ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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ついに幻想郷に足を踏み入れたのび太。
まずはおなじみのあの場所へと放り込まれます。



更新が遅くなり大変申し訳ありませんでした。
……ひとまず無事に夏コミの原稿は入稿が終わりました(汗


のび太の幻想郷生活
霊夢、大いに驚く


幻想郷も梅雨が明け、いよいよ本格的な夏がやって来た。

博麗神社の境内も、野山もセミがミンミンとやかましく大合唱を行いその様子はまるで夏の暑さに抗議しているかのよう。

そのセミの声に占拠された中に、幻想郷でも特に重要とされる施設。すなわち博麗神社は存在していた。

 

 

 

 

                  *         

 

 

 

 

 

「……はぁ、暇ねえ」

 

その日、霊夢は暇だった。

もちろんやる事が全くない訳ではない、かと言ってうだるような暑さの中それをやる気力など持ち合わせていないし、すぐにやらなければいけない訳でもない。

つまりは、暇なのだ。

 

その証拠に縁側でお茶をすすりながらぼけーっ、と何をするでもなくただ誰もいない境内に視線を向けている。

空気そのものが溶けそうなほどにまったりとした空気が霊夢の周囲に漂っているが、むしろ異変が起きなければ暇な日の方が多いのが博麗神社における霊夢の日常だった。

が、あいにくと口に出して暇でなくなるのならこんなにありがたい事は無いのだけれども、悲しい事に暇はちっともなくならない。

 

 

……解決してあげるから、誰か大きな異変でも起こしてくれないかしらね

 

 

と内心思ったりもするのだけれども、博麗の巫女ともあろう者がそんな事を口に出した日には紫が血相を変えてすっ飛んで来かねないのでさすがに霊夢もその発言は自重せざるを得ない。

つまりはやっぱり、暇だ暇だと口にしながら霊夢はお茶をすすりながらただ、ぼーっと時間が過ぎるのを待っている。

建設的かどうかと言う問題はともかくとして、これが最近の霊夢の暇な時間の過ごし方だった……。

と、それまで退屈のあまり半分以上だれていた霊夢の目つきがすっ、と厳しいものに変わり、何もないはずの一点を見つめる。

 

「紫、いるんでしょ? 出てきなさい」

 

はたから見たらただの独り言にしか見えない霊夢の発言。

しかしその発言に応えるように、何もないはずの空間がぱくりと口を開ける。紫お得意のスキマ移動だ。

何もないはずの場所に隙間を開けてするりと出てくるその姿は、まるでどこでもドアのようですらある。

その紫が胡散臭そうな笑顔を浮かべながら口を開いた。

 

「こんにちは霊夢、ずいぶんと暇そうね」

「そりゃあね、でも博麗の巫女が暇って言うのは平和だって事よ? まあ、ちょっとした退屈しのぎくらいあってもいいかなとは思うけれどね」

「ええ、だから退屈しのぎ……になるかもしれない、今の霊夢にぴったりな相手を連れて来たわよ」

「ぴったりな相手……?」

「わぁーっ!!」

「……っ!?」

 

そう言うが早いがもう一つスキマが開き、一体何がと怪訝そうな表情をしている霊夢の前にのび太がどさりと、乱暴に放り出される。

突然理不尽に落っことされるのは今日もう2回目なので、のび太も助けてとは叫んでこそいないけれども畳の上に放り出された事で腰をぶつけたらしく、「いてててて……」と涙目になりながらぶつけた場所をさすっていた。

霊夢もまさか、紫がスキマから子供を、それも見慣れない男の子を放り込んでくるとは思っておらず、目の前に文字通り降ってきたのび太へぎょっとした視線を向けている。

しかし、突然放り込まれたのが人里の子供たちとは違う見慣れない服装の男の子だと気が付くと、霊夢には何か心当たりがあるようでその視線がとたんに険しくなっていく。

 

「紫、あのねぇ。いくら私が暇だからって言っても子供のお守りしろっての? それとも私の前で、人間、それも子供を食べようとするのなら、さすがの私も見過ごすわけにはいかないわよ?」

「こんなとんでもない子、食べないわよっ!」

「じゃあやっぱり子供のお守りじゃない、結界の隙間から迷い込んできたんでしょ? いつも通り、残るかどうか確認して、さっさと送り返せばいいじゃないのよ」

 

『こんな幻想郷以上に幻想してる子なんて食べてたまるもんですか』とでも言いたげに霊夢の言葉に全力でツッコミを入れる紫。

ちなみにのび太はと言うと、もう既に紫が人を食べる妖怪であると本人から説明を受けているので、その事についてはもはや驚きすらしない。

だがそうなると、紫が霊夢に押し付けようとしている仕事は子供のお守りただ一つしかないではないか。と面倒事はしたくない霊夢はさっさと送り返す事を紫に提案する。

と言うか、基本はこれが正しいのだ。

外来人が幻想郷に迷い込み、妖怪などに襲われて糧にならず無事でいたのなら、本人が特に残る事を望まない限りは外の世界に送り返す。

そう、それが本当なら普通だった。

 

そう、普通なら……。

けれども残念ながらのび太はたまたま幻想郷に迷い込んだ『普通』の子供ではなかった。

 

「霊夢。この子はね、博麗大結界の隙間から迷い込んできたんじゃないのよ。いいえ、この子は博麗大結界には一切触れる事なく、幻想郷に入り込んできたのよ」

「へぇ、結界に触れずにね。……って、はぁぁぁぁっ!? ちょっと、あんた何やらかしてんのよ!!」

「ちょ、ちょっと! く、苦しいですって……」

 

さらりと紫の説明を聞き流そうとしていた霊夢が、ふと不穏な発言を耳にして反芻する事数秒。

とんでもない素っ頓狂な声を上げてから見せた霊夢の反応は実に素早かった。

のび太の服の襟首をつかみ、がくんがくんと激しく前後に頭を揺さぶりだしたのだ。

可愛そうにのび太は成す術もなく、ぐわんぐわんと首がもげそうな勢いで霊夢に揺さぶられるままにされている。

 

「いい加減にしなさい!」

「んぐえっ!!」

「はぁ……た、助かった……」

 

紫が手にした日傘を高々と掲げ、すぱんと霊夢をひっぱたいて止めなかったら一体どうなっていた事か。

獲物はたかが日傘とは言え、紫が勢いよく振り下ろした傘の威力は伊達ではない。

軽快な音と共に頭にできた大きなたんこぶを両手で押さえている霊夢が、結果としてのび太の襟首を離した事で、のび太はようやく恐怖の首振り地獄から解放されたのだった……。

 

「……で、本当なの? その、あんたが結界に触れずに入ってきた、って言うのは」

「えっと、結界って言うのが何なのかはよくわからないんですけど……」

「あーもう! じれったいわね、じゃあ、どうやってここに来たのか私たちの前でもう一度やって見せてよ。それなら私も紫も、きっと納得するでしょ?」

 

 

ようやく霊夢から解放されたのび太だったが、本当に博麗大結界に接触する事なく入ってきた事にはいまだに疑いの目を持っているようで、湯呑みのお茶がすっかり冷めてしまっている事も忘れてのび太への質問を繰り返していた。

かと言ってのび太の方も、いきなりどこでもドアをくぐった先で妖怪だ幻想郷だと言われただけで、別に自分がそんなとんでもない事をしたなどと言う自覚はまるっきり持ち合わせてはいない。

そもそも目の前の、名前も知らないお姉さんから首を絞められ、思い切り揺さぶられていただけで自分が気が付かないうちに踏み越えてしまったらしい結界が何なのかその説明すらないのに、どうやったのか説明しろと言われてもどだい無理がある。

だからまず結界と言う『何か』の説明を求めたはずの返事は、何故かもう一度ここに来た方法……つまりはどこでもドアを使って見せてくれ、と言う依頼だった。

 

「ええっ!? で、でも……」

「そうね、私も興味があるわ」

「ほら、これで決まりよ。もちろん準備に時間がかかったり特定の日時じゃないと難しいって言うのなら、私も諦めるけど、どう?」

 

いきなりの依頼に言葉が詰まるのび太、おまけに紫まで興味があると言いだしてしまっては、小学生ののび太にとってはなかなか抵抗もできはしない。

何しろジャイアンズ球場(いつもの空き地)を中学生に乗っ取られた時にも、のび太は非常に下手な対応しかできなかったのだ。

それと同じくらいの年上、おまけに一人はもっと年上、となれば想像に難くない。

二人に半ば押されるような格好ではあるものの、意を決したのび太はどこでもドアを使う事を決心した。

 

「分かりました、じゃあ、ちょっと二人とも外に出てもらっていいですか?」

「外に? いいわよ。紫もいいでしょ?」

「ええ、いいわよ」

 

のび太に促されるように、博麗神社の縁側から境内に出てきた霊夢と紫。

二人の前に立ったのび太はまずズボンのポケットからスペアポケットを取り出し、二人に見せる。何はともかく、これがないとひみつ道具の使用は始まらないのだ。

が、やはりと言うべきか。初めて見るスペアポケットの印象は、霊夢もまたポケットとは認めてくれなかったらしい。

 

「何よそれ……? パンツなんか手にしちゃって、一体パンツでどうやって結界を超えたって言うのよ」

「もぅ、違いますよ。これはポケットなんですって。じゃあいきますよ……? どこでもドア!!」

 

しずかのみならず霊夢にもパンツと誤認された哀れなスペアポケット。

しかしのび太は一言だけ霊夢にパンツでは無い旨を告げると、高らかに手を掲げおなじみの道具の名前を口にした。

 

「「…………!?!?」」

 

たちまち二人の目の前に、のび太がポケットから引っ張り出したどこでもドアがどん、と現れる。

今まで何もなかった場所に、ポケットからぬう、と引っ張り出された奇妙なドアが突然現れたのだから霊夢も紫も驚かない訳がない。

目の前の何の変哲もない子供、そう、ただの外来人だとばかり思っていた子供が物理法則を軽く無視して手品師みたいな事をやってのけたのだから、霊夢も紫も二人とも目をぱちぱちと瞬かせながら、次ののび太のしようとする事を見守っていた。

 

「えっと、どこか行きたい場所ってありますか?」

「……へ? わ、私?」

「はい。今はためしに動かすつもりなので、なるべく近くだと嬉しいんですけど……」

「じゃあ、そろそろお夕飯の支度もしなくちゃいけないし……台所でどうかしら?」

 

急にのび太から行きたい場所を聞かれた霊夢。

一体これから何が始まるのだろうかとのび太の様子を伺っていたところで、急に質問を受けてしどろもどろになりつつも、そろそろ太陽が西に傾き始めた時間帯である事に気がつき、台所を希望する。

 

「台所ですね? じゃあ行きたい場所を口にして、このドアを開けてみて下さい」

「……? こんなただのドア開けて一体どうしろってのよ……。えっと、博麗神社の台所!! これでいいのかしら?」

「はい、大丈夫……だと思います。多分……」

「ちょっと、信用ならないわね……」

「まあ霊夢、信じるか信じないかはそのドアを開けてみれば分かるわよ」

 

今一つ自身のなさそうなのび太の態度に『本当に大丈夫なのかしら』とこぼしながらも、紫にも言われた通り一度試した結果を見てからどうするかは考えようと、と自分の行きたい場所、つまり博麗神社の台所を指定してノブを回してドアを開けた霊夢。

 

「本当にこれで何もなかったらどうしてくれるのよ……」

 

そう言いながらドアの向こう側を覗き込んだ霊夢の視界に入って来たのは、見慣れた博麗神社の台所だった。

 

「……っ!?」

 

予想外の光景に慌てて首を引っ込めて、今自分がいる場所、つまり神社の境内にいる事を確認してからもう一度ドアの中を覗き込む霊夢。

何回同じ事を繰り返しても、結果は変わらなかった。

 

「なるほどね、このドアがあれば行きたい場所に自由に行ける、って言う訳ね……こうして実際に見てみると、想像以上だわね」

 

博麗神社に来る前、既にのび太から簡単にではあるもののパラレル西遊記の冒険について聞かされていた紫でさえ、実際にその道具を目にしては冷汗しか出てこないらしい。

となれば霊夢はどうなるのか?

 

 

 

「……な、何よこれぇぇぇっっっ!!!!!!」

 

 

 

博麗神社の境内に、霊夢の叫びが木霊したのだった……。

 

 

 




霊夢まさかのひみつ道具初体験!!
これで霊夢も一歩22世紀人への階段を上ってしまったのでしょう(違


ちなみに、これだけ会話をしておいて実はまだのび太と霊夢は全く自己紹介をしていなかったりします。
なので次でおそらく自己紹介をするものと思われます(汗

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