光る星に口付けを。   作:夜月 黒隴

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第十四話-「この丘の上で。」

タッタッタッタッ。

夜を駆ける二人の内一人は、焦るように小走りで先を走る。一方手を引かれる彼は、先走る彼女の後を着いて行き、これから何をするのかすら想像つかない状況にあった。夜中の街灯は所々消えており、また、チカチカと点灯するのも存在する。そんなものには目もくれず、彼女は前を見つめ、急いで山の方角へと二人で足を運んでいたのであった。

 

「おい、どこへ行くんだ。」

 

彼女は少し息を切らしながら走っている。それを気にかけた彼はその質問を無へと返した。

 

 

 

▪️

 

 

 

どれほど時が経っただろうか。実はそれほど経っておらず、ほんの数分走っただけかもしれない。しかし、二人にとってその数分というのは長く、長く感じた。山の(ふもと)へ足を運んだ二人は息を整え、彼は彼女に問う、「山まで来て何をするってんだ。」と。彼女はふーっ、と息をつくとくるっと振り返り、長い髪を揺らしながらこう言った。

 

「この丘の上で、星を観るの。」

 

この言葉の意味は、真相など隠されておらずそのままだった。

丘と言うより山ではあるが、それの上に登り星々を眺める。それのためだけに二人は走ってきたのであった。時刻は21時16分。限りのある時間をそれのために使うと思うと、彼は少しがっかりしていた。

 

「そんなもののためだけに、俺をここに連れてきたのか?」

 

彼女は首をゆっくりと縦に振る。ニコッとしながら青い瞳で見つめ、反応を伺っている。期待に満ち溢れたその瞳は星の光の反射で、キラキラと輝いていた。そんな彼女の期待は次の瞬間に崩れ落ちることとなる。

 

 

 

▪️

 

 

 

山の草木を切り分け、徐々に上へと進んでいく。彼女を待ち受けている頂上には少し、見渡しの良い野原が拡がっているのだ。それを彼女は知っていた。だから、誘った。しかし今、ここに居るのは彼女一人のみ。理由を聞くまでもなく、泣きじゃくりそうになりながらも奥へ奥へと進んでいく。遠くに空の暗い光が見え、(ようや)くかと思い、さらに早く足を進める。灯がひとつも無い山の木々に、星の光が差し込みちらほらと足元が照らされる。そして、その木々を抜けた先には。

 

満点の星空が一人の少女の瞳に、映し出された。

 

彼女はその光景を見た瞬間、立ち止まってしまった。この光景を彼に見せたかった。その想いが悔やみ、気がつけば彼女の瞳は少し潤んでいた。

 

 

 

▪️

 

 

 

「この丘の上で。」

 

その言葉は今でも頭の中に過ぎる。あの時、一緒に行けばよかったと思いつつも、彼は彼女と別れた後にゆっくりと歩く。行こうと思えば行けるのだが、彼は行こうとしなかった。その考えは、結論から先に公開するとするのならば、良くはなかったのである。だがしかし、その時の彼は気づくことは無く、気づくことさえ許されることは無かった。

そんな彼に対して、空は答えた。曇りがかった空から、ほんの少し見える小さな灯。それを見た彼は気がつけば後ろを向き、元いた位置へと向かって歩み、そして走り出した。

山の麓へ向かい、先程いた位置より奥に走っていく彼。彼女が先程まで通っていた道を後追いし、明らかに人が通ったという痕跡が残っている道を走っていく。木々を分けた跡があちらこちらに見え、靴の足跡も残っている。この時間帯に来る人といえばもう、彼女一人しかいないと確信している彼は、切り傷など気にせず無我夢中で目の前の目標地点まで走っていた。

 

 

 

▪️

 

 

 

開けた空間に広がる光景は、彼の目を圧倒させた。ただ、それより彼女の事が心配になってしまっていた。辺りを見渡し、銀色のあみあみに結んだ髪の毛を持つ女の子を見つけ、少し急いで駆け寄る。サッサっと草むらを駆ける音を聞いた彼女は少しピクっと動くが、何事も無かったかのようにそのまま三角座りを続け、星をじいっと見つめている。2~3メートル離れた場所に立った彼は、彼女に対し後ろから呟く。

 

「さっきはすまなかった。」

 

「…。」

 

なんの返信も来ない。あたりは静寂に包まれており、そこにはただただ星々が白く輝いている様に見える光景が、目の前に広がっているだけだった。

数分経ったように思わせた。すると、彼女はすっと立ち上がり後ろを向き、二人は顔を合わせた。その時の彼女の目は先程と打って変わって、少し深い青に染まりつつあった。

 

「遅い。遅刻だよ。」

 

「お前が早すぎただけだ。」

 

紲星あかりはニコッと微笑んで、その暗くなりつつある瞳の色をかっと変えて、明るい、いつもの青い色にハイライトが差し込んだ。彼女はすすっと彼の横へ行き、そこにポンっと座り、星空を見上げた。彼女が自分の隣の席をぽんぽんと叩くので、彼は成すままに座り、二人で肩を揃えて宇宙に輝く星達を数分見つめていた。その想い出は、今後二人の間で語り継がれるものとなるのである。




\(*ˊᗜˋ*)/♡
ええやん
展開早いですけどね…
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