もし織斑マドカがリキッド・スネークみたいな奴だったら   作:ナスの森

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開戦

『君よ 飛び立つのか 我らを憎む世界へと

    待ち受けるのは ただ過酷な明日 逆巻く風のみだとしても』

――――「CRISIS CORE FINAL FANTASY Ⅶ」より、ジェネシス・ラプソードス

 

 

     ◇

 

 

 成功試作体第一号である自分と、第二号である一夏があの施設から脱走したにも関わらず、何故『大人達』が追ってこないのか、疑問に思わない訳ではなかった。しばらく警戒もしたし、四六時中一夏を手元から離さない事も心掛けた。

 態と隙を見せて誘い出そうともしたが、彼らの影は見えなかった。

 そこで、私は安心してしまったんだ。

 彼らはもう自分達を見つけられない、もしくは見つけようとしない。私達の事を諦めてくれたのだと、そう思っていた。

 だが、そもそもその前提が間違いだった。

 

――――そもそも、あいつらにそんな必要なんてなかったんだ。

 

 考えても見ろ。

 私は第一回モンド・グロッソ大会で優勝し、ブリュンヒルデの称号を勝ち得た。そして一夏はその究極の遺伝子を、人類を、より長く繁栄させるために生まれた個体。その種を、あろうことか私が態々外に連れ出したのだ。

 『大人達』の目論見はとうに達成されているじゃないか。

 

 だが、そこまで考え至っても、私はまだ、能天気な奴だったのだと、思い知らされた。

 

「この顔に覚えはないか、姉さん」

 

 小さい頃の私と、同じ顔。

 一目で分かってしまった。

 目の前の、一夏をこの島に攫ったであろう少女の正体、全てわかってしまった。

 何故、一夏をここに攫い、私をおびき寄せるような真似をしたのかも、全て。

 

 それでも、信じられなかった。

 いや、信じたくなかっただけだ。私は、あの『大人達』から逃げていたのではなく、己の犯した業から逃げ続けて来ただけだったのだと、一夏を守る事を理由にそこからずっと逃避してきたという事実を認めたくはなかった。

 

「お、お前、は……」

 

 何で、どうして思い至らなかった?

 『大人達』が私達を追ってこなかったのは、目論見が達成されるだけでなく、そもそもまだ『代わり』がいたからだという事実に。

 

「分からないだろうな、逃げ出したあんたには。自分だけ好きな夢を見て、本来背負う筈だった未来を私に押し付けたあんたには! この顔を見ろ! 私はお前だ! 劣っていると知りながらお前に運命を押し付けられた……搾りカスだ」

「何故一夏を攫った!?」

「何故だと? 『大人達』が、お前達姉弟に追手を差し向けなかったのが答えだよ、姉さん」

 

 私が常々思っていた疑問を、そのまま答えにして目の前の少女は返してきた。

 

「何故……そうだとして何故一夏を攫った! 私に復讐したいのなら、私にだけ挑みに来ればいいだろう!? 自分が何をしたか分かっているのか!? このままでは死ぬぞ!」

「どう死のうが私の自由だ。そう……私は自由だ」

 

 自由――――そう噛みしめる少女の言葉の重みを、私は実感していた。いや、目の前の『いもうと』はそれ以上の実感を噛みしめているに違いない。

 私もそうだった。自由を手に入れたかった。『大人達』が生み出した第二成功例である一夏を見た瞬間、自由になってこの弟と一緒に普通に暮らす事を夢見た。

 

 そうだ、私が今までその自由を謳歌する事ができたのは、この少女のおかげだ。私がこの少女を生贄にし続けてきた事で、私達姉弟は自由を手にする事ができていたのだ。

 ……私がブリュンヒルデとして有名になった後、『大人達』が追ってこなかったのも、全てはこの少女のおかげだったのだ。

 

 私は、この『いもうと』に対して、許されない事をした。

 

「このままでは世界を敵に回すぞ!?」

 

 でも、だからこそ私は叫んだ。

 ここにいるという事は、この妹もまた自分と同じように抜け出した『自由』を手にしたという事だ。

 それならば、まだ間に合う。

 幸い、あの会場で死人はまだ一人として出ていない。

 こんな形とは、せっかく、せっかく出会えたんだ! 今まで一夏に向けていた、姉としてすべき事を、この子にもしてやろうと、そう思った。

 だが、妹はそんな私の手を振り払うかのように言い返した。

 

「いけないか!? 世界を敵に回して!? 一度『白騎士』として世界を敵に回し、勝利したアンタがそれを言うのか!?」

「あの時と今では違う! 巡洋艦やミサイルなんかじゃない、ISの発祥した世界を敵に回すんだぞ!?」

 

 『白騎士事件』――――ソレを言われた途端、私の心臓がドクンと跳ね上がった。

 そうだ、私も一度世界を敵に回した。そして勝利した。だが、それは決して友人の凶行を止めんとする善意から行ったものではない。

 私は私の生かす場を作りたくて、それで友人の口車に乗って、あの茶番劇を演じた。

 

 そうだ、所詮は友人のバックアップがあってこその戦いだった。

 だが、この少女が行おうとしている事は違う!

 ISの技術が浸透し、発達した世界を敵に回すのだ。

 巡洋艦や空母、ミサイルなんて目じゃない。このままでは軍のIS乗りは愚か、モンド・グロッソ会場を襲撃された事に怒った戦乙女(ヴァルキリー)たちをも敵に回す事になる。

 私のように遺伝子の力を借りて振るう力ではなく、紛れもない己自身の力でその座を勝ち取って来た戦乙女たちもが、敵に回るのだ。

 

「ならここで世界に勝利すれば、私はあんたを超えられる。そう言いたいんだな姉さん!?」

「違う! 私はお前に――――!!」

 

 その先を言おうとして、私の言葉はそこで止まってしまった。

 

(今更、私は何を虫のいい事を言おうとしている……?)

 

 姉として、君が生きている事が嬉しかった? 違う! 私はそもそも存在すら知らなかったじゃないか! 

 知りもしないで、私は自分が背負う筈だった運命と未来をこの子に押し付けた!

 そんな私が今更この子にどんな言葉をかけろと?

 

「これ以上姉さんの好きにはさせない。私は呪われた運命を打ち破る!」

 

 最早、私達がお互いに話し合える事はないと言わんばかりに、『いもうと』は憎悪の目を私に向けて来る。

 その憎悪の原因を私は容易に想像できた。

 私が『大人達』から受けた仕打ちすら生ぬるい、姉である私と比べられ続け、更にその上での仕打ちを強いられたのだ。

 

 ……私は、ソレを知らず、この少女を生贄にして手に入れた幸せを謳歌してきたんだ。

 

 それでも、その断罪を受け入れようとは思わない。

 

(すまない……すまない、私は、死ねないんだ、お前に断罪されようとは思わない……)

 

 自分だけが断罪されるのであればそれでいい。

 だが、この妹は自分が幸せの象徴である弟すらも巻き込んだ。私がこの少女を生贄にした咎を、あろうことか弟にも背負わせる羽目になった。

 

 勿論、根本的に原因は彼女ではなく、自分。

 

 それでも――――

 

「そのために、まず貴様を殺す!!」

 

 私は、今ここでお前に断罪される訳には行かない!

 お前にその権利があろうと、私は――――

 

 

     ◇

 

 

 開戦のゴングを鳴らしたのは、暮桜の雪片による一撃でもなく、巨人の攻撃によるものでもなく、二機を襲う爆撃投下による花火だった。

 

「ッ!」

 

 驚いた顔でハイパーセンサーで上を確認する千冬。

 アメリカの非正規特殊部隊、『名も無き部隊(アンネームド)』の戦闘機による爆撃が、二機に向かって襲い掛かって来たのだ。

 その爆撃は二機の間を分割し、勃発すると思われた姉妹喧嘩はしばらくお預けという形になった。

 

『ク、ハハハハハハッ!』

 

 マドカは歓喜の笑い声を上げる。

 姉妹喧嘩に横槍を指された事による怒りではなく、場の混乱がもたらすであろう戦場の混沌に歓喜した。

 そうだ、織斑千冬だけじゃない。大人達だけじゃない。

 この世界が、敵になっているのだ!

 

――――そうだ、この時を待っていた!

 

(世界を敵に回す気かと聞いたな姉さん。そうだ、私はかつてのあんたのように世界を敵に回す。昔とは違う、ISの発達した世界に勝利する事で、私はあんたを否定し、あんたを超える!!)

 

 かつて世界を敵に回し勝利した姉が変えた世界に、今度は自分が勝利する事で、姉から奪われた全てを取り返して見せる。そして自分達兄弟の誰しもが受け入れら、必要とされ、生の充足を得られる混沌の世界を築くのだと、そう意気込むマドカ。

 

 気付け一杯と言わんばかりに、マドカは試作型エクスカリバーの頭部バイザー下に収束させたエネルギーから拡散レーザーを撃ち出し、爆撃してきた戦闘機群を撃ち落とした。

 

――――その世界に、自分の遺伝子に込められた運命から逃げ出した貴様ら姉弟は不要なんだよ!!

 

 その呪詛を剣先に込めながら、マドカは試作型エクスカリバーの長大な剣を暮桜に向かって振り下ろした。

 デカイと言って侮るなかれ、姿勢を下げ、居合のような構えから繰り出された連撃はまさしく達人のソレ。

 反撃の隙さえも与えないソレを、しかし千冬は確実に雪片で受け流していた。本来ならば刀身同士が触れただけで対象に甚大なる衝撃を与える程の一撃を、千冬は苦も無く全て受け流していた。

 ……その表情は、別の意味で苦渋に満ちていたが。

 

 剣戟では埒が明かないと思ったのか、先に刃を引いたのはマドカの方だった。

 巨人の左足を前に一歩を踏み出した姿勢で、剣を持った右腕を背後に置いてハイパーセンサーからも見えにくくするのと同時、突き出した左手の掌から熱線を発射する。

 ……刃を引いたからと言って、攻撃の手を緩めた訳ではなかった。

 強力な威力を持つ熱線を連射し、しかもその狙いの正確さから後退を余儀なくされる千冬。

 

 それだけではない、熱線の連撃に晒される千冬の頭上から、更に先ほど切り結んだ筈の巨大剣の刃先が、千冬を暮桜ごと突き刺さんとギロチンのように降って来た。

 

「ッ!」

 

 焦る事無く、千冬はハイパーセンサーでその剣を観察する。

 そして驚いた。剣が独りでに自立して襲ったのではなく、あの巨人が自分に見えないように隠した右腕が独立稼働し、それが剣を持って襲い掛かって来たのだ。

 

 熱線と、頭上からの剣の突き、それだけではなく、巨人のバイザー下からの拡散レーザーさえもが千冬に襲い掛かる。

 それだけではない、熱線と拡散レーザーは途中でマドカの意のままに弾道を変え、避け切った後もしつこく千冬に追従し、その間にも新たな拡散レーザーや熱線が放たれる。

 驚いたことに、マドカが意のままに操るであろうそれらの弾丸一つ一つは、数が増えてもその動きが雑になる事はない。

 むしろマドカがそれらに徐々に順応してきたのか、その正確さはむしろ増しつつあった。

 

――――これ程で、まだ扱い切れていなかったというのか!?

 

 己の妹たるその少女の底の知れなさに、千冬は舌を巻いた。

 機体の性能だけではない。そこには戦士としての闘気の凄みが感じ取れる。

 実戦による殺し合いを経験していない戦乙女たちとは違う、この妹は本気で世界を敵に回すだけの力と、その覚悟と技量が備わっているのだ。

 

 あの少女は、自分自身を指して搾りカスと称したが、全然そんな事はないのではないかと思う。むしろ、逃げ出した自分よりも、あの妹の方が余程“優性”なのではないかと、そう思わずにはいられなかった。

 

 もはや捌ききれず、一度のレーザーや熱線が一気に、同時に襲い掛かってくるその微妙なタイミングを見図り、千冬はついに単一仕様能力を発動した。

 

 零落白夜――――エネルギー無効化攻撃。

 それはISのシールドエネルギーはおろか、敵のエネルギー兵器の類すら無効化できる代物。それと引き換え自分のシールドエネルギーも消費してしまうという諸刃の剣であるが、千冬がこれまでモンド・グロッソの数々の戦乙女たちを打ち破り、決勝に来れたのもこの能力によるものが大きい。

 だが、その燃費の悪さ故、千冬がそれを発動するのは決まって、()()()()()()I()S()()()()()()()()()()()()

 いまこのISの歴史上初めて、ここで初代ブリュンヒルデは零落白夜を、相手を倒す為ではなく相手の攻撃を打ち消すためにだけに使用した。

 

 刀身に零落白夜を放ちながらスラスターを吹かし、弾幕群から抜け出す千冬。後少しでもタイミングを逃していれば、チャンスは一生来なかっただろう。

 そんな九死に一生を得たであろう状態でも、千冬の息に乱れはなかった。

 

『さすがは姉さんだ! さすがは私のオリジナル! プロジェクト・モザイカ試作成功体第一号! だが、それも今日までだ!!』

 

 憎悪と崇拝の入り混じった嘲笑が響き渡る。

 遠回しに、お前という遺伝子の創造のために何人の兄弟が犠牲になってきたかという厭味だった。

 

「ッ、ああそうだ……私はッ……私達はそうやって、生み出された……」

 

 その意味を理解していた千冬は、苦渋の表情を浮かべる。

 一夏も自分もあの破壊神を駆る妹も、作られた怪物(ビースト)

 今まで弟の一夏と共に普通の幸せを享受する事でそこから逃避していたが、再び直面する日がやってきた。

 いや、逃避し続けてきたからこその報いが、今日この日だったのだ。

 

「それでもッ、一夏を見て、生まれる瞬間を見て、普通の幸せを享受できると思ったッ……」

『私を生贄にして、か?』

「そうだ……知らずの内に、お前を利用し、生贄にした。許される事じゃないッ……」

『生憎、私はお前に許しを請われたくてここにお前を誘ったんじゃない! お前は既に、私が憎む大人達の一人、だ』

「ッ……」

 

 言い返す事のできない千冬。

 この力を、遺伝子を、自分が生かされる場がある世界へと作り変える為に、世の風潮すらも覆して自分勝手に振るった。目の前の少女と同じく、周囲の大人達を信用していなかった自分は、それが弟を守る一番の手段なのだと思い込んでいた。

 『大人達』から与えられた呪いを、目の前の少女に押し付け、『大人達』から与えられた力のみを都合よく使った、ただの子供だった。

 そんな自分もいつの間にか大人になっていた。いつの間にか、周囲からそう見なされるようになっていた。

 いつの間にか、自分が目の前の少女と同じように忌み嫌っていた筈の、無責任な大人達に仲間入りしていたのだ。

 

『あんたがどれだけ私に詫びようが、貴様という存在がある限り、私は一生影のままだ。故に、貴様を葬る! 私にそうさせた貴様と、私にそう言い聞かせ続けてきた『大人達』を殺す事で、私はその全てを取り返して見せる』

「それは、ただの思い過ごしだ。現にお前は、お前という一人の人間としてここに立っている」

『ハッ、そう言って貴様はまた逃げ続ける! 貴様はいい! 奴等から与えられた呪いを私に押し付け、与えられた力だけを都合よく振り回した! 私が影であり続けたからこそ、貴様はそうやって言い逃れ続ける!』

「……」

『だが、お前達も決してこの運命から逃れはしない! 貴様がこの戦いに勝てば、今度は影になるは私ではなく、貴様の弟だ! この意味が分かるか!?』

「ッ!!?」

 

 ハっと、千冬は目を見開いた。

 自分がこの戦いに勝ち、目の前の少女を葬っても、また別の影が自分の生贄になるだけ。今度は、一夏がソレになる番だとでも言いたいのか!?

 

『これも貴様には分かるまい! 一生『光』であり続けられる貴様には、その光と比べ続けられる『影』の気持ちなどな!』

 

 間違いなく、自分が消えれば今度は影になるのは自分達のもう一人の兄弟たる織斑一夏であると、マドカは確信して言った。

 それは、この女尊男卑の世界では、そんな世界最強の姉と比べ続けられる弟という認識が完成すれば、間違いなく織斑一夏は『第二のマドカ』になる。

 

「だが……それでもッ」

『分かったろう! 貴様は誰も守れやしない! 自分の身さえな!

 ――――死ね!』

 

 動揺した千冬の隙をつき、巨人の剣を振り下ろすマドカ。

 相手の動揺を誘い、その隙を狙うのは戦場では常道。

 

 あまりのショックに立ち直れない千冬に、その凶刃が振り下ろされようとした、その直前だった。

 千冬を暮桜ごと両断する筈だった巨人の剣は見事に空振り、地面に巨大な切り傷を残して終わった。

 

「ハハハ、初代ブリュンヒルデが随分と情けない姿じゃないカ」

「お前は……」

 

 千冬の窮地を救ったのは、決勝で彼女と戦う筈であったイタリア代表の戦乙女(ヴァルキリー)にして、イタリアの第一世代IS『テンペスタ』の操縦者であった。

 

「アリーシャ……アリーシャ・ジョセスターフか!?」

「見ていられないネ。今のアンタの焦りは、王者らしからぬ滑稽ダ」

 

『邪魔だ! 戦乙女(ヴァルキリー)!』

 

 横槍に怒ったマドカが、試作型エクスカリバーの頭部バイザー下から拡散レーザーをアリーシャと千冬に向けて乱射する。

 それを華麗に避けるアリーシャであったが、偏光制御射撃による曲がる弾道が二人を逃がしはしない。

 担いだ千冬を投げ飛ばしつつ、避けるアリーシャであるが、さすがに千冬のようには行かないのか、装甲に所々拡散レーザーのホーミング弾が掠っていく。

 

「ッ、悪いがブリュンヒルデ! ここは私と一緒に一時撤退させてもらうヨ!」

「アリーシャ……だがッ……」

()()()()()()()()()()()、あれを倒すべきなのはあんたダ。だが……今のアンタじゃアイツとは戦えないネ」

「それは……」

 

 白々しく話しを聞いていなかったと言い張るアリーシャに呆れる暇もなく、千冬は言い淀んだ。

 そうだ、この戦いの根本は千冬が招いた事。自分達を作った『大人達』に対する後始末も付けず、呪いをあの少女に押し付け、貰った遺伝子の力だけを都合よく振るい、今まで己の遺伝子と向き合ってこなかった千冬こそが、根本の原因だった。

 無論、更にその根本をさかのぼればそんな呪われた彼らを造った『大人達』こそが諸悪の根源だが、少なくとも今この場にいる根本の原因は千冬なのだ。

 

『逃がすかっ!』

 

 共に愛機にスラスターを吹かして逃げようとする二人に向け、マドカは両腕(アーム・ビット)を切り離し、オールレンジ攻撃で二人を狙い撃つ。

 ビットの数そのものは二つと少ないが、そこから放たれる熱線の威力と、曲がる弾道。

 

 それらを避ける事は困難だったが、思わぬ助け船が二人を助けた。

 いや、正確には違った。

 

「ちっ、お構いなしカ!」

 

 曲がる熱線ビームの数々を避けるアリーシャを更に襲ったのは、到着したイギリス空軍による攻撃だった。

 当たり前だ。これはモンド・グロッソの会場を滅茶苦茶にした巨悪を一丸になって滅ぼす戦いにあらず、各国が互いの暗部を隠蔽しあう戦いなのだ。

 隠蔽に懸かる国は大国アメリカと、イギリスとドイツ。

 前者のような思想を持って軍を派遣してくるのはそれ以外の国。

 三つ巴や四つ巴では済まさない。

 

 だが、アリーシャにダメージを与えたその攻撃は、マドカのビット攻撃すらも妨害し、マドカは一度切り離した両腕(アーム・ビット)を戻さざるを得なかった。

 仕留めきれなかった悔しさを噛みしめながらも、マドカはコックピットの中でニヤリと笑った。

 

 ようやく到着した各国の空軍がISも交えて自分に攻撃をしかけてくる。

 いや、中には巨人の存在を露呈するのを恐れた米軍やイギリス軍が他国軍を攻撃している光景もハイパーセンサーを通じてちらほら確認できる。

 

『いいだろう、一時休戦だ姉さん。どちらがより獲物を屠れるか勝負と行こうじゃないか……!』

 

 そこには、姉と別の形で張り合えるという、妹としての確かな喜びがあるのをマドカ自身が気付く筈もなく、マドカはただ、世界が自分の思うように傾いている事に歓喜を抱いた。

 島に次々とガスマスクをした多国の歩兵が乗り込んでくるのが確認できる。

 敵は自分だけにあらず、そんな暗部の漏洩を防がんと攻撃してくるイギリス軍とアメリカ軍。

 

 ならば、いよいよあいつ等の出番ではないか。

 

『お前達! 出番だ、出てこい!』

 

 島中の少年兵たちに指示する共に、その響き渡る銃撃は一掃激しくなる。

 

『さあ、大人達を殺せ! 全部殺せ! 奴等の全てを奪い取って、私達の自由を奴等から取り返せ! 私達の『天国の外(アウター・ヘブン)』のために!!』

 

『オオオオォォーッ!!』

 

 マドカの声に指揮を上げた少年兵たちが、遺伝子強化体たちが、一斉に武器を手に取り、ある者は装甲車に乗り込み、ある者はISに乗り込み、ある者は木陰に潜んで奇襲の機会を伺う。

 地上戦は白熱する!

 

 ならば此方()も盛り上げねば!

 

『ハ、アハハハハハハハッ!!』

 

 空中の戦闘機部隊やIS部隊を次々と撃墜させながら、マドカはただただ玩具の手に入れた子供のように燥ぎ、己の憎悪を糧とし試作型エクスカリバーから齎される力に溺れていた。

 

――――さあ、戦いは始まったばかりだ姉さん! 敵は私だけじゃない! この世界が私達の敵だ! ここが私達兄弟の本来の居場所だ! どちらが生き残るか、勝負と行こう!

 

 この戦いに、勝者はきっといない。

 それでも、最後に生き残った者が勝ちだと、マドカはそう信じてその剣を振るい続けた。

 




マドカ:自分の遺伝子に拘りすぎてる。
千冬:原作でもそうだけど、一夏やマドカ、ラウラといった自分の遺伝子関係と向き合わなさすぎる。

うーむ、この両極端な姉妹よ。

どんな展開をお望み?

  • マドカの身体のまま復讐完遂
  • フォックス・・・・・・ダァイ
  • からの他人の身体を乗っ取って復活
  • クロエと百合百合
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