ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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お待たせしました、のび太の紅魔境第三話です。
いよいよのび太とチルノが紅魔館に到着しますが、さてさて異変の中心地である紅魔館で一体何がのび太とチルノの二人を出迎えるのか!?


潜入! となりの紅魔館(その1)

こうまかんを目指し、湖のほとりを歩いていくのび太とチルノ。

霊夢たちが言う異変の真っただ中ではあるけれども、のび太たちが歩いているすぐそばに広がる湖の湖面はさざ波一つなくきれいな鏡のようにどこまでも広がっている。逆世界入り込みオイルを使えば、鉄人兵団の全兵力さえ誘い込めそうな、さぞかし大きな鏡面世界への入口が作れるだろう。

ただし、今その磨き込まれた鏡のようにきれいな湖面に映っているのは晴れ晴れとした青空ではなく、コーヤコーヤ星に浮かぶ月のような、赤い空である。

その赤い空の原因でもある、チルノ曰く中に入らなければ危なくないこうまかん。

のび太の目の前にとうとう姿を現したその姿はのび太が想像していたものとは、だいぶかけ離れたものだった。

おとなしそうな子馬がのんびりと牧草を食べながら遊んでいる、のどかな牧場どころかそれはさながら『ゆうれい城へ引っこし』で安売りしていたためにのび太たちが買おうと下見に訪れた、ドイツのミュンヒハウゼン城のような佇まい。

おまけに壁から屋根まで一面真っ赤っか、おまけに今は異変によって空まで真っ赤っかと言う、ゆうれい城と評判の低かったお城以上になかなかに個性的な建物である(もっともゆうれい城の評判は城に眠る先祖が遺した財宝を探そうと人を遠ざけるために持ち主ロッテの叔父ヨーゼフが仕組んだ芝居だったのだが)。

 

「な、なんだありゃ!? 壁から屋根までぜーんぶ真っ赤じゃない」

「そうだよししょー、あそこが紅魔館だよ」

「こうまかん!? ……あれじゃあ牧場って言うよりも、僕らが買おうとしてたロッテさんのお城じゃないか」

「ええ!? ししょー、実はお城を持ってるの?」

「あー、いや、うん。なんて言うのかな……買おう、と思ってたんだけどね……いろいろあって買えなかったお城があったんだ」

「ふーん、そのお城があればあたい遊びに行きたかったな」

「あはは、さすがにドイツは遠いからね。ちょっと行くのは大変だよ」

「だいじょーぶ、だってあたいはさいきょーだからね!」

 

『いくらチルノちゃんが最強でもヨーロッパまで行くのは大変だと思うんだけどなぁ……。あ、でもロッテさんどうしてるかな? 男爵から昔みたいに家を立派にしろって応援されてたけれども……』と、チルノの相変わらず威勢のいい言葉にふと、昔懐かしい、どこかに消えてしまったロッテを助けるために過去から本物のご先祖様であるミュンヒハウゼン男爵を連れてきた時の事を考えていたのび太。

結局その時お城を買うと言う話はミュンヒハウゼン男爵から子孫であるロッテへの『再び家を盛り立て、昔日の栄光を取り戻すのじゃ』と言う言葉と共に立ち消えになってしまったのだ。

そんな思い出のあるミュンヒハウゼン城にも似た雰囲気を持つ紅魔館。

しかし近づくにつれて、その違いはのび太の目にもしだいにはっきりと見えるようになってきた。

 

「ねえ、なんだかずいぶんと荒れ果てているって言うか、めちゃくちゃになってるんだけど……元々この紅魔館ってこんなお化け屋敷みたいな感じなの?」

「ううん、あたいが遊びに来る時はもっときれいだよ」

「そんな、これじゃあまるでお化け屋敷かあばら谷くんの家みたいじゃない」

「だけど、いつもはこんなじゃないよ」

「……ええ、でもひみつ道具もなしにこんな事をできる人なんて…………あ、いた……」

 

そう、本当なら入口なのだろうその場所は紅魔館を囲む壁に豪華で大きな門が本当ならあったに違いない。でも今のび太たちの目の前にあるのは、まるでバトルフィッシュの砲撃で壊された海底のようにめちゃくちゃに壊れてしまい見るも無残な姿になった門だった。おまけにチルノの言葉を信じれば、普段はお化け屋敷の入口のようにボロボロではなくもっと立派な入口だという。

そんな立派な入口をここまでボロボロにできるような人なんている訳が、とそこまで考えてからのび太ははた、と身近な心当たりに思い至った。

他でもない、のび太が今泊めてもらっている博麗神社の巫女、霊夢と魔法使いらしからぬ魔法使い、魔理沙の二人である。

あの世で閻魔様に地獄行きにされそうになった時、霊夢と魔理沙の二人がとんでもない威力の弾幕を使った事はのび太の記憶にも新しい。おまけに二人が異変の解決に、と向かったのは他でもないここ紅魔館なのだ。もしあの二人があのとんでもない威力の弾幕を使っていたとしたら、紅魔館の入口がのび太たちの目の前に広がる光景のように、お化け屋敷のようになっていたとしてもなんら不思議ではない。

むしろ入り口がここまで荒れ果てているとしたら、中は一体どうなっているのやら? 一見すると入口の外側から様子を見る限り紅魔館が吹き飛ぶようなことにはなっていないけれども、もうすでに霊夢や魔理沙の二人が乗り込んでいることは間違いないだろうしそうなると、紅魔館はめちゃくちゃになっているかも知れない。

またのび太としてはここまで来た時点で様子を見に来る、と言う最初の目的は達成しているため、本当ならこれ以上ここにいる理由も必要もないのだ。

 

「ねえチルノちゃん、ひとまず様子は見れたから一度戻ろう。外がこんなにめちゃくちゃになってるんだから、中も大変な事になってるかもしれないよ」

「うーん……わかった、さいきょーのあたいを超えるししょーがそう言うんなら、そうする!」

「じゃあ、一度帰ろうか。今ならまだ無事に帰れば先生にもそんなに怒られずにすむかもしれないし」

「うん!」

「………………うぅ……ん……」

「……今の声って、チルノちゃん?」

「ううん、あたいしらないよ」

「えっ? じゃあ誰が……まさか、誰かこの壊れた門の下に埋まってるんじゃ!」

 

まさにそれは偶然、あるいは奇跡と呼ぶにふさわしいタイミングだった。そうでなければ、のび太たちが来るのを待ち構えていたとしか言いようがないほどに。

様子を見るという目的は果たした、とのび太とチルノが戻ろうとしたまさにその時に聞こえてきたかすかな声。もちろんのび太はそんな声を出していないため、隣にいるチルノの独り言か何かと思って聞いてみるけれどもチルノも知らないと横に首を振る。

となれば声の主は別の知らない誰かが出しているという事になるという事くらいのび太にだって理解できる。

それに加えて今この場所が、めちゃくちゃに吹き飛んでいるという事実をつなぎ合わせれば、誰かが埋まっているかもしれないという想像くらいはそう難しくはなかった。

 

「おーい! 誰かー! どこにいるんですかー!?」

「……ここですょぉ……」

「あ、いた!」

「あ、ちゅーごくじゃん」

「中国!? 確かに格好は中国の人みたいだけど、中国って名前なの?」

「私は……中国じゃ……ありませんょぅ……」

「よーし、お医者さんカバン! これで閻魔様みたいに聴診器をあてて……」

 

瓦礫となった壁の一角へとのび太たちが駆け寄るとそこにはチルノいわく中国と呼ばれる女の人が倒れていた。

確かに中国と呼んだチルノの言う通り、いかにも中国らしい格好をしているが、その服は所々焼け焦げてボロボロになっているところを見ると、ここにやって来た霊夢や魔理沙からこてんぱんにやられたのかもしれない。

さいわい、がれきの下敷きになっている訳ではなくただ吹き飛ばされて倒れているだけだったためのび太はすぐにお医者さんカバンを取り出し中国(仮)と呼ばれる女の人の額に当ててコンピューターの診断を待った。

 

 

 

『ゼンシンノ打撲、チイサナ傷多数。治療法:イタミドメヲノマセ、ホウタイヲマイテアンセイニ』

 

 

 

すぐにカバンの画面に映し出される女の人の症状。幸い全身をぶつけているだけで骨折などはないらしく、カバンから出てきた治療薬については痛み止めと包帯だけで済んだのは幸いだっただろう。何しろのび太の不器用さはある意味達人の域に達している。あやとりならば器用に技をこなす事ができるが、それ以外となるとほとんど上手くいったためしがないのだ。

そんな時に手先の器用さを求める治療を要求されたら中国(仮)な女の人の命が危なかったかもしれない。

幸い、チルノにも手伝ってもらい薬を飲ませ、包帯もぐるぐると巻き付ける事で治療? は無事に完了した。

 

「……うぅ、ありがとうございます。よく遊びに来る氷精と、見ず知らずの人間の子にここまでしてもらうなんて……お礼を言っても言い足りません」

「いえ、そんな。ただちょっと薬とか用意しただけじゃないですか。それにあんなに傷だらけな人を放っておくなんてできません」

「さすがあたいのししょーだ!」

「そういえば、君はこの辺では見かけない顔ですがこの氷精のチルノから師匠と呼ばれているなんて、何者でしょうか?」

「あ、えっと……僕のび太、野比のび太って言います」

「のび太……? はて、この辺じゃ聞かない名前ですね……って、あの鴉天狗や閻魔を負かしたという、()()、外から来た子ですか!?」

「ええっ!? あ、は……はい……閻魔様はやっつけたというか、ツーカー錠の飲み過ぎで勝手に倒れちゃったんですけど……」

「いえいえ、ご謙遜を。それにお嬢様から『もしこの子が紅魔館にやって来たら、いろいろと話を聞いてみたいし丁重にもてなして中に案内するように』と言付かっていたんです。いやー、私の手当てもしてくれましたし、これも何かの縁。ぜひ中にどうぞ」

「い、いや……だって、ここって危ない場所なんですよね?」

「危ない、って……そりゃあまあ、力ずくで無理やり入り込もうとする白黒や紅白みたいな悪い連中は、こちらもやっつけようと……しますからね……。でもでも、君は大丈夫! この私が保証しますよ!」

「…………チルノちゃん、どうしようか……? こう言ってるけど……」

「え、あたい? うーん……ちゅーごくが一緒にいてくれるなら大丈夫かもしれないけど……」

「大丈夫大丈夫! 私がしっかりと守ってあげますよ!」

「なら、大丈夫かな? いざとなったらひみつ道具で逃げればいいんだし」

「ありがとうございます、それじゃあさっそく中に案内しますね」

 

手当てが完了したのはいいのだけれども、のび太が自己紹介をしたとたんに中国っぽい女の人は飛び上がらんばかりに、いや本当に少し飛び上がって驚くのだった。おまけにのび太が閻魔の四季様をやっつけたという事になっているあたり、ものすごい実力を隠した子供のように見られているらしい。

実際のところはのび太の言う通り、ツーカー錠を過剰に飲み過ぎた事による中毒症状なのだけれどもどうやら、この中国っぽいお姉さんはそうは思っていないようで、のび太が違うと言ってものび太の言葉を信じる事なく、二人……ではなくどちらかというとのび太の方を中へと案内しようとしてくる。

その姿はどこか『以前のび太にデビルカードを持たせようと必死でサービスしてくる悪魔』に似ているところがあった。

もっとも、デビルカードの時はカードの性質と、使わないと決めていたのに周りの人間がのび太に許可も得ず勝手にカードを使ってしまった事でのび太が消滅する危険にさらされたのだけれども、さすがにこの紅魔館で消滅する危険はないだろうという事と、もし万が一の時にはひみつ道具をありったけ使って何とかして逃げればいいや、と言う判断から中国っぽい女の人の申し出に首を縦に振ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、お姉さんってチルノちゃんも中国って言ってましたけど……中国から来たんですか?」

「はい、そうですよ。でも、私の名前は中国じゃありません、中国じゃないんです。私の名前は紅美鈴(ホンメイリン)紅美鈴(ホンメイリン)と言います。大事な事なので二度言いましたよ、ええ。しっかりと覚えてくださいね?」

「ホン、メイリン……へぇ、おかしな名前」

「ええ!? おかしな名前だなんてひどいですよぉ。これでも向こうの妖怪の中では割と有名なんですからね」

「ふーん……あ、そうだ! 美鈴さん中国の妖怪なんですよね?」

「ええ、そうですが……それが何か?」

「中国の妖怪なら、リンレイって言う妖怪を知りませんか? あ、と言っても最近じゃなくて三蔵法師がいた頃の子だから今は立派になっていると思うんですけど……」

「リンレイ、ですか? 三蔵法師って、あの大唐西域記を記した三蔵法師ですよね? あの頃と言いますとざっと千年は昔の妖怪という事になりますけど残念ながら、ちょっとリンレイという名前の妖怪に知っている人物はいませんね……っていうか、どうしてそんな昔の妖怪の事を君が知っているんですか?」

「ねえ、ししょー。そのさんぞーって、そんなに昔の人なの?」

「……うん、確か千年以上前の人、だったはずだよ。でも、そっかぁ、リンレイはもういないのか……元気にしてるかなって思ったんだけど……」

「まあまあ、なんと言っても中国は広いですからね。私が知らないだけで、もしかしたら私の暮らしていた地域とは別の場所で元気にやっているかもしれませんよ?」

「うん……」

 

のび太とチルノが美鈴についていく格好で紅魔館の中を歩いているその途中で、のび太はふと思い出したように中国らしい格好をした妖怪である美鈴にリンレイについて質問をしたのだった。

『のび太のパラレル西遊記』で唐の時代で開けっ放しにしてしまったヒーローマシンの中から出てきてしまった牛魔王に羅刹女。

つまりは後に人間を滅ぼしその歴史を妖怪のそれへと改変させた妖怪軍団のトップであるこの二人を両親に持つ少年だった。妖怪の両親を持つリンレイ自身も当然妖怪であるけれども人間の男の子、のび太と同年代の少年の恰好をして妖怪であるという自身の出自を隠しながら三蔵法師の弟子として接近していたのだ。

しかしリンレイは両親や他の金角銀角兄弟などといった妖怪とは決定的に違うところがあった。両親や他の妖怪と違い、あまりにもリンレイは優しい性格でありすぎたのだ。

三蔵法師やのび太たちを釜茹でにして食そうとするなど、平然と残酷な事をやってのける両親やその幹部への嫌悪と優しさとの間で板挟みになった末、最終的にはのび太たちの味方に付き、妖怪軍団の本拠地である火焔山が陥落し両親含め全ての妖怪が命を落とした後は彼らの菩提を弔うために、本当に三蔵法師の弟子として天竺までの旅に同行する道を選んだ……。

あいにくとそこでリンレイに関するのび太の記憶は別れを告げたため終わっている。のび太たちも再改変した人間の歴史である現代に戻ってきてから、リンレイがその後どうなったのかについては全く知らないのだ。

そこへきて出会ったのが同じ中国の妖怪である紅美鈴である。のび太が、一縷の望みをかけてリンレイが今どうしてるのか、知っているかどうかを尋ねたのは当然とも言えるだろう。

しかしその回答はリンレイなどという名前の妖怪は聞いた事がない、という現実だった。

いくらわずかな時間だけだったとは言え、仲良くなった友だちがもうこの世にいないかもしれない、と言う現実は小学生ののび太にはまだあまりにも重い現実だったことは想像に難くない。

美鈴の言葉にがっくりとうなだれるのび太に慌てて励ますが、そうとうに堪えたのかのび太の返事はあまりにも弱弱しいものだった。

そんなのび太の落ち込んだ様子に、急いで客室に案内しないと落ち込み過ぎてどんな事になるかわからない。と美鈴は慌てたように客室の一室へとのび太とチルノを案内する。

そのままのび太とチルノが中に入ったのを確認すると、お嬢様なる人物に連絡してくるから待っていてくれとだけ言い残して、美鈴はドアの向こうに消えていった。最後に、どこかで聞いた事があるような言葉を残して。

 

「はい、着きましたよ。ここが客室です。今お嬢様に君たちがここに来た事を伝えてきますから待っていてください。後、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「地下室? あ……ち、地下室はもう間に合ってますから、大丈夫です」

「あたいも、ししょーが行かないっていうなら行かないよ!」

「ええ、そうしてくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そう言えば、あの子の言っていた三蔵法師のいた時代のリンレイって妖怪の子の話を聞いていたら、昔父上が寝る前に話して聞かせてくれた孫悟空の物語を思い出しちゃいましたね。父上ったら、何につけても悟空様、悟空様ってよく言ってましたっけ……。まあ、気のせいですよね。そもそもそんな昔から人間の子が生きていられる訳ないですし。そんな事よりもお嬢様の所に行かないと。もう白黒や紅白との勝負も決着がついているといいんだけど……」

 

のび太たちがいる客間を出て、主人に二人が来たことを報告に行く途中で美鈴はのび太がしてきた質問からふと、まだ美鈴自身が子供の頃に父親から聞かされた昔話の事を、美鈴がまだ生まれていない頃の、父親がまだ小さかった頃の話の事をどうしてか思い出していた。

けれども、どうしてそんな話が今頭に浮かんだのか、その話をのび太に聞かせたらどうなるのか、そんな所にまで美鈴の気が回る事はなく、美鈴は主人への連絡を優先すべく、昔話の記憶を頭の片隅の押しやると紅魔館の廊下をかけてゆくのだった……。

 




中国妖怪同士、美鈴とリンレイ知っているかとのび太は思ったんですけどね。
美鈴リンレイについては全く知らないようですね。
なんだかんだとお世話になったし、結果だけで見ればリンレイの両親の命を奪ったの、のび太ですからね。気になるところがあったんでしょうけれども、どうやらリンレイは現在はどうしているのやら……?


さてさて、出るなと美鈴からは言われましたが言われたところで客室でおとなしくのび太とチルノが待っていられるのか!?
次回乞う、ご期待っ!!!
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