キラキラと太陽が輝きその光に照らされる屋上で、2人の少女が対峙していた。1人は軽く俯き、もう1人は鋭い視線で少女を真っ直ぐ見つめる。
「それで?なんの用事」
「あのねっ、私、ずっと
「は?」
勢いよく頭を下げる綾女。そんな彼女に絶対零度の冷ややかな声が投げかけられた。
「え…?」
「簡単に許してくれると思ってないけど、って?許すわけがないでしょ。私が今日ここに来たのはあんたの弁解を聞いて時間を潰すためじゃない。なんで私を裏切ったのか、それを聞くだけ」
「あ…私…あの…っ、弱味を…握られて…、それで…」
「私をいじめなきゃあんたをいじめる、とでも言われた?」
「そう!そうなの!だから逆らえなくて、私…」
「私私私、さっきから何回私って言ってんの?自己弁護ばっかりで、本気で謝る気なんてないの見え見え。弱味?ハッ、自分がいじめられるのが嫌だからっていい子ぶってただけのくせに」
バサッと音を立て、澪美の隣に降り立ったセバス。その手には数枚の写真が握られていた。
「ミ、ミカエリ先生!?どうしてここに…!」
「ありがとう、セバス」
「こちらが彼女の弱味だったようですね。なるほどなるほど…この手のやり取りは何百年も前からよくありましたよ」
「え?何言って…え?」
セバスから渡された写真。そこには、綾女がそれぞれ違う男性と腕を組み、ファッションホテルへと入っていく姿が捉えられていた。その写真を本人へと突きつける。
「弱味ってこれ?」
「ど、どうしてそれ…!!」
「へぇ?中学の制服の時もあるね。なんだ、中学から援交してたんだ。なるほどね、だから私への中傷に『援交女』ってワードがあったんだ」
「っ…!!」
「あぁ、その顔。いいね。みんなにバラされるかもって思ったら、絶望しちゃった?バレるのが嫌ならしなきゃいいのに。自業自得でしょう?」
「ちなみにこれ、古いのは田沼が持ってた写真だけど、最近のはセバスが撮ってきてくれたやつだから。あいつ死んでビクビクしてたと思ったのに、その裏では援交続けてるなんて本当に図太い神経してるね」
「最初は…遊びのつもりだったの…。ちょっとエッチなことしたら、沢山お小遣いくれるから嬉しくて。だけど、高校に入ってまずい相手ともしてたことが分かって、怖くて…、やめようとした時に、葉子さんにバレたのっ。黙ってるかわりにお金をせびられて、バラされるから逆らえなかった…!」
「知るか。あんたの事情に私を巻き込むんじゃねーよ」
ドンッと綾女を突き飛ばす。すぐ側に屋上の端が見え、彼女は慌ててその場に蹲った。
「私に許して欲しい?」
ニコリと笑ってそう問いかける澪美。笑っているはずなのに、綾女にはそれが笑顔には見えなかった。コクリ。小さく頷く。
「そっか。じゃあ、今すぐそこから飛び降りて?」
「え…?」
一瞬、何を言われたのか理解ができなかった。今、自分は何を言われたのか?信じられないような気持ちで、脳内で言葉を反復する。
「私に許して欲しかったんでしょう?どっちにしろ、生きるならこの写真ばらまくだけだし。そうしたらあんた、どうなるかな。とりあえず学校は退学になるだろうし、捕まることはなくても世間の目は冷ややかだろうね。これから一生後ろ指さされながら生きていくのは、辛いだろうねえ。まぁ、運が良ければ助かるよ」
澪美がニヤニヤとした顔で写真を弄ぶのを、ただ呆然と見ていることしかできなかった。綾女が知っていたはずの澪美は、もうそこにはいなかった。
「サイッテー…!最初から、それが目的だったの?あんたも、私からお金せびろうって?」
「話聞いてた?お金なんかいらないよ、私は。ただあんたに死んでほしいだけなんだから。その悔しそうな顔見れて、本当に嬉しいよ。飛び降りるのが怖いなら、手伝ってあげるけど?」
「ほんと、最低…。あんたのこと友達だなんて思った私が馬鹿だった!」
「お生憎様。私もとっくにそう思ってたよ」
そしてそれが、綾女の最後の言葉となった。澪美を見つめたまま屋上から飛び降り、そして、熟れすぎた果実が木から落ちて潰れるかのように、綾女の肉体は意図も簡単に潰れた。地上では何人もの悲鳴が響き渡っていた。
「行こう、セバス。時期ここにも人が来る」
「Yes, my lady.」