ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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のび太の魂がいよいよあの世への冒険へと旅立ちます。
さてさて、どんな事が起こるのでしょうか?
そもそも、天国って本当に良いところなのか?








※先日、番外編を投稿した翌日辺りで日間ランキングがまさかの一桁と言う、全く予想外の数値を叩きだし、大勢の方に見に来てもらえましたが本当にありがとうございます。
皆様からの評価としてこれが箸にも棒にも掛からぬような作品であればこのような結果にはならなかったでしょうし、これも偏に当作品を面白いと評価してくださる方々のおかげです。
今後も皆様に面白いと評価していただけるよう(そして自分も面白いとおもえるよう)切磋琢磨していきますので、今年もどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m


天国よいとこ?(その2)

 のび太が大変な事になっているちょうど同じ頃、東京練馬区月見台の一角、野比家ではちょうどお昼前と言う事もありバラエティ番組を見ながら居間でおせんべいをかじっている最中だった。

 バラエティ番組では売り出し中の若手芸人がトークで皆を沸かせている、やがてその若手のトークも終わろうかという時になって、キッチンの方からガシャンと言うけたたましい音が聞こえてきた。

 

「……なにかしら? ひょっとして、泥棒……?」

 

 もちろんパパは今の時間仕事であるし、万が一にも帰宅するような事があれば玄関から「ただいま」と言って帰ってくるのが常である。またそれ以外の住民であるのび太と、ドラえもんについては今はドラえもんが未来で入院すると言う事でのび太もそれについて一緒に未来に行っているはずだった。

 つまりはこの家には今、ママ一人しかいないはずなのだ。それがキッチンから物音がするとなれば、この家の人間以外の誰かがいるとしか考えられないのだ。

 しかしもし万が一にも泥棒だった場合、ママに対抗できる手段は無いに等しい。かと言って何もしないでいると言う選択ができる程、ママは本来おしとやかな性格ではなかった。

 今でこそ専業主婦として家に入り、のび太やパパの帰りを待つママとしての立場に立っているが、何しろ子供の頃は絵にかいたようなおてんば娘でそのおてんばぶりと来たらタイムマシンで子供の頃のママと出会ったのび太やドラえもんに向かってくるような性格だったのだから。

 そんな性格だから、すぐにママは意を決するといるかもしれない泥棒に気が付かれないよう慎重に、足音を立てないように気を付けながらそろりそろりとのび太の部屋へと階段を上り急ぎ向かうと、のび太の部屋からバットを持ち出した。ちなみにどうしてバットが置いてある場所がすぐにわかったのかと言うと、全く片づけをしないのび太に代わって、ちょくちょく部屋の片づけをしているからである。

 兎にも角にも、鈍器としては十分どころか過分すぎるほどに凶悪なそれを武器にしていつ泥棒がひょっこりと出てきても大丈夫なように身構えながら、一歩一歩と何かが潜んでいるかもしれないキッチンへと向かっていく。

 段ボールにこそ隠れないが、某かくれんぼなゲームメ〇ル〇アよろしく慎重に歩みを重ね……やがて意を決したようにバットを振りかぶり、いつ泥棒が出てきてもすぐに殴り倒せるように準備しながらキッチンにいざ踏み込んでみたものの、そこには誰もいなかった。

 

「あ、あら……? 変ねぇ、確かに物音がしたのに……?」

 

 キッチンをきょろきょろと見回してからまずは侵入経路として最も怪しい勝手口を見てみるけれども閉まっており、何回確認しても確かに施錠してある間違いはなかった。

 もちろん油断はしないように隠れられそうな場所を調べて見たけれども、そもそもキッチンにあるものを泥棒するような者などそうそういないだろう。

 いるとしたらぬいぐるみが生きて暮らしている小惑星の探検に出かける前の準備をしようとしている前科百犯の犯罪者である熊虎鬼五郎か、あるいは時空乱流に引きずり込まれ現代まで流されてきてしまい極度の空腹に見舞われていたであろう原始人のククルくらいものである。

 兎にも角にも、物音の原因が泥棒ではないと言う事が分かって安堵したママだったが、それでは一体何が物音を立てたのか。それについてはすぐに原因が見つかった。

 

「……あらやだ、のび太のお茶碗がひとりでに割れるだなんて……。もしかして、のび太に何かあったのかしら? 未来世界に遊びに行っているって言っても、ドラちゃんもいてくれるし、ドラミちゃんだって見ていてくれるはずだから大丈夫だと思うんだけど……」

 

 そう、何もしていないし誰も触れていないのにのび太の茶碗だけが綺麗に割れていたのだ。まるで持ち主の運命を周りに知らせるかのごとく。

 『ドラちゃんと一緒に未来から戻ってくるまでに新しいのを買っておかなくっちゃ』とぼやきながら破片を片付けるママだが、もちろんママは何も知らない。同じ頃、幻想郷で、息子ののび太がまさに命の危機に瀕しているだなどと言う事はこれっぽっちも想像していなかった。

 だからママは、割れた茶碗を片付けると時計を見て『いけない、そろそろお昼の支度しなくっちゃ』と、茶碗が割れた事を、この瞬間に生じた嫌な予感をただの偶然だと決めつけて、そのまま日常の中へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここって一体どこなんだ? たしか、人里に向かってから寺子屋で……変だな、何か大事な事があったはずなのに思い出せないや。まあ、いっか。きっと気のせいでしょ」

 

 一方その頃、のび太は見た事もない……と言っても幻想郷に来るまでも、数多の冒険の中でいろいろな世界を見てきたけれども今いるはずの幻想郷でも、見た事のない場所をさ迷っていた。

 薄暗い森の中、まるでこの幻想郷に最初にやって来て八雲紫と出会ったあの森の中のような雰囲気の中、どこまでも伸びている一本の道。ただのび太にとって安心だったのは、その道を歩いているのが自分一人ではなく、他にも何人もの同じような人たちがお道の先を目指しているのか、一様にゆっくりとした足取りで歩いていると言う事だろう。

 ただ、そこにいるのは大半の人がお年寄りで、重たい荷物などは持っていないけれども誰もが皆疲れているのだろうか、歩いている絵もがひどく青い顔をしていた。

 もしこれがドラえもんなら「青いと言うより薄汚い、今朝も顔を洗わなかったな」などと言ってきそうなものだが、あいにくとドラえもんは未来のロボット病院で入院しているためツッコミが飛んでくる事は無かった。

 そんな人々の行列についていくように歩いていくのび太だが、幸いにも道はまっすぐである事と何よりもその道は歩いている人が途切れる事がなかったため、いつも外の世界で起こっているような迷子になると言う事は無かった。

 だが、のび太は気が付いたのだろうか? 今自分が歩いている道が、どこに向かっているのかと言う事を。歩いている人たちの流れが行くだけで、引き返してくるあるいは戻ってくる人は誰一人としていないと言う事にのび太は気が付いていたのだろうか?

 今自分のいる場所がどこなのかを知ってか知らずか、ずんずんと歩いていくのび太。やがて……。

 

「あ、そろそろ森を抜けるぞ……ああーっ! すごい、こんな場所があったなんて……!!」

 

 ようやく森を抜けた先でのび太の目に飛び込んできたのは、それまでの何もない森の中とはうって変わって屋台が道の脇にずらりと並ぶと言う、まるでお祭りか縁日のような賑わいを見せる不思議な場所だった。

 おまけにその先には大きな川も見えるが、そんな事よりも今ののび太にとってはにぎやかで面白そうな屋台などの方へと、完全に興味が移っていた。誰だってお祭りは好きなのだ。それはのび太だって例外ではなかった。

 

 

 

 

 

 

………………!!! ………………!!! ………………!!! ………………!!!

 

 

 

 

 

 

………………!!! ………………!!! ………………!!! ………………!!!

 

 

 

 

 

 

………………!!! ………………!!! ………………!!! ………………!!!

 

 

 

 

 

 

「面白そうだな……あっ、でもいけない! 考えたら僕ここに来る時にお小遣い全然持って来なかったっけ……」

 

 たこ焼き、お好み焼き、焼きそばにりんご飴。金魚すくいに射的と、おおよそお祭りに並んでいるであろう屋台のジャンルはほとんど網羅されているる事が見て取れる。しかもそれらが歩きながらきょろきょろと見回しているのび太や他の歩いている人々にひっきりなしに声を掛けてくるのだからうるさい事この上ない。

 さっきまでの森の中の静けさは一体どこへ行ったのか、と思うような賑やかな道。

色々なお店から声を掛けられて、その時にようやくのび太はそもそも自分がお小遣いを一切持ってきていない事に気が付いた。

 何しろ衣食住の三要素を全てひみつ道具の着せ替えカメラ、グルメテーブルかけ、キャンピングカプセルで賄うつもりでやって来ていたためのび太の活動でお小遣いが必要になると言う事が想定されていなかったのだ。

 さすがののび太でもお金がないのでは、屋台を楽しめない事くらいは知っている。

しばらくの間、いろいろな屋台を覗いたりしていたものの結局のび太は、諦めてそのまま川の方へと歩き出した。

 

「それにしても大きな川……多奈川よりも大きいんじゃないの……?」

 

 ようやくやって来た川のほとりに立つと、さらにその川の大きさがよく分かりのび太は思わず声を上げてしまう。

 おおよそのび太の生活圏の中で一番大きな川と言えば、街の中を流れる多奈川である。

 この川は以前『のび太と竜の騎士』において発覚した、地底世界への入口がある川でもあった。その時は地底の洞くつで遊んでいたいつもの5人の中で、紆余曲折の果てに地底世界に取り残されてしまったスネ夫を救出するために、スネ夫の取り残されている洞窟と多奈川の地下に伸びる洞窟とがつながっている可能性に気が付き、川底に潜って洞窟を探したのは今となっては懐かしい思い出である。

 そうして何とかスネ夫と再会できたはいいものの、今度は地底に暮らす恐竜人と地上に生きるのび太たち哺乳人類との確執に巻き込まれ、冒険をする事になったのだが、そのきっかけとなった多奈川が小川に見える程、目の前の大河は途方もなく大きかった。

 その大きさのせいなのかあるいは道の終着点がこの川なのか、のび太は周囲を見回してみても橋がかかっている様子は見られない。つまりは本当にここで道が終わっているのか、はたまた船などの川を渡る手段があるのかのどちらかと言う事になる。

 もちろんもう一つの方法としては泳いで渡る、などと言う事もできるのだろうけれどもあいにくとのび太は器用にもお風呂の浴槽で溺れる事が出来る程のカナヅチである。

 とてもではないけれども向こう岸が見えないほどの大河を、ひみつ道具もなしに泳いで渡るなどと言う事は不可能であった。

 

「橋も見当たらないし……あ、あそこに人が集まっているから、船で渡れるのかな? あ、でも船が来ても僕渡し賃持ってないぞ……。まあ、どっちにしても船がまだ見えないんだから、待つしかないか。こんなに暖かくて気持ちがいいんだし、お昼寝しなくちゃもったいないよね……ぐぅ……」

 

 しばらくの間川のほとりをあっちへうろうろ、こっちへうろうろと歩き回っていたのび太だったがやがて一角に人が大勢集まって列を作っている場所を見つけた。

 おまけに桟橋のような物も川に向かって突き出ている、と言う事は人が並んでいるのだし、きっとここから船が出るのだろう。そう考えたのび太は川べりの土手に寝転がって、そのまま数秒後にはグウグウといびきをかきながら眠り始めてしまった。

この辺りはさすが、眠りの達人である。

 

 

 

……もちろんのび太は気が付いていない。

 

 

 

 今自分のいる場所が三途の川のほとりであると言う事に。自分も含めて、今川のほとりで並んでいる人影の中で生者は誰一人としていないと言う事に、幸せそうな寝顔で昼寝を始めてしまったのび太は残念ながら気が付く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ、本当にこっちであってるのよね?」

「ああ、魂が外れたんだろう? それなら結果として死者の魂と行きつく先は同じはずだからね。間違いなく三途の川へと向かっているはずさ。そこで他の魂と一緒に集まっているだろうから、そこからこの子の魂を見つければいいさ」

「それにしても、こういう時魂ってのは便利なんだぜ。放っておいても三途の川を目指すんだからな」

「それについてはどうしてなのか私らにも詳しくわかっている訳じゃあないんだけどね。まあ、おそらくは魂として輪廻転生の輪に戻りたいって本能的に行動するんだろうね」

 

 一方こちらは寺子屋で魂が抜けてしまって抜け殻になったのび太の身体をあの世へと運ぶ死神の小町、それに同行を申し出た霊夢に魔理沙たち。のび太の身体を、ひょいと担ぎ上げてのび太の魂がいるであろう三途の川を目指す三人だった。

 霊夢と魔理沙は最初『のび太の外れた魂がどこに行ったのか探さなくちゃ』と焦ったのだけれども、小町の『三途の川を目指しているだろうから、そのまま向かえば問題ない』という言葉に、真っすぐにあの世を目指す事になったのだ。さらに言うと徒歩ののび太と空を飛ぶ三人、どちらが速いかは目に見えている。

 のび太が歩きながら通り抜けたであろう森の中の道も、屋台が立ち並ぶ賑やかな道も、あっという間に通り過ぎてさらにその先の、のび太がいるであろう三途の川が見えてきた。

 

「魂が集まっているから、あのどこかにいるはずなんだけど……」

「しかし本当に大勢集まってるな、相当仕事サボってたんじゃないのか?」

「いやいや、そんなに毎日サボっていたら四季様から大目玉だよ。それに今日は私は非番だからね。そしたら、いやな気配がするから見に行ってみたら……ってね。まあ、まさかこんな事になるとは思わなかったけれどもね。じゃあ、二人は悪いけれどもちょっとこの子の魂を探してみてくれないかい? 私は船頭が戻って来たらこの子の魂をもう運んだかどうか、聞いてみるからさ」

「ちょっと待ちなさい、この中から探せって言うの?」

「おいおい、冗談だよな?」

「冗談じゃないって、別に向こう岸まで運べだなんて言いはしないさ。ただ、見つけてくれれば後は私が運ぶからさ」

「まあ仕方ないわ、とりあえず探すわよ魔理沙」

「みたいなんだぜ霊夢……じゃあ、私は向こうから探すんだぜ」

 

 のび太の身体を落とさないように慎重に着地し、並んでいる人々の魂の行列の側に歩み寄る三人。

 確かに小町の言う通り、今日は小町ではない別の死神が担当しているらしく小町そっくりの恰好をした死神が人魂を連れて小舟で桟橋から川の向こうへと運んでいるのが見て取れる。

 その輸送がはかどっているのか、のび太が川にたどり着き魂の行列を見た時とは異なり列の長さはそれなりに短くなっていた。

 とは言え、いくら短くなっていると言ってもそれでもまだ決して一人二人と言うような数ではない。その中から探せと言うのだから、霊夢も魔理沙も文句を言いたくもなるだろう。

 が、文句をいった所でのび太の魂が見つかる訳では無い。ここで文句を言えば見つかるのならいくらでも言うだろうけれども、それで見つかるほど世の中は甘くないのだ。

 それぞれ互いに行列の端と端から探していくと声を掛け合い、歩き出す二人。

 その間にも小町は魂を運ぶ同僚が戻って来るや否や声を掛け、のび太……人間の子供の魂を運んだかどうかを確認していた。

 が、結果は思わしくなかったらしい。小町に尋ねられた同僚の死神は、首を横に振るとまた桟橋から魂を乗せた船を漕ぎだし岸から離れてゆく。

 その対応からも、まだのび太の魂が向こう岸へと運ばれていない事は小町には理解できた。

 ならばまだのび太の魂は彼岸ではなく此岸にいると言う事だ。それを確認した小町は、魂の行列の中からのび太の魂を探している最中の二人に声を張り上げた。

 

「おーい、二人とも! まだこの子の魂は向こうへは運ばれていないってさ。必ずこっちにいるはずだよ」

「よし、それならこの行列を捌けばおしまいって事だな」

「助かったわね。彼岸に運ばれていたら面倒だったもの」

 

 こうして、まだ幻想郷側、此岸にのび太がいるとわかった事で霊夢も魔理沙もやる気を見せ、さらには小町も手伝ってどんどんと魂を確認したのだけれども……。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、なんで魂なのにこんなに気持ちよさそうにいびきかいて寝てるのよ!?」

「って言うかのび太って、慧音から頭突きを受ける前にもグウグウ居眠りしていなかったか?」

「いやーそんな事言われても、私も先に言った通り人間の魂が身体から外れるなんて事はめったに起こらないからなかなかどんな事になるか分からなかったけど、まさか昼寝してるとはね……」

 

 そう、三人の前でのび太の魂はまだ起きずに昼寝をしていたのだった。

 小町が同僚からのび太の魂を運んだかどうか、確認をした結果まだこちら側にいると分かってから、三人で急いで確認をしたのだけれども、結局のところその行列の中にはのび太の魂は見つからなかった。

 これはおかしいと、一度探し終えてから三人で額を集めて話し合った結果、もう一度周りも含めて見てみようと言う事になり、三人が再び散らばって三途の川のほとりを探し回った結果見つけたのは、のび太の魂が土手に寝転がり足まで組んで、鼻提灯を浮かべながらグウグウととても気持ちよさそうに昼寝をしている姿だった。

 

「…………グウ…………グウ…………グウ…………グウ…………」

「「「………………………………」」」

 

 散々探し回った挙句、ようやく見つけたと思ったら、人の苦労も知らずにこれまでの間ずっと気持ちよさそうに昼寝をしていましたと言う事実に、さすがの三人も機嫌が悪くなると言うもの。

 

「……のび太! さっさと起きなさい!!!」

 

 三途の川のほとり、暖かい陽気の下で三人を代表するかのような霊夢の怒りの声が木霊した。




のび太、無事見つかりました。(ただしお昼寝中)
そもそも魂って、昼寝するのか?(汗

無事にのび太は起きるのか、そもそもちゃんと三途の川を渡って此岸から彼岸へと向かえるのか?



次回、乞うご期待!!!
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