光る星に口付けを。   作:夜月 黒隴

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がんばります…


第十六話-落ちる夕日ともうひとつ。

紲星あかりは後悔していない。

まだ、まだ付き合ってすらいない人物に対して、一緒に居たい等と言ったことを。

彼女は後悔なんてしていない。すると分かっているものを、する必要は無いのだから。

 

 

 

 

 

 

無言の時間がただ続く。足音と袋のガサッと言う音のみが響き渡る、いつもの通り道。普段のルートからは外れ、近くの公園へと足を運んだ。公園内には子供はおらず、少し運動をしている年配の方が1人居た。ぱっと見た感じ男性だろうか、歳をとっているのにも関わらず元気な人だ、等と糸口霧夜は心の中で思っていたが紲星あかりはそんな状況では無かった。自分があんなことを言ってしまったが為に糸口霧夜は今、此処に居る。彼の時間を使ってしまうのも申し訳なく思い、どう別れを告げようか頭を必死に張り巡らせていた。しかし、そんな考えも虚しく、思考することを辞めることとなる。

 

「…。」

 

糸口霧夜は無言でブランコへと向かう。久しぶりに公園に来たのか懐かしく思っている様子であり、荷物を持ったままブランコに腰を掛ける。紲星あかりは気づいた。瞳の先には紲星あかりが映っている事に。紲星あかりは少し頭を悩ませながらも、糸口霧夜とは別のブランコにへと座る。

烏のカァー、カァーという鳴き声が、無言を切り裂く。だがしかし、それは人間界には関係の無いことであり、あくまで動物内での亀裂となっている。彼らはただひたすら無言でこの時間を過ごし、あっという間に今のものは過去のものへと変わっていった。

 

 

 

 

 

 

「霧夜君。」

 

「…ん?」

 

「…ごめんね、何の用だってないのに。」

 

「いいさ、別に。」

 

紲星あかりは謝りつつも、心の中で罪悪感を渋々感じていた。表面は明るく元気に振る舞う姿を拝見できるが、内面は暗く、明るく見せようとしているただのマネキン同様の性格なのである。頑張り屋な彼女にとって、自分の内面を他人に晒すなどといった行為はしない。それは、今隣にいる人に見せることもない。結末から言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だが、今はただ、この時間を永遠と過ごしていた。過ごしたかった…といった方が正しいのかもしれない。

 

「霧夜君はさ、私と居て…楽しい?」

 

「急に何を。」

 

「ほら、私って、凄く絡みに行くじゃない?」

 

「あぁ。」

 

そう呟くと、楽しいのかもしれない。と言い、紲星あかりとは反対の方向に目線を向けた。これが、照れ隠しなのか何なのかは紲星あかりなのかは分からない。糸口霧夜にしか分からない。

少し時間が経った。紲星あかりが立ち上がり、「もう帰ろっか。」と言う。糸口霧夜は無言で立ち上がり、2人で公園内を出た。紲星あかりも心を切りかえたのか、会話を無理やりにでも弾まし彼を暇させない様にしていた。先程とは打って変わって、袋のガサつき音のみではなくなった為、糸口霧夜も会話をする。普段通りの2人に戻ったのか、紲星あかりも罪悪感というものは薄々消えていった。

いつもの十字路に着くと、すぐに別れた。もう時刻は5時半前になる。長時間公園内で過ごしてしまった為、互いに早歩きで家へと向かう。

 

 

 

 

 

 

" 自分の気持ちに正直になれない。"

 

 

 

そんな自分がイヤだった。

分かっている。分かっているのだ。

もう、自分に嘘なんて付かなくていい。

だって、嘘なんて付けてないのだから。

あの時、一緒に居たいと言ったのも、それのせい。

自分の心には素直になろうよ、私。

 

 

 

紲星あかりは足を止めた。

悩み、悩みめぐらせ、やっとの思いで言えた言葉。

それを言って得たメリットは少なかった。もう一度、もう一度リベンジをすると、今ここで彼女は心に誓う。そう決意した彼女は前を向き歩くことにした。立ち止まったって良い、少しずつでいい、一歩ずつでいいから、(霧夜君)に近づけたら、それでいい。彼女はそれを目標に掲げ明日を頑張ろう、そう思う事にした。

紲星あかりは家に着いた。彼が今どうなのかは分からない。今、彼のことを考えるのはナンセンスである。早めに夕食を取り、今日は少し長めのバスタイムにしよう、と玄関の外で鍵を開けながらそう思っていた。

 

「ただいま。」

 

誰も居ない家に響く、1人の少女の声。廊下の灯をつけスタスタと歩いていく。自室に入り荷物を置くと、下着一枚になりハンガーに掛ける。家着に着替えてリビングに向かいテレビを付けニュースを確認。椅子に座りながらぼんやりとしていると時間はあっという間に過ぎ去る。今日はただでさえ時間を食ったのだ、ぼーっとしている時間なんて彼女には無い。夕飯の支度を開始し、腕をかけて料理を開始した。

 

「ご馳走様でした。」

 

自作料理にご馳走様、と言い水につけ洗面所へと足を運ぶ。お風呂の掃除を軽くしてお風呂を貯め始める。その間に明日の学校への準備をしようと考え、自室へ戻る。

 

「ブーッ。ブーッ。」

 

携帯が振動している。この振動は大体電話がかかってきた時にしかならないはずなのだが、紲星あかりはもしかして、と考えた。そして電話に出た紲星あかりは、もしもし、と喜んで返信を待機する。

 

「もしもし。」

 

相手は糸口霧夜。先程まで隣に居た人物であり、先程別れた人物だ。

 

「何か忘れ物でもしたの?」

 

「いや…。」

 

糸口霧夜は口を詰まらせる。まるで、()()()()()。紲星あかりは疑問を浮かべていると、糸口霧夜の方から先手を打つ。

 

「お前みたいに、何も用は無い。ただ、電話をかけただけだ。」

 

「何それ、私の真似?」

 

電話越しであったが、糸口霧夜が笑っているのが目に見える。だって、紲星あかりも笑っているのだから。そのまま少し話し数分の時が経っただろうか。お風呂が貯まった時のサインとなる音楽が聞こえ、紲星あかりと糸口霧夜は電話をやめた。そして彼女は今、入浴中である。

 

 

 

 

 

 

「…。」

 

彼女の顔は紅に染っている。それは何故なのか。

もう、理由は定かある。

 

 

 

彼女は、

 

 

 

彼が、

 

 

 

 

 

 

好きなのだ。




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