ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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10月初投稿ですね、大変お待たせいたしました。
みんなも徹夜寝不足、しないように気をつけましょう。

妖怪の山でのトラブルも無事に終わり博麗神社に戻ってきたのび太。
次の目的地は宿題を終わらせるための場所として霊夢たちが教えてくれた、人里!?
さてさて、何が、誰が、果たして待ち受けているのか!?


人里に行こう(その2)

「……のび太、人里に行く準備はできたかしら?」

「はい、大丈夫です」

「よしのび太! それじゃあ人里まで行ってみるんだぜ! 遅れないようにするんだぞ!?」

「魔理沙、アンタそう言って全速力で飛ばしてのび太を振り落とした事、忘れるんじゃないわよ?」

 

 善は急げ、の言葉通り朝ご飯を食べ終わった霊夢、魔理沙、のび太は博麗神社の境内からふわりと空に浮かび上がり人里へ向けて出発した。

 ちなみにのび太はいつものように頭にタケコプターをくっつけて、魔理沙は魔法使いらしくホウキにまたがって、そして霊夢は何もなしにそのまま空を飛んでいる。

 最初は魔理沙が『さあ! 全速力で人里まで行くんだぜ!』と思い切り飛ばそうとしたのだけれども、霊夢からののび太を妖怪の山に連れて行く途中で、スピードを上げ過ぎた結果道中振り落としたと言う前科について言及されると途端に顔色を青くしてゆっくりとのび太のタケコプターに合わせたスピードに落としている。

 そうして三人、のんびりと幻想郷の空を飛んでいるがそこはのび太も常時タケコプターで空を飛んでいる事もあり、別に騒いだりと言う事はなく普段通り、当たり前のように飛んでいた。

 

「しかし、空を飛んでいても別に慌てる様子もなし。本当にのび太って何でもありだよな」

「いやー、そんな事ないですよ」

「いいえ、未来の道具かも知れないけれどもそれを使いこなすのだって一つの能力よ。もっと自分に自信を持ちなさいよね」

「そうだぜ、特に鴉天狗の文を風で吹き飛ばすなんて、私にだってなかなかできない芸当なんだぜ」

 

 そんな他愛のない雑談をしながら空を飛ぶ中、霊夢の姿を見ていたのび太はふと何かを思い出したように、おそるおそる、といった風に霊夢に訊ねた。

 

「……そう言えば、あの……霊夢さん」

「? どうしたの、のび太? そんなに改まって」

「あ、いえ。……その、霊夢さんや守矢神社の早苗さんって、実は地球侵略……と言うよりも地球人を捕獲に宇宙からやって来たロボットとかじゃないんですよね?」

「ぶふぅっ!?」

「はぁぁぁっ!!? 何言ってるのよ、私はれっきとした人間よ!」

 

 唐突に発せられたのび太のあまりと言えばあまりにぶっ飛んだ発言、と言うか質問に霊夢は訳がわからないといった声をあげ魔理沙については思いきり吹き出した。

 

「おいおいのび太、急にどうしたんだ? 確かに霊夢の実力なら幻想郷くらいは征服できるだろうけれども……それでも長年付き合ってきた私が言うんだ。霊夢も早苗も、間違いなく正真正銘の人間なんだぜ」

「魔理沙、ちょっと後で覚えてなさいよ? ……ねぇのび太、一体どうして私を見て人間じゃなくてロボットじゃないか、なんて思ったの?」

「あ、え……その……」

 

 霊夢からの質問はもっともだ。普通はいきなり他人をロボットか? などとは訊ねたりはしない。

 けれどものび太には思い出があるのだ。地球侵略にやって来たロボットとの、思い出が。

 

 

 

『のび太と鉄人兵団』

 

 

 

 かつて地球からはるか彼方のロボットが支配する惑星メカトピアでは元々は上流階級のロボットたちが下層階級のロボットを奴隷として扱っていたものの、近代になりロボットはみな平等と言う考え方が広まった結果、ロボットに代わる新たな労働力と言う名の奴隷として地球人捕獲作戦のためにやって来た少女リルル。

 スパイとして怪しまれないように地球人そっくりな姿をした彼女ともう一体、北極に前線基地を建設するために送り込まれた工作ロボット、ジュド。

 スネ夫の従兄が作成したロボット、ミクロスに張り合うために偶然から拾ったジュドを巡る果てに知り合ったリルルだったが、のび太たちが組み立てたザンダクロス(ジュドの名前を知らないのび太たちが命名した)を返すため保管してある鏡面世界へと案内したのだった。

 が、その時にあろう事かリルルはタケコプターもなしに空を飛んで見せたのだ。

 空を飛ぼうとリルルにもタケコプターを渡そうとした所で、そんな物は要りませんと言わんばかりにふわりと空を飛ぶ姿を見たのび太は思わず内心で『タケコプターなしで!? どういう人間なんだ……?』と驚いたのは言うまでもない。

 後になって考えればこれはそもそもリルルが地球人どころか宇宙人ですらなく、元々ロボットだったからできた芸当なのだと分かったけれども初めて見た時にどれだけ面食らったのかは今でものび太は覚えていた。

 だから、タケコプターもホウキも、自分の翼も使わずに空を飛ぶ霊夢や早苗を見てもしかしたら、とのび太は尋ねたのだ。

 

「……なるほどな、空を自由に飛ぶ人間そっくりのロボットか。だから何もなしに空を飛ぶ霊夢を見て、聞いたと。だそうだぜ、霊夢」

「むー、それならそうとちゃんと説明しなさいよね。いきなりロボットですかなんて聞いてくるから本当にびっくりしちゃったんだから。でも外の世界ってすごい異変が起こっているのね。だって、人間を奴隷として使うために他の世界からその、てつじんへいだん、だっけ? がやって来たからのび太と友達たち数人で、とんでもない数のの大軍と戦ったんでしょ?」

「はい、そうです……」

「実はのび太ってさ……話を聞けば聞くほど私たちの想像を上回るとんでもない事さらっとやってないか?」

「……よね。私たちが今までに色々異変を解決してきたー、って言うのがのび太の話を聞いているととてもちっぽけなものに思えてくるわよね」

「で、でも霊夢さんたちだってそのいへん、ですか? を今までに何回も解決してきたんですよね?」

「そりゃあそうだけれども、さすがにそんな数万を超えるような空を埋め尽くす敵軍に対して数人で迎え撃つなんて異変は今までになかったわよ。……それにそんな異変、絶対に起きて欲しくないし

 

 人里までの道中、のび太が経験した異変にも引けを取らない大長編の話を聞かされた霊夢に魔理沙。

 それは恐らくのび太が経験した数ある冒険の中でも最大級にとてつもない相手だったであろう鉄人兵団の話である。

 何しろその兵力は圧倒的で、東京を一夜で灰燼と化しただけにとどまらず先遣隊の三分の二をそれぞれニューヨーク、パリ、ロンドンの三方面へと送り込み、同時攻撃してあっという間に火の海に変え、さらにメカトピアから増援を求めると言う大兵力。

 最終的に兵団が暴れている地球が鏡面世界と言う、巧妙に作られた偽物の世界である事に気が付いてしまいその出入口である高井山の山奥にある湖へと世界中に散らばっていた全兵力が押し寄せ、文字通り湖の周囲全ての空を黒く埋め尽くす兵団数万あるいは数十万か。その大軍団相手に地球人の未来を賭けてドラえもん、のび太、ジャイアン、スネ夫はたった四人で戦う事になったのだった。

 おまけにこちらの武器は毎度おなじみショックガンに空気砲、スモールライトに瞬間接着銃と言う決定打に欠ける射撃武器。

 一応その火力不足を補うために改良型やまびこ山もありったけ用意し、至る所に配置したもののそれでも火力不足と、鉄人兵団の圧倒的な物量には敵わず、最後には頼みの綱、最後の切り札たるザンダクロスさえ抑え込まれる事態となってしまう。

 のび太はあずかり知らぬことであるが一対一で自分のコピーと戦わされる惑星間の代理戦争『ひとりぼっちの宇宙戦争』とどちらが果たしてマシだろうか? という規模であるこの大冒険の話を聞かされては、今まで解決してきた異変と言うものがどれだけ小規模のものなのか、と霊夢や魔理沙たちが真剣に考えてしまうのも無理はないだろう。

 ちなみにその大兵力による圧倒的な物量差で頼みの綱のザンダクロスさえ封殺され、のび太たちにはもう何も打つ手がなくなった時に逆転の一手をもたらしたのは外でもない、鉄人兵団のスパイとして地球に送り込まれていたリルルの命と引き換えに成し遂げた過去改変だった。

 のび太にとってもいまだに忘れられない人の心と機械の身体を持った少女リルル。そのリルルと同じように、何も使わずに空を自由自在に飛ぶと言う霊夢の姿を見たからこそ、ゼロに限りなく近いであろう可能性であるにもかかわらず、もしかしてとのび太に質問させたのだ。

 やはりと言うか、答えは分かり切っていたけれども……。

 

 

 

 

 

 

 

 

                  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、木々の向こう側にだんだんと瓦屋根や板葺きの屋根が見えてきた。その様子は外の世界とは全く違う、タイムマシンで出かけた昔の時代の街のようにも見える。

 もちろんそこには外の世界ならどこでも見かけるありふれたものである電柱も、ましてや道を走る車も何もない。本当に結界こそあれど現代の日本なのかと思いたくなるような風景に、今までにも過去から未来へ色々な冒険をしてきたさすがののび太も目を丸くする。

 

「霊夢さん。あれが人里、なんですか?」

「そうよ、そしてあの人里こそがこの幻想郷で暮らす人々にとって一番安全な場所でもあるのよ」

「安全って、何かあるんですか?」

「妖怪は人里に入って来たっていいんだぜ。でも人里の中では絶対に妖怪は人間を襲ってはいけない、って言う決まりがあるんだ。これをもし破ったりすれば、霊夢がその妖怪をすぐにやっつけに行くって言う訳だ。逆に言えば、夜とかに人里をもし出たりしたら妖怪に襲われたりしても人間だって文句は言えない、って訳なんだぜ」

 

 霊夢の説明に魔理沙がさらに付け足すように解説をしてくれる。

 霊夢がただ人里であると言うのではなくわざわざ安全、と口にし魔理沙がその事で意味を説明してくれたおかげで、のび太も幻想郷に来てから忘れていた事をようやく思い出す。

 のび太自身はひみつ道具で妖怪たちをやっつけたり負かしたりしていたけれどもそれはあくまでも特別な事であって、普通の人から見れば妖怪の山で出会った白狼天狗や鴉天狗などはどうひっくり返っても相手にもならない、妖怪と人間の間には力の差がはっきりあるのだと。

 でも、もしそうだとするのならその力の差がある妖怪をやっつけに行く霊夢は一体どれだけ強いのだろうか?

 

「あの……じゃあ、ひょっとして霊夢さんって強いんですか?」

「え、そりゃあ強いに決まってるじゃない! のび太、アンタ私の事を一体どういう風に思ってたのよ!」

「え、いえ……。だっていつもいつも神社でぐうたらしてるから、今の魔理沙さんの話を聞いてもどうもピンと来なくて……」

「あはは、言いたい放題されてるな霊夢。でものび太、霊夢が強いって言うのは本当だぜ。何も無い時は本当にぐうたらの化身みたいにのんびりしてるけど、一度異変が起こればすぐに動き出して妖怪変化をやっつけるんだぜ」

「へぇ……。……本当かな?

 

 霊夢がのび太のつぶやきを聞いていなかったのは幸いだっただろう。

 のび太の言葉に顔を赤く、頬をぷーっと膨らませながら『わ、私はそんなにぐうたらじゃないわよ!』と言っている所に追い打ちを掛けられたら、間違いなく怒っただろうことは想像に難くない。

 そう言う意味で、のび太は幸運だった。

 

「さて、そろそろ降りるわよのび太」

「あ、はーい」

「あの辺なんかいいんじゃないか」

「そうね。のび太、あそこに降りるわよ」

 

 人里に降りようとする霊夢の言葉に魔理沙が通りの一角、人通りの少ない場所を見つけて指差して高度を下げてゆく。

 そのまま魔理沙に続くように霊夢も降りてゆき……最後にのび太が続く、という格好でふわり、と三人は人里の通りに無事着地した。

 しかしのび太たちが暮らす外の世界では珍しい、空を飛ぶという事も霊夢も魔理沙も空を飛んで人里にやって来ることが多いのか、空を飛ぶ光景は珍しくないのか、通りを往来する人々は誰ものび太たちが空を飛んで来たことに驚く様子はない。

 

「……ここが人里かぁ」

「そう。何しろ幻想郷に暮らす人間の大半がここにいるからな、いろいろなものがあるんだぜ?」

「へぇ、面白そうですね」

「……待ちなさい、何のためにここまで来たのか分かってるの? まずはのび太の宿題が先よ」

「硬い事言うなよ霊夢、そもそもその夏休みだって、のび太の話だとまだたっぷりあるみたいじゃないか」

「甘いのよ魔理沙! そうやってまだ時間があると思って縁側でお茶を飲んでいたら、一体何回夕方になってやらなきゃいけなかった事ができなかったと思ってるのよ! いい? やるべき事はまず先にやるのよ、いいわね?」

「「……………………」」

 

 着地してから、周囲をきょろきょろと見回すのび太。確かに妖怪の山と違って人の姿は少なくはない数が通りを歩いているのが見える。しかしやはりその恰好はのび太の見慣れた外の世界の姿とは違い、皆時代劇やタイムマシンで過去の日本に行った時などに出てきそうな格好の人ばかりだ。

 それが改めてここが外の世界とは全く違う、幻想郷と言う世界なのだと言う事をのび太に教えてくれる。

 さて、そんな人里に早速魔理沙の案内で探検に出かけようとしたその矢先に、のび太と魔理沙の背中に霊夢の鋭い言葉が突き刺さった。

 その言葉も、その表情もまるで宿題をしないで遊びに行こうとした時に捕まってしまったママがのび太にするお小言のようなのだけれども、その内容はただ勉強しなさい、宿題はやったのと押し付けるようにただただお説教を行う(※のび太視点で)ママとは違い、自分の失敗談から来ているため非常に説得力がある。

 おまけについここに来る直前まで話していた内容を考えると、霊夢の実力は非常に高いと言うのだから、ママとは違って逃げる事も容易ではないだろう。

 そんな訳で……。

 

「霊夢さん、僕たちどこに行くんですか?」

「決まってるじゃない、寺子屋よ。多分今日もやってるはずだし」

「てらこや? って聞いた事が無いんですけれども、どんなお店なんですか?」

 

 のび太の左右に霊夢と魔理沙が並び、人里を歩く三人。その姿はちょっとみると、異変を起こした首謀者ののび太を逃亡を阻止するために左右を固めながら連行していく最中の霊夢と魔理沙、と言うようにも見える。

 もちろんそんな事はないのだけれども。

 そうして霊夢と魔理沙に案内されながら人里の通りを歩くのび太が耳にしたのは、外の世界では聞いた事もないお店の名前だった。

 

「そうね、子供たちが集まっていろいろと先生に歴史とか歴史とか歴史とかを教わる場所なのよ」

「だな、一応歴史の他にも読み書きそろばんとかも教えてくれるけれども基本は歴史だな」

「……? 子供が集まって読み書きそろばんを教わる場所って、どこかで聞いた事があるな」

 

 もちろんのび太は知らない。寺子屋がお店ではなく外の世界の学校と同じような子供たちに教育するための場であると言う事を……。

 知らないままに、なんだっけ? と思いながらも『お店って言うくらいだから、もしかしたら宿題とかを手伝ってくれるような場所なのかもしれない。確かにそれなら神社で一人夏休みの宿題をするよりもてらこやに行った方が楽に宿題が終わるかも』などと勝手に自己完結して霊夢たちの案内に黙ってついていくのだった。

 そこで子供たちに歴史を、歴史を歴史を 教えている先生が一体どんな人物なのかも知らずに……。




さて、まずは目的地が人里の寺子屋に決まりました(桃鉄風に)
寺子屋の意味さえまず理解していないのび太は、一体誰先生と遭遇するのか!?
果たしてのび太の頭は無事で済むのか!?

次回、乞うご期待!!!
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