魔女と剣士と少女たち   作:sakuya-syu

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EP24 剣士と死神と

「探したぞ、小僧」

「俺も探してたぜ」

「ほう?意外だな、俺と一度あった奴は二度と俺に会いたくないというのに」

 死神、オルクス・バトラーは興味深そうに空を見る。

「俺をその辺の奴らと一緒にするな」

「威勢がいいのは相変わらずだな」

 死神は笑いながら俺を見下ろす。

「威勢だけがいいのか確かめてみろよ」

 空は黒い魔剣を出した。

「面白いっ」

 死神は大剣を出現させる。五年前と同じ剣だ。

「お前とやる前に、こいつらを逃せ」

 自分でも何を言っているのだと思う。アインスたちがいれば空は不利になる。いや、死神にそれは関係ない。ただ戦えればいいのだから。

「なんだと?俺はそいつらが居ようが居まいが関係ない」

「俺はお前と全力でやりたい」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・いいだろう」

 少しの沈黙の後、死神は答えた。

「アインス」

 空は死神を見て声も出せずに、地面に座り込んでいるアインスに呼びかけた。

「な、なんなんだ、あいつは・・・・・・」

「あれが死神だ」

「あれが・・・・・・」

 空はアインスに近づいた。

「アインス、皆を連れて逃げろ」

「何を言ってるんだ!アレは最早人ではない!君が死んでしまう!」

 アインスは空の両腕を掴むと叫んだ。

「大丈夫だ」

 空はアインスの手を振りほどくと膝をついた。

「しかし―――「大丈夫だ」―――ッ」

 アインスの言葉は空の言葉と行動によって遮られた。

「そ、ら?」

 空はアインスをギュッと抱きしめた。

「大丈夫だ、俺は必ず帰る」

「ッ!?」

 

 

『大丈夫だ――、俺は必ず帰る』

 

 

 アインスの頭に一つの映像が流れた。それははっきりとしているがどこか曖昧だった。誰かに抱きしめられ、子供をあやす様な優しい声。

 言った人間。それはとても大切な人だった。

 言われた名前。それはその大切な人が初めてくれた大切なものだった。

「・・・・・・やはり君は、私の過去と関係があるんだな」

 今まで、アインスが空と会うときは嬉しくて悲しいと、複雑な気持ちしか感じなかった。しかし、空の言葉と流れた記憶が確信を持たせた。

「・・・・・・ああ」

 空は事実を言うか躊躇ったが、短く肯定した。

「そうか・・・・・・」

 アインスは目を瞑り短く答えた。

「・・・・・・皆を頼んだぞ」

 空は立ち上がり、死神と向かい合う。

「わかった」

 アインスは立ち上がり、それまで黙っていた竜馬とともになのはたちを連れて去った。

「これで邪魔者は消えたな」

「・・・・・・ああ」

 空は剣を抜き放つ。

「この時をどれだけ待ったか。あの時、貴様に付けられた傷が疼いて仕方なかったぞ!」

 死神は右腕と胴の切り傷を空に見せた。

「俺は斬った記憶はないぞ」

「だろうな。あの時の貴様は意識が朦朧としていた」

 空が死神を斬ったと知ったのは意識が戻ってから少しした後に茜から聞かされたのだ。大地を庇った後は師匠が助けてくれたのだと思っていた。

「だが!貴様に斬られたのは事実!あの時より強くなったその力、見せてみろ!」

 死神は昔と同じように大剣を片手で振り上げた。

「ハァアアアアッ!!」

「ちっ」

 空は舌打ちをすると後ろに大きく飛び退いた。

 

―――ドォオオオンッ!!!

 

 空がいた場所には死神の大剣によって直径五メートルほどのクレーターが出来ていた。

「受けきれないと思って避けたか」

「ちげえよ、お前の力がどれくらいなのかそのクレーターで見極めただけだ」

 という空だが内心は穏やかではなかった。

「(軽く振っただけであれかよ・・・・・・)」

 そう、死神は剣を軽くしか振っていない。それだけで直径五メートルのクレーターが出来たのだ。

「見極めるだと?これは軽く振っただけだ、当てにならんぞ」

「だろうな」

 あれに少しでも力が入るとなるとまともに受けたら体が潰れるだろう。

「まともに受けなきゃいいんだ、よ!」

 空は死神に一気に詰め寄ると横に剣を振り抜いた。

 ガキンッと金属がぶつかる音が響く。空の剣を死神は簡単に受け止めた。

「早いな、それに力もある。並の人間ならこれで腕はしばらく痺れるだろう」

 笑いながら嬉しそうに話す。

「へ、どうした?今のは軽く振っただけだぜ?」

「ハハハハハッ、そうか!嬉しいぞ!あの時より断然強くなっているな小僧!」

 再び死神は剣を振る。さっきより力強い。空は今度は避けずに受け止めた。

「ぐっ、当たり、前だ。あの時誰も守れなくて、お前を倒せるくらい強くなると決めたんだ」

 腕が痺れる。先ほど力が入ると体が潰れると言ったが、それはあくまでまともに受け止めた場合だ。

 しかし空は、じんg―――ゾクッ―――最強の剣神の下で修行したのだ。自分より力が強い相手の攻撃の受け方も心得ていた。

「俺を倒すだと?そうか!俺のために強くなったのか!」

 嬉々として話しながら剣を振り続ける死神。それを空は避け、避けきれないものは受け止めるのを繰り返していた。

「何もお前のためじゃねえよ。守るためだ!」

 空は逆に切り返し、死神の剣を弾く。そこに一瞬出来た隙に―――

 

「烈空破(れっくうは)!」

 

―――死神の腹に技を叩き込んだ。

 烈空破は拳を突き出すことによって生まれた衝撃波を、拳が当たった場所に一点集中させて攻撃する技だ。

 前に使った掌破とは違う。掌破は掌で相手に触れ、そこから衝撃を出す技だ。触れるだけなので烈空破程破壊力はなく、攻撃というよりは相手を吹き飛ばすのがメインだ。ただ、これはこれでそれなりに破壊力があり、師匠が使うと空の烈空破よりは少し低いが人に使えば骨が砕けるくらいの威力はある。

「ぐぅっ、今のは中々だったぞ」

「おいおい、結構な大技だったぞ今のは」

 ちなみに空の烈空破の威力は一般人相手に骨を粉々にするくらいの威力はある。それを死神は苦しそうな顔をするだけで、特に骨に影響は無い様だ。

「次はこっちから行くぞ!」

 死神は大剣を肩に担ぎ腰を落とした。

「狼牙(ろうが)―――

 

―――滅砕(めっさい)!」

 

 死神は空に向かって剣を斜めに振り下ろす。

「ぐ!?」

 空はそれを受け止める。しかし、剣が重すぎて体が硬直してしまった。

「ハァアアアアッ」

 死神はそのまま回転して横薙ぎに剣を振るった。

「がはっ」

 それはその一閃を受け止めきれずに飛ばされてしまった。

「がふ」

 後ろにあった何本もの木を折り、その後ろにあった大きな岩に叩きつけられたおかげてやっと止まった。

「どうした!それで終わりか!」

「この程度で終わるかよ」

 空は岩から離れると剣を構える。

「そうだ!あの程度で終わってもらっては拍子抜けだ!もっと俺を楽しませろ!」

 死神は空との距離を一気に詰めると大剣を振り下ろした。

「うぉおおおおっ」

 空は死神の剣に真っ向から剣を振った。

「俺の剣を正面から受けるとは、血迷ったか!」

「おぉおおおおおっ!!」

 

―――ガキンッ

 

「何!?」

 死神は目の前の光景を見て、初めて驚愕した。

「ぉ、ラァアアアアアッ!!」

 空は力の限り剣を振り抜いた。

「ぐぉっ」

 そして、今度は死神は弾き飛ばされた。

「ハァハァハァ」

 空は息を上げながらも構えを解かずに、死神が吹き飛んだ方向を見ていた。

「フフフフフ、ハハハハハハハハッ!」

「・・・・・・・・・」

 やはりというべきか死神は立ち上がってきた。

「小僧!気で力を底上げしたな!」

「・・・・・・バレたか」

「昔、もう一人の小僧が使ったものだろう」

「あれの完成版だ」

「道理でただの気の使い手とは違うわけだ。だが、あの時も感じたが気以外にも何か混ざっているな」

「流石に気づかれたが」

 流石に二度も見られると違和感に気づくか。

「それはなんだ?」

「神気合纏(しんきごうてん)。それがこの技の名前だ」

「神気合纏だと?」

「説明する気はない」

「なるほど、それが貴様の切り札か」

「さあな」

 空は短く答えるとそのまま死神に斬りかかった。

「うぉおおおおっ」

 何合も二人の剣がぶつかり合い、死神の体に傷が増していく。

「(行ける!)」

「ふんっ」

 しかし、死神に距離を置かれてしまった。

「ハッハッハッ、楽しいぞ小僧!こんなに昂ったのは久しぶりだ!」

「・・・・・・・・・」

 空は無言で剣を構える。あまり時間は掛けられない。なぜなら、神気合纏は長時間使うことができないからだ。

 この技は自分の持つ気と外、つまり自然界にある神威と呼ばれるものを合わせて体に纏わせているのである。二つを合わせて身体能力を上げているので体に掛かる負担もその分大きい。長時間使えば死ぬことはないが、最悪一生寝たきりの状態になる。兄弟子である大地は、五年前に無意識にこの技を使い、激しい運動ができない程の後遺症が残った。空もこの技を習得して一年ほどしか経っていないため長時間は使えず、持って十分程である。ただ、十分使った後は体が筋肉痛になる。こればかりは徐々に慣れていくしかないものだ。

「ここまで楽しませた小僧を評して―――

 

 

―――本気を出してやろう」

 

 

 死神は首につけていた赤い玉を外した。

 

 

―――ゾクッ

 

 

 ただでさえ凄まじい威圧感が、さらに上がった。

「リミッター解除」

「ッ!?」

 これはやばい、逃げなければ死ぬと空の本能がそう告げている。死神は体から黒いオーラが吹き出ており、まさに死そのものだった。

「ほう?リミッターを解除した俺を前にまだ立っていられるか、流石俺の見込んだ男だ」

「ハァ、ハァ、ハァ」

 確かに立っている。だが、それだけだ。立っているのがやっとの状態である。

「俺に本気を出させたんだ、もっと楽しませろよ?」

「なっ!?」

 気がつくと目の前が黒い影に覆われていた。

「ハァアアアアッ!!」

「がぁっ」

 空は咄嗟に剣で防いだが、さっきよりも強い勢いで吹き飛ばされた。

「ゴホッ」

 いくつもの気と岩に叩きつけられ、最終的に崖に叩きつけられた。

「どうした、もう動けないのか」

 血を吐く空の前に死神が空から降りてきた。おそらく先ほどの場所から跳んだのだろう。

「ぐっ」

 死神は空を片手で持ち上げた。その時運悪く、神気合纏の効果が切れてしまった。

「(体に、力が、入らない・・・・・・)」

「まあ、なかなか楽しめたぞ小僧」

 そして死神は空を空中へと投げてその名の如く、大剣を横に構えた。

「(俺は、こんなところで、死ぬのか?)」

「礼に一瞬で殺してやろう」

「(ああ、もうダメだ)」

 空は諦めて目を閉じる。

「ゴメンな

 

 

―――みんな」

 

 

 死神の剣が振るわれる。

 

 

「空さん!」

 

 

―――ザシュッ

 

 

 誰かの声が響き、何かに包まれて、肉が切れる音がした。

「え?」

 一瞬何が起こったのかわからなかったが、地面に落ちた空は目の前に一人の女の子がいるのに気づいた。

「あい、り?」

「そら、さん・・・・・・」

 もう一度名前を言われて理解した。

 藍莉が斬られたのだと。

「藍莉!」

 空は動かない体を必死に動かそうとしながら叫ぶ。

「藍莉!しっかりしろ!」

 背中を深く斬られている。放っておけば確実に死ぬ。

「藍莉!」

「小僧の仲間か。ならば、共に死ね!」

 

 

「ブラッディタガー!」

 

 

 死神が剣を振り上げると声が響く。そして、いくつもの赤いナイフのようなものが死神に襲いかかる。

「ちっ」

「ゴッドブレス!」

 さらに空から巨大な光の柱が死神に降り注ぐ。

「空、今のうちに逃げるぞ」

 その間に空と藍莉の下にアインスが現れ、二人を抱える。

「アインス」

 空は体が動かないため抵抗できず、そのまま抱えられた。

「ゲート!」

 そして、竜馬が来て空間にゲートが開かれた。空たちはそのゲートに飛び込む。そこで空の意識は途切れた。

 

 

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