仕事めぇぇぇぇぇぇっ!!!(呪詛の言葉)
今回は番外編、幻想郷の端午の節句……? です。
やっぱりみんな、幻想郷の子たちって大人びていたりしっかりしている子が多いですけど、根っこは子供なんだなというイメージをぶち込んでみました。
みんなもやってみよう!
「こほん、えーとそれじゃあ……ここにいるみんなを代表して、私から一言だけ! いい事みんな、今日は特別な日なんだから遠慮なんかするんじゃないわよ!!! かんぱーい!!」
「「「「「かんぱーい!!!!!」」」」」
霊夢の音頭に続くように、みんなの声が高らかに唱和する。
ここは人も妖怪ものび太たちも集まる博麗神社、ついでに集まっている面々もいつもの宴会のメンバー……かと思いきや、幻想郷の管理者である八雲紫、冥界の亡霊である西行寺幽々子、鴉天狗の射命丸文など普段ならこういった宴会の場が設けられているなら必ずいるはずの面々が抜けている。
これはどうした事かと言うと今日は五月五日、子供の日という事もあって霊夢が「今日は子供だけで楽しむんだから紫たち大人は参加不可ね」と無慈悲にも言い放ったのだ。
当然大人組、保護者組、年長者たちからはもうれつな抗議の声が上がったが子供(中にはレミリアやフランなどもいるのだけれども)組からのそれを上回る「子供の日に大人が出てくるなんてずるいんだ!」という反発により博麗神社は子供たちによって占拠されたのであった。
こうして、霊夢、魔理沙、のび太、ドラえもん、ジャイアン、スネ夫、しずか、出木杉。レミリアにフラン、咲夜、妖夢、うどんげ、チルノ、ルーミア、リグル、ミスティアに加えて阿求や小鈴、どころか容姿だけ子供のため、なぜか萃香まで加わって乾杯をしているのである。
ちなみに、幻想郷で生まれた時から暮らしている霊夢や魔理沙たちは子供であってもお酒を飲む事に違和感を感じないが、さすがに外の世界から来たのび太たちはお酒を飲む事に抵抗があったため、のび太たちはコーラやオレンジジュースに、使用するとお酒を飲んだのと同じようにホンワカした気分になれるというひみつ道具『ホンワカキャップ』をつけてお酒の代用としていたりする。
「くはーっ! やっぱり酒はいいんだぜ! しかものび太たちのグルメテーブルかけで酒もつまみもいくらでも出てくるからな。去年までは酒の取り合いになったりしたけれども、今年はそんな心配もいらない、最高の子供の日なんだぜ」
「まったくよね、飲んでも飲んでもいくらでもお酒もおつまみも出てくる。しかも買い出しに行く必要も料理の準備や下ごしらえをする必要もない! まったく、ねえのび太、せっかくだしドラえもんをウチの神社で青狸大明神として祀っちゃダメかしら?」
「誰がタヌキだ! 僕は高級なネコ型ロボットだぞ!! それに、僕はのび太くんの将来をよくするために来たんだ。いつまでもいる訳にはいかないよ……もぐもぐ……もぐもぐ……ゴクリ……」
「えー、ケチねぇ。っていうか、どら焼き食べるか抗議するのか、どっちかにしなさいよね……んぐっ、んぐっ、んぐっ……ぷはぁ……っ。くぅー、のどに染みわたるわ!」
がぶがぶとお酒を呷り酔っているせいか、堂々と青ダヌキなどとどこぞの牛魔王みたいな事を言い放つ霊夢に、当然のようにドラえもんが顔を真っ赤にして怒りながら、後どら焼きをほおばりながら抗議の声を上げた。
放っておくとそのまま怒りで大爆発でも起こしそうな勢いだが、霊夢はそんなドラえもんの様子に動揺する事もなく、手酌で手にした升へと日本酒を注ぎ込むとそれを一息に飲み干すのだった……。
「……なので、昔5月5日というのは本来女の子のお祭りだったんです。それが江戸時代に入って男の子のお祭りに形を変えていった訳です私の何代か前の稗田家当主が、その頃の人々の生活の様子も記録していたはずです」
「へぇ、確かに本とかネットでも端午の節句が昔は男の子のお祭りじゃなくて、女の子のお祭りだったって書いてあるのは見た事があったけど、こうしてその資料について知識のある人と話ができるなんて……本当に素晴らしいですよ」
「私たちから見ると、こうして私たちと自然にそういった話題について話ができる出木杉さんの方が、よっぽど不思議なんですけどね……」
「いやぁ、そんな事ないですよ。僕なんて阿求さんと話をしているとまだまだ勉強不足だと思い知らされます」
「こうしてはお話をしていて、つくづく出木杉さんが外の世界の方で残念だと思います。幻想郷の中の方なら、大金を積んででも稗田家にお招きしたいのですが……」
一方、霊夢がドラえもんに対してタヌキと、命知らずな発言をしていた頃、少し離れた片隅では周囲の喧騒など全くお構いなしに出木杉君や稗田家当主である稗田阿求、そしてその友人である本居小鈴たちは、周囲の宴会などお構いなしと言わんばかりに、歴史についての談義を行っていたりする。
特に出木杉君、それに阿求は周りから『そういう話は自宅か鈴奈庵でやってくれ』『わざわざ子供の日に宴会の席でやる必要もないだろう』と思わせるほどに二人の談義は白熱していた。
残念ながら? そんな三人の間に割って入る猛者はここにはいない。不用意に割って入ろうものなら、二人の熱い会話によって間違いなく洗脳されるか長々とした話を聞かされ続けて逃げられなくなるかのどちらかだと、口に出さずとも誰もが理解しているのだ。
だから、周囲は楽しそうなのに三人のいる場所だけが、妙に不思議な静けさと賑やかさを見せていたのだった……。
「のび太ー! あそぼ、あそぼ、あそぼ!」
「わ、ちょっとフランちゃん!?」
「こらフラン、のび太にしがみつくんじゃないわよ。のび太だって困ってるじゃない」
「えー、だってのび太たちなかなかこっちに来てくれないから全然遊べないんだもの。それにお姉さまもみんなも、私が外の世界に行こうとすると血相変えて止めようとしてくるし」
「当り前よ! どこの世界に真っ昼間から外の世界に遊びに行く事を許可する吸血鬼の姉がいるってのよ!」
「もぅ、だからせっかく来てくれたんだし、このチャンスにいっぱいのび太と遊ぶの!」
「遊ぶのはいいけれども、まかり間違ってもドカーンとかするんじゃないわよ?」
「大丈夫だよ、そこは私だって一生懸命ドカーンってしないように練習したもん!」
「でも、何して遊ぶ?」
「のび太と遊ぶのならフランは何でもいいよー」
そしてこちらでは、吸血鬼の姉妹レミリアとフランに絡まれて……どちらかと言うとフランが懐いたのび太にしがみついている、という格好なのだけれども、もみくちゃにされていた。
もともとのび太に懐いているフラン、のび太が幻想郷から外の世界に帰ってからものび太と遊びたい、だの家出して外の世界ののび太の家に行こうと企むなど紅魔館や八雲家の面々を大騒ぎさせたりという前科があるのだけれども、そこに来てのび太たちの方からやって来てくれた事もあり、お酒や食べ物そっちのけでのび太に突撃して遊びたいとおねだりをしている真っ最中なのだった。
おまけにフランはちゃんと自分の力を、のび太たちと遊ぶためにも制御する練習を続けてきたと言うのだからそのやる気は本物である。
そんなフランにのび太が提案したのは……マット・フェンシング。
昔、ドラえもんとのび太が編み出した布団をす巻きのような形に丸めて抱え上げ、それで互いに殴りあうという、実にソフトかつ怪我のしにくい決闘である。
「そう、布団を丸めてそれを抱えて遊ぶの。布団だから痛くないし、安全だよ。ここなら二階がないからママに怒られる心配もないしね」
「面白そう、やろうやろう!」
「へぇ、面白そうじゃない。たまにはこういう童心に帰るような遊びもしてみたいわね」
「でも、その勝負に使う布団はどうするの?」
「神社のを借りればいいじゃない。どうせ霊夢たちはみんな気が付いてないでしょうしね」
「よーし、じゃあお布団がしまってある部屋に行けばいいのね。のび太、お姉さま、いこっ!」
フラン準備中……
のび太準備中……
レミィ準備中……
「紅コーナー、フランドール・スカーレット!!」
「ふふふ、のび太、負けないからねー」
「続いて黄色コーナー、野比のび太!!」
「それはこっちのセリフだぞ、フランちゃん!」
「それでは、始めっ!」
「いっくぞー!!!」「いっくよー!!!」
皆が宴会をしている居間から、博麗神社の寝室へと移動し布団を引っ張り出しては丸めていく。それを二人分用意すると、のび太とフランがそれぞれ部屋の対角線となる角へと移動し、審判役を務めるレミリアが高らかに試合開始を宣言して見せた。
のび太もフランも、お互いに身長よりも大きな布団を抱えているため若干ふらふらとふらつきながら試合開始の宣言と共にどたどたどたどたと足音を響かせながら部屋の中央へと突撃する。
これが本来の弾幕勝負ならばこんな場所でやった日には神社が崩壊しそうなものだけれども、互いに布団という緩衝材にもなりそうな柔らかいものを抱えているためのび太の言う通り怪我をする様子もない。レミリアも二人の試合を審判役として観戦しながら『へぇ、のび太もなかなか面白そうな遊びを思いついたわね。これ、紅魔館でもやったら面白そう』と内心かなり評価をしていた。
そうこうしている間にも二人の試合は続いている。
布団が幾度となくぶつかり合い、時には互いの突進をひらりと避け、またある時は手にした布団を鈍器として使い振り回し、相手にぶつける。二人の布団がぶつかり合うたびに火花ではなくホコリが散り、ドシンバタンと畳が大きな音を立てる。
それはペコやサベール隊長が見たら、きっと頭を抱えたに違いない、それほどにソフトな決闘であった。
「ふぅ……ふぅ……フランちゃん、強いよ……」
「ハァ……ハァ……のび太こそ、なんで倒れないのよ……」
「ちょっと!!! あんたたちさっきからドシンバタンうるさいわよ!! 人の神社で何やって…………」
「「「……あ」」」
「なにやってくれてんのよーっ!!!」
「「……………………」」
「ちょっと、こんな面白い事三人でやってるんじゃないわよ! 私も混ぜなさい!!」
当然そんなに激しくのび太とフランが大きな音を立てながら遊んでいれば、いくらお酒が入っていても家主である霊夢は気が付く訳で。
が、さすがに布団を引っ張り出して丸めたもので引っぱたきあうなどと言う遊びをしているとは全く想像していなかったようで、障子をがらりと開けて入ってきた霊夢ものび太とフランの様子を見て思わず絶句してしまう。
そして、ここに新たなる修羅が誕生した。
新しい布団を引っ掴むとぐるぐると手早く簀巻きのように丸めて猛然とのび太とフランの二人に襲い掛かる霊夢。そうなればもう、のび太もフランも争っている場合ではなかった。二人とも互いに視線を交えると無言で頷いて、鬼のような形相で向かってくる霊夢に布団を持って立ち向かえば、私も混ぜろとレミリアまで参戦する始末。
どうやらのび太とドラえもんの編み出したマット・フェンシングは霊夢さえも童心に戻してしまったらしい。
「おーい霊夢、どうしたんだ? ……ってなんだぁ!?」
「あー、ししょーずるい! あたいがさいきょーなのに!」
「幾度の修行で鍛えたこの剣技を持つ私が、真の布団の恐ろしさを見せてあげます!」
…………そしてこの後、博麗神社は子供の日の宴会から一転、のび太とドラえもんが考案した新競技マット・フェンシング幻想郷最強決定戦会場へと姿を変えた事は言うまでもない。
しかし、その勝負が終わった後の参加者の表情は、皆一様に笑顔で実に楽しげだったと、様子を見に来た保護者組は後に語る。
また、この後幻想郷の子供たちの間ではこのマット・フェンシングという競技が大流行し布団屋が上を下への大賑わいをすることになるのだけれども、それはまた別のお話。
たぶん全部終わった後の博麗神社はホコリがもうもうと舞って大変な騒ぎになっていたんでしょうね……。
紫はひっくり返りそうですし、幽々子様辺りはそんな状況でも笑顔でいそうですが。
ちなみに今回登場したマット・フェンシングですが決して私のオリジナルではなく『四次元たてましブロック』という話に登場した競技? だったりします。
ただしその時は二階ののび太の部屋で大暴れしたため、下にいたママに激怒されてしまう、というストーリでした。
さてさて、次は再び本編へと戻ります。
お楽しみに!!