さてさて、前回フランが自分の両親を、そのありとあらゆるものを破壊する程度の能力でもって消し去ってしまったと言う衝撃の話が出てきました。果たしてその話は本当なのでしょうか?
過去紅魔館で一体何が起こったのか!? 真相を探るべく、のび太探検隊はアフリカランドへ……(違
のび太は後悔していた。
他でもない、フランが自己紹介の際に能力を口にしなかった事、そしてどうして自分が訪れた
もちろんのび太に悪意や他意はない。ただ単純に気になっただけだったのに、フラン本人から語られた理由ときたらどうだろうか、あまりにものび太にとっては重すぎる話だったのだ。
ただ説明されただけののび太が重いと感じる内容をずっと受け止めなければならなかったフランの苦しさ、悲しさはどれほどのものだったのだろう。
かく言うのび太自身も過去にとある事情で世界中の人間を消してしまった事があった。
『どくさいスイッチ』
未来の独裁者が邪魔者、不要となった者を効率的に始末するために作ったと言う曰く付きのこのスイッチは消したい相手に対してスイッチを押せばあっという間に消滅してしまい、存在そのものがなかった事になってしまうと言う恐ろしいスイッチだった。
ジャイアンを消せば、そもそも最初からこの世にジャイアンはいなかった事になり、スネ夫に使えばスネ夫などという人物はいなかった事になってしまう。ただし、どくさいスイッチで誰かを消滅させてしまった場合、別の誰かがその人物の立場に置き換わると言う特性を持っていて、例えばジャイアンを消したらスネ夫がジャイアンのようになり、スネ夫も消したらはる夫や安雄がその立場になり、と邪魔ものを消しても結局のところ意味が無かったりする。
このように、この道具には使用者の気に入らない者を消すと言う効果とは別にある隠されている用途があったりするのだが、当時ののび太はそんな用途に気が付く訳もなく次から次へと嫌な奴を消していき……最終的には世界中の人間を消してしまった。
最終的には、この道具の邪魔者を消すと言う使用方法とは別のもう一つ隠された『独裁者を懲らしめる』という使用方法に基づいて消した人間は全員戻ってきたからその時は事なきを得たものの、それはあくまでのび太の場合である。
フランの話を聞く限り、どくさいスイッチとは違ってありとあらゆるものを破壊する程度の能力で壊したりしたものは、二度と戻ってこないのだという事は想像に難くない。つまりフランはのび太が世界中の人を消してしまった時、のび太が抱いていた後悔を495年間ずっと抱きながら生きてきたのだろう。
それはまだ小学生ののび太が想像するにはあまりにも辛すぎる人生だった。
「……そんな」
「わかる訳ないわよね人間の貴方に。お父様もお母様も、もう会えない。それも、私が原因で……。孤独と絶望に気が変になりそうになりながら、ずっと耐えて生きてきた495年間の重み、貴方なんかに分かる訳ないわよね!」
「フラン、言い過ぎよ!」
「お姉さまは黙ってて! 大好きだったお父様も私たちに優しかったお母様も、私が起きたらどこにもいなかった。お姉さまとも、紅魔館中を使用人たちと探したけどどこにもいなかったのよ! 私が壊したからに決まってるじゃない!」
「……? ちょっと待てフラン、今の話を聞いていると……能力を使って両親を壊したところを直接見ていないように聞こえるんだぜ」
「そうね、確かに魔理沙が指摘しているように話を聞く限りじゃ直接その瞬間を目にした訳じゃなさそうね」
「それは……」
「ええ、魔理沙に霊夢の指摘通りよ。あの頃、私たち姉妹はお父様とお母様と一緒に寝ていたの。でも明け方になってそろそろ起きようかという時間になってフランが『お父様もお母様も消えた』って騒ぎだして、お父様もお母様も煙のように痕跡さえ残さず消えてしまっていたの。当然フランの言う通り、当時館にいた使用人たちを全員動員してくまなく探したけれども、手がかりは何も残っていなかったわ。後はフランの説明通りよ。お父様とお母様を消してしまったのはフランの能力だと考えた私は、意識しないまま能力を暴発させる危険があるままにはしておけないと、地下室へ連れて行ったのよ」
フランの告白の中にあった違和感。それに真っ先に気が付いたのはのび太と一緒に話を聞いていた魔理沙だった。両親を能力で壊してしまったと言う説明の中でフランはこう言った。『起きたらどこにもいなかった』と。
この言葉を素直に受け取るのなら、少なくとも自分の意志で能動的に両親を壊さない限りどこにもいなかった、とは言わないだろう。もちろん眠っている間に能力を誤って行使してしまい、両親を壊してしまった可能性もない訳ではない。しかし、もしフランが知らなくてもレミリアがその様子を見て知っていれば、少なくとも秘密にするなどという事はせず、フランにはきちんと何があったのか教えただろう。
けれどもフランの言葉を補足するようになされたレミリアの説明では、本当に二人とも何も知らないままにただ忽然と両親だけが消えてしまったらしい。確かにこれでは、フランの能力を考えれば犯人はフラン、と考えるのが自然だろう。
「なるほどな、じゃあレミリアとフランの話を信じるのなら、本当に二人とも寝ている間に煙みたいに消えてしまった、って言う事か……」
「ねえのび太、まさかとは思うけど……のび太の道具の中にこの時にいったい何があったのか、調べたりする道具はあったりしないのかしら?」
「って言うか霊夢、何があったのか調べるんじゃなくてレミリアとフランの両親に何か起こる前にさっくりと助ける道具の方がいいんじゃないのか? フランが能力を使うんだったら使う前に止めさせるとか、侵入者がいるのなら、侵入者を前もって追い払うとか……」
「あ、そっか……。でものび太、そんな道具はいくら何でも、ないわよね?」
「いえ、多分それでいいのなら……心当たりがあります。ただ、それを使ったら歴史が変わっちゃうかも……」
「「「「「「「あるの(かよ)!?」」」」」」」
「あ、え、えっと……はい。命をというと大げさですけど『タイムホールとタイムトリモチ』って言う道具で、昔その道具で絶滅動物たちを助けた事があるんです」
「なによのび太、そんなにいいものがあるのなら勿体ぶらないでさっさと出しなさいよね。歴史の一つや二つ変えたって幻想郷には人里のハクタクがいるんだから安心よ。ハクタクに頼めばどうにかしてくれるんだから気にするんじゃないの。さあどれ、これ、あれ?」
「ちょ、く、苦しいですって霊夢さん……」
「こら霊夢、気持ちは分かったけどひとまず落ち着け。のび太の顔が大変な事になってるぞ」
「へ? あ、ご、ごめんのび太!」
「あー……助かった……。けれどもどうだろう、歴史が変わっちゃうと大変なんだけど、まあモアやドードーを連れてきた時も問題なかったから大丈夫かな? それじゃあ……これでもない、あれでもない……あ、あった! タイムホールとタイムトリモチ!」
「本当に何でも出てくるわね……。それで、これはどうやって使うのかしら?」
「えっとですね、これの使い方ですけど……」
今まで幾度もギガゾンビを始めとした時間犯罪者と戦い、またあるいはそんな犯罪者を取り締まるタイムパトロールの活躍を見てきたのび太たちがひっくり返りそうな言葉を平然と口にしながら、のび太が口にしたひみつ道具であるタイムホールにタイムトリモチのセットを早く出せとのび太の襟首をつかみ激しく揺さぶる霊夢。
当然そんな状態でひみつ道具を出せと言われたところで出せる訳などない。もし魔理沙が霊夢を止めなければ気を失うまでのび太の襟首をつかんでいたかもしれない。
そんな霊夢が魔理沙に指摘されてようやく手を離した事で霊夢の魔手から解放されたのび太はしばらくの間過去を変える危険について考えていたけれども、ドラえもんと二人で過去から絶滅動物を連れてきた事を思い出し、ようやくズボンのポケットからスペアポケットを引っ張り出してその中に収納されているひみつ道具のセットを披露するのだった。
『タイムホールとタイムトリモチ』
のび太が取り出したこのひみつ道具は、タイムホール側の装置を動かす事で時空間に文字通り穴を作りつなげる事ができ、現代から遠く離れた時代の対象物をタイムトリモチでくっつけて繋がった空間のこちら側へと取り戻すための道具である。
のび太はいたずらやジャイアンに取られたマンガ、ゲームなどを取り戻すために使おうとしたがこの道具に与えられた本来の使用目的は戦争、災害などによって失われた美術品、考古学的価値のある文献などを失われる前に取り戻すための道具だった。
ドラえもんから本来の用途を聞かされたのび太は、持ち前のひらめきで霊夢たちに説明したようにかつてこの地球上から人類の手によって滅ぼされてしまった古代生物を捕獲、ひみつ道具で作った無人島へと放つ事で一度地上から姿を消した絶滅動物たちをもう一度復活させようと試みたのだった。
巨大なジャイアントモア、飛べないドードー、半分だけ縞のあるクアッガ、数十億羽いたのが絶滅へと追いやられたリョコウバト、その他もろもろの絶滅動物たちを数多の時代をめぐり何頭も捕獲、それらの動物たちを無人島へと放つ事に成功し、結果としてのび太のひらめきから始まったこの行動が後に『のび太と雲の王国』において、ノア計画の中止に繋がる事を、その時ののび太たちは知る由もなかった。
兎にも角にも、フランやレミリアの両親に何か異変が起こる前にこのタイムホールによって助け出す、という今回の利用方法は過去を変えてしまう恐れがあると言う一点を除けば、過去に失われたモノを失われる前に時を越えて取り戻すと言う本来の用途そのものに他ならない。
そんな説明と共にその場の面々へとスペアポケットから取り出したタイムホールを披露したのび太。
二つの道具で一つという今までにない道具のタイプに6人の視線がいっせいにそれらへと向けられる中、のび太自身久しぶりにこの道具を使うのでどうやって起動するのか、ところどころ思い出したりしながらもどうにか電源スイッチを入れると、機動音を立てながらタイムホールに取り付けられた輪の内側の景色がゆらゆらとゆがみ始める。しかしそれはまだ、ゆらぎ始めただけで時間も場所も決まり、目的の場所へとつながった訳ではない。
「お待たせしました、後は時間と場所を設定すればいつでも使えますよ」
「……でものび太、いつ何があったのかもわからないのに、そんなピンポイントで時間設定なんてできるものなのか?」
「いつお父様とお母様が消えたか? そんなの忘れる訳ないじゃない。私の日記にも書いてあるし私自身だってはっきりと覚えてるわ」
「私だって忘れないわよあの日の事。私の人生が変わっちゃった日なんだもの! お姉さまの顔を忘れたって、あの日を忘れた事は一日だってないわよ」
「いやお願いフラン、そこはあの日より……姉である私の顔を覚えていてほしいかしら」
「姉妹喧嘩はいいから、さっさと二人ともいつなのか教えなさいよ!」
「いたたたた……ちょっと霊夢、そんな物騒なもので叩くんじゃないわよ。まったく……いいわ、じゃあ私が日付を入れるから、操作方法を教えて頂戴」
後はいつの時代へとタイムホールのチャンネルをつなげるか、だけなのけれどもそもそもそんなピンポイントで設定できるのかという、至極もっともな問いかけが魔理沙から飛んでくる。
なにしろ失われた美術品や文献ならば消滅してしまう前にさっさと回収してしまえばいいのだろうけれども、さすがにそれが家族と生活している人(正確には人ではないが)ともなれば、適当なタイミングで助け出す訳にもいかないのだ。そんな事をすればそれこそ歴史が変わってしまう。
だが幸いにも、両親の蒸発などという出来事は忘れようとしても忘れられなかったのだろう。数百年前の出来事でありながら、レミリアもフランもしっかりといつそれが起きたのか忘れていないと宣言してくれた。
もっとも、その最中姉妹喧嘩が始まりかけたりもしたけれど……タイムホールをそっちのけでとっくみ合いを始めようとしたレミリアとフランを大幣でひっぱたいて喧嘩の仲裁に入った事で、ようやくレミリアがタイムホールの時間並びに空間の座標設定に取り掛かり始めた。
「お父様とお母様が消えたのは……1〇✕△年◇月……設定はどれをいじればいいの? ここ? ……うん、時間設定はこれでいいはずよ。場所についてはヨーロッパの、外の世界で言うのなら東欧ね。いいわ、位置についても私の方が詳しいでしょうから設定するわ。これが、こう……かしらね?」
「はい、そうしてもらえると助かります。設定は、ここをこう、ですね……」
「……それにしても、レミリアよく外の世界の初めて見た機械をのび太の説明だけで操作できるよな。やっぱり両親を助けたいって言う思いからなのかね?」
「そうね、確かにいくらのび太の説明があるって言っても私だったらああも積極的に操作したいとは思わないわよ。魔理沙の言う通り、両親を助け出すって言う明確な目的があるからこそ、何だと思うわよ」
のび太の説明を受けながら、初めて見るであろう機械……タイムホールの設定をこなしていくレミリアの様子を見ながら魔理沙が私にはあんな真似できないんだぜ、と本当に感心したように声を出す。
実際タイムホールは今までのび太が引っ張り出したひみつ道具の中でも割と複雑な操作を要求するものである。今まで登場した道具はみんなどこでもドアしかりグルメテーブルかけしかり、どの道具も大抵は行きたい場所をイメージしながらドアをくぐるや食べたい食べ物の名前を口にする、といった割と簡単な操作で効果を発揮するものばかりだった事から霊夢や魔理沙たちでも、そこまで苦労する事なく道具を使いこなす事が出来ていた。
グルメテーブルかけに至ってはあの世とこの世をつなぐ三途の川の船の上、コマチオーラ号の甲板で霊夢と魔理沙が退屈だからと勝手に使いだす事さえやってのけている。
しかし、タイムホールは違った。
電源を入れてからいつ、どこの時代のどの場所へとホールの空間をつなげるのかを設定しなくてはその効果を発揮しないのだ。
当然そんな複雑な作業をしなくてはならない道具など、霊夢も魔理沙もまだ使った事は無いし説明をされても、よほど切羽詰まった状況に置かれでもしない限りは使いたくない、というのが二人の共通の意見だった。例外的にちょっと複雑な作業を求められたのはのび太の身体から魂が抜けだしてしまい、もとに戻すために彼岸へと赴いた際に使用したお医者さんカバンだが、これについても実際に行った作業と言えば聴診器を使い四季様の診療をしたくらいである。
それがレミリアはと言えば自分から率先して難しそうな(見た目の)操作に挑んでいるのだから、霊夢たちが驚くのも無理はなかった。もちろんそこには魔理沙の言う通り、タイムホールを使っていつかの日に影も形も残さず行方不明になってしまった両親を自らの手で助け出したいという思いがあってこそのものだろうという事は想像に難くない。
……そして、そうこうしている間にタイムホールの輪の中で揺らぎとなっていた歪みは設定された場所と時間の通りに、その場所を映し出した。
「……ここよここ、懐かしいわね。私がまだ小さかった頃の、お父様もお母様もいた紅魔館よ!」
「すごい、本当に時間を越えて繋がるなんて……。ねえお姉様、お父様もお母様も見える!?」
「ここが数百年前の紅魔館……やっぱり今とあまり変わらないのに、なんだか懐かしい気がしますね。咲夜さんが来る前、まだ私が門番じゃなくてメイド長を務めていた頃ですし、もしかしたらどこかに私もいるのかな」
「そうか、美鈴貴女私の先代のメイド長だったのね。時間を止めるじゃなくて時間を過去や未来に向けて超えてゆくなんて説明だけ聞くと半信半疑だけれど、こうして実際に見てみると信じるしかないわね……」
「むきゅう……この道具があれば、もしかして魔理沙に盗まれた大切な本も取り返せるのかしら……? ますますお願いしてこの道具も借りたいわね……」
「すごいな、本当に時間を超える事ができるなんて……。にとりたちが見たらひっくり返りそうなんだぜ」
「本当ね、最初にのび太が来た時に未来からの道具を使うって聞いて馬鹿言ってんじゃないわよって思ったけれども、この道具は今まで見た道具の中でも一番に未来未来してるわね……」
「ここはどうですか? レミリアさんやフランちゃんのお父さんお母さんのいる場所ですか?」
「違うわね……たぶんここは書斎だわ。それにこの時間だとまだ昼間だから寝てないんじゃないかしら」
「……ん? あの、吸血鬼ですよね、レミリアさんのお父さんとお母さん。吸血鬼って普通は昼間寝ていて、夜に起きてるんじゃ?」
「何言っているののび太、紅魔館では昔から朝日におはようを言う、規則正しい生活をするのがお父様とお母様からの教えなのよ」
「へぇ、そうなんだ……」
「でもお姉さま、太陽の光を浴びると煙になっちゃうんだよね」
「それはフラン、貴女もでしょうが!」
「まあまあ、二人とも喧嘩しないで」
「のび太の言う通りよ、ひとまずは全員で怪しい奴がやって来ないか、見張るしかないわね」
「じゃあのび太、まずは紅魔館の寝室に座標を合わせてから、夜に怪しい奴が来るのを見張ればいいんだぜ」
「書斎がここだから、お父様とお母様の寝室は……こっちね。ここが寝室よ」
タイムホールの向こう側に映ったのは、数百年前の紅魔館。どうやらレミリアはちゃんとのび太の言う通りに、目的の時間と場所の設定を行う事ができたらしい。レミリア、フラン、そして美鈴という当時の紅魔館の様子を知る三人が懐かしそうに声を上げた。
もちろんそれ以外の面々は、この時を越える道具に対して驚き半分呆れ半分の反応である。若干約一名、全く違う感想を抱いているようだが……。
そんな外野をよそに、レミリアやフランに位置を教わりながらのび太はタイムホールの位置の座標をずらしていく。そう、目的のものを確保するためにタイムホールは時間や位置、場所といった要素の微調整ができるようになっているのだ。
しかし何しろ紅魔館は広かった。おまけにのび太も一度聞き返したように、吸血鬼なのに昼間起きていて夜しっかり寝ると言うのだから、もう少し先かあるいは後か、どちらにしても夜になるまで時間を飛ばさないといけない。
何かあればすぐに口喧嘩へと発展する姉妹をなだめながら、のび太は寝室に座標を合わせてから時間を少しずつ夜に向けてスキップしていく。そうして何回か時間を切り替えた所で、タイムホールの向こう側に映る世界が真っ暗になってしまった。夜が来たのだ。
確かにタイムホールの向こう側をよくよく見てみると外国人の男の人と女の人、この二人が姉妹の両親なのだろう。これから起こるに違いない悲劇に気が付く事もなく、ベッドですうすうと寝息を立てている。
つまり、これから日が明けるまでの間に何かが……あるいは何者かが、白亜紀への遠征に随行した恐竜人たちの司祭の言を借りるのならば『
だが、後はその何者かを退けるあるいは両親に危害を加える前に、助け出せばよいのだからさほど難しい事は無い。
そうして霊夢の一声でのび太やレミリア、フランだけでなくその場の全員でアリ一匹逃さない監視を続ける事になったのだけれども……どういう訳か犯人は一向に現れる気配は見られなかった。
当然何もない事自体はありがたい事ではあるけれども、あいにくとタイムホールのこちらと向こうとでは時間の進み方が同じなため、犯人が現れない限りいつまでたっても見張り続けなくていけなくなってしまうのだ。最初こそ緊張感を持っていたのび太たちも、いつまでたっても誰も何もやって来ない事にだんだんと退屈になって来たらしく、あくびをしながら魔理沙が時間を進められないのかのび太に聞いてきた。
「……それにしても、後はこのまま朝までレミリアたちの両親の様子を監視して、怪しい奴が来たらとっちめるかすればいいんだろ? なら、そこまで時間を進められたりしないのか? なにも変化がないから待っているだけだと退屈なんだぜ……」
「ふぁ……ぁ。そうですね……確かに何も変な事は起こりませんし、少しずつ時間を朝に向けて動かしてみましょうか」
「そうね、のび太お願いするわ」
「分かりました、じゃあちょっと先の時間に進めますね」
実際のび太も退屈だったらしく、周りに確認してから少しずつタイムホールの時間座標を夜明けに向けて飛ばしていく。しかし、それでも異変が起こる事はなかった。とうとうカーテン越しにも窓の外が真っ暗からうっすらと明るくなってきたのが確認できる。このままでは夜明けだけれども、それでも何も起こらない事からそれまで沈黙を守っていたメイド長の咲夜が不思議そうに首をかしげた。
「……変ですねお嬢様、妹様。もうそろそろ夜明けになりそうな時間なのに、何も起こりません」
「でも、それじゃあこの時何が起こったんですか? お日様の光が降り注ぐ昼間ならいざ知らず、夜の間に吸血鬼を二人、影も形も残さずに消してしまうなんてそう簡単にできる芸当じゃないですよ?」
「じゃあ、もうさっさとレミリアたちの両親助けた方がいいんじゃないのか? つまりそんな芸当ができる奴がやって来るって事だろ? 幸いこのトリモチでこっちはすぐに助けられるんだ、善は急げなんだぜ」
「ちょっと魔理沙、あまり無茶するんじゃないわよ」
「そうですよ魔理沙さん、そんな無茶したら……」
「何言ってるんだぜ霊夢ものび太も、ここまで昔に来て目の前でレミリアたちの両親が悪者にやられました、じゃ本末転倒なんだぜ」
「それは、そうですけど……」
「よし、じゃあレミリア、フラン、このトリモチでくっつけてこっち側に引っ張り込むんだぜ」
「そうね。お父様とお母様に異変が起こるのを待っていても仕方ないし、行くわよフラン!」
「うん、お姉さま! 私たちのお父様とお母様は私たちが助けるの!」
「大丈夫かな、これで歴史が変わらなければいいんだけど……」
こうしてのび太の心配をよそに、あまりにも異変が起こらない事からとうとうしびれを切らした魔理沙、レミリア、フランの三人によって半ば強引にタイムホールにタイムトリモチが突っ込まれ、何も知らずに寝室のベッドで寝息を立てているスカーレット姉妹の父親、その顔面へと間違えることなくトリモチはくっつけられたのであった……。
嗚呼、寝ている最中に顔面にトリモチをくっつけられてしまったスカーレット父親氏。
吸血鬼でなくてもこれは驚きますね(汗
しかしこの救出劇によって歴史は無事改変され両親の謎の消失事件は解決するのか、それとも時間犯罪者のような時を自由自在に駆け巡る悪者が両親をどこかに連れ去ってしまったのか?
もしくは本当にフランの告白通り、フラン自身の恐るべき能力でスカーレット両親は命を落としてしまったのか?
果たして真相やいかに?
次回、乞うご期待っっ!!!