ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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お待たせしました。紅魔境編エピローグ? 的な話になります。タイトルについてはドラえもんのED曲『あしたもともだち』からです。

ようやく紅魔館の異変から帰ってきたのび太、霊夢、魔理沙たち。さてさて……?


あしたもあそぼうあおいそら

「……ふぁぁぁぁ、ムニャムニャ……おはようございます」

「……あー、眠い……。のび太、朝ご飯だしてちょうだい……」

「だな……それもなるべく、あっさりしたもので頼むんだぜ……」

「ふぁぁぁ……ぃ」

 

幻想郷中を揺るがした第二次紅霧異変の翌日のび太は、いやのび太だけではなく霊夢も魔理沙も、前日朝まで慧音の宿題をしていた事もあって三人が目を覚ましたのは朝、というよりもお昼に近い時間だった。

既に空気はじっとりとした暑さを含んでいて神社の周りの木々に止まっているのであろうセミたちの声がミンミンと聞こえてくる。

そんな中、それぞれの部屋に用意された布団からのそのそと這いだしてきた霊夢と魔理沙が、同じように眠い目をこするのび太にもうすっかり当たり前となってしまったグルメテーブルかけによる朝食の支度を催促する。

ちなみに一緒にのび太の勉強を手伝ってくれた紫はと言うと、勉強が終わってから寺子屋の教室で「それじゃあ私は帰るから、おやすみなさい」と紅魔館にやって来た時のように空間にスキマを開くとそのままするりとその中に消えていった。そのため紫は今この場にはいないのだ。

そんな訳で、のび太だけでなく霊夢や魔理沙も日常生活ではなかなかしないであろう勉強を深夜から明け方という時間帯に手伝わされた事もあって、いくらある程度眠ったとは言えまだ眠たそうな目をこすりながら、ゆっくりと身支度をととのえてから、ようやくいつもの定位置に、つまりは博麗神社の居間へと集まるのだった。

 

「それじゃあ、グルメテーブルかけ! 霊夢さんも魔理沙さんも、食べたいものを言ってくださいね」

「そうね、私はやっぱりそうめん辺りにしようかしら」

「あー私もそれでいいんだぜ」

「じゃあ僕もそうしようかな」

 

霊夢や魔理沙の要望に応えるようにそうめんと宣言するのび太の言葉に反応するように、テーブルかけからは夏の暑さを忘れさせるようなそうめんがぽん、と三人前現れる。

このそうめんを各々自分の前へと取り「いただきます!」と三人の声が唱和した。

 

「つるつる……つるつる……。なあのび太、そのなんだ……毎回道具を取り出す時に発するそのかけ声は、やらなくちゃいけないものなのか?」

「何言っているのよ魔理沙、その方が私たちも何が出てくるのか分かりやすいじゃない」

「それはそうだけどな、毎回この名前を聞くのもどうなんだぜ」

「いいのよ、それが様式美ってものなのよ」

「いや、これはいつもドラえもんがこうやって道具を出してくれてたのでつい僕も癖で……」

「……あやや! ひどいじゃありませんか霊夢さん、この清く正しい射命丸をほったらかしにして皆さんでお昼を食べてるだなんて」

「あ、文さんじゃないですか。どうしたんですか、また新聞を届けに来たんですか?」

 

お昼のそうめんを食べながらとりとめのない雑談を交わす三人、そんな中にばさりという羽音と共に不満げな声が割り込んでくる。もちろん、その声の主はのび太も、霊夢も魔理沙も知っている、忘れようにも忘れられない声だった。

一枚歯の下駄と赤い兜巾に黒い翼。手には葉団扇その特徴的な姿は忘れもしない、妖怪の山で知り合った鴉天狗の射命丸文である。

 

「あー、また来たのね。悪いけど、のび太に取材をするのならその前にちゃんと取材料を保護者である私に払ってからしなさいよね。料金はあっちの素敵なお賽銭箱に入れてくれればいいわ」

「何言ってるんですか、それなら霊夢さんだって食費を出すべきじゃないですか?」

「私はいいのよ、だって食費を浮かせてもらっている代わりに住まいを提供しているんだから」

「止めておいた方がいいんじゃないか霊夢、それでこの間紫にこっぴどくやられたばっかりなんだぜ」

「……う、た、確かに。いいわ、料金は特別でただにおまけしておいてあげるわ」

「まあ、そういう事にしておきましょう。そんな事よりも、昨日のあの紅い霧の異変、出どころはまあ紅魔館で間違いはないんでしょうけれどもあの異変にも例によってのび太さんが一枚噛んでいたんですよね?」

「あら、文の事だからてっきり昨日のうちに紅魔館には取材に行ったと思ったんだけど、行かなかったの?」

 

いつものようなやり取りの中で、文が昨日のび太たちが紅魔館へと行き、レミリアやフランと知り合う事になった異変について聞いてくる。しかしその口調はあくまでも確認、といった感じでその言葉からはとても自分の足で直接現場へと向かい取材をしたようには思えないもの。

いつもならば異変、すなわち新聞のネタとしてこの上ない案件である事と新聞の為なら何をさておいても真っ先に駆けつける文の性格を考えればもう既に取材まで終えているものと思っていた霊夢の言葉は、その場の全員の疑問を代弁したものであった。

 

「そりゃあ、行けるものなら行きたかったですよ! でもお母さん……じゃなかった天魔様直々に外出禁止を命じられたら、行ける訳ないじゃないですか!」

「あー……」

「なるほどなんだぜ……」

「……え? え?」

 

何を言っているのか分からない、と目を点にしているのび太と全てを悟ったように頷いている霊夢と魔理沙。そんな三人をよそに文は行けるものならば行きたかったと、力いっぱい悔しさをにじませながら前日の事を思い出すのだった……。

 

 

 

 

 

 

少女回想中……

 

 

 

少女回想中……

 

 

 

少女回想中……

 

 

 

 

 

 

「さて、この赤い霧の異変はおそらく紅魔館でしょうね。そして間違いなくあの子も行くに違いありません! この前あの世に行ってしまった時には取材できませんでしたからね、今度こそは確実に取材を成功させて何としても明日の新聞の一面を飾ってみせますよ……おや?」

 

幻想郷の空を覆った紅霧異変、それは人里の空だけではなく射命丸文の暮らす妖怪の山にも分け隔てなくやって来ては空を覆いつくしたのは言うまでもない。

当然、異変が起こったからと言ってただ黙って指をくわえて見ている訳ではなく、この異変の発生は哨戒していた白狼天狗の報告によって天魔にまで直ちに伝えられ、あっという間に妖怪の山は騒がしく……それこそ海底火山に反応して警報が鳴り響き、バトルシップの群れが舞い上がり数千年ぶりに活動を再開した鬼岩城を彷彿とさせる有様になった。

哨戒を務める白狼天狗の群れが舞い上がり、鴉天狗や大天狗と言った上の立場の天狗が大きな声で辺りに指示を飛ばす。しかしそんな厳戒態勢が敷かれた妖怪の山にあっても、文にとってはまさにどこ吹く風。

さっさと身支度をととのえて一人さっさと妖怪の山を抜け出して異変の震源地であろう紅魔館へと向かおうとしたその矢先に、自分の住処の扉をくぐりいざ飛び出そうとする彼女の前に一つの人影が立ちふさがった。

 

「さて、一応聞いておこうかしら。この厳戒態勢が敷かれた中で……そんな恰好でどこに行こうと言うのかしら?」

「あやややや、これはこれはお母さん……じゃなかった、天魔様ではありませんか。いえ、ちょっとこんな美味しいネタがやって来たと言うのに見逃すのは新聞記者の名折れですからね。急ぎ取材に行ってこようかと」

「文、私が黙って飛び出すのを見送るとでも?」

「ふっふっふ、取材のため新聞のためなら力ずくでも押し通りますよ。何ならこの前の守矢神社での続きをここでやりましょうか?」

 

人影の主は妖怪の山を束ねる長でもあり、文の母親でもある天魔であった。

おまけにかつてのび太が最初に守矢神社に向かった時に天魔と文の親子は相まみえた事もある二人が、再び相まみえたのである。

守矢神社では、のび太たちに迷惑をかけた文に対して問答無用で耳をつかみ引きずっていくと言う手段でもって逃げようとした文を捕まえたが、今度は同じ手は食わないとでも言いたげに不敵な笑みと共に天魔を挑発し、それと同時に背中の黒い翼を広げてみせる。その様子からも、文がその場からさっさと逃げるつもりだという事が伺えた。

逃げ出そうとする文とそうはさせまいとする天魔、二人の間にぱちぱちと激しい火花がはじけ飛ぶ。

そして……。

 

「痛たたたたたっ! 取れる取れる取れる、お母さん耳が取れますって! 暴力反対ですよっ!!」

「痛いのが嫌ならなら大人しく山で警戒してなさい。まったく、この厳戒態勢時に真っ先に取材に飛び出そうなんて……何を考えてるのよ」

 

その場から飛び立ち逃げ出そうとする文よりも一瞬早く、さっと伸びた天魔の手が文の耳をむんずと掴んでいた。もちろんその状態で引っ張るのだから痛くない訳がない、案の定文は耳が取れると抗議の声を上げながらかつて守矢神社でされたのと同じように引きずられていくのだった。

もちろん文は文でただ黙って母親である天魔に引きずられていくはずもなく、耳をむんずと掴まれながらも手足をばたばたと駄々っ子のように振りまわし必死の抵抗を続けている。ここで逃げる事に成功すれば、少なくとも明日の一面を飾る記事のネタが手に入るのだ。

が、その時に天魔がこぼした愚痴がいけなかった。

 

「あやや、それでしたらお母さんも若い頃は何か起こるたびに取材のために山を飛び出してまわりを困らせていた、と古参の大天狗様たちから聞きましたけど……」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラ……ビシャン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぎゃーっ!!!」

「前言撤回、貴女は異変が終わるまで哨戒も警備も含めて外出を禁じます! 当然取材なんか行かせません! 逃げ出さないように入口には見張りを立てておもてに出しませんからねっ!!」

「あ、あや……や……」

 

天魔がこぼした愚痴につられたかのように、文がさらりと天魔の昔の話を口にしたとたん、一瞬の沈黙ののちに十戒石板が違反者に落とす雷もかくやという、特大の落雷が文めがけて落とされた。当然落としたのは怒り心頭の天魔である。

あわれ、天魔の落雷によって文は真っ黒こげの焼き過ぎた焼き鳥みたいな格好になってしまい、そのままたった今自分が出てきた住処へと放り込まれ、妖怪の山の長である天魔直々に射命丸文の外出禁止令が山全体へと下されてしまった。そうなれば厳格な縦社会の妖怪の山、文が逃げ出そうとすれば山に暮らす全ての天狗が敵に回りかねないのだ。

さすがの文もこうなってしまっては天魔の命令に従うより他になく、何とかその日のうちに赤い霧は消滅し異変は無事解決したのだけれども、異変の取材どころではなくなってしまったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

少女回想終わり……

 

 

 

少女回想終わり……

 

 

 

少女回想終わり……

 

 

 

 

 

 

「まあ、それは気の毒なんだぜ」

「でも、それって大体は文の普段の行いのせいよね。って言うか、外出許可が下りたなら紅魔館に取材に行けばいいじゃない」

「まあそのつもりですよ、こうなったら明日の記事の一面……じゃネタが古くなりますから、今日の夕方には号外をばら撒けるように取材してきますから、楽しみにしていてくださいね!」

「本当に何しに来たんだ? さっときて、ぱっといなくなったんだぜ……」

「まあ、文の事だから多分昨日数百年前の昔から現代にやって来たレミリアたちの両親に会ったらひっくり返るんでしょうね」

 

前日の天魔とのやり取りを悔しそうに思い出した文は霊夢に言われるまでもない、と気合を入れるとそのまま来た時と同じように、騒がしく飛び出して行ってしまうのだった。

ちなみに彼女がその日、この後で妖怪の山の印刷所に無理を押し通して特別に発行させた文々。新聞の号外は幻想郷中にばらまかれ、紅魔館という幻想郷のパワーバランスの一角に新たな当主が数百年前の時代からひょっこりと現れた事。

そして長きを生きる妖怪として力はあれども、自分たちへの火の粉を振り払うためなどの場合を除きそれを周囲に向けてむやみに振り回す意思は持たない事などのインタビュー内容が書き綴られあっという間にスカーレット夫妻の存在と新たな当主による考え方が幻想郷へと広まる事になるのだった。

 

 

 

「のび太―! あそぼあそぼ!」

「ちょっとフラン、のび太からちゃんとテキオー灯浴びせてもらった? あれ毎日浴びないと私たちいきなり煙になるかも知れないんだからね!」

「大丈夫だよ、ちゃんとここに来たらまずあの光浴びてるんだから!」

「じゃあ、二人ともまずは忘れないうちにテキオー灯で……」

 

またこの異変がきっかけとなり、数百年持ち続けていたトラウマをあっという間に払しょくしてしまったのび太にフランがとても懐いてしまい、テキオー灯を使い太陽の下でも堂々と行動できるようになったスカーレット姉妹が博麗神社に日々遊びに来ると言うのが、新しい風景としてたびたび目撃されるようになりそれもまた後日文々。新聞により記事になるのはまた別のお話……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、お世話になりました」

「本当に、君みたいな患者はなかなかいないよ。今回は重大な故障はなかったけれども今後は気を付けるように」

「お兄ちゃん、これに懲りたらのび太さんが大事なのは分かるけれどもちゃんと自分の健康の事も考えてね」

「……はい」

「それじゃあドラえもんもドラミちゃんも、一度僕の家に行くよ」

 

時間ははるかに進んで22世紀、ドラえもんが健康診断のために強制入院させられた国立ロボット病院の玄関で、ドラえもん、ドラミ、セワシの三人は担当のドクターロボからの見送りを受けていた。

何しろ国民が負う義務と同じようにロボットが負うべき義務の一つである年に一度の定期検診をそれこそ何年にもわたって拒否し続けたあげく(ドラえもんの場合は特に過去の世界に常駐しているという事もあったが)強制的に病院へ放り込まれたと言う経歴を持つドラえもんは病院のドクターたちの中でもちょっとした有名人だったのだ。

ドクターロボたちからしても、そんな患者だからきっと何かさらに入院を延長して修理をしなくてはいけないような箇所がいたる所にあるんじゃないか? そんな危惧を抱いていたのだけれども幸いその危惧は杞憂に終わったようで、目立った異常個所がある訳でもなく無事に検査が終わった事から、後はまた同じ事がないように注意喚起も含めて彼らも見送りに来ていたのだった。

が、普通の22世紀で暮らしている住民ならばタケコプターやどこでもドアなどで自分たちの家に帰ればいいのだろうけれども、何しろドラえもんが今暮らしているのはタイムマシンを使わなければとうていたどり着けない21世紀の東京である。

なので、一度三人はどこでもドアでセワシの家へと移動し、それから帰るつもりなのだ。

これはドラえもんがタイムマシンの出入り口をセワシの家につないでいたからでもあった。

 

「それじゃあドラえもん、のび太おじいちゃんにもよろしくね」

「ええ、のび太さんだけじゃなくてのび太さんのパパやママにもよろしくね、お兄ちゃん」

「うん、それじゃあドラミもセワシくんも、またね」

「「いってらっしゃい」」

 

しかし、二人の声に見送られながら、セワシの部屋から丸いくぐり慣れたタイムマシンの出入り口をくぐるドラえもんが21世紀に帰った時に、向こうでは一体何が待っているのかをこの時のドラえもんは残念ながらまだ知る由もなかったのであった……。




お待たせしました、これにてようやく紅魔境編の終わりです。
また、これによってのび太の周りの主要人物がおおよそ登場することになりました。紫、霊夢、魔理沙、そしてチルノにフラン。正直なところこの紅魔館編は紅美鈴とドラえもんとの接点から一番最初に思い付いたエピソードでしたがそこからとっかかりが始まり、今後の伏線としてフランとチルノとのび太たちの主要メンバーのかかわりを持たせたいという所にどうやって持って行こうかと考えた末にこのような話になりました。
特にフランという、数百年幽閉され孤独と絶望に囚われていた彼女を、しかもレーヴァテインとありとあらゆるものを破壊する程度の能力という、両手に持った力があまりにも強すぎる彼女をいかにしてぐうたらで道具があるとはいえ、ただの子供であるのび太に懐かせるか、という所から両親の救出によるトラウマの解決を行った次第ですね。

さて、最後のシーンでドラ衣文の入院が終わった事で物語は少し幻想郷の外へと向かう事になります。
さて、次回こうご期待っ!!!
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