ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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お待たせしました、紅魔館編六話目の更新です。
そして先に言っておきます。


フランちゃん、そしてフランちゃん推しの皆さん、本当にごめんなさい。
グングニル投げないでっ! マスパ撃たないでっ!
反省はしています(でももうやらないとは言っていない)






さて、のび太vsフランちゃん。果たして戦いの行方やいかに!?



戦闘! となりの紅魔館

「あはははははははは!!!」

「わあーっ! ドラえもーんっ!!!」

 

薄暗い場所で、どういう訳かいきなり始まってしまったのび太とフランとの勝負。おまけに弾幕での勝負かと思いきやフランは真っ赤に燃える大きな剣、と表現していいのかどうかも怪しいそれをぶんぶんと勢いよく振り回してくる。

それだけなら、剣をかわせばいいのだけれども、剣を振り回すたびに火の粉のように弾幕をばら撒いてくるものだからのび太はそちらも避けなければいけなくなってしまって、必死で走り回りながら二つの脅威からどうにか逃げているというありさまだった。

これは日頃ジャイアンと言うのび太だけでなくスネ夫やはる夫、安雄たちにとって最大級の脅威から必死で逃げ回る事で培われた逃げ足の速さの賜物である。

けれども、その最大級の脅威であるジャイアンよりも、今目の前にいるフランは怖かった。

真っ赤に燃える巨大な剣も怖い、剣からあふれてくる弾幕も怖いのは間違いない。剣は振り回して床や壁に当たるたびに、その場所をあっさりと削ってしまう。さっきのび太が顔をぶつけた壁を、である。もし剣が当たったらどうなるかは言うまでもないだろう。

それだけでも恐ろしいのにそれを振り回してくるフランがかつて『のび太と鉄人兵団』で、ママの手によって物置に放り込まれて怒り心頭だったザンダクロスの頭脳が上げるような笑い声を上げながら向かってくるのである。

これが怖くなくて、一体何が怖いと言うのか。

今のフランの前には中生代でブロントサウルスに襲い掛かったティラノサウルスも、ガルタイト工業本社が送り込んできた刺客ギラーミンも、ダブランダーの右腕サベール隊長も、亡国アトランティスのバトルフィッシュや鉄騎隊も、地球制服を狙う魔界星の王デマオンも、PCIAの長官ドラコルルも、高尾山の湖を取り囲み世界中から押し寄せた圧倒的数の鉄人兵団も、風雲ドラえもん城で恐竜人たちと戦っている最中に地球に衝突したすい星も、妖怪社会に変化した歴史の現代で妖怪に変化したママや先生も、歴史を改ざんし永久王朝を築き上げようとしたギガゾンビも、それ以降の冒険で遭遇したいろいろな相手をひっくるめても……霞んでしまうほどに、フランは怖かったのだ。

それでもまだ目を覚まさないチルノが巻き添えを受けないよう、彼女から離れるように逃げ回っていたのはやはりのび太らしいと言うべきか。

 

「あはははははは!!! さっきまでの勢いはどうしたの? 逃げ回ってるだけなら、さっきの妖精の方がまだ立ち向かってきた分おもちゃとして役に立ったわ!!」

「く……っ、何か道具が、何か道具があれば……えーと、あれでもないこれでもない……んもう! ポケットの中の整理くらいしておけよ! って、最近使ってるのは僕か。僕のバカバカバカ!」

 

ぶんぶんと物騒な剣を振り回しながら迫ってくるフラン、その恐怖に対抗するためには当然のび太も武器を手にする必要があった。いくら射撃にあやとり、ついでに昼寝の達人と呼べるのび太でも丸腰ではただのぐうたらな小学生である。

やはりのび太がその宇宙一と言ってもいいほどに天才的な射撃の腕前を発揮するためには、射撃武器が必要なのだ。

かと言って魔理沙や文と勝負した時のようにのび太愛用のフワフワ銃を使おうものなら、6発ごとに弾丸を装填しなくてはいけないという問題に直面してしまう。魔理沙と弾幕で勝負した時には、物体浮遊術でスカートをめくりあげて魔理沙がひるんだ隙に弾込めを行った。

しかしフランがそんな事をするチャンスをくれるとも思えない。のび太がスペアポケットから取り出したのはこれもまた数々の冒険でお世話になった武器タイプのひみつ道具『ショックガン』だった。これなら少なくともエネルギーが切れさえしなければ残弾を気にする必要はない。

 

「あれでもないこれでもない……えっと、あ、あった! ショックガン!」

「あら、やっと反撃と言う訳? でもそんな攻撃で私を倒せるとでも思っているのかしら?」

「えーっ、ウソーっ!! ショックガンのエネルギーを弾くだなんて」

 

スペアポケットから取り出したそれを素早く構え、引き金を引いた。

一発、二発、三発。引き金を引くたびに、銃口からは直撃すれば大型の肉食獣すら一撃で昏倒させるほどのエネルギーが発射される。が、それほどの威力を持つショックガンの一撃も、フランの手にかかれば光線が直撃する前にあっさりと剣で弾かれておしまいである。いくらのび太の射撃の腕が天才的だと言ってもやはり当たらなければ意味がないのだ。

それでもなおも諦めずにのび太はショックガンを撃ち続ける。正面から、横からあるいは後ろに回り込むようにして、それこそありとあらゆる方向、角度から一発でも命中させられれば、そう考えながら夢中でショックガンの引き金を引き続けるけれども、そのどれもが命中弾となる事は無かった。

フランはと言えば素早い身のこなしでショックガンのエネルギーを素早く避けて見せ、それでも当たりそうになった時には容赦なく手にした剣で片っ端から弾き、あるいは打ち消していく。

いくらフワフワ銃のように弾込めの必要がないと言っても、使っていればいずれはエネルギーがなくなってしまう訳で、このままでは完全に打つ手なしである。

 

「うーん、うーん……なにか隙を作れれば……魔理沙さんの時みたいに物体浮遊術は使わせてもらえそうにないし……」

「ふふふ、ちょっと反撃してきたと思ったらもうおしまい? それなら、つまんないおもちゃはそろそろ壊しちゃうけど……いいかしら」

「えっと、隙が作れそうな道具はあれでもない、これでもない……これも違う……あ、あった! えーいっ!」

「あはははは、そんなの通じないわ!『ピカーンッ!!!』……きゃっ!?!?」

 

魔理沙との勝負で隙を生み出すために活用された物体浮遊術も、魔法世界の住人ならば何をせずとも使えるだろうけれども、のび太の実力では前段階に時間がかかるため、のんびりと待ってくれるとも思えないため、それはフランが相手ではあまりにも危険すぎた。となれば自然とその隙を作る要素はひみつ道具に限られてくる。

かと言ってそんな隙を作ってくれるような、都合のいいひみつ道具があるのだろうか? それがあるのだ。四次元空間の中へと突っ込んだ手で中を探り、今までの日常はおろか冒険でもほとんど使う事がなかったそれの存在に気が付いたのび太はすぐさまそのひみつ道具をポケットから取り出し……フランへと投げつけた。

ちなみにのび太が投げつけたのは『のび太と竜の騎士』で白亜紀の北米大陸にて、バンホーたち恐竜人と哺乳人類との、地上における覇権を掴むための戦い(とドラえもんたちは誤解していただけなのだが)のために取り出した武器? の一つ、こけおどし手投げ弾である。

これは文字通り投げつけて爆発すると光と大きな音を立てて相手を威嚇するだけの、外の世界における閃光弾そのもの、まさにこけおどしな道具なのだけれども何も知らなければ、恐竜人たちの軍勢のように怯むことは間違いない。

実際にフランは手投げ弾をショックガンと同じようにレーヴァテインで振り払った事により至近距離で炸裂させてしまい、まぶしすぎる光をまともに受けたためにのび太の思惑通り目を押さえてうずくまってしまった。やはり名前こそこけおどし、ではあるけれどもそれゆえに閃光の威力は本物なのだ。

ところが、ここまではうまく行っていたはずなのに、のび太の予想していなかった事態が起きた。

 

「うぅーっ! でもこんなもので、こんなもので、私がやられるわけないじゃない……!」

「ちょ、ちょっと……こんなにあの物騒な剣を振り回されたんじゃしっかりと狙えないよーっ」

 

一時的に視力を失ってしまったフランが、あてずっぽうに魔剣レーヴァテインをぶんぶかぶんぶかと勢いよく振り回し始めたのだ。

フランとしても自身の目が閃光にやられて一時的に見えないと言うこの状況を、のび太が絶対に逃すはずがないと分かっていたために必死だった。だからこそなるべく近づけないようにと、レーヴァテインをめちゃくちゃに振り回し始めたのだ。

もしのび太が何かをしようとしても、自身の魔剣の威力を考えれば接近される危険も少ない。

しかし逆に、のび太にとっては隙を作ってその間にショックガンをフランにしっかりと充てるつもりだったのにこれでは落ち着いて充てる事も出来なくなってしまったのだ。

なにしろどう振り回すのかも予測ができないため、もし万が一にも当たってしまった日には亦閻魔様の所に連れていかれかねない。

そんな事は絶対にお断りだった。

悪化してしまったこの状況を打破するにはやはりもう一度何かひみつ道具を使う、それしかのび太には残されていなかった。

 

「あれでもないこれでもない……ジャンボガンや熱線銃は人に向けて撃つものじゃないし、かと言って空気砲やハッタリバズーカじゃお話にならないし……やっぱりこれしかないか。ごめん、フランちゃん。……えーいっ!」

 

ポケットの中のひみつ道具にも武器タイプの道具はいろいろと入っているのだけれども、残念なことにそのほとんどが非常に極端な威力に偏っていると言う欠点があった。

例えばのび太たちが冒険の中でよく使うショックガンや空気砲。これははあくまでも非殺傷兵器に分類される。直撃弾を命中させてもよほどのことでもない限り相手の命を奪う事がない上にコストも安く、ドラえもんが多く仕入れていると言う理由もあるのだ。

ついでにハッタリバズーカはこけおどし手投げ弾と同様に音と光で脅かすだけのまさしくハッタリであるため、とてもではないがこういった場面では使えないのは言うまでもない。

逆に今しがたのび太がポケットの中で手にしたジャンボガン、熱線銃、光線銃などは明らかに対人に使用していいものではなかった。(ただしドラえもんは野比家のネズミ退治、あるいは鬼ヶ島での鬼退治(実は難破したオランダ船の船長であったので彼もれっきとした人間である)にこれらを平気で使おうとしたが……)

その効果はと言うとジャンボガンは『一発で戦車を吹き飛ばす』、熱線銃や光線銃に至っては『鉄筋のビルを一瞬で蒸発させる』と言った代物である。人間やそんじょそこらの妖怪に使った日には惨劇が起こる事は目に見えている。つまりはとても使えたものではなかった。

 

 

 

ではどうするか?

 

 

 

答えは簡単だ、視力を奪っただけでは暴れられてしまうのなら……()()()()()()()()()をさせてしまえばいいのだ。

ここに霊夢や魔理沙たちがいれば、そんなことできる訳がないと言い張るかもしれないが何しろひみつ道具は二十二世紀の科学が生み出したオーバーテクノロジーなのだ。それくらいは簡単である。

そしてフランが振り回してくる魔剣レーヴァテインに巻き込まれないよう、離れながらなおもごそごそとポケットの中を探し回っていたのび太の手に、それを実行できる道具は既に握られていた。

さっきこけおどし手投げ弾を取り出すとき、近くにあったそれも一緒にポケットの口近くまで持ってきてしまっていたのだった。ただ、それではなく手投げ弾を選んだために最初は使われなかっただけ。だからのび太はすんなりとそれを取り出す事ができたのだ。

そしてその道具の時限装置を作動させてから、のび太は今もまだレーヴァテインをめちゃくちゃに振り回すフランめがけて投げつけた。

そうこういう時にうってつけなひみつ道具『時限バカ弾』を。

時限バカ弾とは爆弾型のひみつ道具で、起爆までの時間を設定した上で、使いたい対象の背中などにくっつけて使用する仕組みとなっている。後は簡単な話で、制限時間が来るとバカ弾が爆発し、その爆発に巻き込まれた(たいていの場合はセットされた人間なのだが)相手はバカなことをやってしまうと言う、恐るべきひみつ道具である。

その効果は本物で、爆発に巻き込まれたが最後どんなにまじめな人間でも奇声を上げながら周りから見れば思わず引いてしまうようなバカ騒ぎをしてしまうのだ。

ちなみに実際にこの道具を使った際には、のび太が出木杉に対して使い、しずかの目の前でバカ騒ぎを披露させようと企んだのだが一度目はくっつけたシャツが汚れた事でそれを交換してしまったために、シャツを洗おうとした出木杉の母親が被害にあってしまい失敗。めげずにもう一度設置しようとした時には紆余曲折の末のび太とドラえもんが爆発に巻き込まれてバカなことをやってしまうと言う結果になっている。

それが今、あろうことかフランめがけて投げつけられたのだ。

ただ、それでも投げつける時にはバカなことをしてしまうであろうフランに対して、謝罪の言葉も決して忘れてはいないところがのび太なりの優しさなのだろう。

そして……。

 

「あはははははは! ベロベロ バァー! オ ッ ペ ケ ペ ッ ポ ー ペ ッ ポ ッ ポ ー! ア  ジ  ャ   ラ   カ   モ  ク  レ  ン  !」

「…………」

 

時限バカ弾は一ミリたりとも仕様を間違えることなく十二分にその効果を発揮した。

ごめんとは言ったものの、そののび太さえ引いてしまうほどに奇行に走るフラン。彼女にとって不幸中の幸いだったのは、ここで意識のある者がのび太しかいなかった事だろう。そうでなければ幻想郷中にこの奇行が知れ渡り、未来永劫彼女の名誉には癒す事のできない深い傷がついたに違いない。

そうしてしばらくの間、バカと言うよりも最早頭がおかしくなったとしか思えない気のふれた踊りを続けるフランに対し、のび太はショックガンの引き金をひき、エネルギーを命中させた。

 

「ナ ン ジ ャ ラ モ ン ジ ャ ラ ホ ニ ャ ラ カ ピ ー……って痛いっ、何するのよ!」

「あ、あれ? なんで? ショックガンが効いてないの?」

「当り前じゃない、あの程度の威力で私がやられるとでも思ったのかしら? そんな事よりも……よくも私にあんな気が狂ったみたいな真似をさせて恥をかかせてくれたわね? 当然、それなりの覚悟はできてるって事でいいのよね?」

「え、い、いや……その……できればお断りしたいかな……って……、だ、ダメかな……?」

「ダメ」

「えーっ、そんなそんなそんなーっ!」

「当り前でしょ!! さあ、覚悟する事ね。きゅっとして……『ドカーンっ!!!』」

「っ!? しょ、ショックガンが!」

 

はずなのだけれども。

確かに命中したはずのショックガンにもフランは気絶することなく、ただ痛いの一言で終わってしまう。それだけならまだしも、こけおどし手投げ弾でまぶしさのあまり一時的に視力を失い、時限バカ弾であまりにも間の抜けたと言うよりも頭が狂ったとしか思えないような奇行を強制され、ついでにショックガンで銃撃まで受けた事により、フランは完全に怒り心頭だった。

怒りで目がらんらんと輝き、明らかに危険ですと主張しているオーラが全身から立ち上っている。

おまけにのび太とのやり取りからも、時限バカ弾を投げつける前にのび太はごめんと言ったものの、これではどう謝っても絶対に許してくれそうもなさそうだ。

その証拠に、覚悟しろと詰め寄るフランの手がぎゅっと握られた次の瞬間。のび太の手にしていたショックガンが何もしていないのにバラバラに、と言うよりも粉々に吹き飛んだのだ。

もちろん弾幕をピンポイントに撃ち込まれたり、魔剣レーヴァテインで斬られたりした訳ではない。

これこそがフランが持つ能力『ありとあらゆるものを壊す程度の能力』だった。

物体であればそれが何であれ、たった今破壊されたショックガンのようにあっという間に壊してしまえると言う恐るべき能力。もちろんそれは相手が人間だって関係はない。

 

「驚く事は無いわ、私は何でも壊せるの。それが私の能力。今やって見せたようにあなたの武器も、もちろんあなた自身もああやって壊せるの。素敵でしょ?」

「どこがですか……っ! な、なにかないかなにかないかなにかないか……もうジャンボガンでも熱線銃でも、原子核破壊砲でもいいから、何でもいいから……えーいっ!」

「今更焦っても無駄よ、私の手で貴方は壊れちゃうんだから! ……グウ

 

さっきは人に向けるものではない、と言ったものの自分がいざ命の危機に瀕していますともなればそうは言っていられない。ましてや「問答無用で何でも壊す能力でお前を壊します」と、事前にどうやって破壊するのかまで見せられてしまったのだ。こうなってしまっては四の五の言っている場合ではなかった。

のび太だって命は惜しいのだ。

となれば、もうなりふりなど構ってはいられない。がむしゃらに、ろくに確認もせずにポケットから最初に手に触れた銃型のひみつ道具を慌てて引っこ抜き、それをフランに向けて発砲するのと、フランが能力を使うのとは果たしてどちらが速かったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははは! 私にあんな事をしてくれたんだからいい気味よ、壊れちゃえ!」

 

……そしてのび太の身体はバラバラに吹き飛び、後にはフランの笑い声がこだましていた。




まさかののび太死亡!?
こけおどし手投げ弾だけならともかく、時限バカ弾まで使ったらそれは怒るよなぁ、と言う今回の勝負回。おかげでブチ切れたフランちゃんのありとあらゆるものを壊す程度の能力によってばらばらにされてしまった(かもしれない)のび太。
さて、命を落としてしまったのび太はまたもや四季様の所に行かなければいけないのか、それとも奇跡の力で能力を回避したのか……? 







どうなったのかについてのヒントは自分なりにですがいくつか出しておきました。
さて、のび太は無事なのか?
次回、乞うご期待っ!!!

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