光る星に口付けを。   作:夜月 黒隴

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お久しぶりです(n回目)


第十七話-準備。

ほんのり暖かくなってきた頃、紲星あかりは楽しみにしていることがある。それは、毎年行われる「体育祭」だ。年に一度行われる唯一無二の存在であるこの行事は、彼女にとってもっともといってよいほど、喜ばれるものであった。

今日はそれの前日であり、準備期間となっている。

 

「明日は体育祭かぁ〜。楽しみだな。」

 

そっと呟き、時計を見る。まだ短針は「5」を指している。少し早起きしすぎただろうか。しかし、楽しみなものほど寝れず、早起きしてしまうものでもあろう。そんな経験、あなたにも無いだろうか。

 

───────

 

「おはようー!」

 

「おはよう。」

 

いつもの十字路で顔を合わせ挨拶をする。()()はしていないが無意識に顔を合わせるということが、ここ最近難しくなってきていると紲星あかりは感じている。その理由は述べる必要も無いだろう。

登校時間に余裕を持って来た二人は、校舎に着くと上履きに履き替え教室へ向かう。この時間には人はあまりおらず、今日は一番手のようだ。二人きりの教室、そう思うと意識をし始め、彼女は次第に彼と話すのを拒否する。一方、普段から話しかけられている糸口霧夜にとってこの行動は違和感があり、なにか企みがあるのかとこっそり疑っていたのであった。

ある程度時間が経つと、教室にぞろぞろと生徒が集まり始まる。こうもなると賑やかになり、彼女も容易に話せるようになる。その反面、糸口霧夜は安堵していた部分もあり、何かあったのかと心配していた箇所もあるが、杞憂であった。

 

「はーい、席について〜。」

 

担任の東北先生が室内に入ってくると、その返事で生徒は皆動く。東北先生は皆からの信頼も厚く性格も良好であるため、その指示に逆らうものは一握りあるかないか程。黒板の前に立ち荷物を教卓に置くと、皆に問いかける。

 

「今日、明日は何の日かわかる人ー!」

 

「はぁーーーい!」

 

勢いよく飛び出したのは彼女、勿論、紲星あかりであった。余っ程楽しみだったのだろう。今朝とは打って変わって元気ハツラツな表情は先生も気に入り、

 

「じゃあ紲星さん、明日は何の日ですか!」

 

「明日は体育祭ッ!ですッ!」

 

「気合入ってるね〜!」

 

紲星あかりが燃えていると、その熱気は周りに広がる。まず真っ先に火がついたのは担任であった。そして、例のごとく皆盛んになってくるのである。唯一、燃えていない生徒が一名存在していた。その名も、糸口霧夜。彼は運動が苦手で、彼にとって体育祭というのは面倒な行事なことこの上ないものであり、気だるさが増し続けている、今も今も。

 

───────

 

「紲星さ〜ん、こっち手伝ってー!」

 

「はぁーい!」

 

運動着を着衣し汗を垂れ流しながら校庭を駆け回る彼女は、その楽しみ故に身体を動かしていた。楽しみなものほど身体は自然に動くもので、時間が経つのも早く感じる。彼女は準備段階から楽しみで、その場の作業が終われば次へ、次へと手伝いに向かうのであった。

 

「……。」

 

沈黙している彼は、一向に手伝おうとする気はなかった。頑張ろうともしないその姿勢は所謂(いわゆる)「サボり」。校庭の倉庫の日陰で座っていた彼は、少しばかり面倒事に巻き込まれることを知らない。

 

「きーりーやーくん!」

 

「…げ…。面倒なやつに。」

 

「誰が面倒だってー!」

 

面倒と発言をされた彼女はムキになり、頬をぷくっと膨らます。これ以上サボる事は出来ないと感じた彼は、しぶしぶ手伝いに参加するのであった。二人はあちらこちらを走り回り、できる限りで手伝える分だけ手伝った。片方は手伝わされたと言っても過言ではないのだが、そこは今となっては気にする必要性は感じられない。

午後になり、昼食を摂る時間になると、糸口霧夜は室内でぐでっとしていた。それもそのはず、自ら拒否している体育祭の手伝いをさせられ、挙句の果てには彼女がとある発言をしたせいで放課後、残ることになっている事が確定しているからである。

 

「紲星さん、放課後、手伝ってくれる?」

 

「勿論です!霧夜君も手伝ってくれるよね!」

 

「え、あ…ああ。」

 

「やったー!」

 

その場の勢いで流されてしまったが、もし仮にここで手伝わなかった場合、担任からの信頼等々を見損なわれるかもしれないと考えた糸口霧夜は、仕方なく放課後を彼女と共に過ごすことにしたのだ。

 

───────

 

「ああ…疲れた…。」

 

夕日が傾き始める頃、ようやく終わったのだ、手伝いが。

紲星あかりは何か言っているが、今の彼にとってそんな物は聞こえていないも同然。恐らく、明日の体育祭が楽しみ、だとか今日は有難う、などといったそんな所だろう。そういった考えのため、糸口霧夜は何も聞かないようにしていたのだが、とある言葉が彼の心に響いた。

 

「明日、お弁当一緒に食べない?」

 

「…は…はあ?」

 

突然の言霊(ことだま)に驚きの表情を隠せない彼に、さらに彼女は追い打ちををかける。

 

「ほ、ほら!私達いつも一緒だし…。」

 

「一緒に居るつもりは無いけどな。」

 

「えー!」

 

そんな会話をしていて、返事をしないままいつもの帰路に着く。糸口霧夜はその場を茶化し、自宅へ着く。一方で、紲星あかりは少し悔しがっていた。やはり、好きな人に返事を貰えないままその日を過ごすというのは辛く、早く返事が欲しいと幾度もメッセージを送ってしまっている、そして現在も。

 

「むぅ…。」

 

返事が一向に来ない彼女は、今朝と同じくぷくっと頬を膨らますと、湯を浴びに浴室へと向かう。その間、紲星あかりが喜ぶであろうメッセージが届いている事、それを見て紲星あかりが喜ぶのは、お風呂から出た後のお話。




お久しぶりです、いぇい。
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