたいにもう少しいい女だったら、遊んでくれる男の1人でもいたかもしれねぇのに」
ニヤニヤと下品な嘲笑を浮かべ近づいてくる男女。このクラスのリーダー的存在であり、澪美を虐めている主犯ー
スクールカースト上位のこの2人に反抗すれば、次は自分がターゲットになってしまう。クラスにはそう考える人間しかおらず、澪美を助けようとする者はいなかった。
挨拶がわりとばかりに腹を殴られる。痛みで蹲ると、こっちを見ろと言わんばかりに顔を蹴りあげられ、意識がクラリと傾く。
そのままトイレの個室へと押し込まれ、閉じ込められた。
「出してっ!開けてよ!」
「開けてください葉子様、でしょ。この豚女。豚のくせに人間様に命令する気?ほらあんた、そのホースでこの個室に水ぶっかけときな」
「よ、葉子さん…。今日は始業式だから、あの…」
「だからなに?さっさとやらないと、あんたも同じ目に合わせるわよ、綾女」
「ご、ごめんなさい!」
葉子に声をかけられた女生徒ー
夏とはいえ水を服の上からかけられた澪美は、少しばかりの寒さを覚え、体をぶるりと震わせた。澪美に水をかけると、2人は満足したのかさっさとトイレから出ていってしまい、生徒も体育館に移動しているのか、ざわめきしか聞こえてこない。
「いつも、このような事をされているのですか?」
「セ、セバス!?」
声に反応して上を見上げると、セバスが上から個室を覗き込んでいた。ガチャリと扉が開かれ、澪美はようやくトイレから出ることができた。
「まったく。見当たらないと思って探してみれば。風邪をひかれては困ります。こちらを」
フワフワのタオルを差し出され、それで体を拭うと、制服までもが一瞬で乾いて元通りになった。
「助けてくれてありがとう。私も始業式に行かなきゃ」
「それでは、私はこれで。失礼します、澪美」
始業式へと向かう生徒に紛れ込み、澪美も体育館へと向かう。クラスメイトの中に、トイレに閉じ込めずぶ濡れにしたはずの澪美が普段通りの格好で並ぶのを見て、葉子・宗二・綾女が驚いていたのは言うまでもない。
「えー、それでは最後に、新しい教員の紹介をします。ELTのジョシュア先生が一身上の都合により、この夏退職されました。代わりに今学期からこちらの先生がELTを担当します」
「はじめまして、セバス・ミカエリと申します。皆さん、どうぞよろしくお願いします」
体育館のステージに立ち、人好きのする爽やかな笑みを浮かべるセバスを見てざわめく生徒達。そんな生徒達同様、澪美も平静を保つことができなかった。
なかなか話が進まないですね笑
教師セバスは、寄宿舎編からアイデアをいただきました。
あちらではローブのような衣装でしたが、現代なので勿論スーツです。
執事スタイルの燕尾服とあまり変わらないかと思います笑
でもセバスチャンなので、きっとなんでもカッコ良く着こなしてくれるはず!