光る星に口付けを。   作:夜月 黒隴

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おーひーさーしーぶーりーーーふ


第八話-夕焼け小焼けで。

授業が終わり、漸く帰る時間帯になった。普段通りクラスメイトはぐったりとした者や、早く帰って用事がある者、ここで居座って駄べる者等、いろんな人がいる。その中で俺は、真ん中であろうか。さっさと家に帰って用事を済ませ、自分の好きな事を自由気ままに行う。それが毎日なのである。たまに邪魔()をするのも現れたりするが、それもまあ生活の中では必ずというほど入ってくるだろう。

『さて…さっさと帰るか…。』

「あ、霧夜君。」

『…なんだ。』

「今日暇ー?」

『暇じゃない。』

生憎今日は本当に用がある。いつもなら適当に理由をつけてさっと帰り、返って捕まってしまうのだが、今回は別だ。この後に予定が詰まっている。ひとつでも遅れてしまえば最悪、就寝時間がおおおにズレてしまう。様々な理由を的確に言って、今日は返してもらおう。

「えー、そーなのー?」

『この後用事が切羽詰まってるんだ。すまんな。』

「嘘だあー。」

『今日は本当なんだよ。』

「怪しいなあ…。」

…変に返って怪しまれてしまった。どうしてこうなってしまったのかよくわからないが、俺は帰ることにした。素早く手に鞄を握り、椅子から勢いよく立ち上がる。奴がその椅子を引く音に驚いている間に、俺は教室から飛び出す。急いで階段を駆け下り、靴を入れてあるロッカーが沢山ある場所へと早足で向かう。流石にこのスピードには奴も追いつけていないはずだ。急いでロッカーキーのナンバーをズラしてロックを解除し、靴を取り出し履き替える。さっさと家に…。

「もー、急に立ち上がるからビックリしちゃったじゃん!」

予想以上の速度で追いついてきた。恐らく廊下を全力疾走していたのだろう。それかもしくは、こいつの運動神経が良かったのか。それはどうでも良いことなのだが…。

「今日、少しついてきて欲しいの。」

『あのな。今日は本当n』

「いいじゃん!ちょっと綺麗な場所見つけたから!!」

『いやでも用事g』

「それじゃあ早速しゅっぱーつ!」

『人の話聞けや!!』

奴は俺の手をすっと握り、早々とその場所へと無理やり俺を連れていった。

 

──────────────

 

普段通ることのない道を次々進んでいき、近くの山に入る。ここは日のあたりがちょうど良く、俺も昔ここに遊びに来たことが何回かある。指で数える程度ではあるのだが、思い入れのある場所のひとつだ。しかし、ここはハッキリと地形を覚えている。その中でそんな綺麗な場所なんてあったのだろうか…と考える程、そこまでの場所ではある。

『おい、何処まで行くつもりだ。』

「まだまだ先ー♪」

『は?』

少し疲れてきた。それにも関わらず、ずっと先頭を早足で駆ける。一体どこまで進むのやら。この辺りはあまり見かけたことはないが、一応一通りは確認したんだ。この辺りも知ってることには知っているのだが、やはり来たことがあまり無いため、この先がどうなってるかなどは明白に思い出すことが出来ない。そんな道をスラスラと歩いて行き、どんどん山の奥へと進んでいく。これ帰れなくなったらどうするんだ、流石にそれはないとは思うのだが、奴は結構方向音痴な為、既に迷っている可能性が無きにしも非ず。とても心配である。

 

──────────────

 

「ふー、着いた着いた。」

漸くその目的地に到着したようだ。辺りは少し日が暮れてきてる。もうそんなに山を歩いていたのかと、改めて知らされる。森が少し解放されていて、ここからは太陽が落ちるのが良く見える。俺も確認したとはいえ、この景色を見るのは初めてである。確かに奴のいうとおり、良い景色ではあるのだが…。

『おい。』

「ん?なーに?」

『もう帰っていいか?』

「え、まだまだ。これからだよ?」

『…は??』

これから、という言葉に驚きを隠すことなどできなかった。これはもう今日の用事を今夜で終わらす事など不可能に近いであろう。ここからどれほど待てば良いのかは知る由もないが、また帰るのに約50分〜1時間程度かかる。仮に午後8時から始めたとして、全力でしても60%程度しか終わらないだろう。それに加え課題と明日の準備等もしなければならない。奴のせいで計画が倒れたジェンガの様に砕けていった。

『どれくらい待てばいいんだよ。』

「ん〜…。日が沈み切るまで。」

『おい、それどれくらいの時間がかかるか分かって言ってるのか。』

「勿論だよ。」

どれくらいの時間がかかるか、知ってこの返信である。ド畜生にも程がありすぎる。このあとの用を全て諦めた俺は、大人しくここで待つことにしたのだった…。

 

──────────────

 

「あ、見て見てー。」

奴の言葉に意識を取り戻し、顔を上にあげる。長時間待っていたせいか、少しぼーっとしてしまっていたようだ。そして、その後に見た景色は、凄く綺麗な夕日が沈むワンシーンであった。日が沈む色に付け加え、この静かな山に生えた木々の葉と葉の隙間から染み出ている赤に近い橙のような色をした光が、辺りに散りばめられている。確かに綺麗な景色ではある。これは見たくもなるとは思うのだが、やはり時間がかかるという点でどうしても気になってしまう。

「どー?」

『…まあ、悪いものではなかったが。』

「えへへ、良かった。」

『良くはねぇんだよ。用事が全部明日やらなければならなくなったからな。』

「あ、本当にあったんだ。」

『だからあるって言っただろうが…。』

そんなくだらない話をしつつ、俺はすっと立ち上がる。奴は俺が帰るのを察したのか、荷物を手に持ちゆっくりと立ち上がり、俺のあとを着いてくる。1度見たこの景色は、忘れることはないだろう、と胸に染み込ませ、橙の光を浴びながら俺らは自宅へと、山を駆け下りていった。




長なってもうたヤデー
投稿遅れてごめんヤデー
誤字とか変な場所あったら教えてヤデー
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