ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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お待たせしました。
守矢神社の異変が終わった飲み会話第三幕です。
何やら不穏なサブタイトルが付いていますが、果たしてどうなるのでしょうか?



疑惑(その1)

「ちなみに、鴉天狗の射命丸文氏を負かしたとの事ですが一体どうやって負かしたのでしょうか?」

「ええっと、その……バショー扇って言う未来の道具でブリザードを起こして吹き飛ばしちゃって……」

「未来の道具? つまり、外の世界には未来の道具があふれている、と言う事ですか!?」

「い、いえ。そうじゃないんです。僕の家に未来から来たドラえもんって言う猫型ロボットがいて、その道具を借りているんです。だから、さっきからお酒を出しているあのグルメテーブルかけも、みんな驚いてましたけど未来の道具だからああやって、いくらでも料理やお酒を取り出せるんです」

「「「「………………………………」」」」

 

 のび太への質問で次々と明らかになる、幻想郷の妖怪たちでさえひっくり返りそうになるような驚愕の事実。当初参拝にやって来る途中で迷子になったから見つけ次第保護するように、と言う通達を受けた時には妖怪の山の誰もがただの外からやって来た非力な人間の子供と思いきや、ふたを開けてみれば普通の子供どころか幻想郷でもトップクラスに非常識すぎる、未来の道具などと言う代物を持ったとんでもない子供だったのだから驚くなと言う方が無理と言うものだろう。

 この場でのび太の説明を聞いて驚いていないのは、グルメテーブルかけにタケコプター、ついでに弾幕勝負の結果フワフワ銃で撃ち抜かれ大変な事になってしまった……つまりひみつ道具の効果をすでに体験している保護者役の霊夢と魔理沙だけである。

 その二人以外にとって、非常識の幻想郷をもってしてもあり得ないはずの未来と言う世界からもたらされたひみつ道具の存在。

 しかもこれがただ口で言われただけならただの与太話と笑う事もできたろうけれども、常識と非常識が外とはまるっきり違うこの幻想郷の守矢神社で、実際にこの場の妖怪たちの目の前で、のび太が何もない所からグルメテーブルかけを使い、樽酒を後から後から際限なく取り出すと言う事をやってのけた姿をはっきりと見ている。

 妖術でも幻術でもなんでもない、妖術でどこかから空間を介して樽酒を取り寄せたのでもなく、幻術で何もない所でお酒があるように見せかけているのでもない。本当に何もない所から、モノを取り出すと言う本来ならばありえないはずの事を簡単にやってのけて見せたのび太。

 それが功を奏したようで、誰ものび太の説明する未来からもたらされたと言うひみつ道具の存在を疑おうとはしなかった。いや、鴉天狗たちにとって他に説明のしようがなかったと言うべきだろうか。

 こうして、グルメテーブルかけと言う魔法のような道具を目にした鴉天狗たちへと与えられた未来の道具と言う言葉は、彼女たち鴉天狗の想像力を大きく掻き立てたようで各々唸ったり首を傾げながら、翌日の一面を飾るであろうこの内容をどのような記事にしようかと考え始めていたその時。

 

「ちょ、ちょっと……もしよろしければ、なにかその料理を取り出せる布以外にも、未来の道具の力を見せてもらえませんか……?」

「え、他にも、ですか?」

「はい、お酒をいくらでも取り出せるあの布は私たち以外にも白狼天狗や鴉天狗、それに大天狗様に天魔様もしっかりと見ています。なので、ここにいる私たち以外はまだ見ていない道具を見せてもらいたいのです」

「え、えっと……霊夢さん、魔理沙さん、これってどうしましょうか」

 

 一人の鴉天狗が手を挙げて、グルメテーブルかけ以外にも何かひみつ道具の効果を見せて欲しいと言い出した。

 確かにお金は皆払ってもらった以上、説明はしなくてはいけないけれどもまさかグルメテーブルかけ以外に何かひみつ道具を使って欲しいと言われても、のび太自身がこの場では自分を含めて誰かが妖怪に襲われた、あるいは誰かを助けなくてはいけないと言った緊急事態でもなければひみつ道具は使うつもりはなかった事もあり、とっさの事に返事に困ってしまう。

 

「そうだな、さすがに文を吹き飛ばしたバショー扇をここで使ったら大変な事になるからな、あれはダメとして……のび太、何かこう、安全かつ見たら誰もがびっくりするようなひみつ道具はないのか? あの、今朝壊れたドアみたいな」

「どこでもドア、だっけ。あれは確かに初めて見たら腰を抜かす事請け合いね、私も腰を抜かしそうになったし。ただなんだかよく分からないんだけれども、朝急に壊れてたわよね。だから河童に見てもらったら、って守矢神社のほかに河童にも会って壊れたドアを見てもらうつもりだったんじゃなかったっけ?」

「そうだった、壊れちゃったどこでもドアが今使えればなぁ……」

 

 どうしようかと困り顔ののび太が保護者役の霊夢と魔理沙に助けを求めた結果、魔理沙が今朝守矢神社に行くために使おうとしたどこでもドアみたいな、誰かを傷つけたりする危険のない道具がないのか逆に聞いてきた。

 確かに魔理沙や霊夢が見たひみつ道具は、フワフワ銃にグルメテーブルかけや文を吹き飛ばしたバショー扇、それにどこでもドアにねじ式台風、後はどこでも蛇口と言ったもの、あくまでもごく一部のものしかまだ見ていない。霊夢や魔理沙も含めて、それら以外にのび太がどんなひみつ道具を持っているのか、この場にしっかりと把握している者は誰もいないのだ。

 だから霊夢と魔理沙にとって、タケコプターでのび太が空を飛ぶよりも衝撃的だった、どこでもドアさえ使えれば、それを見せるのが鴉天狗たちに衝撃を与えるには一番良い、と言う考えだったらしいがさすがに壊れている以上ないものねだりはできない、はずだった。

 

「どこでも……どあ、ですか?」

「ええ、どこにでも行けると言う道具なんですけど、あいにく壊れちゃってて……ん?」

 

 初めて耳にする『どこでもドア』の言葉に、鴉天狗たちがいっせいに耳をそばだてる。一体どんな道具なのか? どんな効果を持っているのか? 一言一句、外見まで含めて一切の情報を逃す事なく手に入れようと中にはカメラまで手にして何が出てくるのかを待ち構えている中、のび太の行動が一瞬ぴたりと停止する。

 のび太にひみつ道具を使って欲しいと頼んできた鴉天狗に、どこでもドアの事を説明している最中にふっと浮かんできた違和感。

 それを確認するかのように、動きをぴたりと止めたのび太はもう一度ゆっくりと、確認するかのように頭の中で考えをまとめてゆく。

 

 

 

あいにくと今壊れている。そう、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 壊れているから直してもらうために河童に会いに行く。

 そう、壊れているから、直す、直す……。そこまで考えた時、のび太の頭の中でいろいろと散らばっていたピースがカチリと一つにまとまった。

 

「あーっ!!! しまった!!!」

「どうしたのよのび太? そんなに大きな声を出して」

「何かまずい事でもあったのか!?」

 

 いきなり大声を出したのび太に、何があったのかとぎょっとしながらも心配そうに声をかける二人。

 スネ夫からびっくり箱を渡されて開封した時に上げた声……いたずらを仕掛けた側のスネ夫としずかが逆に驚くレベルの声をのび太は上げる事があるけれども、それほどにのび太が出した声は大きく、またあまりにも唐突だった。

 そんな声をのび太が出したのだから、一体何事かと心配するのも無理はないだろう。

 

 

 

「いえ、その……朝神社に来る前に壊れたどこでもドアなんですけど、神社を直した時と同じようにタイムふろしきを使えば直せたな、って思って……」

「「…………あ」」

「な、なんで忘れてたのよ(んだよ)そんな大事な事!!」

「ご、ごめんなさーいっ!!」

 

 うっかりしてた、とでも言いたげな。いや実際にうっかりしていたとしか言いようのないのび太の言葉に、霊夢と魔理沙も思わずずっこけそうになる。

 ついでに二人からののび太に対するツッコミは、互いに意識していた訳ではないだろうけれども見事に重なって見せた。やはりこの辺り、のび太はあずかり知らない事ではあるけれどものび太が幻想郷に来る以前からの長く付き合いのある二人であるから、息もぴったりである。

 逆に鴉天狗たちの視線は、それまでの期待に満ちた視線から徐々に不安なそれへと変化していった事をのび太たちは気が付いていたのだろうか?

 最初は『人間の子供、おまけに外の世界からやって来た身でありながら白狼天狗の犬走椛を撃退し、さらに格上の鴉天狗の射命丸文をさえ吹き飛ばし、勝利した』と言う天魔直々の触れ込みであったためそれ相応の期待をしていても、いざ蓋を開けてみればおっちょこちょいで霊夢や魔理沙からは叱られている、年相応な子供でしかないときた。

 こんなどこにでもいそうな、ひょっとしたら椛や文を撃退したと言う天魔の説明も、未来の道具と言う話さえも、最初からなかった、ただの出まかせ、嘘なのでは? とさえ思わせるような子供が本当に、天魔の言う通り文に勝利したのだろうか?

 そんな鴉天狗たちの顔に出ていた疑いの空気を感じ取った、と言うよりも今のやり取りを前にして露骨に不安げな目線をのび太に送っていた鴉天狗たちに霊夢がその場を代表するように、天狗たちに話しかける。

 

「あんた達、信じられないって顔をしてるけどのび太が文に勝った、って話、あるいは未来の道具っていう話を疑ってるのかしら?」

「あ、いえ。そこまでではないのですけれど……何と言うのか、どうにもしまりのない顔の子ですし、見ていると頼りなさげな子ですから、天魔様の言葉ではありますけれども、どうやって勝ったのか、と……」

「大丈夫よ、今すぐのび太があんた達にも分かるように、とんでもないモノを見せてくれるわ。だから安心して見ていなさい」

「わ、分かりました。それじゃあまずは……どこでもドア! そして次は……タイムふろしき!!」

 

 もちろん霊夢の発言はこの数日の間にのび太の持つひみつ道具、そして魔理沙と戦った時の実力をしっかりと見ているからこその発言だ。

 その霊夢から『さぁ、やっちゃいなさい』と太鼓判を押されたのび太はようやく意を決したように、ズボンのポケットから例のごとくスペアポケットを引っ張り出した。

 誰もが、しずかさえどう見てもパンツにしか見えず誤解したと言う実績を持つスペアポケット。そのスペアポケットへと慣れた手つきで手を突っ込み、どう考えても物理的に取り出せるとは思えない巨大などこでもドア(故障中)を取り出して見せる。

 どしん、と音を立てて守矢神社の境内へと置かれた、ちょっと見てもよくよく見ても、知らなければただのドアにしか見えないそれを見た鴉天狗たちのいったい何人が、そのドアの持つ効果を想像できただろう。

 そして今回のひみつ道具はどこでもドアだけでは終わらない。

 どこでもドアを取り出した後で、のび太はそのまま立て続けに再びポケットへ手を突っ込み、今度は時計の柄のついて表裏で赤と青と色が違うと言う、実に個性的な絵柄のふろしきであるタイムふろしきを取り出した。

 これでのび太の必要としている道具はそろった訳だ。

 

「後は、このタイムふろしきをどこでもドアに……。これで後は待つだけです」

「ええと、その扉に布を被せてって言うのは、何かのおまじないでしょうか? それとも、儀式か何かで?」

「少し待ってくださいね、そうすればわかりますから」

「は、はあ……」

 

 タイムふろしきの赤い側を外側にして、のび太がどこでもドアへと被せる。ここで間違って逆側を被せてしまおうものなら、どこでもドアが完全に壊れてしまうので注意する事も忘れない。

 そうして待つ事数分。

 一体のび太が何をしているのか分からないまま、何が始まるのか尋ねても待ってくれとだけ返されてしまい眺めている事しかできない鴉天狗たちと何をしているのかおおよそ理解している霊夢と魔理沙の前で『そろそろかな?』とのび太がタイムふろしきを取り払った。

 

「それじゃあ、最初に質問してきてくれた鴉天狗さん。どこか行きたい場所ってありませんか?」

「私、ですか? そうですね……ちょうどペンに使うインクが切れてしまいそうで、家に戻りたいと思っていたところですね」

「それじゃあ、どこに行きたいかを頭の中に思い浮かべながらこのドアを開けてみて下さい」

「??? えっと……『私の家』へ!!! って、アイエエエ!? 私の家、ナンデ? ナンデ!? ここ守矢神社よね!?」

「このどこでもドアがあれば、好きな場所に行けるんです。ただし、10光年以内なら……ですけど」

「すごい……」

「まさに未来の道具だ」

「外の世界では、こんなすごい道具を子供でも簡単に扱っていると言うのか……」

 

 のび太に促されるまま、実験として最初にひみつ道具を一つ見せて欲しいと頼んだ鴉天狗は自分の家と宣言し、どこでもドアを開けた。いや、ドアを開けて驚愕した。守矢神社の境内にいるはずなのに、ドアを開けた先には自分の家があるのだから。

 思わずどこでもドアの向こうと、こちら側を交互にのぞき込み一体何がどうなっているのかを確認している鴉天狗のその様子は、霊夢が博麗神社で初めてどこでもドアを体験した時と同じような反応と奇しくもそっくり同じであった。

 この自分もしていたであろう反応を第三者の目線で目撃した霊夢が笑っていたのは言うまでもない。

 そして、この行きたい場所さえしっかりとイメージできれば一瞬で移動できると言うとんでもないドアの存在、グルメテーブルかけとさらに明かされたどこでもドアの存在を見せた事で鴉天狗たちからは誰ともなく驚きと称賛の言葉が飛び交い、それに満足したらしい天狗たちの質問攻めからようやくのび太は解放されたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

「すげーっ! 外からやって来た未来の道具すげーっ! ねえねえねえ!!! これちょっと借りてもいい? 調べさせてよ。大丈夫、魔改造や自爆装置の取り付けなんてしないからさ。ねっ、いいでしょ?」

「あ、あの……君は、誰?」

「あ、ごめんごめん。まだ名乗ってなかったね。私の名前は河城にとり、河童のにとりさ。私たち河童はこうした機械をいじったりするのが大好きでね、こんなに凄い機械を見るだけでいじる事もできないだなんて我慢できなくてさ。だから、1日だけでも貸してもらって、調べてみたいんだよ」

「か、河童? うーん、僕の知ってる河童とはなんだか格好が違うような気がするんだけど……」

「細かい事を気にしちゃダメだよ。ねっ、そんな事よりもさ頼むよ、ちょっとだけでいいから構造を調べさせて、お願い!」

 

 と思ったら、鴉天狗たちの囲みが波のように引いたと思ったらその次はにとりたち河童が取り囲んできたのであった。

 ただ、その姿は鴉天狗以上にのび太の知る河童……すなわち外の世界でその辺を歩く一般人10人に聞いたら10人とも答えるであろう、背中に甲羅を持ち頭に皿のある河童とはあまりにもかけ離れた姿だった。

 最初に、出発前にも確かにのび太は妖怪の山に河童と言う優れた技術を持つ妖怪がいるとは聞いていたけれども、まさか外の世界に伝わる姿の河童とは違い、甲羅も皿も持たない種族を聞かなければ人間と言われても通用しそうな姿の女の子だとは思ってもいなかったのび太も、にとりから河童だと説明を受けてもにわかには信じられないようで、首をひねっている。

 

「ちょっと、だから調べるならまず出すものがあるでしょう出すものが? のび太の道具をいじりたければ、まずは保護者である私にきちんとお賽銭を支払ってからにしなさい。いいわね?」

「……それなら、このキュウリをやるっ! 露地栽培の無農薬、この色このつや、人里でもめったに流通しない最高級品だ!!」

「いらないわよ(んだぜ)そんなものっ!!」

「なん…………だと…………」

 

 のび太に迫る河童に対しても、鴉天狗同様に報酬を要求した霊夢(と魔理沙)。

 霊夢としては別に誰が来たところでのび太に危害を加えなければ問題はないのだ、それどころかむしろ霊夢からしてみればのび太に話を聞きたい者が来れば来るほど、素敵なお賽銭箱にお賽銭を入れてもらえる可能性が出てくるのだから歓迎こそすれ拒否をする理由などどこにもない。

 とはいえ、お賽銭が目当ての二人にとってさすがに最高級品であってもキュウリはいらなかったようで、はっきりと断った時のにとりたち河童が見せた表情は、まるで『のび太の魔界大冒険』にてデマオンの手下メジューサの魔法で石にされてしまった自分の恐怖の表情を見ているようだと、のび太は一人霊夢や魔理沙と河童たちのやり取りを前に思うのだった……。

 

 




ひみつ道具と最も親和性の高いであろう妖怪ついに河童の登場です(お賽銭代わりに差し出したキュウリは完全に霊夢と魔理沙に拒絶されましたが)。
このやり取りはかつて放送されていたアニメ、スクライドでの瓜核とイーリャンのやり取りをイメージしていましたが、あのやりとりの雰囲気を出すのはなかなか難しいですね。

さて、今回のサブタイトルですが、この河童たちがひみつ道具をいじろうとして……?
と言う所から次回はちょっと作品のタグにもある独自解釈を交えていこうと思っています。
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