少女の手のひらに降り立った悪魔   作:双葉蓮華

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5話

澪美(れみ)、行きますよ」

「セバス。あいつにも、風間にも復讐をする。あいつは絶対に私を助けてなんかくれなかった。殺す前にその理由が知りたい」

「御意」

「だからそれやめてってば」

「失礼しました。あの2人は田沼葉子の自宅に戻ったようです。何やらムードを作っていましたから、今頃は恐らく…」

「いちゃこいてるってことね。アイツらのそんなシーン見たくないけど、油断してる時がいいよね。じゃあセバス、行こうか」

 

澪美が声をかけると、セバスはふわりと彼女を抱き上げた。

葉子の家に着きそっと様子を伺うと、セバスが言っていた通りイチャついている2人の声が漏れ聞こえていた。

服をはだけさせ激しくキスを交わす2人。2人はまだ気がついていなかった。この部屋に、自分達以外の人間と悪魔が入ってきていることに。

 

「お取り込み中のところ失礼します」

「きゃぁ!!なに!?あんた…ミカエリ先生!?」

「ひ、他人の家でなにやってんだよあんた!!ていうかどうやって入ったんだよ!?」

 

突如聞こえた声に葉子達は慌てふためいていた。

 

「豚女!あんた、こいつにチクったわけ!?」

「ふざけんなよ!!つーかこれ、不法侵入だからな!わかってんのかよ!!」

「不法侵入とか、そんなのどうだっていいよ。今まで私にしてきたこと、全部あんた達に返してあげる。セバス、とりあえず2人が抵抗できなくなるまで痛めつけてくれる?」

「わかりました、澪美」

「はぁ!?何言ってんの!?ミカエリも、あんた教師じゃないの!?」

「私ですか?あくま(悪魔)異父兄(あに)ですから」

 

そう言い放つと、そこからはただの一方的な暴力でしかなかった。

腹を蹴る。顎を殴り、脳味噌を揺らす。手を踏みつけ指を折る。椅子で足を殴りつける。力の抜けた手から爪を剥ぐ。叫び声を漏らす口にはネクタイやスカーフを詰め込み、声を押し殺す。ぐったりした所で熱湯をぶちまける。

床に這いつくばる葉子に平手を送り、澪美は襟元を掴みあげた。

 

「どう?私が今までされたことの半分程度だけど。まさかもう限界?」

「も…やめて…ごめん。悪かったから…もう、ゆるして…」

「よう…こ…!くそっ!お前ら、絶対許さねぇ!」

「へぇ?なんだ、恋人のわりに考え方違うんだね。どうする?田沼。助けて欲しい?」

「たすけて…!もう、やめて…」

 

宗二は地に体をぐったりと横たえながらも、鋭い目つきでセバスと澪美を睨みつけていた。

 

「その目、気に食わない。自分がやってきたことの結果でしょ?なんで私を恨むわけ?馬鹿なの?」

「ほら、田沼。ここに紐があるよね。これで沖の首括って引いたらどうなるかな?あんたも嬉しいでしょ?最後は大好きな彼女の手で死ねるんだから」

「え…?なに、いって…」

「わかんない?沖をあんたの手で殺したら、助けてやらなくもないって言ってんの。さぁ、どうする?できなきゃ2人とも死ぬだけだけど」

 

ドンッと葉子を突き飛ばす。突き飛ばされた先には紐が転がっていた。そしてその向こうに、未だ身動きが取れないでいる宗二がいた。葉子は音もなく涙を流しながら、虚ろな目で紐を見つめていた。ふらり、ふらりと足が前に進み出す。紐をそっと手に取り、宗二を見つめる。

 

「よ、葉子?お前、何考えてんだ?」

「ごめん、そうちゃん。あたしまだ生きてたい…だから、ごめんね…」

 

そういうなり、葉子は紐を宗二の首にかけ、ない力を振り絞り紐を絞めた。苦悶と驚きの表情を浮かべ葉子を見つめる宗二。抵抗する力も残っていなかったのか、ただ絞められるがままになっていた。

段々と顔色が赤からどす黒い色へと変化し、目は充血し、わずかに残った力で手を持ち上げ葉子の手を引っ掻いた。

その時はまもなく訪れた。カクリと首が下がり、口から泡を吹き、沖宗二は事切れた。震える手でゆっくり紐を離すと、葉子は澪美を仰ぎ見た。

 

「これで…助けてくれるんだよね」

「そうだね…そこまでしてくれるんなら。

 

 

 

 

…なんて、言うと思った?安心してよ、手伝ってあげるから」

 

いつの間にか澪美の手には、葉子宅の包丁が一丁握られていた。美しく微笑を浮かべ、葉子にそれを優しく握らせると、自身も上から手を重ね、ズブリと胸に刺しこんだ。

 

「ばいばい、田沼葉子。あんたが大好きな彼氏を殺したところで、私があんたを生かすわけないじゃん。ほんと、馬鹿だよね」

「ガッ…はっ…!さい…とう…!!ゆるさない…!!」

 

葉子は口から血を溢れさせ、ゆっくりとその体から力を失わせていった。

 

「澪美、これで第1の復讐は完了ですね。家の者が帰宅する前に、私達も行きましょう。さあ」

「うん…。ねえセバス、これ、私がやったって本当にバレないんだよね?」

「えぇ、絶対に。この件は心中として片付けられる筈です。明日になればわかりますよ」

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