「ちょっとセバス!どういうこと!?なんであんたがここにいるの!」
「言ったでしょう?
「絶対あんたが辞めさせたんでしょ…!!」
休憩時間になり、すぐさまセバスの元へと走ったら
「それより、授業が終わったら迎えに行きます。くれぐれも、今朝のような女子トイレに缶詰というのはやめていただきたいですね」
「それは私に言ったところでどうしようもないよ。むしろ、さっき始業式にピンピンして出たからすごく睨まれてる。ほんと、面倒だよ。私が嫌いなら無視してくれればいいのに、なんでか突っかかってくるんだから」
そうボヤいてみせると、すぐさま2人はわかれ、それぞれの場所へと向かっていった。
教室に戻ると、また絡まれるかもしれない。そう思っていたが、そこには既に担任の姿。教師の手前では、多少の罵倒はあれど手を出されることは無い。代わりに遅刻を注意されてしまうのだろうが。
「おい斎藤!もうLHRはじまってるぞ?新学期早々、たるんでるんじゃないのか?」
「すみません」
「まぁいい、席につきなさい」
爽やか好青年として保護者からの人気が熱い担任ー
しかし、彼が澪美を守ってくれたことなど1度もなかった。教師の話を適当に聞き流していると、ガラリと扉が音を立てて開かれ、セバスが現れた。
「あぁ、きたきた。さっき紹介されたミカエリ先生。今日からこのクラスの副担だから」
近くで見るその秀麗な顔をした教師に、女子生徒達は色めきたった。
「Nice to meet you. I'm Sebas Michaeli. 」
美しい発音で流れるようにされた挨拶の言葉。セバスはあっという間に生徒の心を掴んでいた。
「それでは本日はここまでということで、よろしいですね、風間先生?」
「あ、あぁ…」
「みなさん、気をつけておかえりください。それと斎藤さん、その机のことで少々お伺いしたいことがありますから、あなたは教室に居残るように」
「あ、いやミカエリ先生、それは私が…!」
風間が言いかけるも、セバスに笑顔で黙殺されてしまう。生徒はその笑顔に追い立てられるように足早に教室を出て行った。その生徒に紛れ、葉子が澪美に近づいて囁いた。
「あたしらのことチクったら酷い目に合わせるから。わかってんでしょうね」
葉子の囁きに合わせ、近づいてきた宗二に再度腹を殴られ息が詰まった。生徒が全員帰宅し、教室に取り残された3人。
「こ、これは、ミカエリ先生、僕が本人とも話しているんですよ。しょうもないイタズラです。な、斎藤?」
「そうですね」
「そうなのですか?まったく。最近の若者ときたら…イタズラと言えど、学校の備品を傷つけるのは許されないのでは?これは、誰がやったのですか」
「ミカエリ先生、大丈夫です!僕が話を聞いておきますから!さぁ、先生も入ったばかりでやることが沢山あるでしょう?自分の仕事に戻られて大丈夫ですよ!……斎藤、お前、自分は虐められてるんです〜とか言うなよ?虐められる方にも原因はあるもんだ。あれはいじめじゃなくてじゃれあいだろう?じゃ、俺ももう行くから。机、綺麗にしておけよ」
いつもこう。いじめを何度訴えても、この風間がそれを聞き入れたことは1度もなかった。いじめは社会問題になっている。それなのに、なぜこの教師はなんの対応もしようとしないのか。澪美は不思議でならなかった。
1人、雑巾を握りしめ机を拭く。何度繰り返したか分からないこの行動は、既に澪美にとって手馴れた作業だった。