ハイスクールD×D え?赤龍帝は神話オタク?   作:モルト

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第三話 紅

『Boost!』

 

 音声が鳴り響くとともに左腕を何かが覆った。 

 籠手だ。

 赤を基に緑の宝玉が埋め込まれた装飾が施されていた。

 

「バカな、『神器(セイクリッド・ギア)』だと!?貴様、『神器保有者』だったのか。」

 

 へえ、こいつがあの女堕天使が言ってた『神器』ってやつか。

 なるほど。力が流れこんでくる。

 この力と夜の身体能力なら……いけるか?

 奴は今動揺している。行動を起こすなら今しかない!

 

 地面を蹴る。だけどその力は今までとは比べ物にならないほどに強い。

 男は目を見開いた。俺がここまで動けるのが予想外だったのだろうか。

 

 

「―――行くぜ、堕天使。」

 

 

 

 

 人間の場合、頭部には頭蓋があり脳が存在する。

 脳震盪とはその脳が頭蓋の内側に接触し、神経が麻痺することを指す。

 そして、それを効率よく起こす場所それは―――

 

「―!?」

 

 顎の先端だ。

 籠手が覆われた左腕で男の顎を思い切り殴り上げた。 

 己が堕天使であるという傲慢、『神器』の覚醒による動揺、様々な要因が重なり生まれた隙は堕天使に予想外の結末をもたらした。

 

「バカ……な。」

 

 ……やはり気絶までには至らないか。

 どうやら、堕天使という種族はかなり頑丈らしい。

 畜生、せめて腹の痛みがなかったらなぁ。

 

「まさか、『はぐれ』ごときに一矢報いられるとはな。だが、これで終わりだ。」

 

 あぁ。やっぱり俺は殺されるのかよ。

 

 

 

 

 

「その子に触れないで頂戴。」

 

 その声が聞こえた瞬間、俺にとどめを刺そうとしていた槍が爆ぜた。

 あの槍を、一撃で!?

 俺はとっさに声が聞こえた方向を見た。

 

 紅だ。

 籠手の赤とは別の、美しい紅の髪が俺の視界を支配した。

 コツコツと、堕天使に臆することなく歩いてきた。

 この人は、たしか…。

 

「紅い髪、グレモリー家の者がこんなところに何の用だ?」

 

 学園では知らない者は誰もいないとまで言われる存在。

 威風堂々とした佇まいは「(キング)」を仄めかすその人の名は―――

 

 

 

「リアス・グレモリーよ。ごきげんよう、墜ちた天使さん。」

 

 

 

 宣言するように名乗りを上げた。

 

 

 

「なるほど。その者はそちらの眷属か。ならば手綱はしっかり握っておくことをおすすめする。私のような者が狩ってしまうかもしれんからな。」

「御忠告痛み入るわ。ここは私の管轄なの。私の邪魔をするのなら容赦はしないわ。」

「その台詞、そのまま返そう。我が名はドーナシーク。再び見えないことを願う。」

 

 男はそう言って黒い翼をはためかせて去っていった。

 ……助かったのか?

 よ、よかった。九死に一生とはこのことか……。

 あ、安心したら意識が……。

 

 

 

「あら、気絶してしまうの。仕方ないわね。えっと、貴方の自宅は―――」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ピピピピピッ

 目覚ましの甲高い音で俺はいつものように目が覚めた。

 ……夢オチ?

 いやいや流石にそれはどうだ?

 昨夜、俺は帰り道に男の堕天使に襲われて、赤い籠手であいつを殴ってそれから……。

 

 ・

 

 ・・ 

 

 ・・・

 

 そこからの記憶がない…だと…!?

 よし、落ち着け。落ち着くんだ、兵藤一誠。もう一度最初から思い出すんだ。

 まず…。

 ・

 

 ・・

 

 ・・・

 

 服を着ていないだと!?

 マジで昨日、一体何があった!? 

 

「―――うぅん。」

 そうこうしている間に女の人の声が隣から聞こえてきた。

 もう一度言おう。

 女の人(・・・)の声だ。

 恐る恐る隣に視線を向けてみた。 

 紅だ。

 紅い長髪の女性が雪のような肌を全てさらけ出して俺の隣で寝ていた。

 ……リアス・グレモリー先輩だと!?

 なんで彼女がここに!?

 

「うーん、朝?」

 

 どうやら目を覚ましたらしい。

 

「あら、無事に目を覚ましたみたいね。傷も癒えているようでなによりだわ。」

 

 ―――ッ!?

 そうだ、思い出した。

 昨日、俺はとどめを刺されそうなところを彼女に助けてもらったんだ。

 どうやら、色々と事情を知っているようなので話を聞きたいところだが―――。

 

 

「とりあえず、服を着ろぉぉぉぉぉおおおおお!!!」

 

 

 この現状の後始末の方が先だ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 その後、俺の声を聞きつけた両親たちをなんとか宥め現在登校中だ。

 先輩の少し後ろを歩いているのだが、周囲からの視線がかなり厳しい。

「どうしてあんなやつが……。」

「リアスお姉さまがなぜあんなオタクと……。」

 などの声も聞こえてきた。なかには気絶する奴もいたが流石にそれはどうなのだろう。

 

「あとで使いを出すわ。また、放課後に会いましょう。」

 そう言って彼女は俺と別れた。

 教室に入るとクラスメイトからの視線がさらに厳しかった。

 ハッ!殺気!?

 後ろから殴りかかって来た拳を躱して俺は思いっきり腕を捻った。

 

「イタタタタッ!?ギブ!ギブだ、イッセー!」

「って松田か。それに元浜も。一体どうした?」

「どうしたじゃねえよ、イッセー!」

「昨日まで俺たちはモテない同盟だったはずだ!」

「俺たちと別れたあと一体何があった!?」

 

 何があった。か。

 正直俺も説明らしい説明を受けてないから何とも言えないんだよな。

 強いて言うならば……。

 

「今朝目が覚めたら隣に裸のグレモリー先輩が寝ていた。」

 

 もう一発殴られた。また腕を捻ったけど解せん。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 そして、放課後。

 使いを出すと言っていたが一体誰が来るんだ?

 放課後って言ってたし、学園の関係者だとは思うけど。

 

「やあ、どうも。」

 そう言って一人の男子生徒が俺に話しかけてきた。

 木場祐斗、学校一のイケメンでモテ男だ。

 同学年だが別のクラスに所属している。

 そのせいもあって、内のクラスの女子は滅多にお目にかかれないあいつに釘付けだ。

 

「グレモリー先輩の使いってお前か?」

「うん、察しがいいね。その通りだよ。」

「俺たちに接点なんてないだろ。となるとお前が話かける理由がそれ以外にあるか?」

「アハハ……。えっと、僕についてきてもらえるかな?」

「ああ、こっちも詳しく説明がほしいんでね。」

 

 イヤー!

 女子の悲鳴が聞こえてきた。

 まあ、そうなるか。学園の王子様と俺が一緒に行動してたら今朝みたいな反応になるよな。

 

 

 

 

「そ、そんな木場君と兵藤が一緒に歩くなんて!」

「汚れてしまうわ、木場君!」

「木場君×兵藤なんてわたしは絶対に許さない!」

「いいえ、もしかしたら兵藤×木場君かもしれないわ!」

 

 ・

 

 ・・

 

 ・・・

 

「……なあ木場、俺帰っても良いか?」

「……ごめん、少しだけ我慢してくれると助かるかな。」

 

 

 

 

「ここに部長が居るんだ。」

 そう言われて俺が連れてこられたのは旧校舎だった。

 へえ、グレモリー先輩って部活に所属していたのか。

 まあ、表立って話題にすれば下心もった奴らが同じ部活に所属しようとするから無理もないか。

 しばらく歩くとプレートが掛けられた教室にたどり着いた。

『オカルト研究部』

 プレートにはそう記されている。

「ほう、オカルト研究部か。俺は主に神話、伝説が専門だけどオカルトか……。面白そうな話が聞けそうだな。」

「これにそんなに食いつく人は初めて見たよ……。部長、連れてきました。」

 木場は扉の前から確認を取った。

「ええ、入って頂戴。」

 どうやら許可を得たらしい。俺は木場に連れられて教室の中に入る。

 目に入ったのは至るところに書き込まれた文字や床に書かれた大きな魔法陣だ。

 あとはソファーとデスクがいくつかあるのが見える。

 あたりを見回していると、小柄な女の子が見えた。

 

 塔城子猫、一年の有名人。一見小学生にしか見えないその容姿は一部の男子や女子に人気なマスコット的な存在だ。

 黙々と羊羹を食べている。甘いものが好きなのだろうか?

「こちら、兵藤一誠君。」

「あ、こんにちわ。」

 こっちが頭をさげると向こうこペコリと下げてまた羊羹を黙々と食べ始めた。

 余程好きなのだろうか?今度何か持ってこようかな。

  

 シャー

 

 ふとそんな水の音が聞こえてきた。

 ……水の音?

 音のした方向を向くと室内にはシャワーカーテンがあり、カーテンには影が映っている。

 

 ・

 

 ・・

 

 ・・・

 

「木場、頼むからその手を放してくれ。」

「ごめん、もう少しで終わるからそのドアノブにかけた手を放してもらえるかな!?」

 いや、許可をもらって入ったら女性がシャワーを浴びていたのだから普通退室するだろ!?

 と、そうこうしている間に水の音が止まり、カーテンが開いた。

「ごめんなさい。昨夜、イッセーの家にお泊りしてシャワーを浴びていなかったから今汗を流していたの。」

 そう言って制服に身を包んだグレモリー先輩が出てきた。

 ……なぜオカルト研究部にシャワーがあるのだろうか?

 そんな俺の疑問はよそにグレモリー先輩の後方にいた女性に視線が移った。

 

「あらあら。はじめまして、姫島朱乃と申します。どうぞ、以後お見知りおきを。」

 姫島朱乃先輩、黒髪のポニーテールを下げたニコニコしている三年生。グレモリー先輩と合わせて『二大お姉さま』と呼ばれており、男女ともにあこがれの的だ。

「兵藤一誠です。こちらこそはじめまして。」

 俺があいさつを返すとグレモリー先輩は「うん」と確認した。

 

 

 

「これ全員揃ったわね。兵藤一誠君。いえ、イッセー。」

「はい?」

 

 

 

 そう、これが、

 

 

 

「私たち、オカルト研究部はあなたを歓迎するわ。」

「は、はあ。」

 

 

 

 俺にとっての神話(憧れ)との、

 

 

 

「悪魔としてね。」

 

 

 

 対面の瞬間だった。

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