ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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やめて! 慧音先生の固い頭で、のび太みたいな貧弱な子の頭に頭突きを受けたら気持ちよさそうにお昼寝しているのび太の命の火が燃え尽きちゃう!

お願い、死なないでのび太!

あなたが今ここで倒れたら、この『ドラえもん のび太の幻想郷冒険記』の続きはどうなっちゃうの?

頭突きを受けるまで文字数はまだ残ってる。ここを耐えれば、生き延びられるんだから!






今回「のび太、死すっっっッッッ!!!!!!」デュエルスタンバイ!








……だって、ねえ。
前回の感想をくださった方が軒並みこのフレーズを入れてくるんですから、急遽のび太を死なせる方向にシフトさせましたよええ。
と言う訳で、のび太死す、お楽しみに!(ぇ (なんてひどい予告w)


のび太、死すっっっッッッ!!!!!!

「……と言う訳で、今回特別に外の世界からやって来たのび太も一緒に皆と授業を受ける事になった。短い間かも知れないがよろしく頼むぞ。また、後ろにいる博麗の巫女と白黒の魔法使いは幻想郷に来て間もないのび太の保護者役だだからのび太が授業を受ける所を見ていくそうだ。みんな、博麗の巫女に笑われないようしっかりと授業を受けるように」

「「「はーい!!!」」」

「よし、それでは授業の続きを始めるぞ!!」

 

 寺子屋へとやって来たのび太は抵抗する間もないままに、慧音によって特別に外からやって来た子供と言う事で一緒に授業を受ける事になってしまった。

 最初こそ引きずられるような格好で教室に入ってきたとたん、中にいる同い年くらいの子供たちから一斉に視線を受ける事になってしまったのだけれどもそこはさすが慧音先生。

 しっかりとのび太の事を説明し、特別に授業を受ける事を説明しついでに霊夢と魔理沙と言う本来ならば寺子屋などもう利用しないはずの二人まで一緒に入って来た事についても説明を終わらせてすぐに授業へと戻っていく……のだけれども。

 

「………………………………」

 

 教室の隅に転がっている、そう文字通り眠っているのではなく、頭に大きなたんこぶを作りながら転がっている青い服を着た女の子の事を誰も気にしないのは一体どうしてなのか? それは慧音先生だけではなく、授業を受けている幻想郷の子供、それにのび太たちが受けているこの授業を後ろで見学している霊夢や魔理沙の二人も気にしていないのだ。

 普段のび太が学校でしているようにただ居眠りをしている、というのならともかくたんこぶまで作って倒れている子ともなればそう無視できるものでもなく。

 気になっておちおち眠れやしないのび太が選んだのは、先生に聞いてみると言う事だった。

 

「あ、あの……すみません」

「……ん、のび太か。どうしたんだ?」

「あ、あの……あそこで倒れてる青い服の子は、あのままにしておいて大丈夫なんですか?」

 

 おそるおそる手を上げたのび太に気が付いた慧音先生がそれに気が付いてのび太に発言を促してきたため、早速教室の片隅でたんこぶを作っている子を放っておいていいのか質問する。もちろんのび太としては、倒れている子にもしも何かあれば、と言うつもりだったのだけれどものび太の発した質問に、教室にいたのび太以外の全員……慧音先生はおろか霊夢も魔理沙も、そして一緒に授業を受けている子供たちもようやく『あぁ』と何かに気が付いたようにそれぞれ頷くのだった。

 

「ん? ああ、チルノの事か。まあ、チルノなら大丈夫だ。授業中に騒いだ挙句に吹雪まで起こそうとしたからな、叱ったんだ」

「え、し、しかった……? その、ちるのちゃんを、ですか?」

 

 慧音先生の『授業中に騒いでいたから叱った』と言う言葉、それはのび太の想像の斜め上を行くものだった。

 のび太自身も学校で先生に「ばかもん!」と叱られる事はしょっちゅうだし、廊下に立たされる事もほぼ毎日である。それでも(さすがののび太も授業中に騒いだり、と言う事まではしないけれども)たんこぶを作って倒れる程に叱られた記憶はさすがにない。

 あるいは何回も注意された上でそれでも先生の言う事を聞かずに騒いでいたから、頭にたんこぶを作る羽目になったのだろうか? と言うか、たんこぶを作って倒れる程の威力の頭突きを放つというのは、まるでドラえもんのようではないか。

 ちなみに、そのドラえもんの頭突きの威力も実はなかなか尋常ではなかったりする。

 

 

 

 

 

 

『のび太と雲の王国』

 

 

 

 

 

 

 以前、理科の授業で先生から気象についての説明を受けていた時、天国はどこにあるのかと尋ねたのび太は思い切り笑われてしまった事があった。

 もちろん今の科学の常識では天国などと言うものは宗教では存在しても、現実にはあり得ない場所、と言うのが一般の見解である。

 ならば自分たちで理想の天国を作ってしまえばいいと、雲を固めて足場にできる雲固めガスを使い、天上王国を作る事にしたのび太たちだった。が、ジャイアンたちも仲間に入れて王国を作っていた矢先に、実は地球の空には天上連邦と言う先住民たちが地上の文明には気が付かれないままのび太たちと同様に世界中に散らばった雲を固めた大地でもって連邦国家を築いていた事が発覚。おまけに雷雲からの雷を受けてドラえもんが壊され、環境の破壊を進める地上世界に対し、神話上のノアの箱舟よろしくノア計画と言う地上破壊計画が進んでいる真っ最中である事までものび太たちは知ってしまう。

 こうした紆余曲折の末に天上連邦が推進するノア計画の実行を止めるため、故障から復帰したドラえもんが持ち出したのは雲戻しガス。この天上世界をあっという間に破壊する事ができるガスを切り札としての対話を試みたその矢先に天上王国が密漁者たちに乗っ取られてしまい、ドラえもんものび太も拘束されてしまった。

 文字通り手も足も出ず、打つ手がなかった時にドラえもんが最後に使った武器こそが、王国が保有していた天上世界最強の切り札雲戻しガスのガスタンクをも破壊するほどの『石頭』だった。

 結果としてガスタンクは無事にドラえもんが見せた渾身の突貫からの頭突きで見事に破裂し、王国中に雲戻しガスが蔓延。みんなでお金を出し合い一生懸命作った天上王国ではあったものの、天上連邦を滅ぼす訳にもいかず(事実王国を乗っ取った密猟者がガスを発射しエネルギー州を消滅させているため、事態が長引けば連邦全部が消滅の危機にあった)その王国をバ◎スよろしく自壊させる事で事態の収束を図ったのは、懐かしい思い出である……。

 もし仮に、この慧音先生の言葉が正しければ先生はドラえもんの頭突きと同じくらいの威力の頭突きを使えると言う事になる。

 

「のび太、さっきも言っただろう? ()()()()()()()宿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()優しい先生だって。逆に言えば授業中にチルノみたいに悪さをしたり宿題を忘れたり、居眠りしたりすると、頭突きでもって叱られるんだよ」

「ず、頭突きですか? あ、じゃ、じゃあ……ひょっとしてさっき僕らが教室の外で聞いた恐竜の足音みたいな大きな音は……」

「ああ、そうだ。もちろんのび太だって例外ではないからな。さすがに宿題は出していないから忘れようもないが、居眠りをしたら渾身の頭突きで起こしてやるからそのつもりで授業を受けるんだぞ? さあ、これでわかったろう。授業に戻るぞ」

 

 確かに魔理沙は言っていた。『居眠りをしたり宿題を忘れたりしなければ優しい先生』だと。

 それにしても限度があると思ったのはのび太だけなのだろうか、と言うか居眠りをしたりすると学校の先生のようにばかもん! と叱りながら起こしてくれるのかと思いきや怒られるのと一緒に恐竜の足音並みの音を立てての頭突きをされるなど、危険すぎる事この上ない。

 おまけに、さらに都合の悪い事に……。

 

「……であるからして……ここで、…………がこのような行動に出た訳は…………」

「………………………………」

 

 慧音先生の授業の内容は、学校で日々受けている先生の授業よりもはるかに分かりにくく、また長々とした言葉が途切れる事無く続くようなものだった。

 難しい話に理解のできない内容。この授業で眠るな、眠れば襲ってくるのは教室を揺るがすドラえもん並みの威力の頭突きだと言うのは、のび太にとってあまりにも辛すぎる内容の授業である。事実、開始5分でのび太に襲い来る睡魔との戦いに苦戦を強いられることになった。

 それでも眠ったら自分の頭がガスタンクよろしく爆発する、教室の隅に倒れているチルノのように無事では済まない、そうイメージしながらその恐怖を想像する事でどうにか眠気に耐えていたものの、何しろのび太は宇宙でも有数の実力を持つと自負する射撃と並んで、いつでもどこでも眠れると言う昼寝の達人でもある。

 いくら耐えようとしてもそう簡単に耐えられるわけもなく、すぐにこっくりこっくりと、舟をこぎだした。

 

 

 

 

 

 

……おい霊夢、のび太やばいんじゃないか? あの様子だと間違いなくもうすぐ眠りだすぞ

もう、なんであんなに眠るなって言ったのに眠るのよ! チルノみたいに頭突きを喰らいたいのかしら

仕方ないだろう、そもそもあの慧音の授業で眠るなって言う方がおかしいんだよ。精神修行だってもう少しましな修行をさせてもらえそうだぜ

まったくね……。噂では厳しい授業、辛い授業とは聞いていたけれどもまさか慧音の授業がここまで酷い内容だなんて思わなかったのよ

 

 教室の一番後ろで、慧音には聞こえないように二人小声で相談しているのは霊夢と魔理沙の二人である。

 授業を見学している二人にも、授業を受けているのび太が舟をこぎだした事を……つまりはもうすぐ居眠りを始めるであろう事はしっかりと見て取れた。もちろん先の慧音の宣言通り、特別に授業を受けているからと言って慧音は手加減するつもりはないだろう。一刻も早くどうにかして起こさないとチルノに引き続き、慧音の頭突きによる本日二人目の犠牲者になりかねない。

 しかし起こしに行く訳にもいかず、かといって声を掛けるなどもってのほか。のび太を起こそうと声を掛けたとたんに、間違いなく慧音の頭突きの矛先は自分たちに向いてくる事を霊夢も魔理沙も重々承知している。

 つまりはのび太が慧音の頭突きを回避するには、授業の間どうにかして起きているかあるいは居眠りをしてしまっても、頭突きが飛んでくる前に野生動物のごとき勘でもって目を覚ます必要があるのだけれども、そのどちらもがのび太にとっては非常に厳しい条件である事は二人の目の前でこっくりこっくりと頭を揺らしながら今にも眠りそうなのび太の姿が証明していた。

 こうして二人は内心ハラハラしながらのび太の無事を祈っていのに、どうして運命と言うものはこうイタズラをしてしまうのだろうか? それとものび太が持つツキのなさ……『ツキの月』を誰よりも使うのに向いているほどに普段ツイていない運の無さがこの運命を呼び寄せたのだろうか?

 

「おーい、のび太この問題は分かるかな?」

「…………………………」

「おーい、のび太……?」

 

 黒板に書いた問題を解かせようとのび太に声を掛けたものの、のび太からの返事がない事でその目つきがどんどんと鋭くなっていく。明らかに怒っている兆候だ。

 当然後ろで授業を見ていた霊夢も、魔理沙も、また授業を受けている他の子供たちも慧音が見せる気配の変化に気が付いたらしく、みんな一言も口にしないでだんまりを決め込んでいる。と言うか、一生懸命に各々の教科書へと視線を下げて、勉強していますと言う事をアピールしている。

 誰だって自分の命は惜しいのだ。……たとえそれが保護者としての役割を放棄する事になっても。

 

「のび太。こら、起きないか」

「グウ……」

「授業中に寝るんじゃない」

「グウグウ……」

「このままだと、本当にお仕置きが待っているぞ……?」

「グウグウグウ……」

「そうか……それが返事か……」

「グウグウグウ……グウ……」

「……わかった、もういい」

「グウグウグウグウグウ……」

 

 つかつかと歩み寄り、最後通牒を突き付ける慧音に対してのび太は器用にもいびきで返事をする始末。

 そのあまりにも見事ないびきのタイミングに実は起きていて、イタズラのためにわざと寝たふりをしているんじゃないだろうかと思わせるその器用な対応に、当然のように慧音は額に青筋を浮かべている。

 そして慧音以外のこの場の全員は『そんなに器用ないびきで笑わせようとするんじゃない!』と、吹き出しそうになるのを全力で我慢しながら全員が心を一つにして耐えていた。

 この、嵐の前の静けさのような静寂も一瞬。憑き物が落ちたように一転、それまでの怒りに目を釣り上げながら睨みつけていた表情から、にこりと実に綺麗な笑顔になった慧音の『それ』は最後に散りゆく者に見せる慈悲の笑顔かあるいは悪魔の微笑みなのか。

 次の瞬間、慧音は思い切り頭を振りかぶり……全力でもって自らの頭をのび太の額へと叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………さっさと、起きろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっッッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大音響あるいは爆発音、そう形容しても納得してしまいそうな鈍い衝撃音が寺子屋の教室に響き渡る。いや、この音の大きさなら寺子屋の外を歩いている市井の人々にも聞こえたかもしれない。

 その衝撃の大きさたるや教室の扉や窓がびりびりと震えて、まるで大風でも教室に吹き込んできたかのように揺さぶったほどなのだ。外まで聞こえていたとしても全く不思議はない。

 一方でそんなドラえもんの頭突きと同じくらいの威力を持つと推測される慧音の頭突きを居眠りしたまま、受けるその瞬間まで全く何も知らないまま叩き込まれたのび太はと言うと……。

 慧音が全力を込めて叩きつけた、まさしく渾身の頭突き。威力の強さのあまり、座っていたその場から吹き飛んだのび太のメガネは外れ、かわいそうに悲鳴一つ上げる暇もなく畳の床を数回バウンドしながら教室の一番後ろ、霊夢や魔理沙のもとにまで転がっていく。

 

「……お、おい。のび太、大丈夫か? なんだかいつになく大きい音がしたけれども、おーい。ほら、目を覚ませよ……」

「魔理沙、あれだけの衝撃を頭に受けたのよ? 無理やり動かしたら危険じゃないかしら。チルノみたいにのび太が丈夫だとは限らないんだから」

 

 自分たちの所へと転がって来たのび太。目を星にして完全に気を失っているらしいその様子にすぐさまかけよって頬をぺちぺちと叩きながら必死の形相で声を掛ける魔理沙と、内心は動転しているのだろうけれどもそれを外に出さないようにしながら魔理沙にのび太をあまり動かさないように注意する霊夢。

 その時、霊夢の忠告を無視するように必死でのび太を起こそうとしていた魔理沙の顔から、赤みがさあっと引いていき蒼白になっていくのを霊夢は見逃さなかった。

 

「……魔理沙、どうしたのよ?」

「……霊夢、どうしよう。のび太が、のび太が息をしていないんだぜ……って言うか、これ心臓の音もしてない気がするんだ……」

「え、ちょっと嘘でしょ……? ちょっとのび太! 目を覚ましなさいよ!」

 

 動転して顔をくしゃくしゃにしながらどうしようと聞いてくる魔理沙の言葉には、今まで数多の異変を解決してきた霊夢も自身の顔からさあっ、と血の気が失せていくのを実感せずにはいられなかった。

 また慧音や他の子供と言った寺子屋にいる他の面々も、さすがに子供が一人慧音の頭突きで死ぬかもしれないとなれば動揺するのは当然だろう。全員のその表情からは血の気が引き、ざわざわと騒々しくなる教室は『静かに』と言う慧音の呼びかけさえも意味をなさず、もはや完全に授業をできる状態ではなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幻想郷に来てまだ数日しか経っていないにもかかわらず、魔法使いとの勝負や妖怪との戦いを経験してきたのび太の命は寺子屋の先生の手によって未だかつてない危機に見舞われようとしていた……。




のび太に訪れた命の危機。寺子屋で夏休みの宿題をしようとしていた矢先に命を落としてしまった? のび太の運命やいかに!?

正直なところ、感想に流される格好で必殺してしまった感があるので今後の展開をどうしようかちょっと考え中です(汗 が……もし死んでしまったのならばやはり出てくるのはあののび太にも引けを取らないぐうたらとぐうたらに頭を悩ませる真面目のコンビ、でしょうか。



次回、乞う! ご期待!!!

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