ようこそ適当主義者のいる教室へ   作:キルルトン

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孤立する者

「新道!おまえ、最初っから知ってたんじゃないのか!?」

 茶柱先生が居なくなってからの休み時間、いきなり俺は池に問い詰められている。

 

「なんのことだ?」

「とぼけてんじゃねぇぞ!おまえ、先輩の1人と仲いいだろ。どうせ、入学式にその先輩からポイントが下がることを聞いて自分だけ減らさないようにしていたんだろ!」

 ほほう、意外にも筋を通しているな。もっと支離滅裂になると思ったのに。

 

「本当かよ。新道、なんで言わなかったんだよ!言ってくれてりゃ、俺たちだってポイント無駄に使わなかったぞ!」

「私なんか、昨日ポイント全部使っちゃったのよどうしてくれんのよ!」

「本当だ。ポイントのことを言えば、クラスのポイントも0じゃなかったんだぞ!ふざけんなよ………!」

 ………………くくくっ、あー、おっかしい〜〜〜

 

「おい!なんか言えよ!」

「あ〜〜、ウザって〜〜〜」

 俺は気だるそうに悪魔のような笑みを浮かべ、言い放った。

 

「なにがおかしいんだ?」

 未だ怒りが収まっていない幸村が声を荒げた。

 

「だって、おかしいだろ。例えば……池。仮に俺がポイントが下がるかもしれないって言って素直に従うか?」

「そんなのするだろ!」

「どうかな。友達でもないただのクラスメイトにポイントが下がるかもしれないから節約しろとか、授業中私語をしないように言っても俺の勝手だとかうざがるだけじゃないのか」

「ぐぅ………」

「そ、それでも他に方法があるだろ。平田や櫛田に言ってもらうとか」

 黙り込む池に代わり幸村が食い下がり気味に反論した。

 

「そうだな、それは良い手だな」

 池たちが反撃の兆しがきたと感じた瞬間

「だが、それを平田たちが信じるのか不明だ。仮に信じたとしてもそのことを真面目に受け止めるかもわからない。考えすぎなだけじゃないのかと一蹴されるのが関の山だ」

 怒涛の勢いで幸村の案を論破した。

 

「そ、それでも………」

 まだ食い下がるのか……やれやれ

 

「どうやら、茶柱先生や高円寺の言う通りこのクラスには愚か者が多いな」

 そう言い残し、俺は静かに教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 ガタンっと俺は自販機で飲み物を購入した。これが俺の初ポイント消費だ。ちなみに買ったのはコーラだ。

 

「………うっ。コーラってこんなに炭酸キツかったけ」

 今まで、水や調味料なしの料理と山菜定食しか食ってなかったからな。刺激物に舌が驚いた。

 

「あ!新道くん。見つけた!」

「……櫛田」

 一服していると櫛田が駆け寄って来た。俺を連れ戻すつもりなんだろう。

 

「あ、あのね新道くん。池くん達を怒らないで、みんな混乱していただけだからね」

 どうやら櫛田は俺が怒って教室から出たと思っているようだ。まぁ、あの状況ならそう考えるだろう。

 

「別に怒ってなんか無いけど」

「ほ、ほんとうに?」

「ああ」

 本当に1ミリも怒っていない。ただ、可笑しくて呆れてしまっただけだ。だってそうだろ。いくら嘆いても、ポイントは戻ってこないんだ。どれだけ俺に難癖つけても自体は何の変化もしない。そんな事するよりも、さっさと切り替えて今後どうするか考えた方がいいのに頭いい幸村まで俺への批難を辞めないなんておかしすぎるぞ。

 

「それじゃあ、教室に戻ろっか」

「え!なんで、俺教室に戻る気ないけど」

 どうして俺が教室に戻ると思ったんだ?

 

「や、やっぱり……怒ってるの?」

「いいや、全然」

「じゃ、じゃあなんで?」

 恐る恐る聞いて来る櫛田。別に怖がる必要ないだろ。

 

「単純に行く意味がないからだ」

「行く意味がない?」

「茶柱先生が言ってただろ。遅刻しようがサボろうがもうポイントが下がることはないって」

 そう、今なら究極的に言えば問題行動起こし放題だ。

 

「確かに、ポイントは下がらないけどスタートラインにも立てないんじゃないかな」

「それは、どう言う意味だ?」

「今の私たちって、ビリを走っているんじゃなくて。まだスタートラインにすら立っていないんじゃないかな。0ポイントって言うのはスタートラインに立つ資格が無いっいう事だと思うんだ。今のままじゃポイントをもらうことは無理だと思うんだ。クラスの為にも一人ひとりがやるべき事をやるって意識を持たないとダメだと思うんだ」

 櫛田は真っ直ぐ俺の目を見て言った。その言葉にもその目にも嘘はなく、本気でそう思っている。

 

 しかし

「櫛田。生憎と俺はクラスの事なんてどうでもいいんだ。……だけど、安心してくれ、俺はポイントが入ったらまた真面目に授業を受けるつもりだ」

「それじゃあ、ダメだよ!それだと、新道くんのマネしてサボる人が増えちゃうよ」

 確かに、サボってはダメだ。誰かがサボればそれに同調してサボる奴が現れてしまう。

 

「だから、お願い新道くん。いっしょに教室に戻ろ」

 俺の両の手を取り上目遣いにお願いする櫛田。そこら辺の男ならこれで誰でも一発オッケーしているだろうな。普通の男なら……

 

「生憎と俺は自分の考えを変えるつもりは全くない。わかったら、早く教室に戻れよ。遅刻するぞ」

「……うん、そうだね」

 諦めたか、これで晴れて1人。何しようか……

 

「それじゃあ、私も授業サボるよ」

「え!?」

 そうくるのか……

 

「やっぱり、クラスみんなで上に上がりたいし。新道くんが味方だと、百人力だと思うんだ。だから私は、新道くんが教室に戻るって決めるまで説得を諦めないよ」

 ……ほほう、現状でどう考えたら俺を味方にすれば百人力だと思うんだ?

 

 

 

 

 

 

 新道が教室を出て教室ではより一層新道への不満を募らせた。

「さっきのって本当なのかな。先輩にポイントが減るの聞いたってやつ。もし本当なら酷すぎない?」

「だよね……もう最悪。なんであんなのと同じクラスに……」

 うーむ。今朝まで幸せな生活を満喫していたはずなんだけどな。新道のことを気にする奴なんていなかったし。もうそこら中で新道の悪口を言いまくり、事態が悪い方向へ向いて来ている。その流れに危機感を感じたのか平田が、周りを制そうと立ち上がる。

 

「皆、少し落ちついて。新道くんに不満を持つのはわかったけど、一旦落ち着こう」

「落ち着いていられるか。新道のせいでクラスのポイントが0になったんだぞ」

「その事なんだけど、全部が新道くんのせいじゃないよね」

「なんだと?」

 荒れてるな。先程、新道に食ってかかるも返り討ちにあった幸村が今度は平田に突っかかっていた。

 

「第一に本当に新道くんはポイントが減るのを知っていたのかな、僕は違うと思う」

「何を言っているだけ現に新道のポイントは10万。クラスポイントが減るのを知っていたから使わなかったんだろ」

「そこだよ。クラスポイントが減るの知っていたなら、教えると思うよ。今回みたいにクラスポイント0だったら新道くんに振り込まれるポイントも0ポイントなんだから」

 月初めに振り込まれるポイントはクラスポイント×100のポイントが振り込まれるシステム。仮に新道がわざとポイントが減ることを言わなかったらクラスポイントが0になるのは火を見るよりも明らかだ。そして、自分にも被害がくることもわかっているはず……つまり、平田が言いたいのは

 

「新道くんは多分、ポイントが減ることは知らなかったと思うんだ」

「それじゃあ、なんであいつはポイントを使わなかったんだ」

 ここで平田の口が紡がれた。結局のところそこで詰まる。ポイントを減ることを知らなかったらポイントは使われている。ポイントが減ることを知っていたからポイントを使わなかった。なぜ、新道がポイントを使わなかったのかこれが説明できない限り。新道の容疑は晴れない。

 

「特に意味なんてないんじゃない?」

 平田の代わりに新道の弁護をしたのは意外にも平田の彼女である軽井沢だった。正直、軽井沢が新道の弁護をするとは思わなかった。むしろ、池たちといっしょに文句を並べているとさえ思った。

 そう思う理由は、以前みんなで学校の施設を見て回っていた時、偶々新道と会った。その際、軽井沢だけが新道のことを恐ろしく警戒していた。その警戒する軽井沢を見ていた為かオレは軽井沢は新道のことを嫌っていると考えていた。

 

「特に意味なんてない……って、そんなわけ無いだろ!」

 幸村が声を荒げるも軽井沢は飄々と答える。

 

「だって、新道って意味わかんないじゃん。この前の水泳だって、ポイント貰えるって言われてたのに予選で本気出して本番で流したりメチャクチャなことしてたじゃん」

「うぐ………」

 確かに、ポイントが減るを知ったならあの時は是が非でもポイントを取ろうとするはずだ。

 

「だからさ、こんなくだらない事に時間使うより別のこと考えよ」

「うん。軽井沢さんを言う通りだ。それで良いね幸村くん」

「……ああ」

 まさか、軽井沢がこの場を収めるとはてっきり櫛田あたりが収めると思ったのに。だが辺りを見渡しても櫛田の姿が見当たらない。どうやら新道を探しに行ったようだ。

 

 そして、落ち着きを取り戻す教室で、平田が教壇に立つ。内容は来月のポイント獲得のための協力の要請だった、遅刻や私語などをやめる必要があると伝える。

 しかし、その申し出に危惧した意見を須藤が出す。それは改善してもポイントが変わらない点。真面目にしてもポイントが増えないならやる意味が無いと。結局、須藤は場の居心地の悪さなの中教室を出た。

 さらに、櫛田から新道もサボるとメールを貰ったらしく平田の苦労は絶えないようだ。

 

 

 

 

 

 

「新道くんって、本当に友達欲しくないの?」

「いきなり何だ?」

「うん、ちょっとね。自己紹介の時、友達必要ないって言ってたのにちゃっかり先輩の人と仲良くしてたから」

 まあ、友達とかはいてもいなくても本当にどうで良いんだよな。自己紹介の時はこうすると櫛田がどうするのか気になったからやったってだけだし。

 

「特別欲しいとは思ってないのは本当だ。明日香とは、中学の時仲良くしていたからそれが続いている……要は腐れ縁ってやつだ」

「それじゃあ、他の転校先とかで友達って言える人とかいたの?」

 どっだったか。えーと、1人、2人、3人……

 

「……割といたかな」

「へぇー。じゃあ、その明日香さんみたいに居たりするのかな新道くんの友達」

「………………どうだろう。少なくとも、Dクラスには居ないな」

「本当に?」

「ああ。まあ、俺が一方的に忘れているのかもしれないだけかもしれないけど」

 実のところ、1人だけいる。ただ、同姓同名なだけの別人だと俺は思っている。何故なら、そいつと俺の知っている奴との雰囲気が合致しないからだ。

 

「…………………………読み終わった」

 今更だが、俺たちがいるのは学校内にある図書館だ。

 政府からの支援を受けている学校であるだけあって殆どの施設が最新鋭に整えられている。この図書館も並の高校とは比べ物にならないほど大きな図書館だ。

 

「読むの早いね」

 既に俺は3冊ほど読み切り、4冊目の本を読み始めている。その光景を櫛田はただ、じっと見ている。もっと説得してくると思ったのに……

 

「新道くん!」

 図書館の入り口から俺を呼ぶ声がした。平田だ、さらに池や幸村と俺と揉めていた奴らも一緒に来ていた。櫛田が呼んだのか。

 

「新道、そんなにヘソを曲げないでくれよ〜。俺たちだって、悪いって思ってんだからさぁ」

「……あの時はすまなかった。だから、これ以上問題を起こさないでくれ」

「新道くん。クラスの為にも新道くんの力が必要なんだ。クラスに戻ってきてくれないかな」

 三者三様の説得を聞き。というか、うち2人は説得なのか?と気になる言い方だがまあ良い。俺の考えは変わらないんだから

 

「櫛田にも言ったが、ポイントが減ることがないんだから授業を受ける気は無ぇよ」

「お前も須藤と同じ理由か……」

 俺の考えに目頭を抑える幸村を横に平田が俺の前に出て提案する。

 

「新道くん。もしかしたら何だけど中間テストで高得点を取ればポイントが増えるかもしれないんだ」

「その根拠は?」

「茶柱先生が言ってたでしょ。この学校は生徒を実力で測る中間テストの結果がよかったら学校側も僕たちの実力を認めてポイントをくれると思うんだ」

 今知れている情報から出せる推測を平田は俺に提示した。なかなか良い線を言っている。

 

「そうだな。それじゃあ、中間の後から真面目にやらせて貰うよ」

「えっ!」

「おい、新道。良い加減にしろよ」

 俺の返しに驚く平田をお構いなしに幸村が不服をもらす。

 

「今回のお前の小テストの点数わかってるのか?0点なんだぞ。普通は赤点を取らない為にも必死に授業を受けるんじゃないのか」

「それはどうだろうな、小テストが0点でも中間テストが赤点になるかはわからないだろ」

 幸村の文句に俺はただ飄々と答える。それを聞いて幸村は深い溜息を吐いた。

 

「はぁぁ……そうか、やはりお前もそういう奴か。平田、俺はもう戻るぞ。そのバカは退学するから関わるだが無駄だ」

「幸村くん!」

 それは言い過ぎだと声を荒げる平田。しかし、幸村は振り返りもせず出て行った。

 

「幸村の言う通りそんな奴ほっといて櫛田ちゃんも教室に戻ろうぜ」

 図書館から出て行く幸村を皮切りに池も櫛田を連れて出て行こうとするが

 

「ええっ……でも……」

「そうだよ。行こう櫛田さん」

 出るのを渋る櫛田を一緒に来ていた女子生徒が無理やり連れて行った。残ったのは平田1人。休憩時間も残りわずかとなり平田もついに諦めた。

 

「新道くん。僕ももう戻るよ。いつでも、教室に戻って来て良いからね。それと、これ僕の連絡先、困ったことがあったら連絡してね。相談に乗るから」

 こうして平田は、俺に自分の連絡先を書いた紙を渡し図書館から出て行った。何というイケメンな対応なんだ。もし、俺が女だったら今ので確実に平田に惚れてたな。それはそうとこれでやっと、落ち着いて本を読める。

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