ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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また遅くなりすみません。
現在例大祭の原稿がまだ終わっていない状況です(滝汗
〆切のデッドライン超える寸前なんだよな……実はorz




気を取り直して、いよいよのび太が博麗神社から神社の外へと出発します。
さてさて、一体どんな冒険が待っているのやら……?

ちなみに章タイトルは「のび太とふしぎ風使い」のパロディですね。
今後もそう言ったタイトルのパロディは取り入れていくつもりです。
……そもそも作品のタイトルがねじ巻き都市冒険記のパロディだし(汗


Chapter1.のび太とふしぎ(すぎる)風祝
目指せ! 妖怪の山


 魔理沙の口から語られた妖怪の山にあると言う守矢神社。

 その守矢神社こそが、のび太が幻想郷に来るきっかけともなった、外の世界から消えてしまった謎の神社である可能性が高いと言う驚きの情報。

 そんな情報があるのに行かないと言う選択肢は当然のび太にはない。

 守矢神社が外の世界でスネ夫たちが調べようとしている神社なら、こちらがもっとすごい内容で調べてやろうと息巻きながら早速行ってみようとして、のび太は肝心な事に気が付く。

 

「霊夢さん、魔理沙さん。その……妖怪の山にあるもり、や? 神社ってどこに行けばあるんですか?」

「「あ…………」」

 

 そう、のび太の言葉に二人ともようやく気が付いたのだ。のび太は幻想郷の地理について全く知らないと言う事を。

 妖怪の山の守矢神社と言われたところで、のび太にとってはどこにあるのかさっぱり見当もつかないと言う事を。

 なにしろどこでもドアで幻想郷のどこかにやって来てからは八雲紫の手によって、スキマ経由で博麗神社へと送り込まれた。

 そしてそこから1日経ったものの、のび太は博麗神社の敷地から外へは一歩も出ていない。つまりのび太にとってまだ幻想郷とは博麗神社の中でしかなかったのだ。

 外にどんな世界が広がっているのかはまだまだ未知の世界である中、いきなり行ってみろと言われても方角も、何があるのか、そもそもどんな建物なのかも想像もつかない。

 例えるなら、今ののび太は海底ハイキングに出かけた際、日本海溝の底で荷物もライトも全部失い、前後不覚となってしまった状況みたいなものと言ってもいいだろう。

 そんな右も左も知らない中いきなり、準備もなしに行くと言うのはいささか無謀すぎた……と言いたい所だけれども。

 

「ねえのび太、その……のび太は守矢神社の場所を知らなくても、どこでもドアがあれば大丈夫なんじゃないかしら?」

「あ…………」

 

 今度は霊夢たちではなくのび太がぽん、と手を打つ番だった。

 そう、霊夢の言う通りのび太にとってはどこでもドアがあれば、そんな不安もどこ吹く風。

 ドアを用意してただ一言『守矢神社へ!』と希望すればいいのだ。

 そうと決まれば思い立ったが吉日、と言わんばかりにのび太はスペアポケットに手を突っ込みどこでもドアを取り出そうとして……。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

この霊夢の一言がなければ、のび太はどこでもドアを取り出していたはずだったのに、霊夢の制止に思わずのび太はその手を止めてしまう。

 

「……へ?」

「どうした霊夢!? のび太に行かせるのはやっぱりまずいのか?」

 

スペアポケットに手を突っ込んだまま、一体どうしたのかと不思議そうな顔をするのび太。

 そしてのび太が守矢神社に行く事に何か問題があるのかと、霊夢の言葉に魔理沙が問いかける。

 守矢神社まで、妖怪の山を経由していくのならばともかくどこでもドアで一息に守矢神社まで直接向かってしまうのならば、リスクも何もないはずだ。魔理沙の視線は霊夢にそう訴えている。

 そんな二人に一体何が問題なのか答えるように、厳かな口調で、霊夢は口を開いた。

 

「まず、おそうめん全部食べてからにしましょう?」

「「…………はい」」

 

 そう、霊夢の言葉通りまだ机の上にはそうめんがたっぷりと残されている事を、まだお昼を食べている最中だと言う事を完全に失念していたのだ。

 そんな訳で、昼食を再開する3人。

 3人が黙々と声を発する事もなく、そうめんをとり、めんつゆにつけ、つるつるとすする、の行動を繰り返す事で残っていたそうめんの山も次々に消えていく。

 そして……。

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

 そうめんの山は、今度こそきれいさっぱり無くなっていた。

 ちなみに、霊夢は普段からあまり食材が手に入らず、たくさん食べられる機会が少ないのか『まだまだいけるわよ』と涼しい顔をしている。

 一方の魔理沙はと言うと、居間にごろんと横になり『もうお腹一杯なんだぜ』と実に満足気だ。

 そして肝心ののび太はと言うと……。

 

「守矢神社へ!」

 

 早く守矢神社へと行きたくて仕方がないのか、食べ終わるが早いが早速スペアポケットへと手を入れて、どこでもドアを取り出していた。

 取り出したドアの前で、目的地に守矢神社へと設定すればこれで準備は完了だ。

 ようやく待ち望んだ場所へ行けるのだと、のび太は勇んでドアノブに手をかける。

 

「……それにしても便利な道具だなこのドアは。自分の思った場所に一瞬で移動できるなんてさ、これがあればどんな異変が起きても首謀者の所へ出掛けていって、すぐさま解決だぜ」

「確かにそうよね。むしろ定期的に幻想郷を回って、誰かが怪しい企みをしていたらその場で叩きのめして罰金を払わせる、なんてのもいいわね」

「おっ、それいいな! 異変を起こす前に異変を解決!」

 

 守矢神社に出発しようとするのび太を他所に、そんな物騒かつこれまでの異変を起こした6ボスが聞いたら泡を吹いて卒倒しそうな会話をする霊夢と魔理沙の二人。

 当然のび太には二人が何を言っているのか、知る由もない。

 だからのび太は、その内容が幻想郷に暮らしている人にしか分からないものなんだと気にしない事にし、ノブを回してドアを開けようとして……。

 

 

 

『……バンッ!!!』

「……痛っ!?」

 

 

 

 本来ならしないはずの音に、のび太はもちろん霊夢と魔理沙までもが、一体何事かとその視線をどこでもドアへと向ける事になったのだった。

 まさか、ドアを開けようとした直後に何かにぶつかるなどとは思ってもいなかった3人とも、一体どうしたものかと互いに顔を見合わせながら沈黙を守っている。

 

「「「………………」」」

「痛ったぁ……なんでこんな所にドアがあるのよ!!」

 

 いや、沈黙ではなかった。

 少しだけ開いたドアの向こう側から、どうやらちょうどドアが開くタイミングでその場に居合わせてしまったらしい誰かの声が聞こえてくる。

 おまけにその声の主はひどく気が立っているようだ。無理もない、全く予想外のドアとの接触事故を起こしたのだ。これで気分を悪くするなと言う方が無理と言うものだろう。

 だが、気分を悪くしただけで済めば良かったのだろうが、ドアの向こうの人物はよほど虫の居所が悪かったのか、あるいはジャイアン並みに短気な人物だったらしい。

 

「どっせい!!」

「わぁぁぁぁっ!?」

 

 と威勢のいい掛け声とともに、どこでもドアの向こう側から思い切りバン! とドアが閉められてしまったのだ。おまけにただ手でバタン、と静かに閉めたのならばともかく、その名も知らない誰かは何かハンマーのようなモノで叩いたようで、どこでもドアの面がみしり、と軋み音を立ててヒビが入るほどの勢いで閉められたのだからたまったものではない。

 つまり、そんなドアの向こう側から押し返されたと言う訳で。誰かがドアにぶつかった事で扉を開ける事を中断していたのび太はその勢いをまともに受けてしまう事に他ならない。

 結果として、どこでもドアに押し返されたのび太は情けない悲鳴を上げながら見事な後転を繰り返しながら博麗神社の居間の壁まですっ飛んでしまったのだった。

 

「う、うーん……いててててて……」

「おい、大丈夫かのび太?」

「僕は何とか……。そ、それよりもどこでもドアは!?」

「ダメみたいね、煙を吹いてるわよ」

 

 壁まで吹き飛ばされて転がってしまうと言う予期せぬ事態に遭遇したのび太。

 横になっていた魔理沙もさすがにこれは無視できず、むくりと起き上がり駆け寄ったところで、がば、と思い出したように慌てて起き上がりどこでもドアの様子を確認するけれども、既にどこでもドアは霊夢の言う通り、バチバチと放電して煙を噴き上げていた。

 素人目に見ても、この状態で安心して使える、とは言えないだろう。

 そんな博麗神社を離れてその頃、妖怪の山のとある場所では……。

 

 

 

 

 

 

 

「一体どうしたんですか? 急に御柱なんて振り回して」

「いや、境内に見慣れないドアがぽつん、と立ってるから何よこれ、と思って近寄ってみたらいきなり開いてぶつかって来たのよ。で怪しかったから御柱でちょっと殴ったら、また消えちゃったんだけど……一体何だったのかしらね?」

 

 二人の女性により、そんな会話が成されていたりする。

 ちなみに、片方は博麗の巫女の色違いのような格好。そしてもう一人はのび太の胴回りほどもある巨大な柱を軽々と片手で持っていた。

 もちろんのび太も、またこの二人も、お互いにそれぞれ何が起こっていたのかは知る術もない。

 彼女たちにとってもただ、幻想郷だから外の世界の常識からは外れた不思議な事も起こる、程度の出来事でしかなかった。

 それよりも、今ののび太にとってはどこでもドアが故障した事の方がはるかに大問題だった。

 守矢神社に行けなくなったと言うレベルではない、どこでもドアが無かったらのび太は外の世界……つまりは自分の家にも帰れないのだ。

 いくら夏休みの自由研究のために幻想郷へとやって来たと言っても、ここで永住するつもりはのび太にはない。

 

「ど、どうしよう……ドラえもーん!!」

 

 劇場版ならこのままタイトルと共にこんなこといいな♪ できたらいいな♪ と主題歌でも流れてきそうな、とても見事な叫び声。

 だがあいにくと、このまま大長編へと突入はしないしドラえもんが助けに来てくれる事もない。

 とにかくのび太が自力でどこでもドアをどうにかしなければ帰れないのだ。

 どうしようかとうろたえているのび太を励ますように、白黒の魔法使い魔理沙が任せておけ、とでも言わんばかりに自分の胸を叩いた。

 

「よし、そういう事なら私がのび太を守矢神社まで連れて行ってやるよ。上手くいけばどこでもドアも直るかもしれないぞ?」

「え、で、でも……? どこでもドアって、未来の道具なんですけど……?」

 

 魔理沙の言葉に困惑するのび太。

 確かにのび太にとっては、どこでもドアが故障した今守矢神社まで連れて行ってくれると言う魔理沙の申し出は間違いなくありがたいものである。

 しかし、問題はその次の言葉だ。どこでもドアは現代の道具ではなく、ドラえもんが持ってきた22世紀のひみつ道具。どうひっくり返っても、現代の技術で修復できるような代物ではない事はのび太も重々承知している。

 それとも、幻想郷の妖怪の山とは、あるいは幻想郷とは外の世界と比べてここだけ科学技術が進んだ22世紀なのだろうか?

 

「妖怪の山にはね、いろいろな技術を持った河童、って言う種族がいるのよ。もしかしたらどこでもドアだって、河童にかかれば修理してもらえるかもしれないわね」

「そう! だけどその前に守矢神社に向かって、神様たちに挨拶すれば河童にきっとドアの修理してもらえるよう、お願いしてもらえると思うんだ。だから、まずは河童じゃなくて神社、って訳だ」

「へぇ……それなら、お願いします」

 

 そんな疑問が顔に出ていたのだろう。

 霊夢が、どうして妖怪の山に行けばどこでもドアが直る可能性がある、などと魔理沙が言ったのかその理由を説明してくれた。

 どうやらのび太にとっても、この幻想郷はまだまだ分からない事が多いらしい。

 だが、そもそもどこでもドアが故障しなくても守矢神社までは向かうつもりだったのだ。移動手段がどこでもドアから魔理沙のホウキに変わっただけで移動時間に違いが出る程度の差しかない。のび太はすぐに、魔理沙の申し出を受けたのだった。

 そうと決まれば魔理沙の動きもまた、初めて博麗神社に飛んできた時と同様に素早かった。

 境内に出てきた魔理沙はすぐにホウキを用意すると颯爽とまたがり、のび太をその後ろに乗せて身構える。

 丁度それは『魔界大冒険』で、ホウキに乗れないのび太がしずかのホウキに乗せてもらった時の状態とよく似ていた。

 

「それじゃあ霊夢、ちょっと妖怪の山までのび太を連れて行ってくるぜ。のび太、しっかり捕まってろよ? 超特急で守矢神社まで運んでやるからな」

「霊夢さん、ちょっと行ってきます」

「魔理沙、間違えてもスピード出しすぎてのび太を落っことすんじゃないわよ? のび太はタケコプターがないと空を飛べないんだから……って、もう出発しちゃったの? なんだか嫌な予感がするんだけど……」

 

 スピードについては幻想郷でもかなり上位に入る魔理沙のホウキ。だから、のび太のような慣れない子が一緒にいたらふり落とされる可能性が往々にしてあるため、霊夢が魔理沙に注意した時にはもうそこには魔理沙とのび太の姿はなかった。

 なにしろその時には、もう魔理沙のホウキは妖怪の山目指して、一直線に空を切り裂くように守矢神社を目指していたのだから。

 そんなせっかちな、既に出発してしまった魔理沙とのび太を心配するように霊夢は一言、ぽつりと漏らすのだった……。

 

 

 

 

 

 

                  * 

 

 

 

 

 

 

 妖怪の山、それは天狗や河童と言った妖怪が拠点としている幻想郷におけるパワーバランスの一角である。

 幻想郷に来たばかりののび太は知らない事だが、何しろ天狗たちは排他的で一つの独立した文化を保っている。

 もしこの妖怪の山に守矢神社が無かったら、今でもこの場所は天狗や河童たちの拠点として人里の人間たちを誰一人寄せ付けない、まさしく瑕疵なき要塞そのままに、幻想郷の要衝としてあり続けただろう。

 けれども、守矢神社がやって来た事によりその立ち位置は多少軟化し、今では不可侵区域でない場所に設けられた参道を通る事なら認められるようになっている。

 その参道の上空を、魔理沙のホウキが通過していった。

 単純に直線での最速勝負なら美夜子さんの絨毯よりも速いかもしれない。なにしろ徒歩での参拝とは違い、空中は何も邪魔になるものがない。

 その猛烈なスピードそのままに、妖怪の山に設けられた長い参道を眼下に見下ろしながら、魔理沙は守矢神社の鳥居と言う名のゴールを全速力で駆け抜けた。

 そのあまりの速さに、守矢神社の境内に一陣の風が吹き荒れ、一体何事かと守矢神社の風祝が慌てたように社殿から飛び出してくる。

 飛び出してきてから、何があったのかと周囲を見回して、ようやくこの風の原因が魔理沙だと理解したらしい。

 

「一体何事ですっ!? ……って、魔理沙さんじゃないですか、どうしたんですかそんなに急いで」

「おう早苗、今日は私じゃなくて守矢神社に用がある子がいてな。その子を送りに来たんだ」

 

 勢いこそ今日は特別にあるものの、魔理沙が来るのは別段珍しい事ではない。

 ただ、その急ぎ方が普段とは少し違う。おまけに守矢神社に用がある、と言っても()()()()()()()()()()()()()()()。それとも、誰かこれから来るのだろうか? あるいは幽霊でも乗っているのか?

 そんな事を思いながら早苗が魔理沙に尋ねた。

 

「守矢神社に送りに……って、誰かいらっしゃるんですか? 見た所魔理沙さん以外誰も居らっしゃいませんけど……?」

「へ……?」

 

 早苗の言葉に、魔理沙が後ろを振り返ると……そこには早苗の指摘通り、誰もいなかった。

 本来ならばいないといけないはずの、のび太の姿さえ。

 博麗神社でのび太を乗せた時には、間違いなくのび太はいた。でも、守矢神社に到着した今は、いない。つまりこれが意味する所は……。

 自分が何をしてしまったのかようやく理解したらしく、カタカタと震えながら青い顔をした魔理沙の顔から、冷や汗が後から後から溢れてくる。

 

「…………ど、どこかに落っことしてきたーっっっ!!!」

 

 そして、守矢神社の境内に魔理沙の叫びが木霊した……。

 

 




のっけからのび太、妖怪の山にて遭難!!

まあ、のび太は振り落とされるのは日本誕生のリニアモーターカーごっこ以来二回目ですし、無事だと……いいなぁ?
ただ、妖怪の山って天狗や河童、風神録に出てきたキャラ以外にも、登場しなかった野良妖怪も多くいると思うんですよね。
妖獣みたいなのが跋扈している、鬱蒼とした森林地帯。

ああ、のび太の運命やいかに!?





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