ようこそ適当主義者のいる教室へ   作:キルルトン

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約2年ぶりです。覚えていますか?


祝勝会

 とあるカラオケルームの一室。

 

「────よーし。みんなにドリンク行き渡ったね。それじゃあ、カンパイ……の前に、本日の主役の一年生たちに一言お願いします」

 ドリンク片手に明日香の謎のカンパイフェイントからの無茶ぶりが来た。

 どうしたもんか〜。

 

「明日香ちゃんセンパーイ。一言って何言えばいいんですかぁ?」

「うーん……じゃあ、自己紹介でいっか。もう1回になるけど」

「はーい。じゃあ……1ーCの黒咲(くろさき)暗奈(あんな)でーす!! よろしくお願いしまーす!」

 ビシッと右手を上げ、サイドテールに結んだ金髪を左右に揺らして元気よく自己紹介をする黒咲。

 

「あはは、わからないことすぐ質問するあたり。すごいなぁ、黒咲さん。えと……ぼくは、三枝(さえぐさ)和樹(かずき)って言います。所属はBクラスです。よろしくお願いします」

 マッシュルームカットで礼儀正しさが印象的な優男、三枝もまた自己紹介をした。

 何というか、アレだな……つい数分前にもした自己紹介をまたするとか意味ねぇなぁ……ハハは。

 

「さーて、ラスト。輝、取りよろしく」

「あー、はいはい。そこの明日香に無理やり連れて越された新道だ」

「ちゃんと自己紹介してくれたね。感心感心。てな訳でぇ……カンパイ!!」

「「「カンパーイ!!!」」」

 明日香の号令と共に俺以外の全員がグラスを高く上げた。

 中間テスト発表の日の夜。周りの連中は、辛かった勉強から解放されたことを、そして誰1人退学者出なかったことを喜んでいる。

 友達と苦労を分かち合う為、試練を乗り越えた達成感を共有している。俺もその例に漏れず……というか先日に明日香に誘われた軽音部の祝勝会に来ている。

 しかし、1つ考えて欲しい。こういった身内の集まりに部外者が立ち入ったらどうなるか。

 それは……絶対に気まずくなる。内輪でワイワイはしャイグつもりだったのに、そこに部外者が入ればそれだけで気まずい空気になること間違いなし………………の、筈だが……

 

「ねぇねぇ、新道くんってどこのクラスなの。A? B? D?」

「Bクラスには居なかったから、AクラスかDクラスだよね」

 …………メチャクチャ絡んでくる! 

 

「…………Dクラスだけど……」

「「Dクラス……」」

 さーて。これでどう対応してくるのか……出来れば、バカにしたり、見下して欲しい。そうすれば、不快だとか言って帰れる。

 

「Dクラスって事は……キョンシーとおんなじくらすだよね!!」

 …………いや、Dクラスに中国の妖怪なんていないはずなんだけど……

 

「……悪いんだが、キョンシー? って誰だ?」

「え? ……キョンシーはキョンシーだよ」

 何言ってんだこの人? って目で見られたが……それはこっちのセリフだ。

 

「ごめん、新道くん。黒咲さんは、友達をあだ名で呼ぶんだけど……本名をなんでか忘れちゃうんだ……」

 それは、本当に友達なのか? 

 

「あ、因みにキョンシーは櫛田さんの事だよ」

 あぁ、確か櫛田は学年全員と友達になるって言ってたっけ。……でも、なんでキョンシーて言うの? 

 

「おーい、1年ズ。同学年だけで盛り上がるな〜。先輩とも絡んで〜!」

 そう叫びながら、明日香が倒れこむように向かってきたので、俺はそれを避けた。

 

「輝、酷っ〜い!」

「はいはい」

 それにしても、いつ帰れるんだろうか。

 

「ねぇ、そんなにつまらない顔しないでもっと楽しんだらどうなの?」

 ようやく、一息つけると思ったらまた新たに来た。

 確か……風間(かざま) (はるか)、だったか。

 

「楽しむもどうも、部外者の俺が楽しめるとでも」

「楽しめるでしょ。高円寺くんとお昼一緒にしてた時だって、割と楽しんでたじゃん」

「……それ、明日香から聞いたのか?」

「うわぁ〜、忘れられてる。あ、そうだ……あーんしたら、思い出すかな? シャイニングボーイくん」

 そう言い、風間先輩がテーブルに並べているサンドイッチを手に取り俺の口に運ぼうとする。

 これどっかで〜……あー! 

 

「アンタ、高円寺と一緒にいた奴か!」

「せいかーい。それにしても、シャイニングボーイって長いね。これからは、シャイニングくんって呼ぶね」

 英名は続くのかよ。

 

「ほら。せっかく来たんだし、歌おうよ。楽しまないと損だよ」

 確かに、このまま仏頂面をしていても意味ないな。むしろ開き直るか。

 

 

 

 

 

 

「や〜、歌った歌った」

「く、口の中がヒリヒリする」

 カラオケを楽しむこと3時間。その間ちょっとしたゲームが行われた。

 内容は負け抜き性で好きな歌を歌い点数の1番低い人が、罰として激辛たこ焼きを食べるというものだ。

 カラオケのメニューにある6つの内1つが激辛のロシアンたこ焼きという商品がある。そして、店員に頼めば全部激辛たこ焼きにすることも可能ということから決行された。

 

「シャイニングくん。歌かなり上手かったね、驚いたよ」

「本当だよ。僕なんて真っ先に負けちゃって情けないよ」

「大したことないよ。音程を外さなかっただけだろ」

 俺は音域が広い。それこそ、知り合いの声真似ができるぐらいある。

 

「まぁ、1番すごかったのは明日香と風間先輩だったけどな」

「異議なし」

「うんうん」

「「いやいや、そんなことないよ〜」」

 謙遜しているが嘘臭くて仕方がない。このゲーム、1回戦から10回戦ぐらいまで100点を取り続けた。正直、凄すぎて若干引いた。

 結局、点数の決着はつかず最終的に俺たちが決める事になり風間先輩が優勝した。

 

 

 

 

 

 

 祝勝会が終わり時刻は18時を少しすぎた時間。いい感じに腹が減ってくる時間帯。部屋で何か作ってすませる気にもならず俺はファミレスに夕食を食べる事にした。

 ポイントも潤沢だし、結構高めのものを注文した。

 料理がくるまでの間、俺は手持ちのプライベートポイントをぼぅーっと眺めて今日までにやった事を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 中間テスト当日の放課後。

 俺は熱を出した佐倉を部屋に送る前に保健室に連れて行った。

 病院とかの方がいいかと思ったが、保健医に見せる方が手っ取り早い。と考え、保健室に来たんだが……無人。

 どこにいるんだろう…………ダメだ、職員室以外思い浮かばない。まっいいか、茶柱先生に聞きたい事もあるしとりあえず行くか。

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす! 保健医の人と茶柱先生はいますか!?」

 職員室の扉を開け、保健医の先生と茶柱先生を呼んだ。

 

「新道。テストが終わって早々、何の用だ?」

「ええ、ちょっと……ですが、先に保健医の先生はいませんか?」

「はいはーい。保健医の先生は私だよ」

 俺が茶柱先生と話していると先生の横からひょっこり現れた。

 一瞬だけど茶柱先生、眉間にしわを寄せたけど……仲悪いのか? まあ、どうでもいいか

 

「私はBクラスの担任の星之宮ほしのみや 知恵ちえって言うの。はじめまして、新道くん」

「はじめまして。なんで、俺のこと知ってるんですか?」

「そりゃあ、新道くんってすごい有名人なのよ。主に教員(こっち)側で────」

「星之宮先生」

 星之宮先生が何かを言う前に茶柱先生が遮り『それ以上喋るな』と目で睨んだ。

 その後、すぐに茶柱先生は俺の方に向かった。

 

「それで、用件は何だ?」

「クラスの1人が熱を出して倒れたんで診てもらいたいんですが?」

「ええ! 大変! すぐに、行かなきゃ。場所は保健室?」

「はい」

 星之宮先生が職員室を出て、すぐに茶柱先生が口を開いた。

 

「それで、私への用件は何だ?」

「簡単な質問です。さっきの話からうちのクラス……まぁ、佐倉なんですが、熱があったんで多分、テストの結果が酷いと思うんですよ。なので、再テストとか出来ますか?」

「無理だな」

 即答された。

 まぁ、俺も十中八九無理だと思った。

 例えば、どっかの会社で大事なプレゼンがあったとしよう。その日に運悪く病気になった社員がいたとして、その人のプレゼンを別の日にできるだろうか? 

 答えはできない。今回はテストを受けただけまだマシだけど。

 

「そうですか。それじゃあ、もう一つ。俺のテストの点、50点ほど佐倉に渡す事ってできますか?」

「…………」

 茶柱先生は今度は即答できず、目を丸くしていた。というか、他の先生たちも俺を注視してきた。

 しばらくして、茶柱先生が笑みを浮かべた。

 

「すまないな新道。今は、それを言う事ができない」

「今はってことは、いずれ言ってくれるんですよね。いつですか?」

「安心しろ。理事長に判断して貰うだけだ」

「……前例とか無いんですか?」

「無い」

 マジか。てっきり点数に余裕ある奴が赤点を取った奴とかに売ってると思ってた。

 

「少し時間がかかる。ここじゃ何だ、生活指導室で待っていろ」

「えー、めんどくさいですよ。パパッと終わらせましょ」

「出来るわけないだろ。つべこべ言わず、待ってろ」

 茶柱先生は指導室の場所を教えると机に備わっている固定電話で理事長に電話をかけた。

 俺もこの場の視線が嫌なので言われた通り生活指導室で待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 指導室で待つこと数分。暇すぎて、横にあった給湯室でお茶を入れ、茶菓子がないか漁ったが見つからなかった。

 程なくして、茶柱先生が入って来た。

 

「さて、用件の前にいくつか聞きたい事がある」

「それ無視して、用件に進んでくれます?」

「そう言うな。今後の参考の為と思ってくれ」

 そう言われてもな〜。

 

「まず、1つ目の質問だ。お前は、いつから点数の譲渡を考えていたんだ?」

 あれ、俺いつ了承した? でも、これもう駄々こねれないな。

 

「はぁ……5月の初めだ」

「ほう、そんな早くからか。他に何か思いついていたか?」

「まだ続くのね。そうですね〜。あとは、全員が低い点を取るぐらいかな」

「ははは。逆転の発想だな」

 赤点に関しては触らないのか。50点譲渡を言った時点でバレてるからか。

 赤点の算出方法は平均点割る2。矛盾しているが赤点になる最高点は平均100点の半分、50点未満だ。だから、50点取っとけば落第することはない。

 

「では、次の質問だ。何故、佐倉を助けようとする」

「こう言っちゃなんですが。茶柱先生って本当にDクラスの担任ですか? と言うか、教師ですか?」

「ずいぶんな言いようだな。流石に傷つくぞ」

 だけど、それ以上の言葉はないだろ。だって、見方を変えたら退学するかもしれない生徒を見捨てろって言ってるようなもんだろ。

 

「新道、お前の過去のことは知っている。だからこそ、気になるんだ。佐倉を助けるのは罪の意識からなるものか?」

「くっくははは!」

「……なにか、可笑しかった?」

「ああ、すみません。つい、的外れすぎて思わず」

「ほう……では、本当の理由は何だ?」

「ありません」

「嘘はよせ。ここまで綿密な策を衝動的行動で行うとは思えない」

「思って下さいよ〜。ノリですってノリ」

 正直、畏まってるのにめんどくさくなって、ちょっと砕けてきたが茶柱先生は毅然と俺の嘘を見抜いてきた。

 

「なら、何故佐倉を保健室まで連れて行った。ノリでそこまでの事できるか?」

「ええ。それに、良い事をするのに理由ってありませんよね」

 俺の言い逃れに茶柱先生がため息混じりに『そうだな』と呟いた。

 

「もう質問も無いですよね。じゃあ、点数譲渡の件にはいってくれますか?」

「ああ、端的に言って。お前の申し入れは受諾された」

 よーし。これでようやく終わる。

 

「ただ、教員側こちらとしても仲介手数料を貰わないと困るんだ」

 想定の範囲内だ。いくらだろうと問題ない。

 茶柱先生はそのまま説明を続ける。

 

「1教科の譲渡につき20万ポイント。5教科の譲渡は100万ポイントだ」

 うーわ。思ったより高え、けど払える。

 俺は携帯を取り出し応答する。

 

「それじゃあ、払いますね」

「払うのか、100万も。他にもっと良い使い所があるんじゃないか?」

「生憎とその程度の挑発に乗る気はありません。それに、俺にとっては100万なんてはした金です」

 そして、携帯に表示している俺の全プライベートポイントを見せつける。

 

「……そのようだな。だが、これだけは言わせてもらう。この学園内でのプライベートポイントは時にクラスポイント以上の価値を発揮する。無駄遣いはするなよ」

「……まだ、挑発しているですか?」

「いや、ただの忠告だ」

 その言葉を皮切りに沈黙が続いた。これ以上、何か話をする気は無いので黙って学生証を茶柱先生に差し出した。茶柱先生も黙ってそれを受け取った。

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