「
「セバス。あいつにも、風間にも復讐をする。あいつは絶対に私を助けてなんかくれなかった。殺す前にその理由が知りたい」
「御意」
「だからそれやめてってば」
「失礼しました。あの2人は田沼葉子の自宅に戻ったようです。何やらムードを作っていましたから、今頃は恐らく…」
「いちゃこいてるってことね。アイツらのそんなシーン見たくないけど、油断してる時がいいよね。じゃあセバス、行こうか」
澪美が声をかけると、セバスはふわりと彼女を抱き上げた。
葉子の家に着きそっと様子を伺うと、セバスが言っていた通りイチャついている2人の声が漏れ聞こえていた。
服をはだけさせ激しくキスを交わす2人。2人はまだ気がついていなかった。この部屋に、自分達以外の人間と悪魔が入ってきていることに。
「お取り込み中のところ失礼します」
「きゃぁ!!なに!?あんた…ミカエリ先生!?」
「ひ、他人の家でなにやってんだよあんた!!ていうかどうやって入ったんだよ!?」
突如聞こえた声に葉子達は慌てふためいていた。
「豚女!あんた、こいつにチクったわけ!?」
「ふざけんなよ!!つーかこれ、不法侵入だからな!わかってんのかよ!!」
「不法侵入とか、そんなのどうだっていいよ。今まで私にしてきたこと、全部あんた達に返してあげる。セバス、とりあえず2人が抵抗できなくなるまで痛めつけてくれる?」
「わかりました、澪美」
「はぁ!?何言ってんの!?ミカエリも、あんた教師じゃないの!?」
「私ですか?
そう言い放つと、そこからはただの一方的な暴力でしかなかった。
腹を蹴る。顎を殴り、脳味噌を揺らす。手を踏みつけ指を折る。椅子で足を殴りつける。力の抜けた手から爪を剥ぐ。叫び声を漏らす口にはネクタイやスカーフを詰め込み、声を押し殺す。ぐったりした所で熱湯をぶちまける。
床に這いつくばる葉子に平手を送り、澪美は襟元を掴みあげた。
「どう?私が今までされたことの半分程度だけど。まさかもう限界?」
「も…やめて…ごめん。悪かったから…もう、ゆるして…」
「よう…こ…!くそっ!お前ら、絶対許さねぇ!」
「へぇ?なんだ、恋人のわりに考え方違うんだね。どうする?田沼。助けて欲しい?」
「たすけて…!もう、やめて…」
宗二は地に体をぐったりと横たえながらも、鋭い目つきでセバスと澪美を睨みつけていた。
「その目、気に食わない。自分がやってきたことの結果でしょ?なんで私を恨むわけ?馬鹿なの?」
「ほら、田沼。ここに紐があるよね。これで沖の首括って引いたらどうなるかな?あんたも嬉しいでしょ?最後は大好きな彼女の手で死ねるんだから」
「え…?なに、いって…」
「わかんない?沖をあんたの手で殺したら、助けてやらなくもないって言ってんの。さぁ、どうする?できなきゃ2人とも死ぬだけだけど」
ドンッと葉子を突き飛ばす。突き飛ばされた先には紐が転がっていた。そしてその向こうに、未だ身動きが取れないでいる宗二がいた。葉子は音もなく涙を流しながら、虚ろな目で紐を見つめていた。ふらり、ふらりと足が前に進み出す。紐をそっと手に取り、宗二を見つめる。
「よ、葉子?お前、何考えてんだ?」
「ごめん、そうちゃん。あたしまだ生きてたい…だから、ごめんね…」
そういうなり、葉子は紐を宗二の首にかけ、ない力を振り絞り紐を絞めた。苦悶と驚きの表情を浮かべ葉子を見つめる宗二。抵抗する力も残っていなかったのか、ただ絞められるがままになっていた。
段々と顔色が赤からどす黒い色へと変化し、目は充血し、わずかに残った力で手を持ち上げ葉子の手を引っ掻いた。
その時はまもなく訪れた。カクリと首が下がり、口から泡を吹き、沖宗二は事切れた。震える手でゆっくり紐を離すと、葉子は澪美を仰ぎ見た。
「これで…助けてくれるんだよね」
「そうだね…そこまでしてくれるんなら。
…なんて、言うと思った?安心してよ、手伝ってあげるから」
いつの間にか澪美の手には、葉子宅の包丁が一丁握られていた。美しく微笑を浮かべ、葉子にそれを優しく握らせると、自身も上から手を重ね、ズブリと胸に刺しこんだ。
「ばいばい、田沼葉子。あんたが大好きな彼氏を殺したところで、私があんたを生かすわけないじゃん。ほんと、馬鹿だよね」
「ガッ…はっ…!さい…とう…!!ゆるさない…!!」
葉子は口から血を溢れさせ、ゆっくりとその体から力を失わせていった。
「澪美、これで第1の復讐は完了ですね。家の者が帰宅する前に、私達も行きましょう。さあ」
「うん…。ねえセバス、これ、私がやったって本当にバレないんだよね?」
「えぇ、絶対に。この件は心中として片付けられる筈です。明日になればわかりますよ」