ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

62 / 73
大変長らくお待たせしました。というか数か月まるっと放置状態になり申し訳ありません。
PC復活してからのようやくの投稿です。

今回はちょろりと、原作に登場したとある人物が出てきます。
のび太とドラえもんによって少しだけ運命が変わった人物とはいったい誰でしょうか。



のび太がいなくなった!!

「ママ、ただいま! のび太がいなくなったって?」

「あ、パパお帰りなさい。さっき僕が電話してからずいぶん早いね」

「あぁ、会社のみんなが早く帰れってね、急いで戻ってきたんだ。それでドラえもん、のび太は? ママは?」

「ママはパパに連絡してる間に警察に行ってるけど、そろそろ帰ってくると思うんだけどなぁ」

「うん、それじゃあ警察への連絡はママに任せようか。それで、どういう事なんだいのび太がいなくなったって……」

「実は……」

 

パパが帰宅した野比家ではママとパパの帰りを待ちながら一人留守番をしていたドラえもんが出迎えた。それはドラえもんも驚くほどの早さで、ついさっきパパに電話したドラえもんも、まさかこんなにも早くパパが帰ってくるとは思っていなかったほどだった。

もちろんそこには息子のび太を案じるパパが急いだだけではなく、ドラえもんからの連絡が来てすぐに早く帰るようにと半ば無理やりにパパを会社から送り出した同僚や部長といった、会社の人々の協力があった事も間違いない。

 そんなパパがとるものもとりあえず帰ってきてすぐにしたのは、まず何があったのか、どうしてのび太がいなくなったのか、その事情の把握だった。

 

 

 

 

 

 

…………青狸説明中

 

 

 

…………青狸説明中

 

 

 

…………青狸説明中

 

 

 

 

 

「で、今日ぼくが未来の病院から帰ってきてママと話をした時に、お互いにのび太くんがいないって事に気がついたんです」

「……なるほど、そういう事か。だからドラえもんも、ぼくも、ママも誰一人のび太がいなくなった事に気がつかなかったのか。それにしても、のび太はいったいどこに行ったんだろうな?」

「うーん、いくらのび太くんでも一週間も留守にするなんて普通はしないと思うんだけど、どこかで事故とかにあってるとか、誰かに誘拐されたりしたのかも……」

「おいおいよしてくれドラえもん、のび太は確かにぼくに似ちゃったから運動神経はにぶいかもしれないけど、さすがに事故にあうほどじゃないだろう。それにのび太を誘拐したところで、うちに身代金を払えるような財産なんてあるもんか。それなら誘拐犯だってもっと別の、お金持ちの家を狙うさ」

「まぁ、確かに言われてみればパパの言う通りかも。それに誘拐なら犯人から連絡が来るはずだし……犯人がのび太くんに手紙を書かせたりしたとしても、のび太くんの事だから字が汚すぎて犯人も郵便配達屋さんも読めなかったりするかもしれないしなぁ。どちらにしても、あんなぐうたらな子をさらう誘拐犯もないでしょ」

 

のび太がどこに消えてしまったのかという話題から、いつの間にかうちには財産がないとか日々苦労して家計をやりくりしているママが聞いたらパラレル西遊記で妖怪社会と化した現代にて見せたような、角を生やし目を爛々と輝かせて怒り狂いそうな事や、明らかにのび太をけなしているとしか思えない事を本人がいないのをいい事に平然と話しているドラえもんとパパ。

しかし原因が事故にしても誘拐にしてもどっちにしても、とにかく一週間近く帰っておらずしかもその間野比家に対して一切の連絡もないという事実に変わりはない。

そんな時に、野比家の二人にはもうすっかり聞きなれた、玄関の扉が開く音がした。

 

「……ただいま」

「あ、ママだ!お帰りなさい」

「ママ、ただいま。ぼくが帰ってくる間に警察に通報してくれたんだって?」

「あらパパ、おかえりなさい。……ええ、今警察にも話してきたわ。でも話を聞いてみたら警察の方にもこの一週間子供の事故や身元不明の子の通報とかは入ってないみたいなの。一応、私が話をしたらすぐに警察も捜査のために動いてくれるみたいだから、大丈夫だとは思うんだけど……」

「わっ、ママ!? ドラえもん、布団の準備を!」

「うん! さっき用意しておいたから早くママを居間へ!!」

 

 ドラえもんとパパが、玄関へと向かえばそこにいたのはたった今まで話に上がっていたママである。ママは息も絶え絶え……実際にのび太が行方不明という事態に相当に参ってしまっているのだろう、残り僅かな力を振り絞るようにして、警察でのやり取りをドラえもんとパパの二人に説明していく。

 そうしてドラえもんとパパに伝える事を伝えたママは、そのまま緊張の糸が切れたのか、操り人形の糸が切れたようにパタリと、その場で力尽きてしまった。

 このママの様子に慌てて布団の用意をするようにドラえもんに指示するも、実はもうのび太がいないことが分かった最初の段階でドラえもんは居間に布団を用意している。ただ、布団に入ってもらう前にママが警察へと気力を振り絞り駆け込んでしまっただけなのだ。

 そんな訳でもう準備はできてます、とドラえもんがママを抱え……と言うよりも倒れたママを半ば引きずるような格好で布団へと放り込んでから、ドラえもんとパパは互いに顔を見合わせながら、これからどうしようと揃ってため息をつくのだった。

とりあえず今の二人には、それしかできる事が思いつかなかったからだ。

 

「……なあドラえもん、ひとまずのび太の事は警察に任せよう。今のぼくらにできる事はそれくらいしかないだろう」

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日……。

 のび太が一週間行方不明という話は、ママが警察に行く前にのび太がいないと気がついた段階で、念のため確認をと安否確認の連絡をそれぞれの家に入れていた事もありすぐに剛田家、骨川家、そして源家のママたちにも伝わった。

 おまけにみんな子供たちが大抵の場合一緒に行動している事もあって、どの家のママも皆全員と顔見知りという事もあってか、こうしてはいられないと朝から野比家へと駆け付けたのだった。

 ちなみに本当なら前日のうちに全員で集まろうかという話になったのだけれども、心労のあまりのび太のママが倒れたという話を聞いた全員で、今日ではなく集まるのは翌日にしようと決めたという経緯がある。さすがに子供が行方不明のショックで倒れたところに押しかけるのはよろしくない、という判断からこうなったのだ。

 

「ええ、ええ。困ったときはお互い様じゃないですか。うちのお店に来てくれるお客さんにも見かけたり、何か知っている人がいたら連絡してもらうようビラを作って配りますよ。あと配達に行くときに、一緒に渡すのもいいかもしれないわね」

「それでしたら、わたくしもクッキングスクールや他の習い事もありますし、そこで一緒になる方たちにビラを配らせてもらうざます」

「私は駅前でビラを配ります。あそこなら人通りも多いしいろいろな所から人が来ますから、何か知っている人が見つかるかもしれません」

 

 ママたちが野比家に集まって早々のび太のママがお礼を言うよりも先に開口一番、積極的にのび太の情報を集めようと言ってくれたのは、やはりというかこういうところは親子で似るのだろうか、ジャイアンの母親だった。

 特に剛田家は家が剛田雑貨店という店を営んでいる事もあって他の家よりも人とのつながりが多い。そのためお店に来る人に、あるいはジャイアンが嫌いな配達、それらの際にお客にのび太の事を書いたビラを配り、わずかでも手掛かりが見つかればという作戦を提案してきたのだ。

 そうなれば、それに乗るようにスネ夫としずかのママもそれぞれにできる事を口にする。スネ夫のママは毎週通っているいくつかの習い事に行くときに、一緒に参加しているママたちにビラを配ると言い出し、しずかのママは練馬区でもやはり人通りの多い場所であろう駅前にてビラを配るという。

 この申し出に、ママもパパも目頭を押さえながら深々と頭を下げる事しかできなかった。行方不明になった自分たちの子供のために、こんなにも力を貸してくれる隣人たちがいる。それがとても嬉しかったのだ。

 

「皆さん、うちののび太のためにわざわざ、本当にありがとうございます」

「のびちゃん、どこに行ったの……」

「のび太くん……」

 

 こうして、たちまちのび太のポスターやサイズを小さくしたビラが作られた。

 もちろんかつてのび太が『町内突破大作戦』でジャイアンたちから追い掛け回される羽目になったときに作られた賞品(スネ夫の)漫画10さつである指名手配のポスターのような、子供の落書き同然のへたくそな似顔絵? ではない。ちゃんとのび太の顔写真を使ったしっかりとしたものだ。

 そこには顔写真とともにのび太の特徴やいつごろから行方不明なのかなどといった内容、そして警察への連絡先が書かれ、何か情報があればすぐに連絡できるようになっている。

 ひとまず出来上がったビラの山を手に、のび太のママとしずかのママの二人はさっそく駅へと繰り出していた。もちろん、いてもたってもいられずビラを配るためだ。

 ちなみに駅に向かっていないスネ夫のママは習い事があるため、さすがにキャンセルする訳にもいかずそのまま他の参加人数分のビラを手に帰宅し、ジャイアンの母親は「こういうのは早い方がいい」と同じようにさっそく店に来た人や配達で回る家々にビラを配るため、帰っていくのだった。

 後に残るは何かあった時のためにと留守番を任された、パパとドラえもんの二人。さすがにドラえもんも『世話焼きロープ』に留守番を任せて、パパと一緒にビラ配りに参加……というつもりはなかったらしい。

 

 

 

 

 

そして……。

 

 

 

 

 

「お願いしまーす」

「お願いします」

 

 駅につき、駅員に事情を説明してから早速ビラを配り始めたのび太としずかのママの二人。しずかのママの読み通り、そこはやはり都心部ではないにせよ東京の駅ということもあって大勢の利用客がひっきりなしに駅の改札を通過していく。

 そんな利用客へとのび太としずかのママの二人は声をかけながらビラを渡していく……のだけれども、誰もが皆受け取ってくれるわけではない。むしろ受け取ってくれない人の方が多いのだ。

 いくら子供が行方不明になったからと言って、関わり合いになりたくないと考える人は間違いなく存在する。なぜなら、そういった人々にとってはしょせん対岸の火事であり、自分には関係のない話なのだから。

 

「お願いします」

「お願いします!」

 

 それでも、では果たして世の中の人々全部が全部我関せずで通り過ぎていくのかといえば決してそうではない。

 のび太のママが配るチラシへと、一人の手が差し出された。

 

「あの……おれも、貰っていいですか?」

「ええ、もちろんです。ぜひお願いします」

「おれ、この近くの工場で働いているんです。工場のみんなにも渡したいんでこの一枚だけじゃなくてもう少し貰っていいですか?」

 

 一枚、手にしたビラを渡そうとしたままの言葉を遮り、自分の職場の仲間にも渡したいからもっと欲しい、と言ったその声の主は年にして大学生ぐらいだろうか。

 しかし学校に通うでなく工場で働いていると言ったこの、真面目そうな様子のその青年にママも断る理由などなく「どうぞどうぞ」と手にしたチラシを適当な枚数をさらに青年へと渡していく。何しろのび太の安否につながる手がかりに繋がる可能性は多ければ多いほどいいのだ。『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』のことわざではないが、一切の手がかりがない今工場にいるみんなにも渡す、と言ってくれたこの青年の言葉は今のママにとってこれほどありがたいものはなかった。

 

「なんて言うのかな、おれも実家から東京に出てきておじの工場を手伝っていて、実家にはほとんど帰っていないんで帰った時のおふくろの安心した顔を見ていると子供がいない親はこんなにも心配なものなんだな、って分かるんです。だから、どうしてもおばさんが気になって」

「田舎の家から出て東京で働いて? 慣れないところで家を出て働くなんてあなたも大変でしょう」

「いえ、確かに最初の頃は大変でしたけれども何年もたちますから、もうそんなに辛くはないです」

 

 少しそんなやり取りをした後で「それじゃあこれで、息子さん無事に見つかるといいですね」と、そう言って青年はママから受け取ったチラシを手に去っていった。

 青年は何も知らない。たった今チラシを受け取った人が、そしてそのチラシに書かれている眼鏡をかけた子供がかつて『あの窓にさようなら』において青年、ひできが好きだった桃枝へと上京前に最後の別れを告げに来たちょうどそのタイミングで窓けしききりかえ機を使い、偶然その別れの言葉を聞いていた事を。

 のび太たちがその様子を道具の機能で録画していた事で、あたかも桃枝へとひでき青年が直接最後の別れの言葉を、思いの丈を告白しに来たように演出し二人の仲を取り持った事を。

 そのおかげで今も二人が故郷と東京と離れて暮らしてはいるものの、定期的に連絡を取り合う仲になるきっかけを作った恩人である事を、ひできは知らなかった。

 また、ママも知らない。チラシを渡した青年の人生にのび太とドラえもんが大きく、そして誰にも知られることなく関わっており、もしのび太とドラえもんの二人がいなければ今の青年と故郷で今も暮らしている桃枝の人生は大きく変わっていただろう事を、ママも一切知る事はなかった。

 お互いに何も知らないまま、すれ違うママとひでき青年の二人。そしてこれから先も二人がその真実に気が付く事は永久にないのだろう。

 ママはひでき青年がその場を離れた後はまたチラシを配ることに専念し、ひでき青年もまた自分の職場である親戚が経営する工場に戻り、同僚たちにチラシを配り終えてからは何も変わらない日常へと戻っていくのだから……。

 




ママたちがまずは動き出しました。
こういう時、ママたち同士も動きが早いと思うんですよね、子供同士のつながりをママたちもよく知っていますから。実際大長編とかでも、井戸端会議で色々と話したりしているシーンがあるため、こういった非常事態にはママたちもかなり素早く動くと思うのです。
また本作は大長編ドラえもんという位置づけであるため、ジャイアンのママはやはりジャイアンと血のつながりを感じさせるいの一番に動いてくれる、そんな立ち位置にしました。



そしてママとすれ違ったのは東京で親戚の経営する工場で働いているひでき青年でした。
原作ですと『あの窓にさようなら』で急遽上京し、工場で働く事になってしまい好きだった桃枝さんに思いを告げることもできずに……というところでのび太たちがその仲を取り持った話です。
この世界ですと、ひでき青年は上京後数年東京の工場で働きながら本当に時々実家に帰省しているという設定ですね。もちろん桃枝さんとは帰れない時でも定期的に連絡を取り合う遠距離恋愛が続いています。ただし、ひでき青年も桃枝さんも、そして当然ママも、のび太がこの二人の仲を取り持った事については全く気が付いていません(当たり前ですが)。
なのでお礼も何もなく、ママもひでき青年もすれ違ってしまいました。おそらく今後もお礼を言う事はないでしょう。



さて、次回は自由研究をしているジャイアン、スネ夫、しずかの三人ものび太行方不明の連絡を受けて動き出すものと思われます。のび太の消息がしれないというバッドなニュースを知った三人は果たしてどう動くのか?
次回、乞うご期待っ!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。