ようこそ適当主義者のいる教室へ   作:キルルトン

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水泳と探索

 入学式から1週間。学校生活にも慣れた今日この頃、いつも騒がしいDクラスだが今日はより一層騒がしかった。主に男子が

「いやー授業が楽しみ過ぎて目が冴えちゃってさー」

「この時期から水泳の授業があるなんて最高だよな!」

 登校すると確か、池と山内が騒いでいた。どうやら水泳の授業が楽しみでしょうがないらしい。

 

「おーい博士。ちょっと来てくれー」

「フフッ、呼んだでござるか?」

 博士というあだ名の生徒が池の元へと来た。ちなみに本名は外村だ。

 

「博士、女子の水着ちゃんと記録してくれよ。おっぱい大きい子ランキングの為に」

「任せてくだされ。体調不良で授業を見学する予定ンゴ」

 外村って奴、語尾のあれなんだ?方言でも無いぞ。

 さらにそこに不良らしい須藤や俺の数少ない知り合いの綾小路も呼び出されていた。綾小路、友達できてよかったな。俺は友達できていないけど。

 

 内容に聞き耳を立ててみると、どうやらクラスで1番の巨乳は誰が予想する賭けをしているようだ。一番人気が長谷部という女子らしい…確か、三宅とよく一緒にいる奴だったな。他には山内が佐倉という女子に告られたと言っているが多分嘘だ。確か佐倉は、内気というか目立ちたくない感じだったから告白とかそういうのはしないはずだ。

 因みに俺はクラスの全員の顔と名前。ある程度の人間関係、性格を覚えている。ボッチの観察能力はすごいのだ。

 

「あなたも参加して来たら?」

 後ろにいる堀北が話しかけて来た。珍しいこともあるんだな。

 

「生憎とああいう馬鹿騒ぎは苦手でな」

「そう」

 堀北から珍しく会話が来たのにこれで終了か……?

 

「話は変わるけど、以前の貴方の助言わたしには必要がないようね」

 以前エレベーターの中で話した、たわいも無い会話の続きのことだろう。これを聞くために話しかけてきたのか。

 

「なんでそう思う」

「あの時、貴方は渡されるプライベートポイントが下がる可能性がある事を言っていたのよね」

「正解」

「そして、下がる要因は生徒の授業態度や生活態度。教室を含めこの学校には至る所に監視カメラがある。先生たちはそれを見て生徒たちを査定しているのでしょ」

「恐らくな」

「私は別に授業をおろそかにすることは無いし、問題を起こす気もない。故に私にプライベートポイントが下がることはない。違う」

 すごいな堀北。あんなヒントでここまでわかるとは。しかも、監視カメラのことにも気づくとは……だけど

 

「本当に下がらないと言えるのか?」

「何を言っているの?」

「例えば、あそこで騒いでいる池たち。もし今が授業中でも同じように騒いでいたら授業に支障が出ると思わないか?」

「そうね。でもそれは、彼らの問題、私には関係ないわ」

「そうだな……でも、普通は注意とかするだろ」

「何が言いたいの?」

「別にただ……当たり前のことができないのはダメだなって」

 

 

 

 

 

 

 男子たち待望の水泳の時間がやって来た。

「うひゃー、やっぱこの学校はすげぇな!街のプールより凄いんじゃね!?」

 着替えを終えた男子生徒がぞろぞろとプールサイドへ集まって来た。

 屋内の50メートルプール。屋内ゆえに天候に左右されず春からでも始められる。

 

「へー、すごい広ーい!」

「ホントだー!」

「「「「ぅぉぉぉぉぉ……」」」」

 男子グループが来て数分後着替えを終えた女子たちも入ってきた。男子が小さな声で、歓喜に震え、その姿に文字通り釘付けになっている。………が、しばらくして池があることに気づいた。

 

「あ、あれ、長谷部がいねえ!?」

「ど、どういうことだ博士!?」

「ンゴゴッ!?」

 二階の見学者席の外村が謎の唸り声を上げる。

 

「あ、う、後ろだ博士!」

 池に指摘されて後ろを振り向くと、そこには長谷部や軽井沢、加えて先ほど話題に上がっていた佐倉もいた。

 その後も、見学者組の女子が続々と姿を現す。

 

「巨乳がっ、見られると思ったのにっ……巨乳がっ!」

「キモ……」

 俺、平田、綾小路を除く……いや、きっと平田以外の愕然とする男子たちを見て女子の1人が短く発した。

 

「2人とも、なにやってるの? 楽しそうだねっ」

「く、くく、櫛田ちゃん!?」

 2人の間を割って入って来たのは、男子のほとんどが待ち焦がれていたであろう、櫛田さんだった。

 男子の視線を一身に集めるが、すぐにその男子たちは目をそらしてしまう。

 わかるよ生理現象って自力じゃ止められないもんね。

 櫛田のスクール水着姿を見ているとよくわかる。制服の上からでもわかっていたナイスバディがスクール水着によってより鮮明になっている。

 

 すると、櫛田がこちらに歩いてきた

「……みんなどうしちゃったのかな?」

「……あいつらは今、己との闘いに没頭しているんだ」

 正直言って、『櫛田さんのエロい身体を見て勃とうとしている自分の息子を必死で抑えてる』とも言ってみたかった。流石にこれは男子全員にボコられそうだからやめておこう。

 

「綾小路くん、何か運動してた?」

「特に。自慢じゃないが中学は帰宅部だったぞ」

 堀北と綾小路の会話が聞こえそっちの方を向いてみた。よく一緒にいるし仲良いな〜。

 

「それにしては、前腕の発達や背中の筋肉が尋常じゃないけれど……」

 堀北の言う通り、少なくとも帰宅部で納得する肉体ではない。

 

「親から貰った恵まれた身体、ってやつじゃないのか?」

「それだけでここまでになるかしら……」

「何だよ疑い深いな。お前筋肉のフェチか?命賭けるか?」

「そこまで否定するのね……」

 綾小路の予想以上の否定に渋々引き下がる堀北。

 

「よーしお前ら集合しろ!」

 程なくして、水泳担当のマッチョのオッサンが集合をかけ授業を始める。

 

「見学者は16人か。随分と多いようだが、まぁいいだろう。準備体操を終えたら、早速泳いでもらう」

「あの、俺あんまり泳げないんですけど……」

「俺が担当するからには、必ず夏まで泳げるようにしてやる。安心しろ」

「どうせ海なんて行かないし、無理して泳げるようにならなくてもいいんですけど」

「そうはいかん。今は苦手でも構わんが、克服はさせる。泳げるようになれば必ず役に立つからな。必ず、な」

 教師の説明が終わり、全員で準備体操を始める。それから50mほど流して泳ぐように指示される。

 

「見よ、俺のスーパースイミング」」

 池がドヤ顔で泳ぐ、他のやつとさして違いがないようだが。

 

「とりあえず、ほとんどの者は問題なく泳げるようだな。よし、じゃあ競争始めるぞ。50m自由形だ。女子は5人2組、男子は最初に全員泳いだ後、タイムの速かったもの上位5人で決勝を行う」

「え、きょ、競争!?」

「男女別で1位の生徒には、先生から特別に5000ポイント支給しよう。その代わり最下位のやつは補習を受けてもらうからな」

 1位にポイントを支給するのか……どうしよう。俺は今、絶賛0ポイント生活中。5月に綺麗に10万ポイントの状態で迎えたい。………要らないな、適当に流す………いや、ちょっと変えるか。

 

 

 最初に行ったのは、女子の方だった。俺が注目しているのは、クラスで知っている女子の堀北と現役水泳部員の小野寺。そして、他の男子たちが注目している櫛田。

 結果だけを言えば勝ったのは小野寺の26秒。二位は堀北の28秒。櫛田は31秒と中々の好タイムだ。

 次に男子の番が来た。俺は2番目の組で泳ぐことになった。

 1組目には、鍛え抜かれた肉体を持つ須藤と、体格に恵まれていると言っていた綾小路がいた。

 一斉に飛び込むと、須藤が独走する一方的なレースが始まった。ただ力任せに水を掻き、圧倒した。その記録は25秒。一方、綾小路は31秒。これは………異様としか言えない。

 1組目の全員が泳ぎきりプールから出ると続く2組目、俺の番が来た。一緒に出るやつはクラスの人気者、平田と女の子大好きな池と虚言癖があると思われる山内だ。

 平田がスタート台に立つときゃー!という女子からの黄色い叫び声が上がる。それを聞き、池と山内は露骨に顔をしかめる。

 

「新道くん。お互い頑張ろうね」

「ああ、全力で楽しむつもりだ」

 俺にエールを送ると池と山内にも同じようにエールを送った。こんな時でも他人を気遣う気持ちがある。欠点と言えるものが見当たらないな。

 

「位置について、よーい」

 ピー!

 とスタートの笛と同時に平田がプールへ飛び込んだ。続けて池、山内も飛び込み平田を追いかける。

 

 俺はと言うと

「何している、新道。もう始まっているぞ」

「はーい」

 まだ、飛び込んですらいない。

 平田との差は20メートルぐらい、池山内とは10メートルと言ったとこか。もういいだろ。

 俺はゆっくりとスタートの構えを取り

 そして………勢い良くプールへ飛び込んだ。飛び込みの際の勢いを無駄にせず潜水で加速していく。15メートル付近で池と山内を捉え簡単に抜き去る。23メートル辺りで息が苦しく待ったので浮上し呼吸を挟んだ。息継ぎの時にプールサイド方を見ると生徒の全員が俺に驚き凝視していた。

 42メートル。ギリギリのところでようやく平田に追いついた、そのまま平田を抜きゴール。

 

「に、24秒56……だと」

 俺のタイムに驚く先生の横を通り何事もなかったように俺は綾小路の横に座った。

 

「すごいタイムだったな」

「そんなことないぞ。綾小路の方がすごかったぞ」

「嫌味のつもりか?」

 31秒をすごいと言う24秒。確かに嫌味だ、タイムの話だったら。

 

「俺が言ってるのはタイムじゃない。フォームのほうだ」

「フォーム?」

「あれほど、効率のいい泳ぎは初めて見た。ほんと、すごい」

「そんなことないだろ。事実、オレのタイムは普通だ」

 そう……だからこそ異様だ。あれ程、完璧に作られた肉体をもってあそこまで効率性を突き詰めた泳ぎ方をしたのに31秒……意図的にタイムを遅くしたとしか思えない。

 

「綾小路。おまえは……この学校の利点はなんだと思う」

「いきなりなんだ、藪から棒に……」

「いいから、いいから」

「はぁ。普通に考えて希望の進学先や就職先に行けるとかじゃないのか」

「それは当たり前のやつだ、他には?」

「他にあるのか?」

 そう言い、逆に尋ねてきた。綾小路、知ってて知らないふりをしているのか、本当に知らないのか。判断がつかないな……おもしろい。

 

「それじゃあ、教えてやる。それは……許可なく外部の人間と接触できないことだ」

「………それ、利点か?」

「例えば、綾小路。おまえの父親が水泳のオリンピック選手候補だったとしよう。しかし、おまえの父親はオリンピックに出ることが出来なかった。そこで、父親は息子に自分の夢を叶えてもらうことにした。だが、息子は父親のプレッシャーにまいり逃げ出した。そんな時、ここへの入学が決まった。3年間とは言え父親に会うこともないし、父親が会いに来ることもない。これって利点じゃない」

「………………そうだな」

 随分と間があったな。もう少し、深く聞いて見るか。

 

「綾小路……おまえ   

「おーい、新道。決勝戦を始めるからスタート台に来い」

「呼ばれたぞ、早く行ってこい」

 先生の催促もあり俺は無言でスタート台まで歩いた。

 決勝、俺はのんびり泳ぎ見事最下位もちろん補習はない。ただ、須藤だけは俺が手を抜いた事に激怒していた。

 

 

 

 

 

 

 楽しい楽しい水泳の時間も終わり。無事、放課後を迎えた俺はちょっとしたことを調べる為、ある場所にいる。それは、堀北も気づいている監視カメラについてだ。その正確な数と位置。俺がこれまで調べた場所は本校舎にスーパー、コンビニ。生徒に大人気なケヤキモールなど。ほとんど調べた思ったら、まだ調べていない場所があった。それがここ特別棟だ。基本的に特別な授業、理科の実験や家庭科の調理実習など特別な授業の際に使われる。頻繁に利用しない施設が揃っているこの校舎は、授業が終わると部活でも利用されない為、放課後には殆ど人の気配がなくなる。

 それにしても全く何もないな。

 これ以上居ても特に収穫はないだろう。晩飯何にするか

 俺は寮へ帰る為階段を降りて行くとしたからカシャっとカメラのシャッターを切る音が聞こえた。こんな場所でカメラ、いったい何のため?わからないだからこそ気になる。俺は抑えられない好奇心に従いシャッター音のした方へ歩き出す。カシャ、カシャ、っとシャッターを切る音がすぐそばまで来ている。ここからは、相手に気づかれないように気配を消して普通に歩いて行こう。これで、よほど神経質なやつでなければ気づかない。仮に気づいても陰が薄いだけで済む。シャッター音が聞こえた廊下の曲がり角、そこを曲がるとそこには………。カシャっと自撮りをする美少女がいた。

 そして、俺はこの少女をどこかで見た気がする。

 

「………!」

「………?」

 撮った写真を確認していた彼女は俺がいる事に気がついた。

 そして目と目が合い、しばらく見つめ合うと

 少女の顔がだんだんと赤くなっていった。

 

「あ、あ………」

 少女は困惑しながらも鞄とデジカメを持って回れ右し一目散に逃げようとした………が

 ドテー!

 足がもつれ、デジカメと鞄を放り投げドジっ子がしそうな豪快なズッコケを披露した。

 

「っぅぅ………」

「………大丈夫か?」

「あうう………あ、カメラ!」

 盛大にこけた少女だったがすぐに立ち上がり放り投げてしまったカメラを取りに向かった。俺としては中身が飛び散りまくっている鞄の方を気にした方がいいと思う。

 ほんの少し俺にも非があるしこのまま立ってるのもあれだし俺は鞄から出たポーチやノートなどを拾った。その際、ノートに書いてあった名前を見て驚いた。

 

「………1ーD 佐倉(さくら) 愛理(あいり)

「!!」

 ボソッと呟いたのが聞こえたのか佐倉が勢い良く振り向いた。それを見て早めに終わらせようと思い残りのノートや教科書をパパッと拾い佐倉の鞄に詰め込んだ。

 

「はい」

「あ、ありがとう…ございます」

「じゃ」

「あ、あの……」

 立ち去ろうとする俺を佐倉は呼び止めた。

 

「あの……こ、このことは誰にも言わないでくれますか……?……そ、その、じ、自撮りしていたこと………」

「別に誰かに話すつもりはないぞ」

 話す相手もいないしな。

 俺の答えに安心したのかホッと胸をなでおろした。それにしても以外だ佐倉の趣味が自撮りとは。目立ちたくない性格の奴は自撮りみたいな自己主張をしたがらないと思っていた。例え撮った写真を誰にも見せたりしないつもりでも。

 それに、今目の前にいる佐倉はからは、普段の地味さ存在の希薄さが一切感じられない。いや、地味どころか容姿ならクラストップレベルだ。

 普段の佐倉と今の佐倉の違い………強いてあげるなら   

「佐倉、普段はメガネをかけてなかったか?」

「え!?あ、う、うん!そ、そうなの!カメラの前ではかけないことにしてるんです!」

 慌てふためきながら返した鞄からメガネを取り出し急いで掛けた。

 

「そ、その…変、ですか?自分を撮るの?」

 恐る恐る質問する佐倉。

 人に見られたことを相当気にしているらしい。まあ、自分の趣味なんて友達ならいざ知らず、他人に知られるのは恥ずかしいだろうからな。俺も友達にも知られたくないし……友達がいるなら。

 

「……さあ。少なくとも、他人の趣味をとやかく言えるほど大層な趣味を俺は持ってないし。ちゃんとした趣味があるってのはいいことだと思うぞ」

「……ほ、本当、ですか?」

「ああ。別に誰かに迷惑かけているわけでもないし」

「……ありがとうございます」

「……なんで、感謝するんだ?」

「その、こんなところを誰かに見られたのなんて思ってなくて……見つかってどんな反応されるんだろうって、怖かったから……」

 どうやら対応としては問題なかったようだ、否定や拒絶は確かにキツイもんな。

 

「それじゃあ、俺はもう帰るから……」

「あ、私も帰ります……」

 そして、俺は佐倉と一緒に寮へ帰ることになった。寮のエレベーターで別れるまで一切会話は生まれることはなかった。

 

 ただ、別れ際

「し、新道くん。……ま、また明日」

「……ああ、また明日」

 意外にも佐倉の方から別れの挨拶をしてきた。

 

 

 

 

 

 

 後日

「おはよう、佐倉」

「お、おはよう新道くん」

 佐倉と話すことが増えました。

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