ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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ドラえもんのひみつ道具ってさ、全部ではないにしても幻想郷のキャラクターの「〇〇する程度の能力」を機械化、携行可能にしたものなんじゃね?
と言う発想から考えてみた作品です。

そもそも大長編ドラえもんが幻想郷の冒険みたいなものだったし……。


プロローグ その1

「ド、ラ、え、も~ん!!」

 

セミの声が賑やかになってきたとある日、時期はそろそろ夏休みも7月が終わろうかと言う頃に、お馴染みの声が町内に響き渡った。

今この瞬間だけなら学校の運動会でも1位になれそうな速さでのび太は自宅まで走り、その速さを殺す事無く玄関を勢いよく開け放ち、

即座に靴を器用に脱ぎ散らかし、ママの『廊下を走っちゃいけません』の叱咤も無視して階段を一気に駆け上る。

階段を駆け上った先、自室のふすまを開けて……長かったレースのゴール、と言う訳では無く今日も今日とて

日課のように自室でお茶とどら焼きを食べているであろう青ダヌキ、もとい22世紀のネコ型ロボットである親友の名を再び口にする。

 

「ねえ、ドラえもん。どこでもドア出してよ……って、ドラミちゃんじゃない。一体どうしたの?」

「あ、のび太くん。……じ、実はね……」

 

しかしのび太の予想に反して、ドラえもんはどら焼きを食べてはいなかった。

どら焼きを食べていないどころか、唐草模様の風呂敷に色々な荷物を入れてその恰好は夜逃げか、はたまた泥棒をして逃げる準備をしているかのようだ。

おまけにその傍らには全身黄色で真っ赤なリボン、ドラえもんの兄妹であるドラミちゃんまでいるのだから珍しい。

基本的にドラミちゃんは22世紀で暮らしていて、ドラえもんに用事がある時、もしくはドラえもんが呼んだ時にしか現代にはやって来ないのだ。

そのドラミちゃんがここに来ていると言う事は……? ドラえもんの道具を頼ろうと勢いよく部屋に駆け込んだものの、

ドラミちゃんの存在にすっかりそんな事も忘れてのび太の脳裏に最悪の想像が展開される。

 

 

『ドラえもんが未来に帰る』

 

 

……実際、以前にもドラえもんは未来に帰らざるを得ない事があった。

その時のび太はドラえもんの力に頼らずジャイアンとの一騎打ちで勝利を収め安心させ、ドラえもんは未来へと帰っていった。

その後ジャイアンとスネ夫の『ドラえもんが帰って来た』と言う当時ののび太にはあまりにも残酷な嘘に対してドラえもんが最後に残していったひみつ道具「ウソ800(エイトオーオー)」を使用し、嘘と真実を逆転させたままドラえもんはもう帰ってこない、と言った為に本来ならばもう現代には来れない筈だったドラえもんが再び現代に帰って来れたという懐かしい思い出がある。

のび太にとってその再来を予感させるには、今のドラえもんの格好は十分すぎるものだった。

 

「あら、のび太さんこんにちは。お兄ちゃんてば、本当は定期検診を毎年必ず1回は受けなくちゃいけないの。これは未来のロボットが必ず受けなくちゃいけない法律でも決められた“ロボットの義務の1つ”なんだけど、お兄ちゃんてば全然受けてくれないから、とうとう国立ロボット病院から強制的に入院するように強制措置が取られちゃって……多分1週間くらいなんだけど帰らなくちゃいけないのよ」

「え、1週間帰っちゃうの?」

「うん、でも……のび太くん大丈夫? 僕がいないとのび太くんは何もできないじゃないか」

 

ドラミの説明に目を潤ませながらいやだいやだと駄々をこねる、まるで子供のようなドラえもんを目の前にして、道具を出してくれと言えるのび太ではなかった。

もしドラミの説明が本当だったとするのなら、ドラえもんがずっと残ってくれていたのは自分のためじゃないか。

だからのび太の口から出てきたのは、道具を出してではなく、素直な行ってらっしゃい、の言葉だったのだ。

 

「何言ってるんだよ、ドラえもんの健康の方が大事じゃないか。それに前みたいに一生帰ってこれない訳じゃないんだろ? 任せてよ、1週間くらい」

「大丈夫? ジャイアンたちにいじめられたりして泣いちゃったりしない?」

「しないしない、安心して。それじゃあ、もし泣いちゃったら帰ってきたドラえもんにありったけの小遣いでどら焼き買ってあげるからさ」

「ふふっ、そうならないように気を付けるんだぞ」

 

こうして、最後まで涙を浮かべながらドラえもんは机の引き出しの中に消えていった。

そんな親友の姿を見送りながら、ついさっき空き地でのやり取りを思い出しのび太は盛大なため息を一つ吐くのだった……。

 

 

 

 

                  *         

 

 

 

 

 

「それでさ、その湖のほとりにあった神社が山ごとまとめて消えちゃったんだってさ」

「スネ夫、そんな訳ないだろ? ドラえもんの道具じゃあるまいし」

「そうだよ、ジャイアンの言う通りそんなの誰かが作った作り話に決まってるじゃないか」

「でも、もし本当なら一体なにがあったのかしら」

 

のび太たちがいつも集まる空き地、土管の前でいつもの4人・・・のび太、スネ夫、ジャイアン、しずかたちはスネ夫の手にした本の内容に耳を傾けていた。

それはとある県で、少し前に消えた神社の話。

曰く、湖のほとりに建てられていた神社が、そこにいた巫女の少女もろとも一夜で消え去ってしまったと言うのだ。

もちろん本にするにあたり、内容には多少の脚色が成されているのだろう。

おまけに4人はドラえもんと過去に未来、地底に宇宙、挙句には異世界まで数々の冒険をしてきた思い出がある。それらの経験は、ちょっとやそっとの怪談話や不思議な話程度では動じなくなるだけの経験でもあった。

 

「そう思うでしょ? でもほら、この写真を見てよ」

 

が、スネ夫もそんな事は承知と言わんばかりに他の3人にとあるページを開き見せつける。

神社のあった場所はぽかりと抉れ、今では湖の一部になっていると言う説明と共に、本ではその場所と思しき湖の岸辺の写真が載せられていた。

その写真は確かに不自然に丸い形にぽかりと岸辺が抉れている事を3人に示していた。

 

「ほんとだ……」

「うそみたい……」

「へぇ……」

「でさ、僕はパパに言ったんだ。『夏休みの宿題としてこの神社の事を調べてみたい』って。そしたらパパ乗っちゃってさ、別荘も借りて夏休み中使って調べようって言いだしてさ」

 

3人が3人とも何も言わずに写真を凝視している中、スネ夫が得意げに言葉を続けた。

が、のび太としては面白くもなんともない。なにしろこの後に続く言葉は分かっていたからだ。

 

「もし良かったら、ジャイアンにしずかちゃんも一緒に来ない? いろいろまとめてさ、夏休みの宿題共同研究で発表しようよ」

「スネ夫、心の友よ!!」

「スネ夫さん、ありがとう」

 

意外と涙もろいジャイアンがうれし泣きをしながら絞め殺さんばかりの勢いでハグを決め、スネ夫が白目を剥く。

そう、スネ夫お得意のこれは3人用なんだ。である。

今回もスネ夫は今さら思い出したかのようにのび太に視線を向けて口を開いた。

 

「あ、のび太はダメだからね? フィールドワークも必要だし、いろいろ図書館や町の人からも話を聞いたりしなくちゃいけないんだ。ノロマののび太がいたら終わらないよ」

「違いない、のび太がいたら全然進まなくて困っちまうぜ」

 

 

……そーらきた! そーらきた!!

 

 

のび太からすれば来るのが分かってましたと言わんばかりのスネ夫の言葉に乗っかるようにジャイアンも言葉を続ける。

ここまでくると様式美とでも言いたくなるスネ夫とジャイアンのコンビネーションだ。

そしてこの後に続く言葉もまた、一種のお約束でもあった。

 

「なんだいそんなの! ちーっともうらやましくなんかないぞ!! 僕なんか、もっとすごい誰も行った事のない場所へ行って、そこの事を調べてやるんだ!!」

 

そう言うが早いが、のび太は空き地から飛び出すように駆け出していた。

背後でジャイアンやスネ夫、しずかが何かを言っているように聞こえたけれども、今ののび太にとってはどうでもいい事だった……。

 

 

 

 

 

こうして話はのび太の部屋へと戻る事になる。

   




さて、大長編ドラえもん東方編、はじまりはじまりです。
ある程度の流れは考えていますが、ちょっとは当初の予定より変わっていくかもしれません(汗

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