今回は『Anoher View』が多いです。
いざ、音乃木坂へ
〜Anoher View ツバサ〜
恭君が十文字理事長に言われたことを私たちに簡潔に話してくれた。
「え…?恭君が一時期だけ転校になるの?」
私たちは動揺が隠しきれない。
今の恭君はA-RISEの精神的支柱と言っても差し支えない。
「うん…詳しい事はこのメールを読んで」
そこに書かれていたことを簡単に訳せばこうだ。
・UTXと音乃木坂の理事長は昔から仲が良かった。
・私達A-RISEの影響が大きくて、UTXを受験する人が急増してしまった、その結果音乃木坂の生徒数が激減し始めている。
・このままでは廃校の恐れがある。
・打開策として今回の「音乃木坂共学化」が挙がった
…とのことだ、正直私達の影響が大きいとの事があり少し罪悪感もある。
その一方でA-RISEの実力がそれだけ周りに認めらていると分かって、不謹慎だが嬉しくなった。
「この一件だけだけど…僕たちの影響も少なからずあるから…僕は行こうかと思っている」
恭君が渋い顔をしながら私たちにそう告げた。
「UTX入学式のライブが終わったら音乃木坂に向かうよ、それにA-RISEの活動は放課後できるしね」
「あら、そのライブは私たちだけも大丈夫よ、だから最初から音乃木坂に行っていいわよ」
テスト生が入学式に居ないのは問題だろう。
「いや大丈夫、音乃木坂の入学式は午後だしそれに…」
彼はそう言って言葉を区切る、どんな内容だろうか。
「千莉とみーちゃんの晴れ姿を見逃すわけにはいかないからね」
みーちゃん…?千莉は分かる、御園千莉…『歌姫』その人だろう。
私が疑問に思っていると隣から
「まさか…『ミュージカルの申し子』芹沢水結のことかい?」
嘘…私は絶句してしまった音楽界の若手の三巨頭と言われる3人がこのUTXに集まるというのだ。
「そうそう、だからこそ僕自身も歓迎したい」
「2人にはあなたがA-RISEメンバーというのは言ってあるの?」
「言ってないよ、だけどライブを見たら一瞬でわかるだろうね」
「すごいわね…あらもうこんな時間、この話はここまでにして今日の練習を始めましょう」
これからしばらく、恭君との練習時間が短くなる。
だけど私達も少しでも早く恭君に追いたい。
そう改めて思わせる話だった。
〜Anoher View End〜
練習が終わりそれぞれが帰路につく。
しかし今日から帰る場所が変わるのだ。
なんとか自分の親とみーちゃんの親に了承をとって(何故かみーちゃんの両親はかなり乗り気だったが)僕と千莉とみーちゃんの3人の共同生活が今日から始まる。
因みに引っ越しは昨日、業者と僕で終わらせた。
「おっと、今日は恭介の帰り道がいつもと違うのではないか?」
レーナがそう尋ねて来る。
「うん、昨日引っ越しが終わって今日から住むんだ」
隠す事でもないので素直に伝える。
「一人暮らしは大変でしょうから、今日は夜ご飯を作りましょうか?」
あーちゃんがそう尋ねて来る。
「別に一人暮らしじゃないから大丈夫」
「あら、千莉さんも一緒に住むの?」
「うん、そうだよ(みーちゃんも一緒っていうのは言わないほうがいいな…)」
「じゃあ私はここで」
最初にツバサと別れて他の2人とも順に別れた。
「ただいま〜」
まぁ…まだ誰もいないけどね。
「「おかえりなさい」」
2人の声が奥から聞こえて来た。
もちろん不審者ではない。
千莉とみーちゃんの声だ。
「2人とも、もうこっちに来たんだ」
2人は、もっと遅くの時間に来る予定だったはずだ。
「今日はレッスンがない日だったから、予定を早めたの…迷惑だった?」
千莉がそう上目遣いに聞いて来る。
すると追い討ちをかけるように。
「私も千莉とお兄さんと一緒に生活するのが楽しみで、早くきてしまいました」
とみーちゃんが言う。
「そっか、まぁ…積もる話もあるだろうから続きは食事の時でどう?」
そう提案すると。
「今日は千莉と2人で作っておきましたよ」
それは、ありがたい。
「引っ越して来た日からわざわざありがとうね」
僕はそう2人に感謝を述べた。
〜Anoher View 千莉〜
「ごめんお兄ちゃん、もう一度言ってくれる?」
「お兄さん…流石にそれは笑えない冗談ですよ」
私と水結がそういうのも無理はないだろう。
なぜなら…。
「…音乃木坂に、数ヶ月男子テスト生としていく事になった」
…とのことだからだ。
「一緒に行きたい気持ちは山々ですが仕方ないですね…でもそれが終われば一緒に通えるんでしょ?」
お兄ちゃんと一緒に学校生活が送れると水結と喜んでいたのに…。
「うん、でも結構長い時間かかると思うよ…」
私たちの気持ちは一気に重くなった
「せめて入学式くらいは来てくれますか?」
と水結が苦しげに声を出す。
水結は私よりも楽しみにしていたのに…
「もちろん2人の晴れ姿だからね」
それを聞くことができて私達は安心した。
しばらくは一緒に学校生活を送れないけど、今はそれで我慢しよう。
〜Anoher View End〜
シャワー後。
スマートフォンを取り出しチャットアプリを起動すると。
A-RISEメンバーのグループのメッセージ数が多くなっていた。
どうやら、盛り上がっているようだ。
僕は軽くチェックだけして。
『明日ライブだから程々にしておけよ』
と発言しておいた。
今日は色々あって疲れていたのでその後すぐに夢の世界へ旅立った。
〜Anoher View 水結〜
「(はぁ〜、学校生活…最初からお兄さんと送りたかったな…)」
シャワーを浴びながらそう呟く。
その声も水の音にかき消されて消えていく。
この共同生活を提案してもらった時、私は舞い上がる気持ちをなんとか抑えていた。
実際今にも、心臓がどうにかなりそうな程、緊張している。
学校も一緒だと考えると顔も合わせられなくなると思う。
だから、今回の話は慣れる為の期間と考えれば、私にとって悪い話ではなかった。
「(せめて、お弁当を作ってお兄さんに学校に食べてもらおう)」
今、私の今後の方針が決まった。
これから、頑張っていこう。
〜Anoher View End〜
今日は千莉とみーちゃんの入学式だ。
午後からの予定を考えると気が滅入るが…。
今は、目の前のことに集中だ。
「恭君、肩に変な力入ってるわ」
「今日の観客は特別なんだ、しょうがないのではないか?」
「それにしても、ツバサは恭ちゃんのことよく見てるわねぇ〜」
ほかのA-RISE3人は、とてもリラックスしているようだ。
まぁ、誰が見ていようとやる事は変わらないけどね。
…っと、そろそろ時間が迫って来ているな。
「そんじゃ行きますか」
僕が言うとみんなで、顔を見合わせた。
「We Are 〜」
「「「「A-RISE」」」」
いつものツバサの掛け声で僕たちはライブのスイッチが入った。
〜Anoher View 千莉〜
入学式が終わり新入生歓迎会に移った。
『A-RISE』というスクールアイドルがライブを行うらしい。
「水結、A-RISEって知ってる?」
ふと、水結に聞いてみる。
「知ってるのはメンバーの名前くらいかな…」
私と同じ程度の知識量だった。
「私もそれくらいしか知らない、まぁ楽しんでライブ観よ」
隣でそうだね、と頷くのが見えた。
そして、『A-RISE』の4人が出て来た。
ここで違和感を感じた。
仮面の人…斎藤光…だったかなその人の立ち振る舞いに既視感があった。
まぁ、気のせいだろう。
ライブが始まった。
30秒ほど立った時に水結に話しかけてみる。
「水結…気付いてる?」
これだけで伝われば、私の感じたことは正解だろう。
「やっぱ千莉もそう思う?」
ここで一度言葉を区切る、やっぱりそうか…。
「あの斎藤光って人お兄さんだよね?」
疑問形になっているが、声色は99%で正しいと訴えるくらいのものであった。
「私もそう思う、終わったらお兄ちゃん達のところ行ってみよう」
水結は黙って頷いてライブに集中した。
それにつられて、私もライブに集中した。
〜Anoher View End〜
ライブ終了後携帯を見てみると案の定千莉からメールが入っていた。
『今からそっちに行きたいので、場所を教えて』
やっぱりばれたか…。
このメールを3人見せて、2人がここにくる事を了承してもらった。
〜数分後〜
「それで斎藤光さん、なんで私達に相談してくれなかったの?」
やっぱりばれてた…ダンスのスタイルも変えているはずなのにな…。
なんか、凄いショック…。
「参考までに、いつ僕だって気付いたの?」
「最初の立ち振る舞いから大体は察したけど、確信したのは始まってからだよ」
「まぁ、私は始まってからやっと、お兄さんじゃないかな…と思ったくらいですけど」
予想していたとはいえ、実際にあてらられると反応に困ってしまいう。
切り替えよう、気にしてもしょうがない。
ふと、感想を聞きたくなった、何と言っても若手の期待の星達だ、新たな視点をくれるかも知れない。
「正直に言っていいの?」
「ああ、頼む」
そういうと、他のA-RISEメンバーの緊張が高まった。
「S、A、B、C、で評価すると…全体で言うと『B+』といったところかな…」
そう言って、一度区切る。
まぁ、妥当な評価だろう。
「技術はお兄ちゃんの影響あってか良いものです、しかし体力が足りませんね、良い状態を保ちながら10曲程度歌えますか?もちろん私と水結それにお兄ちゃんは実際に経験済みのことですよ」
3人は俯いてしまった、音楽界のトップとスクールアイドルのトップの差があまりにも大きくて半ば絶望しているだろう。
しかし…そこで言葉を放てる人間がいた。
「いいえ、無理だわ」
ツバサがはっきりと言い切る。
「でも、そんな事もあり得ると知ったなら、これから対策していけばいい事よ」
「それに、御園さんにそこまで高い評価をしてもらえたことが、大きいと思うわ」
流石だな…人間あんな風に言い切られたら、普通は気が滅入るだろう。
そして僕は同時に、A-RISEは音楽が大好きで楽しんでいる事を再認識させられた。
「なるほど…これがお兄ちゃんがA-RISEに惹かれた理由?」
「楽しそうだろ?」
「うん、とっても…でもA-RISEはこれ以上人数が増えないほうがいいと思う」
千莉が悲しそうな表情をする。
みーちゃんも同様だ。
「なら『候補』って形で仲間になるってのはどうだ、僕たちはスクールアイドル、必ず卒業がくる…だから1年後から参加って事で」
僕がそう言うとツバサが賛同するように。
「それがいいと思うわ、もちろんレッスンに参加して欲しいし、悪いところも指摘して欲しい」
他のメンバーもそれに頷く。
「御園千莉さん、芹沢水結さんあなた達をA-RISE候補として歓迎します」
すると2人は迷わず、そして同時に。
「「はい、よろしくお願いします」」
そう返してくれた。
これから更に、活動が楽しくなりそうだ。
「それじゃあ音乃木坂に行ってくる、放課後には戻ってくるから」
僕がそう言うと。
「今日は編入初日で疲れるだろうから、来なくていいわ」
「分かったそうさせてもらうよ」
「いつも花を送ってくれる『矢澤にこ』さんに気をつけておいてね、もしかしたら千莉ちゃんたち同様に些細な事で気づかれるかもしれないから」
あの後、A-RISEメンバーと千莉たちは互いを名前で呼ぶようになった。
そうだった、矢澤さんは音乃木坂に通っているんだった…。
「ありがとう、気をつけるね」
「そうだお兄ちゃん夜ご飯は何がいい?」
千莉が唐突に聞いてくる。
そうだなぁ…
「みーちゃんと相談して決めて、簡単なものでいいよ」
………やばい、今何気に僕みーちゃんとも暮らしている事を言ってしまったかも。
よし逃げよう。
「そうゆう事で千莉よろしく、行ってきます」
僕は走った後ろを振り返らずに…。
そして今僕は音乃木坂の前に立っている。
話によればこの学校の生徒会長に案内してもらうことになっているけど…。
そうしていると、1人の生徒がこっちに向かってゆっくり歩いてくる。
あの…立ち振る舞い…結構踊れるな…。
しかも、何処かで見たことがある印象だ…。
思い出した…、まさか僕にとってのバレエのライバルに会えるなんて…人生何があるか本当にわからない。
そして同時に僕は聞きたくなった、なぜ急にバレエ界から姿を消したのかという事を。
「お久しぶりですね…絢瀬絵里さん」
これが彼女と再び出会ってからの最初の一言だった。
水結は今作では歌の道を諦めていないので声優志望ではなくミュージカル志望という事にしました。
今後ともよろしくお願いします。