ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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先の更新から二か月近くかかってしまいましたが、お久しぶりです。
時間的にも本来ならもう紅魔編も佳境に入っていて不思議ではないはずなのですが、この『のび太の幻想郷冒険記』正直なところこのまま書いていていいのかな? とこの2か月近くの間にだいぶ書き続けるか止めるか迷いました。
6月末まで書く気が全く起こらず、ある程度書いたし筆をおいてもいいのかなと執筆ページを開く事すらせずにいましたが、他でもない自分が書きたいもの、楽しいものを書いていこうと悟りではありませんがようやく開き直る事で心の迷いに目処をつけたので、このようになんとか再開する事ができました。

恥ずかしながらキャラの動き、書き方さえ忘れかけるほどに時間が経過しているため違和感があるかもしれませんが、そこは平にご容赦願います。




さてさて、紅魔館にやって来たのび太たち。
今回は一体どうなってしまうのか?





潜入! となりの紅魔館(その2)

のび太とチルノが門番、中国こと紅美鈴に案内され紅魔館の客室へと通されていたちょうどその頃。

のび太たちが通された紅魔館の客室とはまた別の場所……紅魔館が誇る大図書館では、今まさに幻想郷の空を真っ赤に染めている異変を解決するべくのび太たちよりも先にやって来ていた霊夢に魔理沙と、この異変の主犯とによる一大決戦が行われていた。

空が紅く染まったのを見てすぐに寺子屋から飛び出した二人は人里から一路異変解決のために動き出し、紅魔館へと突撃した二人は霊夢の勘を頼りに紅魔館の中を移動し、図書館へとやって来た。そうしてにらみ合い、現在に至っている、と言う訳だ。

片や博麗の巫女である霊夢に白と黒の服に身を包んだ魔法使いの魔理沙。

片や紅魔館の長を務める……とは言えとても齢500には見えないけれどもこれでもれっきとした吸血鬼で、幻想郷のパワーバランスの一角を担うレミリア・スカーレットに、魔理沙と同じ魔法使いのパチュリー・ノーレッジ。

その主犯の二人めがけて霊夢が放った弾幕が、遠慮も容赦も一切なく図書館の本棚を削り、陳列された本を吹き飛ばしながら迫り来る。

館も図書館も、壊れようが吹き飛ぼうが知った事かと言わんばかりの弾幕。その威力がどれ程のものなのかは、当たらなくてもその様子から嫌でも理解できるだろう。

そんな物騒な弾幕が向かってきているのに吸血鬼レミリアは焦ることなく手にした赤い槍を軽々と振り回し、涼しい顔のままあっさりと弾幕を叩き落し、直撃する前に大爆発を引き起こした。思わず『やったか!?』と言いたくなるような、煙と埃がもうもうとたち込めて霊夢たちの視界を奪ってしまう。

 

「……ちょっと二人とも、少しは手加減してもらいたいんだけど。これだってお父様の代からずっと集めてきた貴重な蔵書ばかりなのよ? もちろん質だけじゃなくて数にだってそれなりに自信があるんだから。それをここで図書館を更地になんてされた日には、また一から収蔵する事になるんだからね。そんなお父様にも顔向けできないような事はまっぴらごめん、願い下げよ」

「あら、それなら簡単な話じゃない、ここを更地にしてほしくなければさっさと赤い霧を止めて異変を終わらせる事ね」

「おいおい霊夢、更地にするならその前にいくつか私に本を避難させてほしいんだぜ。レミリアじゃないが、私もまだまだ読んでいない貴重な本もあるからな、それまで全部ダメになったら私のコレクションが減って困るんだぜ」

「……魔理沙、貴女がするのは避難じゃなくて盗難の間違いでしょう? それに、私が結界で防御魔法を展開してなかったら、本当に図書館の本が全部ダメになってるわよ」

 

しかし、そんな煙の下から出てきたのはほとんど無傷に近しい、レミリアの姿だった。

とは言え、霊夢たちが撃ち込んだ弾幕の威力は相当のものだったようで、本来ならばピカピカに磨き上げられ来訪した利用者の冷たい足音が響いていたであろう図書館の床には大穴が口を開けている。

それでも、実のところ戦っているのはレミリアが主でパチュリーはその言葉からも、どちらかというと被害が図書館の外にまで及ばないよう、魔法で結界を張ったりレミリアへと向かってきた弾幕の余波を軽減したりと、補助を担当していた事もあってか、これでもかなり被害は抑えられているらしかった。

けれどもそれは決して楽な仕事ではなく、おまけにレミリアも霊夢も魔理沙も、徐々に勝負がエスカレートしていくせいか一撃また一撃と戦いが進むごとにみしりみしりと嫌な音を立てるのだからパチュリーとしては気が気でないだろう。実際、霊夢たちとの会話のやり取りの最中さえ、彼女は一人冷や汗を流しながら今回レミリアが起こした異変の()()()()()が速く達成されることをただ祈っていた。

 

「魔理沙、回収するならさっさとしておいた方がいいわよ。早くしないと本当にここが更地になるわ」

「だから、そんな暴挙、はいそうですかなんて黙って私がさせる訳ないでしょう?」

「霊符『夢想封印』!!!」

「恋符『マスタースパーク」!!!!」

「……むきゅ、ちょっとは手加減しなさいってば!!!」

 

祈っていたのだけれども、そんな彼女の願いもむなしく、霊夢の身体と魔理沙の手にした小さな箱のようなものが先日のび太を助けるために閻魔様に撃ち込んだ弾幕と同じくらいにまばゆい光を放ち、輝き始める。それがいったい何を意味するのか、残念ながら理解できてしまった魔法使いパチュリーが泣きそうな悲鳴を上げながら霊夢たちに非難の言葉を上げるけれども、残念ながらどうやらここ紅魔館にその声を聴き届けてくれる神様はいないらしかった。

どうしてかと言えば他でもない。パチュリーが非難の声を上げた次の瞬間、霊夢と魔理沙の二人がそれぞれ名前を宣言した弾幕が、ショックガンや空気砲などとは比べ物にならない見た目の弾幕が、レミリアへと飛んで飛んで行ったのだ。

さすがに手にした槍でかき消すのは難しいであろう、その二人の弾幕の光の中にレミリアが消えた……と思った瞬間、紅い光の十字架が立ち上った。

 

「紅符・『不夜城レッド』!!! ……まったく、図書館どころか紅魔館全部をガレキの山に変えるつもりかしら?」

 

不夜城レッド、それは自身の持つ力を弾幕にして発射するのではなく、その場に放出するタイプのレミリアが持つ技である。弾幕を認識して、さすがに手にした槍で弾幕を凌ぐ事が難しいと判断したレミリアは、その自分を中心にして放出するという性質を利用してすぐに迎撃を槍から不夜城レッドへと切り替えたのだった。

おかげで放出された不夜城レッドのエネルギーに壁のような働きをさせる事でレミリアは二人の放った弾幕さえもどうにかしのぎ切って見せたのだ。

ただし、さすがにそれでも槍で弾幕をかき消した時のように無傷で、と言う訳にはいかなかったらしくその服や帽子がところどころ傷ついているのが見て取れる。そんなレミリアの様子を見て、霊夢が鋭い目つきで何かを察したように警戒を緩めないまま、手にしたお祓い棒をびしり、とレミリアに向けて突き付けた。

 

「……ところでレミリア、あんた一体何を企んでるのかしら?」

「たくらむ? どうせ退屈だの暇だのって理由をつけて前にやらかした紅霧異変をもう一度起こしただけのただの異変だろ?」

「違うわ、確かに紅霧異変と同じような異変は起こしているけれども、もし理由が魔理沙の言っているようなものだったらレミリアはこんな消極的な戦い方はしないわよ。さっきからずっと防戦一方で、時間稼ぎをしているような戦い方じゃない。本当ならもっと魔理沙みたいに積極的に弾幕を撃ち込むような戦い方をしてくるわよ」

「「おいおい(ちょっと)こんなのと一緒にしないでほしいんだぜ(わね)!」」

「そう思うなら二人とも普段の行いをもっと悔い改める事ね。で、それよりもどうなの? なんか悪だくみしようって言うんなら、こっちとしてもここを更地にするつもりでいかせてもらうけど」

「いいんじゃないかしら? ただし……そんな事をしている余裕があれば、の話でしょうけれどね」

「……どういう事よ?」

 

霊夢の半ば脅迫に近い言葉にも『やれるものならどうぞ』と不敵に笑うレミリア。この、目の前の吸血鬼が一体何を企んでいるのか、今引き起こされた異変がただの暇つぶしではないと言う霊夢の予想が、霊夢が思い切った行動を取れずにいる大きな理由だった。

先ほど自分でも図書館が蔵書的にも大事な場所だと説明しておいて、いざ破壊して更地にしようとしたらはいどうぞ、では誰の目から見ても怪しいにもほどがある。

そして、レミリアの口から出てきたその答えは二人にとって、ある意味異変以上に見過ごす事のできないものだった。

 

「簡単な話よ、私たちがしている事は霊夢、貴女の言う通りただの時間稼ぎ。本当の目的は、あの外からやって来た面白そうな子供と、貴女たちを引き離す事よ。私とパチェがこうしている間に派遣した咲夜が……っていう寸法ね」

「しまった!!!」

「やられたんだぜ!!!」

「むきゅ、そう簡単に行かせる訳ないでしょう?」

「……魔理沙、こうなったら本はあきらめなさい。ここを吹き飛ばしてでものび太の所に戻るわよ」

「……だな。のび太の安全がかかってるとなれば、悪いが全力全開、最大出力のフルパワーで行かせてもらうんだぜ」

 

異変そのものがただの囮だったと言う事実に、慌てて霊夢たちはくるりと踵を返して図書館の入口へと向かおうとするけれども、その前には二人を行かせはしないとばかりにパチュリーが立ちはだかる。

前後挟み撃ちの状況になってしまった霊夢と魔理沙だけれども、今のび太の身に危機が迫っているとなればもはや遠慮する、と言うつもりはみじんも無いらしい。

その証拠に、これまでにないほど霊夢も、魔理沙もビカビカとまぶしいくらいの明るさで力を込めながら光輝いている。

その姿はまるでアースを取り付けないまま、蓄電スーツを着用し続けたのび太が、ついに許容量を越えて1万ボルトの放電をした時のようだ。

その二人がそこまで貯めに貯めた力を弾幕としてあわや発射! というまさにその時、図書館の扉が申し訳なさそうにぎい、と開いた。

ついでに、扉から顔をのぞかせたのは中国こと門番のお姉さん紅美鈴と、銀色の髪をしたメイドさん。

 

「あのぉ、お嬢様。お取込み中申し訳ありませんが……」

「お嬢様、ただいま戻りました」

「何よ美鈴、門番の仕事はどうしたのよ? それに咲夜も、首尾はどうだったの?」

「いえ、それがですね。あの、咲夜さんとここに来る途中で一緒になったので私も来たんですけど、実はその外から来た子と氷の妖精が門の所にやって来ましたので、今待っているようにと言い含めて客室に保護していますけど……どうしましょう。連れてきましょうか?」

「「「「……………………」」」」

 

美鈴の予想もしなかった言葉に、その場の四人とも思わず時間が止まったかのように言葉を失ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

美鈴がのび太とチルノを客室に案内し、地下室だけは絶対に覗かないようにと説明してから美鈴は客室にしっかりと鍵をかけて出られないようにしてから、主人であるレミリアのもとへと急ぎ足で廊下を走っていた。

もちろんこれは悪意あっての事ではなく、万が一にも彼女が去り際に注意したように客室から抜け出して()()()()()()()()()()()()()()、である。

いくら外から来た人間の、おまけに子供の手で鴉天狗や閻魔と言う、幻想郷でもそうそうたる実力を持つ二人を下したとは言っても、地下室の奥に居る『彼女』に会わせるのはあまりにも危険だと美鈴もしっかり理解している。

いや、状況にもよるけれども美鈴だってもし彼女の相手をせよと言われれば慎重になるほどの、彼女は力の持ち主であると紅魔館に住まう全ての住民に知れ渡っている。そうでなければ、とっくに彼女は地下室から解放されて一緒に自分たちとなんの不自由もない日常生活を過ごしていただろう。

そんな事を考えながら小走りで廊下を移動していた彼女に声がかかる。

 

「いやー、しかし助かりました。ぜひ話を聞きたいからもし来たら客人として丁重に対応しなさいと言われていた子がこんなにも早くに来てくれるなんて。さっき咲夜さんがあの子を紅魔館に招くために出かけてましたけど……ま、咲夜さんには申し訳ないですけど手間が省けたのはいい事ですよね」

「美鈴じゃない、こんなところにいるなんて貴女門番のお仕事はどうしたのよ」

「咲夜さん、お疲れ様です。ちょっとお嬢様に連絡がありまして……。咲夜さんこそ、その様子ですといなかったんですよね? 例の子は」

 

美鈴に声をかけたのは銀色の髪のメイドさんであった。

外の世界ではなかなか目にする事のない格好をした彼女だけれども、美鈴はそんなメイドさんの存在をごく当たり前のように対応し、一緒に主人であるレミリアのもとへと歩き出す。

が、何を隠そうこのメイドさんこそがレミリアの言葉にもあった、この異変を囮にして彼女からのび太の所に派遣されたメイドさんなのである。もちろんのび太当人は自分の身にこんなメイドさんが迫ってきている事などは、露ほども知る由もなかった。

 

「ええ、少なくとも巫女や魔法使いが留守番するように言って、神社に残っているかと思ったんだけど……どこを探してもいなかったのよ。どこに行ったのかしらね?」

「それがですね、今氷精の子と一緒に紅魔館に来てるんですよ。なので、ひとまず客間に保護していてこれからちょうどお嬢様に報告に上がるところだったんです」

「なるほどね、それにしてもまさか異変の真っ最中にその中心である紅魔館までやって来るだなんて……。その子、本当に外から来た子供なのよね? 危機感が欠けていると言うのかしら、それとも神経が太いのかしら」

「どうなんでしょうね? 少なくとも、第一印象では鴉天狗や閻魔を負かしたとはとても思えない雰囲気なんですけど……」

 

そんな事を二人で話しながら、歩みを進める二人はやがて目的地……紅魔館が誇る巨大な図書館の入口を開くのだった。

 

 

 

 

 

 

「……魔理沙! 急ぐわよ、なんとしてものび太を保護するわ!」

「任せるんだぜ!」

「行くわよ美鈴! 咲夜! 霊夢たちに先を越されるんじゃないわ! なんとしても例の子供を確保するのよ!」

「は、はいっ!」

「お待ちください、お嬢様!」

 

美鈴がもたらしたまさかの報告に一瞬、ゴルゴンの首からの光線でも受たかのように固まってしまった霊夢たち四人。その中でいち早く凍り付いた空気を振り払うように動き出したのもまた、霊夢だった。

レミリアにパチュリー、そして美鈴や咲夜たちがとっさに動けない間に、同じようにまだ固まっている魔理沙の腕をむんずと掴み、図書館の扉を蹴破る勢いで突進してはバアン! と思いきり開かれた扉を後にして一路のび太の部屋を目指してゆく。

その音にようやく復活したレミリアも、霊夢を行かせてなるものかと慌てて転がるように追いかけていけば、主人を置いていけるかと美鈴や咲夜がその後に続く。

 

「魔理沙、のび太はこっちよ!」

「のび太がどの部屋に閉じ込められているのか、分かるのか?」

「たぶんね。私の勘よ勘!」

「霊夢の勘なら安心だな」

「待ちなさい! 廊下を走るなって寺子屋で教わらなかったの!?」

「走らなかったらのび太が危険にさらされるでしょうが!」

「ぐぬぬ、ああ言えばこう言う……咲夜、美鈴! やっておしまい!」

「え? で、でもお嬢様いいんですか? ここで弾幕やナイフを使ったら廊下がボロボロに……」

「何言ってるの美鈴! 傷んだところは貴女が直すのよ」

「やっぱりぃ~!」

 

外の世界でジャイアンとスネ夫がくしゃみをしそうなやり取りをしつつ、一丸となって進む霊夢たち。

そして霊夢がここ、と勘で選んだとある部屋の扉を弾幕で容赦なく粉々に吹き飛ばし中へと駆け込んだ。もちろん後で謝って直そうなどと言う意思は、そこからはみじんも見られない。

そうして中へと飛び込んだ霊夢が周囲を見回して……。

 

「のび太! 大丈夫!? ……って、あ、あれ?」

「おい霊夢、のび太、いないんだぜ?」

 

見回してみても、部屋にはのび太もチルノも、誰もいなかったのである。

 

 




実はレミリアとパチュリー、そして咲夜と言う残りの紅魔館勢の紹介的な話で、客室にいるはずののび太が全く出てこなかったこの回。
果たして霊夢が明けた部屋にはいなかったのび太とチルノはどこに消えてしまったのか? それともすでに危機に陥っているのか? はたまた霊夢の勘が外れてしまい、実は別の部屋にいるのか?

果たしてのび太とチルノの運命やいかに!?

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