ようこそ適当主義者のいる教室へ   作:キルルトン

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人間が決して逆らえぬもの

 久しぶりに授業に出て見たら

「たうあ!?」

「どうした綾小路、反抗期か?」

「い、いえ、ちょっと目にゴミがですね……」

「いや、目にゴミが入っても『たうあ!』は言わねぇだろ」

 綾小路が奇声を上げた。堂々と後ろを向き綾小路にツッコミを入れると視界の端に見える堀北が射殺すような目で睨み、コンパスを握りしめていた。……まさか、あれで刺したのか!?

 5月も1週間が過ぎ、クラスポイントを全て失ってしまい。プライベートポイントを一切獲得できなかったDクラスの生徒たちは授業態度を改めていた。その為、全員授業中の私語などに非常に敏感になっている。その中で須藤だけが今だ改善していない。まぁ来ているだけ俺よりマシなんだろうな。ポイントが増えるわけでもないのにみんな頑張ってるなあ。

 

「みんな!先生の言っていたテストが近づいてる。赤点を取れば、即退学だという話は、全員理解していると思う。そこで、参加者を募って勉強会を開こうと思うんだ」

 授業が終わり、昼休憩になったところで、平田がクラスメイト全員に語りかける。

 

「テストで赤点を取って退学してしまう事だけは避けたい。それだけでなく勉強してクラス全体で高得点を取ればポイントの査定だってよくなると思うんだ。小テストの点数が良かった数人で、テスト対策に向けて用意をしてみたんだ。だから、不安のある人は僕たちの勉強会に参加してほしい。もちろん誰でも歓迎するよ」

 クラス全員に言っているようで実際には平田は須藤と俺を交互に見て語っていた。小テストワースト1位と2位の俺と須藤が心配なのか。だが、須藤は行こうとせず。そもそも俺は行く気がない。

 

「今日の5時からかの教室でテストまでの間、毎日2時間やるつもりだ。参加したいと思ったら、いつでも来てほしい。もちろん、途中で抜けても構わない。僕からは以上だ」

 平田が座ると、須藤、池、山内、俺を除く赤点組や、平田目当てであろう女子たちもこぞって平田の元に駆け寄った。

 

 それはそうと昼飯なににしよっかな〜

「君が授業を受けるとは意外だな。シャイニングボーイ」

 昼飯をどうしようか考えていたら。高円寺が話しかけてきた。

 

「基本的に暇だからな。俺に何か用か、高円寺」

「なに、これからランチを食べようと考えているのだが一緒にどうかね?」

「何か狙いでもあるのか?」

「狙い?そんなものは無い。ただの気まぐれさ。嫌なら、無理強い話しないよ」

「いや、たまには良いだろ。面白そうだ」

「では行こうか」

 こうして、俺と高円寺という意外なようでそうでもない組み合わせで昼食を食べることとなった。

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ、シャイニングボーイ」

「着いたって……ここで食うのか?」

 高円寺が選んだ場所はなんとカフェだった。ここは女子率が非常に高く、男2人で来るようなとこではない。店内に入ればさらに実感する女子の多さ。全体の8割はいるんじゃないか。

 他に男子はいないかと周りを見渡すといるにはいた。しかしその僅かな男子も、リア充系と言うのかチャライ男ばかり。大体が彼女と2人っきりでラブラブだったり、数人の女子に囲まれハーレムしてたりしている。

 

「おい、高円寺。ここ、居心地悪いから学食にしないか」

「嫌だね。それと、居心地が悪いのは慣れてないだけだと言えよう」

 俺の提案を無視して高円寺はカフェの奥へと進む。そこには大人数用のテーブル席と複数人の女性がいた。おそらく上級生だろう

 

「高円寺くん。遅〜い」

「遅くなってすまないね。レディーたち」

 お前もリア充系の人間だったんだな。しかも、ハーレムする方の。

 

「レディーたち。紹介しよう、私のクラスメイトのシャイニングボーイだ」

「紹介でその呼び名はやめろ!!」

 本当にシャイニングボーイが名前だと思われたらどうしてくれんだ!キラキラネームのレベル超えてるぞ!

 

「本名は新道 輝。さっきのは高円寺が勝手につけたあだ名だ」

「高円寺くんの友達ってことは、あなたも何処かの社長の息子とか?」

「……いや、俺はただの一般市民だ」

「そっか〜」

 1人の女生徒の質問に答えると全員が残念がっていた。もしかしなくても、こいつらの狙いって高円寺の金目当て……もとい、玉の輿に乗ろうとしているんじゃないか?一応、高円寺に言っとくか……いや、多分これはあいつが言い回ったんだろう。

 俺の目の前で女生徒を囲って高笑いする高円寺を見て俺は悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 昼食も終わり帰路に立った。昼食の最中高円寺は一切自分では食事を摂らず常に女生徒の誰かに食べさせてもらっていた。そのせいか、俺にも時々、あーんが来ていた。………まぁ、嬉しいか嬉しくないか言えば嬉しいんだが。

「はっはー!やはり女性は年上に限るね〜。君もそうだろ、シャイニングボーイ」

「生憎と俺は、タメか年下がいいな」

「ほーう。それは意外だねぇ、以前君が年上のレディーと一緒にいたのを見たがあれは私の見間違いだったのかね?」

 明日香と一緒にいたのを見られたのか。

 

「見間違いじゃないなだが、明日香とはただの……友達だな。それにお互いにお互いを恋愛対象に見ていないしな」

 デートには誘って来るが、恋人同士がやるようなデートというよりは、女友達と遊んでいるような感じに近い。俺にとって明日香がデートしようと言うのは2人で遊びに行こうと行っている者だと考えている。

 

「そうか、それは残念だよ。君とは色々と話しが合うと思ったが、まさか女性の趣味で食い違うとは……」

「まあ、いろいろ合い過ぎるのも気持ち悪いから、別にいいんじゃないか?それじゃ」

 話を打ち切り、俺は高円寺とは別方向へ歩みを向ける。

 

「おや、またサボるのかい?」

「高円寺こそサボらないのか?」

 むしろなんでサボってないんだ。

 

「なに、私は君ほど働き者ではないだけだよ。それじゃあ、アデュー。シャイニングボーイ」

 そう言い残し、高円寺は教室ある方へ歩いて行った。それにアデューって高円寺………それ、フランス語だぞ。

 

 

 

 

 

 

 放課後を過ぎ、夕日が帰り道を朱く染め上げる。少し用事に時間がかかり、俺は疲れた身体にムチを打ち帰宅をした。

 寮の玄関まで来るとそこには何故か荷物を持った明日香がいた。

「なにしに来た」

「遊びに来た」

 そういや言ってたな

 

「もう来んのかよ……言っておくが遊ぶ物ならないぞ」

 今月はまだ娯楽用品を買うほど暇じゃないからな。

 

「安心しろ。この通り、テレビゲーム機を持ってきた」

 そう言い、明日香は荷物からゲーム機の本体と複数あるカセットを見せた。

 

「悪いけど今日はもう疲れているんだ。それに日も暮れてるし、別の日に変えてくれ」

「大丈夫だって。いざって時は泊まればいいんだし」

 笑いながら答える明日香。そんな事されたら、あらぬ誤解が生まれてしまうんだが。俺の考えていることを気にせず明日香は俺の手を取りエレベーターの中へと連れて行かれた。

 そして明日香は俺の部屋のある階を押してつけばすぐに俺の部屋のある方へ向かう。

 何で俺の部屋の場所知ってるんだ?と思ったがすぐに管理人にでも聞いたんだろうと1人で納得した。

 

「あれ?輝、今日誰かと遊ぶ約束でもしてたの?」

 いきなりなに言ってんだ?俺と遊ぶやつなんて有栖ぐらいしか居ないぞ。あ、よく考えたら有栖ならアポなしで来そう。

 

 そう思い、俺は自分の部屋の方を見る夕日の逆光で相手のシルエットしかわからない。ただ、それだけで有栖出ないことはわかった。何たって杖を持って居ないからだ。更には何か袋のようなものを持っている。

 

 その人物は………

「何やってんだ?堀北」

 堀北鈴音。俺のクラスメイトで斜め後ろの隣人。因みに、俺と堀北はこうやってアポなしで来る間柄ではない、決して。

 

「以前、この学校についての情報を私にくれたの覚えてる?」

 情報?もしかして、ポイントの増減か今更……

 

「あれが……どうかしたのか?」

「そのお礼に料理を作ってあげる」

 ………………

 

「……なんて?」

「聞こえなかったの。夕飯をこしらえてあげる。と言ったのよ」

 ・・・・・・?

 

「………は?」

「馬鹿なの?」

 いや、言ってる意味はわかる。情報を提供したらお礼に料理を作ってもらうことになった。まあ、わからなくはない。それが、堀北でなければ。

 

「おい!輝。なんだよ、そのかわい子ちゃんは?いつのまにそんな彼女作ってたんだ?」

 明日香が楽しそうに俺の肩に組ませて聞いてくる。

 

「いやそれは無いな……で、何が目的だ?」

「言ったでしょ。お礼よ。人の好意は素直に受け取りなさい」

「そういう好意は受け取らない主義だ、悪いが帰ってくれないか。それに……俺の第六感が叫んでいる。絶対に裏がある」

「別に裏なんてないわ、人の善意を受け取れなくなったら人として終わりよ」

 いや、ある。なんたって堀北だ。飯を食ったら、何か要求されるに決まってる。

 

「そうだぞ、輝。かわいい女の子の手料理なんだぞ、とりあえず食っとけ!後悔は後でしてろ」

「お前は俺の心の中にいる悪魔か」

「悪魔っていうか……欲望じゃね」

 確かに欲望だな。この世の男が全員持っている欲望だ。だが、今回はその欲望に負けてはダメな気がする。

 

「随分と強情ね。綾小路くんは素直に私が奢ったスペシャル定食を食べていたわよ」

「綾小路と俺を一緒にしないでもらおうか」

 それから少しの間、作る、帰れの応酬が繰り広げられた。黙って部屋に入ればいいと思うだろうが、堀北は今俺の部屋の入り口に陣取っている。この状況だと強行手段を使えば、堀北も同じ手を使い無理やり入って料理を作るだろう。今、俺に必要なのはどうやって堀北に帰ってもらうかだ。俺が堀北追い返し案を考えていると明日香が勝手に堀北に声をかける。

 

「ねぇねぇ、鈴音ちゃん。実は、今日の昼休みに面白いもの撮ったんだけどちょっと見ない?」

「気安く下の名前で呼ばないで。あと、貴女は誰なの?」

「おっと、自己紹介がまだだったね。あたしは仲村 明日香。こう見えて2年なんでよろしく」

「2年生……すみません。先輩に対して無礼な態度を取ってしまって」

 おお……あの堀北が頭を下げた。先輩ってだけですごいな。

 

「良いって、良いって。あたし敬語されんの苦手なんだよね〜。だからやんないで」

「そうですか。わかりまし……いえ、わかったわ」

「よろしい。それじゃあ、鈴音ちゃん。面白い動画見ない?」

「遠慮するわ。それと、下の名前で呼ばないで」

「そんな事言わないで、面白いからさ」

 執拗に堀北に何かの動画を見せようとする明日香。なんの動画なんだ?俺にも見せてくれないかな。

 

「ちょっとで良いから見て見なよ。どこぞのシャイニングボーイが年上レディーたちにあーんされる動画」

 へぇ、俺以外にもシャイニングボーイなんであだ名で呼ばれるやついるんだ〜……って、それ俺じゃねーか!

 

「おい!居たのかよ。それに見てたのかよ!挙句に撮ってたのかよ!!」

「いや〜。危うく、爆笑して居たところだったわ……くふふ」

 今も思いだし笑いをこらえている明日香。

 

「今すぐ消せ!」

「いいけど。その代わり、堀北さんも部屋に入れよ」

「何故!?」

「だって、可哀想じゃ〜ん。彼処で輝の帰りをじっと待っていたんだよ。健気に思わない?」

 なんでだろう、最初の可哀想じゃ〜ん。が、面白そうじゃ〜んに聞こえたんだが。

 

「わかったよ。上げりゃいいんだろ、上げりゃ」

「よーし。鈴音ちゃん、輝が鈴音ちゃんの手料理食べたいって。後あたしの分もお願い」

 

 

 

 

 

 

「……どうしたの?早く食べなさい」

「………」

 どうする。

 予告通り、堀北は夕飯を作り差し出した。白米に卵焼き、味噌汁、ほうれん草のお浸し、そして魚の煮付けと和食のメニューだ。

 正直……食いたい。昼はカフェのサンドイッチを食っただけであとは何も食っていない。さらには、放課後のゲームでかなり体を動かしたからめちゃくちゃ腹が減っている。しかも横で美味い美味いと言いながら食べる明日香。

 食ったら、間違いなく何かを要求される頭ではよくわかっているのに何故俺は、ゆっくりと箸を卵焼きの方に伸ばしているんだ。

 人間……いや生物が、決して逆らえぬものがある。それは………空腹だ。……ぐきゅぅ〜ぅ、となる俺の腹。もう無理だ、罠だろうとなんだろうと食ってやる。そして、俺は卵焼きを頬張った。

 

「早速だけど話を聞いてもらえるかしら」

「……」

 そう堀北が話を切り出した。

 ………くぅ…うぅ。

 

「どうしたの、いきなり泣き出して……?」

「いや……ちょっと、美味すぎて……つい」

「そ、そう……」

 なんだか嬉しそうに聞こえるが、俺が思っていたのは……不味ければまだ、クレームのつけようがあるのに……だ。

 

「………それで、話ってなに?」

「え、ええ。そうね」

 もう食ってしまったんだ。潔く、がっつこう。そう思い、俺は白米を口の中に掻き込む。

 

「Dクラスの態度はかなり改善されたわ。でも、それはマイナス要素を削れただけで、ポイントを増やしてAクラスに上がるためには、プラスに持っていかなければ意味がない。そのためにも、新道くんには真面目に授業に出てもらいたいの。後、私が開く勉強会にも参加してもらうからそのつもりで」

「堀北」

「なに?」

「お代わり」

 俺は空になった茶碗を堀北に差し出す。

 

「……自分でよそって」

「輝、あたしのもよろしく」

 冷静にツッコまれ、俺は無言で炊飯器から明日香の分もご飯をよそった。

 

「話はちゃんと聞いていたでしょうね」

「あー。確か、授業に真面目に出ることと堀北が開く勉強会に参加することだったか」

「ちゃんと聞いていたようね」

「まぁな、そこで質問なんだが。その勉強会って他に誰が参加するんだ?」

「須藤くんに池くん、山内くん。それに綾小路くんよ」

 要するに平田の勉強会に行かない連中と巻き込まれた綾小路だけか。

 

「そうか……それなら、俺は真面目に授業を受けるだけでいいよな」

「なに言ってるの。料理、食べたわよね?涙を流しながら、嬉しそうに」

「そうだ。だからこそ、授業を受けるだけでいいんだ。理由を聞くか?」

 俺が尋ねると「勿論」と堀北は答える。

 

「簡単なことだ。俺が勉強会に参加したらまず間違いなく崩壊するからだ」

「なぜ?」

「そりゃあ、俺が綾小路以外の奴らと仲が悪いからだ」

 その理由はほぼ俺にあるがそれは今はどうでもいい。

 

「特に須藤はキレやすいからな、いきなり勉強そっちのけで喧嘩を始めるかもしれないぞ」

「それでもあなたが勉強会に参加しない理由になっていないわ。このままだとあなたは、赤点を取って退学になるわよ。いいの?」

「まず、俺が赤点を取るのを前提に話をしないでくれないか」

「それ、正気で言ってるの。小テストで0点だったの忘れてないかしら」

 やっぱ、そこをつっこまれるよな。さて、どうしたものか……小テストでやったことを言うか、でも証拠がない。

 

「………それじゃあ、こうしましょう。勉強会の後に個人的に勉強を教えるわ」

 俺が渋っていると思ったのか堀北が代案を出した。これは、有難い。

 

「ああ。そうしてくれると助かる」

「そう、そじゃあ、私はお暇するわ」

 俺の了承を聞き、帰宅の準備をする。

 

「私の連絡先よ。何かあったら連絡するわ。では、さようなら」

 そう言い残し、堀北は俺の部屋から出て行った。

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