ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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あけましておめでとうございます。
番外編、今回は冬休みの幻想郷の暮らしレミリア編です。
どうしてレミリアなのかは、やはり動かしやすいから……(ぇ


さてさて、一体紅魔館のお嬢様に何が起こるのか……?


番外編:のび太と幻想郷の冬休み(レミリア編)

「すごい、あんな面白かった遊び初めて!」

「一体どういうしくみになっているんだろうな」

「次なにして遊ぶ?」

「あれにしようぜ!!」

 

 そんな事を口々に言いながら、寺子屋の教室に置かれた箱の中から、数人の子供が飛び出してきた。

 箱の表には宇宙の絵が描いてあり、どこから見ても幻想郷にあったものではない事が伺える。

 それもそのはず、これはドラえもんのポケットから取り出されたひみつ道具の一つ『宇宙探検すごろく』であり、プレイヤーたちは箱の脇に開いている穴に手を入れると自動的に箱の中へと吸い込まれ、中で本当の宇宙のような世界を双六の要領でゴールを目指していくと言うゲームなのだ。

 ちなみにサイコロはどうするのかと言うと、各プレイヤーが乗って進む乗り物の目の前上空にサイコロが浮遊しており、手にしたレーザーガンを当てるとサイコロを振った事になる、という仕組みになっている。

 その宇宙探検すごろくの他にも人の身長ほどもある大きな本『冒険ゲームブック』やまた別の場所では小さな宇宙船が部屋の中を飛び回っている。

 こちらは『スペースウォーズ・ゲームセット』だ。

 一体なぜこんな事になっているのかと言うと、冬休みになり幻想郷へと遊びに来たのび太たちは、たこあげや羽根つきや独楽、メンコにすごろく、福笑いと言った昔ながらの遊びしかない幻想郷の子供たちの事情に驚いたのだ。

 もちろん外の世界でもたこあげくらいならまだ残っているが、今の外の世界ではやはり場所などの関係でなかなかそう言った遊びをするのは難しい。

 それならばと言う事でドラえもんが取り出したのは未来のひみつ道具でも、遊びや冒険を手軽に楽しめるタイプのひみつ道具を取り出した所、初めての未来の娯楽にすっかり夢中になってしまったのだった。

 こうした事もあり、今や寺子屋はちょっとした遊戯場になっており、冬の間退屈な子供たちに人気の遊び場としてにぎわいを見せている。

 最初この事に寺子屋の慧音先生は「勉強しなさい!」と怒ったのだが、ドラえもんが「ノーリツチャカチャカ錠」を取り出し、子供たちの勉強時間短縮を図った事と、遊びに来た蓬莱人の妹紅が子供たちに混ざって一緒に遊びだしてしまったために仕方がないと、勉強もきちんとする事を条件にして折れたと言う経緯がある。

 で、子供たちだけなら良かったのだけれども……。

 

「咲夜! 何なのよこのゲーム! 難しいじゃない!!」

「お嬢様、決して難しくはないかと……」

「なんでよ?」

「『あの』運動神経の低いのび太でさえハイスコアを軽々と更新できるような内容のゲームを、我らがレミリアお嬢様が難しいと言うだなんてあり得ないですし」

「あんなそこら辺の化け物より化け物染みた射撃適正持ってる幻想郷最強のニュー◎△プと一緒にするんじゃないわよ!!!」

 

 うがー、と紅魔館の当主と言うカリスマなど一体どこへ放り捨てたのやら。スペースウォーズゲームセットの宇宙船の中から、レミリアが放り出されるように飛び出してきた。

 そう、彼女もまたこの未来のひみつ道具による遊びが流行っていると聞いてやって来たのだけれども、どうもレミリアには宇宙船に乗って、敵の宇宙船を撃墜すると言うゲームは難しかったらしい。

 まあ、本来ならば宇宙船に乗って戦うよりも自分が翼でもって空を飛んで弾幕を発射した方が強いような人物なので仕方がないのかもしれない。

 そんなレミリアが飛び出して来るや否や、傍らで待機していたメイド長の咲夜に不満をぶつけるが、咲夜は全くそんな主の不満に動じる事はない。

 むしろのび太が叩き出し続けたハイスコア(実は未来世界でも世界ランキングトップランカーに名を連ねられるほどのハイスコア)表を前にして『あののび太でも出来るのにお嬢様はできないのですか?』などと煽る始末。

 が、レミリアも姿こそ幼いが決して馬鹿ではない。伊達に500年の年月を生きてきた訳では無いのだ。

 そのレミリアだからこそ、のび太の射撃能力は幻想郷でも極めて高いレベルの実力であるとはっきりと理解しており、咲夜の言葉に『のび太みたいな射撃の化け物と一緒にするな』と手足を振り回しながら、自分の怒りを表現しだすのだった。

 

「あーうっさいわね! なら、そこの冒険ゲームブックでもやってなさい。のび太曰く『本の中に入って実際に冒険しながら異変を解決するゲーム』だそうよ。」

「だって、このゲーム手加減が難しいのよ! 何よ、道中のモンスターをグングニルで吹き飛ばしたらダメって」

「あーもう、だからこれはそう言うゲームじゃないの。もう……」

「何かないの? こうワクワクドキドキできるような道具」

「私じゃなくてそれはのび太たちに聞きなさいよ。私が分かる訳ないでしょ?」

 

 寺子屋の部屋の一角で、管理人として待機している顔を赤くしている霊夢がレミリアにうるさいと注意する。

 ちなみに神社はどうしたと言うと、あろう事かドラえもんにコピーロボットを出してもらい、霊夢そっくりそのままのコピーの方に、お神楽などをさせると言う、コピーはおろか話を聞いたら紫だって青筋を浮かべて激怒しそうな事を行っていた。

 兎にも角にも、この寺子屋遊技場で何かトラブルが起こらないようにという名目で立っている霊夢はと言うと、保護者と言う立ち位置と言う事もあり、グルメテーブルかけから取り出したお酒をガブガブと呑みながらだと言うのは内緒である。

 ……まあ、子供たちが見ている前なので内緒も何もあったものではないのだけれども。

 

「仕方ないわね……ねえ、のび太、ドラえもん。ちょっといいかしら?」

「はーい、あれ? レミリアさんどうかしましたか?」

「はいはい、レミリアさん。どうかしましたか?」

 

 そんな顔を赤くした霊夢を他所に、レミリアは新しい道具を出してもらおうと今は皆でトランプをしているのび太やドラえもんに声を掛けるのだった。

 

 

 

 

 

 

少女説明中……

 

 

 

少女説明中……

 

 

 

少女説明中……

 

 

 

 

 

 

「……と言う訳なのよ。何かいい道具はないかしら?」

「うーん、面白い道具か。あ、そうだ! これがいい!『ドリームプレイヤー』!!!」

 

 あれでもないこれでもないと、しばらくの間ポケットに手を突っ込んで探し回っていた末に、ドラえもんが取り出したのは昔の枕のような形をした道具の一式だった。

 しかも枕だけではなく、それに合わせていろいろな種類のカセットまでついている。

 

「変な形の道具ね、まるで枕みたいじゃない」

「そう、これはドリームプレイヤーって言って、この枕型の本体に色々な種類の中から好きなカセットを選んで入れてから眠ると、好きな夢を見られるんです」

「あら面白そうね、好きな夢が見られるなんて。ちなみにどんなカセットがあるのかしら」

 

 好きな夢が見られる道具、という『気ままに夢見る機』の下位互換、もしくは簡易版とでも言えるその道具の説明に面白そうだと興味を持ったらしいレミリアはさっそくドラえもんからカセットを受け取ると何を見ようか物色し始めた。

 

「いろいろあるわね……。って言うか、ほとんどのジャンル網羅してるじゃない。……ん? ねえ、これって一体何?」

 

 レミリアが物色をしているドリームプレイヤーのカセットはかなりの内容が幅広く、それこそSF、西部劇、時代劇、スリラー、メロドラマ、青春ドラマなどがジャンルとして取り揃えられているのだが、実はその中に一つだけどう考えても場違いとしか思えないジャンルが混じっている。

 それが『教訓』であり、ドラえもんものび太が以前この道具を使おうとした時に関係ない、と言った代物であった。

 その教訓と言う場違いなカセットを手に、レミリアがのび太に一体何なのかを尋ねてくる。奇しくもそれはのび太が初めて道具を使った時の、のび太とドラえもんのような立ち位置であった。

 

「えっと、前に僕も使ったんですけど『教訓』って言って、ためになる夢だって言うんですけど正直、やめておいた方がいいです。僕はそれを見た後、もう少しためにならない夢が見たいって思いましたから……」

「……何を言っているのかしらのび太。紅魔館の当主である私がのび太とは違う所を見せてあげるわ、この夢から目覚めた時、高みへと昇ってみせたパーフェクト・レミリアの姿をとくとご覧なさい」

「……いいんですか? 他の夢と違って本当にためにはなるけれども、楽しい保証はありませんよ?」

「ふっ、くどいわのび太、ドラえもん。その教訓のカセットを私に貸しなさい」

「……うーん、まぁレミリアさんがそこまで言うなら……はい、どうぞ」

 

 のび太のためになる夢、という説明。おまけに実際にのび太が以前使ってみたと言う説明に対抗心を燃やしたのか、レミリアがドラえもんに教訓のカセットを渡すように言ってくる。

 そこまで言われてはドラえもんものび太も、断る理由がないと言う事で渋々、といった感じではあったもののドラえもんとのび太の二人はレミリアに教訓のカセットを渡したのだった。

 そのままプレイヤーに教訓のカセットを差し込み、枕にして就寝してしまうレミリア。

 寝つきがもともと良いのか、あるいは(同じ意味で重複)機械の働きによるものなのか。二人の目の前でレミリアはすやすやとあっという間に夢の世界へと旅立っていくが、当然彼女は知らない。

 かつてのび太が見た時と同様に、これから夢の中に出てくる『模範的カリスマなレミリア』による、様々な試練が自分を襲う事に。

 のび太と同じように、夢の中で異変やその辺のゲームよりもはるかに大変な苦労を強いられる事に。

 

 

 

まだまだ幻想郷の冬と、夢は終わらない……。

 




教訓のカセットをセットしたドリームプレイヤーですやすやと夢を見続けるレミリア。
きっと目が覚めた時にはのび太と同じく、次はためにならない夢がいい、と言ってくれるでしょう。
もしのび太が見た夢がどんな内容なのか気になる方は、てんとう虫コミックスドラえもんの38巻を読んでみるとわかるかと思います。



それでは、次からはまた本編に戻ります。

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