ようこそ適当主義者のいる教室へ   作:キルルトン

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小テストとデート

 入学してから3週間。俺が自分に課した0ポイント生活も残すところあと僅か。この見事なまでに変動していない10万ポイントを必ず5月まで維持して行くぞ。

 ピロリン♬

 メールが届いた。差出人はもちろん俺が唯一連絡先を教えた明日香だ。しかしてその内容は『デートしよう』だった。いきなり何言ってんだあの人は?

 

 俺が明日香の思考を読み前に追加のメールが届いだ。

『5月になったら10万で何か買うんでしょ。品定めしたくない?(╹◡╹)今日、部活ないからウインドウショッピングしようよ(*≧∀≦*)』

 確かに何を買うか品定めはしたいと思っていた。そこに明日香がいても別段問題はないか。すぐさま、了解のメールを送った。

 

『それじゃあ、放課後に学校の玄関前で待ってから(๑>◡<๑)』

 すぐに返ってきたメールを確認して俺は学校へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「ぎゃははははは!ばっか、お前それ面白すぎだって!」

 今日も池は授業中なのに大声で談笑していた。その相手は山内だ。入学してから3週間、池と山内の2人に須藤を合わせて陰で3バカトリオなんて呼ばれている。もちろん池たちだけじゃない、クラスのほとんどの生徒が雑談をしマンガを読み、ゲームで遊び、ケータイを弄っている。

 

「うーっす」

 授業も後半に差し掛かろうという頃、教室の入り口が五月蠅く音を立てて開き須藤がようやく登校してきた。

 

「おせーよ須藤。あ、昼飯食いに行くだろ?」

 池が離れたところから須藤に声をかける。数学教師は注意するどころか須藤に目もくれず授業を続けている。数学教師だけじゃない全ての教科の先生が私語も遅刻も居眠りも、全て黙認している。その態度に最初は遠慮がちだったクラスメイトも自由気ままに過ごし、今では学級崩壊状態にある。

 勿論、その中には俺や堀北、綾小路などの喋る相手のいない……もとい、真面目に授業に取り組んでいる連中も少なからずいる。

 

 3限目の社会。担任の茶柱先生の授業だ。授業開始のチャイムが鳴っても騒ぎ立てている教室に茶柱先生がやって来る。それでも生徒たちの馬鹿騒ぎは収まらない。

「ちょっと静かにしろ。今日はちょっとだけ真面目に授業を受けてもらうぞ」

「どういうことっすかー。佐枝ちゃんセンセー」

「月末だからな。小テストを行うことになった。後ろに配ってくれ」

 

 一番前の席の生徒たちにプリントを配っていく。そして俺の机に1枚のテスト用紙が届く。主要5科目の問題がまとめて載った、それぞれ数問ずつの、まさに小テストだ。

「えー。聞いてないですよー」

「そう言うな。今回のテストはあくまで今後の参考用だ。成績表には反映されることはないから安心していいぞ。ただしカンニングは厳禁だがな」

 

 成績表に『は』……か。つまり成績表以外に反映される、ということだろう。

 取り敢えず真面目に受けておこうか、それとも軽くふざけようか。

 小テストに取り組み方を考える前に俺はテストの問題内容を見て見た。

 主要5教科で各問題数は4問。1問につき5点の100点満点。

 問題のレベルは受験の時に出た問題よりも2段階くらい低い。しかしラスト3問は桁違いの難しさだった。数学最後の問題なんか、複雑な数式を組み立てなければ答えが出てきそうにないぞ。

 

「……これなら、ふざけても問題なさそうだな」

 結論が出ると俺は残された時間で必死に回答を書き続けた。その回答が0点になるものでも。

 

 

 

 

 

 

 授業が終わり俺は明日香との合流地点、学校の玄関前に着いた。そこは、帰宅する生徒の波で溢れていた。こんな状況でどうやって明日香を見つかりゃ良いんだ?そんな、俺の悩みはあっさり解決してしまった。数十人がひしめく中、彼女は目立っていた。

 別に奇行をしているわけではない。

 ただ、立っていた。それがあまりにも絵になっているだけだ。周りの一年であろう生徒たちも帰宅の際に必ず一度は見ていた。

 その理由は、単純に明日香が綺麗だからというのもあるだろうが、場を支配するような存在感があった。生徒会長の張り詰めるように支配する感じとは違う。ただ漠然と視界に少しでも入ったらつい目を向けてしまう。その光景を見て改めて、すごいと感じた。

 

「あっ。輝、遅いぞ〜」

 明日香が俺に気づき手を振ってくる。

 俺はそのまま、軽く手を挙げ合流する。

 

「それじゃあ、行こっか」

「……ああ」

 

 

 

 

 

 

 俺たちが来たのは総合ショッピングセンターのケヤキモール。この学校の中で必要なものは大抵ここで手に入る。

「それじゃあ、まずどこから行きたい?」

「そうだなぁ、取り敢えずテーブルにカーペットが欲しいんだよな。あ、あと調味料一式とやっぱり服は欲しいかな」

 他にも必要なものは、あるにはあるが流石にそれは1人で品定めしないと危険だ。

 

「よし。じゃあ、まず家具店でテーブルとカーペットを見に行って。次に洋服店行こっか。そんで最後に晩の食材を買うついでに調味料とか見ておこうか」

 明日香のプランを聞き俺はああと首を縦に降った。

 そして、明日香の案内で向かった家具店に着いた。しばらく店内を見て回ると割と小さめな円形テーブルのところで足を止めた。

 

「それが良いの?」

「ダメか?」

「ちょっと小さすぎるかな。これだと1人用になるからね。もう少し広めの二、三人で食事が取れるやつのほうがいいと思うよ」

 そうだな、これだと誰かと一緒に食事するときに食器が全部のらないだろうな。

 

 ただ

「なんで俺が自分の部屋で誰かと飯食うのを前提に話しているんだ」

「そりゃ普通するでしょ。輝だって、彼女の1人や2人作って部屋で一緒にご飯食べて、夜には彼女とイチャイチャするんでしょぅ〜?あと、あたしも時々ご飯食べに来るから」

 どうやらこの人は定期的に俺の部屋に遊びに来るつもりのようだ。今はまだ、俺の部屋には何もなく来ても面白く無いから来ていないだけなのか。

 

「あ、それともわざと小さいのを買って大きめの食器置いてご飯は人数分用意して、彼女と寄り添うながら食べたいんだぁ〜」

 ゲスい顔でおちょくって来る。もういい、この人の言う通りにしよう。

 諦め、俺は明日香の言う通りの2、3人用のテーブルを見つけ覚えるのが面倒だから、制服のポケットにしまって置いたスマホで写真を撮って置いた。続けてカーペットもどこにでもある水色のカーペットを写真に撮った。

 

 家具店での用事がすみ俺たちは次に行く場所、洋服店……洒落て言うならブティックへ向かった。

 

「輝って、今服ってどれくらい持ってるの?」

「それは、学校指定のものを含めるか?」

 俺の問いを聞いて明日香は顔を硬ばらせる。

 

「………えっと、含めるって言ったらどうなるの?」

「制服が2着、体操服が3着、ジャージ上下で1着だ」

 因みに下着は持って来たのと無料で売られていたので7着ある。

 

「休日とかどう過ごしてんの?」

「普通に部屋で図書館から借りた本なんかを読んでいるけど……」

 なんで、急に休日の過ごし方を聞かれてんだ?

 

 

 

 

 

 

「着いたね。輝はどんな服買っておきたいんだっけ?」

「……うーん、夏服……かな?」

 5月が始まればすぐに夏が来る今更春用の服を買う気にはなれない。

 

「オッケー。あ、そうだ輝。あたしが輝に似合う服選ぶから輝はあたしに似合う服を選んでよ」

「唐突に何言い出すんですか……」

「そうと決まれば、とりあえず一旦別れて、服を各々選んでみようか。決まったら試着室の前に集合ね」

 勝手に決めて勝手に言い出して、明日香は速攻で選びに行った。

 

 はぁーーー。なんか面倒なことになった。確か俺は5月に買う予定の服を見に来ただけのはず。それなのに、なんで俺は今明日香の服を選ぶことになった。めんどうせぇ、何度でも言おう、めんどうせぇ。取り敢えず、明日香に似合いそうな服を1着選んで試着室に向かおうとすると面倒な奴に会ってしまった。

 

「あれ、新道くん?どうしたの?」

 その人物の名は櫛田 桔梗。俺のいるクラスのアイドル的いや、もしかしたらもう学年のアイドル的存在かもしれない。どうしたものか

 

「櫛田こそどうしてここにいるんだ?」

「私は今、平田くんや池くんたちと施設を見て回ってるんだ。新道くんもよかったら一緒にどうかな?」

「悪いけど、今知り合いと似たようなことしてるから遠慮しておく」

「そっかあ、残念だなぁ。じゃあまた別の日に誘うね。それと   

「ねぇねぇ、櫛田ちゃん!この服、櫛田ちゃんに似合う思うんだけどきてみてくれないかなって……なんで、新道がいんだよ!!」

 ナイスタイミングだ池。このままだと、俺は櫛田に連絡先を教える事になるとこだった。

 

「偶々、偶然会ったんだ。気にするな。それじゃあ、櫛田」

 そう言い、俺はそそくさとその場を離れ明日香との集合場所である試着室に向かった。

 

 ………忘れてた。確か、池の奴、櫛田に自分が選んだ服きてもらおうとしていたな。

 

「あはは、また会っちゃったね」

 俺が試着室に向かうと後を追うようにというか本当に後からついてきていた櫛田と池が合流してきた。

 さらに試着室に着くと平田、軽井沢、松下、森、山内、綾小路と一緒に遊びに来たであろう人たちがいた。

 

 そしてすぐに

「うわ!輝、もう決めたの早っ!」

 明日香も来た。という事は

 

「新道!おまえ、なんであんな綺麗な人と一緒にいるだよ!!彼女なのか!?説明しろ!」

「そうだ!そうだ!しかもあの人って確か部活の説明会にいた先輩だよな!」

 案の定池と山内が突っかかって来た。はぁ、今日って厄日か何かか?

 

「おお〜。何々、君たち輝のクラスメイト?」

「え、あ、ひゃい!」

 いきなり美女が目の前に迫ってきたのに驚いたのか池がきょどった。いやー面白いものが見れたな〜。

 

「えーと。この人は俺が中一の頃世話になった先輩の仲村 明日香先輩だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「よろしく〜」

 簡単に双方の紹介を終わらせると明日香はすぐに

 

「ささ、まずは輝から先に着替えてくれよ。服大量にあるんだからさ」

 他の奴がいるのをお構い無しに無理矢理、服と一緒に試着室に放り込まれた。もうさっさと終わらせよう。俺は渡された大量の服を次々と着て見せた。一緒に見せるはめになった平田たちからは社交辞令なのか本心なのかわからないが高評価だった。

 結果、俺は明日香が選んだ中で気に入った服4着を後日買うことにした。

 そして、平田たちと別れ予定通り調味料を見るついでに晩の食材を買いにいつものスーパーへ行きデートが終わる。と思いきや

 

「それじゃあ、一旦解散。晩ご飯食べて、夜の7時に2年の寮に来て」

「まだ何かあるのか?」

「ふふふ。それは、来てからのお楽しみ。ヒントとして言うなら良い汗をかけるとこ。後、着替えも持って来てね」

 顔を赤らめて言っているが絶対エロい展開にはならない。それに着替えがあるってことは……

 

「風呂か……」

「あちゃー、もう当てちゃうの」

「2年の寮の風呂は1年のと違うのか?」

「残念だけど、行くのは銭湯だよ」

 銭湯………

 

「どう、行く?」

「………………そうだな、デカイ風呂は好きだし」

「よかった〜〜〜」

 

 

 

 

 

 夜の7時、約束通り俺は明日香と銭湯に向かっている。

「久しぶだね〜。輝と銭湯に行くの」

「……そうだな」

 明日香と一緒にいたのは中学1年の1年間。その時住んでいたアパートには風呂がなかった。おかげさまで、その時期俺は一緒にアパートの友達と明日香とよく銭湯に行っていた。

 

「着いたよ」

 外観は何処にでもあるゆの字の暖簾がかけてある銭湯だ。

 

「ここ、入浴は無料だけどタオルとかは有料だぞ」

「はい」

 俺の文句に対して明日香はサッと俺の分のタオルを渡す。

 

「残念だけどここは混浴じゃないから、先に上がったら待っててね」

「そんなの期待してない」

 てか、学校内の銭湯で混浴はないだろ。

 

 銭湯の中は思ったよりも普通だった。十数人が同時に入浴しても問題のない広い風呂が1つ。もっと、ジェットバスとか色々あるかもと期待していたが無いのか。

 まずは、身体を洗うとするか。それと、風呂以外に何かないか見て回るか。………あまり人が居ないな……明日香が言っていた寮から距離があるのが理由か?

 風呂場を歩き回っていると俺はある扉を見つけた。

 

「サウナか……」

 あまり入ったことないけど、たまには良いか。

 サウナに入って見たところ

 

「ほう……お前が新道 輝か……」

 生徒会長がいた。いや、先客がいるのは別に良い普通だ。それより、俺が来ることを知っていた……どうやって、明日香が伝えたのか?なんで?

 

「いつまでそこて突っ立っているつもりだ」

「あ、あぁ……」

 生徒会長に催促され、俺はサウナ室に入った。そこまで広くない為、俺は生徒会長の横に座った。

 

「もう、学校で迷うことは無いな」

「ええ。その節はどうも」

 そういえば、この人と初めて会ったのって学校で迷子なっていた時だったな。

 

「ところで…話が変わるが、生徒会長さんには妹とかいるのか」

「脈絡がないな。なぜそんなことを聞く?」

「クラスメイトに堀北って女子がいるんだよ」

 まぁ、同姓ってだけで関係ない場合はあるが、雰囲気も何処となく似ているし兄妹の可能性の方が高いな。

 

「………その、女子の名前は」

「鈴音。堀北 鈴音だ」

「そうか。……鈴音め。ここまで追って来るとはな」

 やっぱり兄妹なのか。だが、こいつの顔……

 

「随分と嫌な顔をするんだな」

「嫌な顔もするだろう。鈴音が俺の妹であることが周囲に知られれば、恥をかくのは俺なのだからな」

 それはよく、兄弟で出来のいい方が褒められ悪い方がもっと出来のいい方を見習えって奴の逆バージョンか。

 

「要するに、あんたにとって妹は迷惑な存在と……」

「そういう事だ」

「……だがな、人ってのは多かれ少なかれ他人に迷惑かけて生きてることだし、妹ってだけで邪険しなくてもいいだろ」

「どうだろうな。鈴音には致命的欠陥がある。それをアイツは全く気づいていない」

「へぇー。でも、人は完璧じゃねぇんだ。欠陥があるのが普通だろ」

「……随分と弁護をするな」

「別に……ただ、事実を言っているだけだ」

 その一言を聞くと生徒会長は静かにサウナ室から出ようとした。

 

「まぁいいだろう。お前のような男がいれば少しは面白くなるだろう。……それと1つ忠告をしてやろうクラスは一蓮托生、あまり蔑ろにしないようにするんだな」

 そう言い残し、生徒会長はサウナ室から出て行った。一連托生ってことは……ヤバイな。

 これは所謂………後の祭りってやつか。

 

 

 

 

 

 

 銭湯から出ると既に上がっていた明日香が待っていた。風呂上がりな為、身体が熱っていて少し妖艶さを感じる。

「今日は楽しかったね。またデートしよ」

「確かに……たまには良いかもな」

「よし、じゃあ今度はいつにする?」

 たまにはって言ったのに、もう次のことを考えるのか……

 

「悪いけど、もう少しポイントに余裕がある時にしてくれ」

「ははっ。5月にはポイントが入るのにもうポイントの心配なの?」

「………ポイントが入るのならな」

「………マジ?」

「マジ」

 ……ほんと頼む、ポイントよ入ってくれ。

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