ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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お待たせいたしました。
のび太の幻想郷冒険記、敵か味方か、のび太の前に現れた謎の少女の正体は!?
そしてのび太は守矢神社にたどり着けるのか?



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『河童の新兵器人里に流出か!? 天狗に対する大規模攻勢の可能性も考慮』 ~XX日の文々。新聞一面より抜粋~

「そこの人間! ここは我らの縄張りです!」

 

のび太が謎の声のする方、つまりは上へと見上げてみるとそこにいたのは白い髪をした女の子。

やはり彼女も幻想郷の住民であるらしく、タケコプターも何もつけないまま空中へと浮かんでいる。

ただし、その格好はのび太がこれまで幻想郷で会った他の誰よりもだいぶ違っていた。

 

まず第一にのび太の目を引いたのは彼女の頭についている犬のような耳と、袴から出ているふさふさの尻尾。

少なくともそんなものが付いているのは、アフリカのコンゴ盆地の奥地、通称ヘビースモーカーズフォレストの中心に位置する『バウワンコ王国』の住民か、あるいははるか宇宙のかなたにあるアニマル惑星に住むチッポたちくらいしか、今まで冒険をしてきた世界でものび太にはとんと覚えがない。

そして何よりも決定的な点が一つ。

目の前の犬? っぽい女の子はのび太の事を「()()()()()」と呼んだ。

そう、人間と。

 

大臣ダブランダーの計略により暗殺寸前まで追い詰められ、すんでのところで国外に逃亡したバウワンコ王国の王子ペコも、のび太たちに自身の正体を明かしてはからはのび太たちの事を人間、また王国の外の世界を人間の世界と呼んでいた。

けれどもあくまでペコたちは、犬が進化した結果生まれた種族であってその外見はまさしく直立した犬である。

またアニマル惑星のチッポはのび太たちを異星人として、違う世界の人間であるとはっきり認識していたしなによりもアニマル惑星は地球との距離があまりにも遠すぎた。

つまりは、目の前の剣をこちらに突き付けながらにらみつけて来ている女の子は、バウワンコ王国もアニマル惑星も全く関係がないと言う事だ。

 

 

……では、あの少女はいったい何者なのか?

 

 

そこまでのび太は考えて、趣味のあやとりで工夫の末に『おどるチョウ』を編み出した時と同じくらいに頭を働かせてから、一つの答えにたどり着く。

いや、答えにたどり着くより先。それ以前に答えは少女が最初に口にしていたのだ。

守矢神社を目指す前に魔理沙から教えられた、ここ妖怪の山で彼女はのび太の事をそこの人間と呼び、さらには妖怪の山を自分たちの縄張りであると主張した。

ならば、答えは一つしかない。すなわち、妖怪であると。

それなら、人のような格好ではあるものの耳や尻尾が生えている事も、大きな包丁かあるいは鉈のような剣を自分の方へと向けて突き付けている事だって十分に納得がいく。

 

「い、犬の妖怪!?」

「いかにも! ……って、何を言わせるんですか! 違います!! 私は妖怪の山の白狼天狗、犬走椛(いぬばしりもみじ)。犬ではなくお、お、か、み、です! そんな事より人間よ、ただちに立ち去りなさい!」

「そ、そんな……だって霊夢さんは夜は妖怪の時間だって言っていたのに」

 

そしてのび太の妖怪、と動揺する言葉を肯定しつつも犬ではなく狼であると、わざわざ一句一句、区切りながら大事な事だから間違えないようにと主張する犬耳の少女改め、白狼天狗の犬走椛は改めてのび太に向けて山から立ち去るよう宣告を行ったのだ。

ちなみに、妖怪の山に初めて立ち入ったのび太は知る術もないけれども、これは白狼天狗の仕事の一環であり、侵入者を見つけた場合警告し、侵入者がそれでも引かない場合は応戦……と言うのがその大まかな流れとなる。

が、そんな事はまったく知らないのび太からしてみたらこれは驚きと恐怖以外の何者でもなかった。

なにしろ霊夢と紫から説明を受けた『夜は妖怪の時間』と言う話から、昼間は妖怪は休んでいる……すなわち幻想郷の妖怪は夜行性、と言う認識でいたのだ。

 

「夜しか活動しない? 何を言っているのです、ここは妖怪の山。妖怪が自分の縄張りにいて何がおかしい!? それに、侵入者がいればそれを排除するのが我らの務め、昼も夜も関係ない!」

 

……それが椛がのび太の認識をひっくり返すような発言をするものだから、のび太は完全に椛を誤解する事になってしまった。

それはすなわち、椛がどうしてここに来たのか? というのび太の中に生まれた疑問に対する答え。

自分の上空で身構えている椛は『昼間から人間を食べに出てきた』妖怪であって、霊夢や紫の説明してくれた内容と全く話が違うじゃないか、と言う訳である。

ちょうど椛の持っている刀はおあつらえ向きに、のび太を捌いて調理するのに都合がよさそうなサイズをしている事もあって、のび太の中では椛の存在は完全に自分を食べにやって来た恐ろしい人食い妖怪として固定されてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

「やだーっ、助けてードラえもーん!!」

「この子供は蒸し焼きにするとおいしそうだな」

「つまみ食いしないでくださいよ? この子供はから揚げにするんですから」

「いや、蒸し焼きにしろ。私はさっぱりした料理が好きなんだ」

「私あぶらっこいの好き」

「から揚げも蒸し焼きも好かん! 塩ゆでにしろ」

「「はは……っ! かしこまりました」」

 

 

 

 

 

 

このままだと目の前の妖怪少女に食べられる。

そう考えるのび太の頭の中では、白狼天狗たちの住処に連れていかれたのび太を前にして、天狗の炊烹長たちが出刃包丁よりも大きな刀を研ぎながらそんな会話をしている……そんな光景が浮かんでいた。

もちろん椛にそんなつもりはさらさら無いのだけれども、誤解が解けていない以上、のび太にとって椛の存在はおっかない人食い妖怪でしかなかった。

とは言え、誤解していると言う意味では、それは椛にも当てはまる事だった。

椛の職務からしてみれば、のび太の存在は縄張りを侵す侵入者でしかなく、彼女はそれを追い払いたいだけなのだから。

ここでのび太はただ守矢神社に行きたいだけ、そして椛は妖怪の山に侵入してきた侵入者を追い払いたいだけ。

その互いの目的がお互いにしっかりと伝えられていれば、のび太は守矢神社へと椛の案内の下、連れて行ってもらい、椛も侵入者は迷子の参拝者だった、と言う事ですんなりと話は進んだのだろう。

けれども悲しい事に肝心の部分が伝えきれていないせいで、二人の盛大な誤解と勘違いはどこまで行っても平行線のまま。

結果として、のび太と椛の間には緊迫した空気が流れ続けていたのだった……。

 

 

 

「……さぁ、おとなしくおうちに帰りなさい!」

 

互いの間に流れる空気にとうとうしびれを切らしたか、三度目の正直と言わんばかりに椛がのび太に対して宣告を下す。

いや、宣告だけではない。

三回も警告したのだからこれ以上の温情をかける義理などありません、とばかりに弾幕を放ってきたのだ。

 

「わぁぁぁっ!! だ、弾幕!?」

「知っているのなら話は早い! 当たればどうなるかも当然分かっているのでしょう? 痛い目にあいたくなければ、今すぐおうちに帰ることです!」

 

そう言うが早いが、椛からのび太の「の」の字のごとく、渦を巻くような弾幕が後から後から放たれては、それらがのび太めがけて襲いかかる。

山に迷い混んできただけの、人里に暮らす普通の人間なら、この弾幕を見ればたちまち腰を抜かしてしまい逃げ帰るだろう。

実のところ椛はそう踏んでいた。

のび太が普通の人間なら、だが。

 

確かにこれが初めての弾幕だとするのなら、のび太も椛の思惑通り、腰を抜かさんばかりに驚き、また慌てふためきながら逃げ出していたかもしれない。

けれどものび太にとっては、既に弾幕とは一度経験した事のあるものなのだ。

おまけに幻想郷の実力者達ならともかく全くそれまでの冒険でもした事のない弾幕勝負であって、しかも相手は幻想郷でもかなりの実力者である霧雨魔理沙。

その魔理沙をほとんど相打ちとは言え、負かした経験があるのだ。

となればのび太にとってはいきなり弾幕勝負に持ち込まれた事で驚きこそしても、いざ始まってしまえば何の事は無い、博麗神社で経験した魔理沙との勝負と同じように、自分のフワフワ銃で勝負するだけでしかなかった。

むしろ、空中にいるとは言えその場に留まりながら弾幕を展開してくる椛よりも、空中を高速で移動しながらそれでもなお的確にこちらに命中するような弾幕を放ってくる分、魔理沙との勝負の方がのび太にとっては大変だったかもしれない。

 

「……どうして避けない? まさか、勝負を捨てたのですか!?」

「……………………」

 

だから、自分の弾幕が押し寄せる中、全く慌てる事なく冷静なのび太の姿に、椛が訝しげな表情を見せたその時、椛は見た。

椛自身の「勝負を諦めたのか?」の言葉にも答える事なく、沈黙を貫いていたのび太が手にした銃をゆっくりと両手で構えながら、その銃口を向ける様を。

 

『この臭い、火薬? あれは銃!? まずい!』

 

他の人妖よりも優れた椛の、白狼天狗としての嗅覚と視覚とが、それを捉え、とっさに回避を試みたのと銃口が火を吐き出したのとは、ほとんど同時だった。

 

 

 

……バギュン! バギュン! バギュン! バギュン! バギュン! バギュン! 

 

 

 

 

「「…………」」

 

妖怪の山の清流の中、六発の銃声が響き渡る。

何の事は無い、のび太がフワフワ銃を連射し、椛に向けての一発と、それから自分に向かってくる弾幕のうち、本当に自分に命中する危険のあるものを残りの5発で撃墜したのだ。

が、それも本当に一瞬の事。

すぐにこだましていた銃声は消えてゆき、後にはまた元のようにさらさらと流れる小川のせせらぎ。小鳥のさえずり、木々のざわめき。

戦いなど何も無かったかのように、静かな自然の風景が戻ってくる。

そんな中で、弾は当たったのか? はたまた当たっていないのか? のび太も椛も、お互いに黙ったままピクリとも動かず、次にどんな動きをされてもいいように、神経を研ぎ澄ませていた。

 

何しろ弾幕を避けるでもなく、銃で迎撃して無効化するなどと言う対応を取る相手は椛も哨戒の任務に就いてからこの方、一度も経験した事が無かったのだ。

椛が戦った事のある相手、となれば記憶に残っているとなれば風神録異変の際に妖怪の山へとやって来た霊夢や魔理沙だろうか?

それでも、その二人でさえ弾幕を撃墜すると言う芸当をやってのける事は無かった。

あくまでも互いの弾幕を回避しつつ、相手に弾幕をぶつける。それが弾幕と言うモノの戦い方だったはずだ。

その幻想郷の常識を、あっさりと覆して見せた子供が人里からやって来て迷子になった、ただの子供である訳がない。

だからこそ椛ものび太の披露した神業的な射撃の腕を見て、すぐにのび太に対する認識を改めていたのだ。

それは白狼天狗としての、いや妖怪としての本能にも近い部分がはっきりと告げる『危険だ』と言う警告。

が、そんな沈黙はすぐに椛の変化と言う形で終わりを告げた。

 

「……? な、なんですかこれは!?」

「あ、ごめんなさい。それはフワフワ銃と言って命中すると傷つけたりはしないで、相手の身体を丸くして三時間、空中にフワフワと浮かべてしまうんです」

 

椛が驚くのも無理はない。

おそらく椛が白狼天狗として生きてきて、初めての経験であろうフワフワ銃の効果。

身体がまん丸くなり、風船のようにプカプカと空中に浮かんでしまうと言う、その効果が表れる……。

そう、のび太の撃った一撃は確かに命中していたのだ。

けれども椛もただやられっ放し、と言う訳ではない。

自分の身体が風船のように膨らむ、と言うこの不可思議な出来事について、すぐに今の自分自身に降りかかった現状について冷静に分析を開始していからだ。

この辺りは、同じフワフワ銃を受けた魔理沙と比べても大きな違いと言えるだろう。

 

『これは何ですか? フワフワ銃などそもそも見た事も聞いた事もありません。いや、確かにあの子供はそもそも名前の通り小型の銃を自分に向けていた……。ならば原因は間違いなくあの銃にあるのでしょう。しかし、この幻想郷であのような道具を作れる技術を持つとなると……』

 

思考を巡らせ、自分の身体の変化よりも先にこの変化を引き起こした道具の出所について椛は推理する。

そう、たとえ自分は倒れても、後に続く仲間に情報を残すために、同じ轍を踏ませないために。

その推理の果てに、椛は恐ろしい事実に気が付いてしまった。

今目の前にいる子供は、妖怪の山の秩序を崩壊させるその始まりに過ぎないのだと言う、恐ろしい事実に。

 

人里の子供がこんな恐ろしい武器を作れるはずがない、これは人間だけでなく白狼天狗以下、天狗族、を見回した所でこんなものを作れる者はいないだろう。

そもそも、妖怪の山は非常に閉鎖的であり仮に作れる者がいたとしてもこんなものが開発されれば、間違いなくその技術は周囲に知れ渡るはずだ。

……となればその出所はどこなのか?

椛にとって、そんな高い技術力を持っている者の心当たりは一つしかない。

そしてそれがもし椛の想像の通りだった場合、妖怪の山として、天狗族として決して看過できない事でもあった。

 

すなわち、河童による新兵器の人間への譲渡。

 

もし極秘に開発した兵器を、天狗にも秘密にしたまま人里へと流出させたのだとしたらとんでもない事になる。

その最悪の事態を回避するためにも、目の前の子供には悪いが天狗の詰め所まで来てもらう必要が出て来てしまった事を椛はすぐに判断すると、膨らんだ身体をどうにか動かして、緊急事態を周囲に知らせる為の最後の手段、呼子を取り出すとそれを口にくわえる。

この呼子を吹けば、他の仲間が増援としてやって来る。

後は人間の子供を逮捕して、尋問なり拷問なりする事で一体どの河童が人里に新しい発明品の武器を流したのかを聞き出せばいい訳だ。

だが、椛は知らなかった。

自分の身体を風船のように膨らませたのび太の銃が、河童の新兵器ではなく未来の……二十二世紀に造られたひみつ道具だと言う事を。

まあ、未来の道具だと想像と言うのもそれはそれで無理な注文なのだけれども。

 

「おのれ人間、河童から兵器を譲渡されただけでなく、そのまま妖怪の山に侵略をしてくるとは許し難し!」

「へ!? か、河童!?」

「問答無用! 言い訳は我らの里まで連行した後でゆっくりと聞きます。それまでに命乞いの言葉でも考えておくがいい!!」

 

 

 

 

 

 

…………ピィィィィィィィィィィィィィィッ!!!

 

 

 

 

 

 

一方いきなりのび太はのび太で、いきなりひみつ道具を河童をから渡されたなどと言われても、そもそものび太自身はひみつ道具の出どころが未来の道具なのだと知っているため、椛が何を言っているのか分かろうはずもない。

確かにひみつ道具をスペアポケットからと言う形で借りてはいるものの、どちらかと言えば道具の主は河童ではなく狸である。

……当然、そんな事を言った日には地球破壊爆弾の一つや二つ持ち出して怒り狂うのは目に見えているので決して口にはしないが。

兎にも角にも、最後の最後までお互いに誤解、そしてすれ違いが生じたまま妖怪の山に、椛の吹いた呼子のつんざくような音が、木霊した。




嗚呼、なんという盛大なるすれ違い。
確かに妖怪の山で見た事もない道具を見せられたら、天狗たちにすれば河童じゃ、河童のしわざじゃ! と言う事になってしまうのでしょうね。
おまけにそれを人間が持っているのですから、天狗としてはただただ脅威としか映らないのです。
椛の呼んだ天狗の増援にのび太はさらわれてしまうのか? 魔界大冒険のように、本当に食べられてしまうかもしれないのび太の運命は!?

助けられるのは魔理沙と早苗だけだ、間に合え二人!!!

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