ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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お待たせしました、最新話の投稿です。
やや駆け足気味ではありますが、どんどんと話が進む……かもしれません。
はたしてドラえもんたちはのび太にたどり着けるのでしょうか? そもそも幻想郷の存在がこの世界でだれが知っているのかと言うところですよね。

それでは、はじまりはじまり。



(のび太が)行方不明だよ、全員集合!!(その2)

「……おい、ドラえもん!!」

「あっ、ジャイアン! スネ夫! それにしずかちゃんまで。いったいどうしたのさ?」

「どうしたのじゃないよドラえもん、僕ら夏休みの宿題をしによその県までみんなで出かけてたんだけど、そこでのび太が行方不明になってるってニュースを見たから飛んできたんだよ」

「ドラちゃん、のび太さんの手がかりは見つかったの?」

「ううん、それがまだ何も……」

「んもうのび太のやつ、昼寝と射撃と迷子については出木杉以上の天才だとは思ってたけど、こんなに探しても見つからないなんて……いくら何でも天才すぎるぞ!」

 

 スネ夫の顔面を壊す勢いで殴りつけた後、首をしめながらスネ夫を半ば脅すような格好でそれまで進めていた謎の神社についての宿題を切り上げてスネ夫のパパの迎えでその日の午後には東京に戻ってきたジャイアン、スネ夫、しずかの三人。

 三人はすぐに一度それぞれ自宅へと戻り、そこで各々の母親たちももう既にのび太の捜索に動き出していること、それでもまだ見つかっておらず、手がかりも何もない事を聞かされた上で荷物を全部置きながら、その足でドラえもんがいるであろう野比家へやって来た。

 ドカドカと足音を立てながら勢いよく階段を登り、部屋へと駆け込む。……そう、ここでようやくいつものメンバーは合流を果たしたのだった。幸いのび太はおらずともドラえもんは部屋にいたため、待ちぼうけを食う事もなく、本来の主であるのび太のいないのび太の部屋で、ドラえもん、ジャイアン、スネ夫、しずかの四人は輪になって座り、話し合いを進めていくのだった。

 

「それにしても、僕にもママにも何も言わないで消えちゃうなんて……。ねえ、ジャイアンたちはのび太くんがどこに消えちゃったのか、何か聞いてない?」

「えーと、ねえジャイアン、何かあったっけ……?」

「たしか……俺たちが宿題をするって言って、出かける前の日に、のび太と一緒にいつもの空き地にいたよな。あの時のび太のやつ、何か言ってたっけ」

「そう、それよ! たしか『誰も行った事のない場所に行ってそこの事を調べる』って言ってたのよ。それが私たちが見た最後ののび太さんよ」

「え、それ本当!? でも誰も行ったことのない場所、なんてもうそんなには無いはずなんだけどな。この地球の海底も地底も雲の上も僻地も並行世界も、たいていの場所はもう僕らが行った事のある場所だし……」

 

 何か知らないかと問われて、その時の事を思い出しながらされているジャイアンたちの何気ない会話にドラえもんが驚くのも無理はなかった。ジャイアンたちの話が本当だとするのなら今までのび太が行方不明になったという事だけが先行していて、のび太がどこでいつ消えたのか、最後に目撃したのは誰と言うこれまでになかった情報がここに来て突然出てきたのだから。

 ただここで出てくる問題は『では、肝心ののび太はどこに行ってしまったのか?』と言うことになる。そもそも、誰も行ったことのない場所などもう地球上にはほとんど残っていないはずなのだ。

雲を貫きそびえ立つ白い巨峰、過酷な寒さでもって来るものを拒む南北の極地、鬱蒼と生い茂り右も左もわからない大森林、恐ろしい水圧で全てを押し潰す深海底。これらの秘境でさえ人類はその科学でもって征服してきた。

 さらに言えば、まだ人類に見つかっていない場所としては地底に繁栄していた恐竜王国、コンゴ盆地に広がるバウワンコ王国、太平洋の海底に散らばるムー連邦、周囲の世界から隔絶された風の民の村、もう既に植物星へと移民団が向かってしまったがかつては雲を大地とした天上連邦も地球の上空には広がっていた。

 これらの文明、文化すらドラえもんたちはひみつ道具の力を借りたとは言え遭遇してしまっている。ここからさらに、平行世界や過去、未来、他の惑星を除いて地球上でまだ見つかっていない文明を見つけると言うのは並大抵の事ではない。

 実際ドラえもんもジャイアンやスネ夫、それにしずかからの説明を聞いて、首をかしげてしまっていた。

 しかしここでジャイアンからの思わぬ提案が披露される。

 

「……なあ、出木杉に聞いてみたらどうだ? あいつ物知りだから何か知ってるんじゃないか?」

「さすがジャイアン! 今日は普段とちがって冴えてるじゃん!!」

「おい、どういう意味だスネ夫!?」

「まあまあタケシさん。それよりも早く出木杉さんのところへ行きましょ」

「うん、ヘビースモーカーズフォレストの事もあったし、出木杉くんなら何かそういう事にも詳しいかも」

 

 そう、のび太たちの近所、学年、それどころか学校でも一番優秀だと言っても過言ではない小学生、出木杉。彼の知恵を借りようというものであった。

 何しろ彼の優秀さはそんじょそこらのちょっと秀才レベルの学生とは訳が違う。先生がわざわざ『今日はたっぷり宿題を出しておく』と明言するほど大量に出された宿題を『あの程度なら10分もあればできる』と豪語し、野球に引っ張り出せばホームランを量産、守ればファインプレーを連発、小さい子の家庭教師をしてお小遣いをため、顕微鏡を買おうとするなど明らかに頭の出来と学年を間違えているとしか言えない小学生、それが出木杉なのだ。

 その出木杉にはのび太やドラえもんもたびたび助けられている。『のび太の大魔境』において自家用衛星で撮影したコンゴ盆地の奥地、果てしなくジャングルが広がっているであろう場所で撮影されたバウワンコの巨神像、のび太たちも初めて見る不可思議な石像を彼に見せた時、撮影地から彼は即座にヘビースモーカーズフォレスト(タバコ好きの森)という回答へとたどり着いて見せた。もちろんこれが今までに見つかっていなかった秘境であり、バウワンコ王国への冒険ひいてはダブランダーに簒奪された王国を取り戻すためのペコとの大冒険につながった事は言うまでもない。

 こうしたかつての経験と、その知識量から相談するべき相手として出木杉を見出したのだとしても、決して間違ってはいないだろう。

 そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……野比くんがどこに行ったのか、だって?」

「そう、のび太くんみんなと別れる前に『誰も行った事のない場所に行ってそこを調べる』って言ってたみたいなんだ。でもこの地球上で僕らが行った事のない場所なんてもうそうそう残っていないはずなんだ、それで相談しようと……」

「なるほど……確かにみんなの話を聞く限り、ヘビースモーカーズフォレストの犬の王国も、海底人達の連邦も、地底大陸に暮らしている恐竜人たちの文明も、風の民の村も、天上連邦も、要するに海の底も地底世界も、空の上まで地球上の文明とはあらかた行ってしまった事がある、つまり『誰も行った事のない場所』の定義から外れてしまうと言う訳か……」

「だろ? だからのび太のやつがどこに行こうとしてたのかおれたちにもさっぱり分からないんだぜ」

「そもそものび太のやつ、誰も行った事のない場所がまだ残ってるかどうか知ってたのかね? だって、僕らも散々冒険してきたけど、これ以上どこにまだ行った事のない国や村があるってのさ。さすがにもうないんじゃないの?」

「でも、それだったらのび太さんだってこんなに長く家に帰らないなんておかしいわ、きっともっと早くにあきらめて帰ってくるはずよ」

「いや、そうとも限らないよ」

 

 みんながもう地球上も地下も海底も、外部と遮断された僻地もほとんどすべての場所を踏破しつくしたという中、出木杉だけはそうとも限らない、とみんなの会話を遮った。

 この予想外の言葉に、出木杉以外の四人の視線がいっせいに彼へと集中する。もちろんその程度の事で動揺するような出木杉ではないのだが。そして、『これはそうそう起こることじゃないし、僕も見た訳じゃないんだけど……』と前置きしながら出木杉はなおも言葉を続ける。

 

「みんな神隠し、って言う言葉を知ってる?」

「「「「神隠し!?!?」」」」

「神隠しって、確か……あれだろ? 急に人間が消えちゃうやつ」

「そう、その神隠しだね。これは昔から世界中で起こってるし日本でも起きていることなんだけど……」

「「「「けど?」」」」

「この、神隠しにあって消えてしまった人たちは、いったいどこに消えたんだろうか?」

 

神隠し、それは少なくとも神様なんていないと常識的にも存在を否定されているこの科学文明の世の中には、およそ似つかわしくない言葉であり、どこへともなくふっ、と人が消えてしまうという現象である。そんな単語を口にするとは思ってもいなかったようで、出木杉の言葉に四人がいっせいに反芻してみせた。

 ただ幸いなことに、ここにいるドラえもん以下四人は全員『のび太の日本誕生』で七万年前の原始時代の少年ククルが現代に流れ着いた時に、ククルがどうやってタイムマシンも使わずに七万年前から時間を超えてやって来たのか、その理由として時空乱流に飲み込まれることでその時代から人間が消失するという事、それによる消失を古来より日本では神隠しと呼んでいた事を説明した事でみんなどういうものかは知っていた。

 だから、難しい説明は抜きにしてもジャイアンが答えた人間が急に消えるという現象自体は間違ったものではない。出木杉もジャイアンの回答にその通り、と満足そうにうなずく。

 しかしさすがの出木杉も時間という概念の中に存在する時空乱流についてまでは、時空間についての概念や技術が確立していない現代の小学生だったこともあってそこまで知る事はできなかったのだろう。だからこそ、一旦言葉を切ってから四人に確認するように、問いかけるように、神隠しに遭遇してしまい消えた人間たちは、どこへ消えてしまったのかと訊ねてきたに違いない。

「あー、現代ではまだ時間や空間に関する技術が確立していないから不明かもしれないけど、それは未来では時空乱流っていって時間の流れの中にときどき発生するブラックホールみたいな現象に飲み込まれることで起きるって、科学的に解明されているんだ」

「へぇ、時空乱流? 時間の流れの中に起きるブラックホールみたいな? 僕の調べた内容とはだいぶ違うなぁ」

「え、出木杉くんの知っている神隠しの理由は、違うものなの……?」

「うん、実は僕も野比くんが行方不明になったのはニュースでも知って気になっていたからね。自分なりに何が起こっているのか、可能性を調べてみたんだ」

 

 もちろん、先にも述べたように未来から来たドラえもんはもう神隠しと言う現象が時空間においてごくまれに発生する時空乱流に人が飲み込まれたことで発生するという事を知っているのは言うまでもない。ところが、そんなドラえもんの知る神隠しの原理とは違う神隠しの理由へとたどり着いたと言う出木杉。

 普段一緒に冒険などに出かけたりする事はないものの、やはりクラスメイトが行方不明のまま見つからないと言うのは彼にとっても心を痛める出来事だったようで、ドラえもんやジャイアンたちさらには彼らの母親たちとはまた別に行動を起こしていたらしかった。

  

「日本の警察だって決して能力は低くないからね、少なくともニュースを見る限りかなりの警官を動員しているようだし、その人数であちこち捜索してこれだけの日数が経過している以上、一つくらい何らかの手がかりや情報を掴んでいてもいいはずなんだ。それにもし仮に誘拐されたんだとしたら、当然誘拐犯からのコンタクトがないとこれもおかしい。大人が失踪するのならともかく、小学四年生の子供が突然いなくなったんだからね。で、これはひょっとして神隠しにあったんじゃないか、って言うのも一つの可能性として調べてみたんだ」

「でもよう、その神隠しにあったとして、のび太はどこに消えたんだよ?」

「それがね、昔から日本で起こる神隠しにはある噂がついて回っているんだ。……神隠しにあった人は『幻想郷』に行く、って」

「「「「幻想郷!?!?」」」」

 

 その出木杉が見つけた神隠しの行きつく先であるという、幻想郷。もちろんドラえもんもジャイアンもスネ夫もしずかもそんな場所は聞いたことも見た事もない。それは四人の見せた反応からも、間違いなく知らない場所なのだという事が分かる。が、出木杉はそんな四人の驚いたような反応を他所になおも説明を続けた。

 

「この幻想郷と言う場所は僕らの世界で失われたり、忘れられたもの……つまり文字通り幻想となったものが集まる場所なんだって。ただそのままじゃ幻想になったもの以外の、まだ幻想になっていないものも入り込んでしまう。だからこの幻想郷の周りには結界が張ってあって幻想以外のものははいれないようになっているらしいんだ。でも、ときどきその結界をすり抜ける格好で入り込んでしまう人がいる……それが神隠しと呼ばれる現象になるんだって」

「「「「………………」」」」

 

 話を聞いていた誰もが声も出ない、とはまさにこの事だろうか。出木杉が説明してくれた幻想郷と言うドラえもんたちのいる世界とは違う、忘れられた存在、文字通り幻想と化したものたちが流れ着く秘境。

その、外界と隔離されたと言う、かつて『ふしぎ風使い』にてのび太たちが訪れた風の民の村、のような場所にのび太がいるかもしれないと言う話だが、ドラえもんにはまだ不安なことがあったらしい。

 じゃんけんのできそうにない丸い手を顎に当てながら難しい表情をして、何かを思い出すようにうんうんと考え事をしていたが、やがてゆっくりと口を開いた。なぜなら、現代に生きるジャイアンや出木杉たちとは違い、もともと22世紀で暮らしていたドラえもん。もちろん22世紀では子守用ロボットとして製造されたドラえもんは、ちゃんとのび太の子孫であるセワシの家に来る前にロボットのための学校へと通いある程度の知識はちゃんと修めている。

 その22世紀の知識をもってしても、幻想郷などと言う場所は聞いたこともなかったのだ。

 

「……そんな話、22世紀でも聞いた事ないよ。そもそも22世紀の未来世界で、そんな場所が残っていたらとっくに誰かに発見されたりしていると思うんだけどな……」

「もしかしたら現代は残っているけれども、科学の発展に押されて幻想とかそう言ったものはみんな22世紀には消えてしまったのかもしれないわ」

「そうだよ! それならドラえもんが知らないって言うのも説明が付くじゃん」

「でもよ、その幻想なんとか、ってところにのび太がいるとして……おれたちはどうやってのび太を助けに行くんだ?」

「待ってみんな、これはあくまでも野比くんがいなくなったことに対する仮説の一つに過ぎない。まだいると決まった訳じゃないんだ」

「でもよ、もしかしたらのび太がそこにいて、助けを求めてるかもしれないんだぜ?」

 

 が、ドラえもんの疑問はのび太の行方不明という現実を前に何の意味も持たなかった。ジャイアンたちにとってみれば未来にあるかどうかも分からない不思議な場所への疑問よりも、どこであろうとも今苦しんでいるに違いないのび太を助けに行く事の方が大事だったのだ。

 もちろん、助けに行くと言っても何をさておいてもまず第一にどうやって幻想郷へ行くのか、という問題も待ち構えている。神隠し、などと言うある意味時空乱流と同じくらいにめったに発生しない現象を待たなくてはいけない、など待っていられないだろう。さらに言えば、出木杉が待ったをかけたようにそもそも幻想郷へとなんとかうまくたどり着いたところで本当にのび太がそこにいるという保証もなかった。

 

「よし、その幻想郷にのび太君がいるかどうかまず調べよう!」

「「「「調べる!? どうやって!?」」」」

 

 そんないるかわからないなら、まずは幻想郷にのび太がいるかどうかを調べようなどと言う予想の斜め上を行くドラえもんの言葉に、ジャイアン、スネ夫、しずか、そして出木杉の言葉が見事に重なるのだった……。

 




 まさかの出木杉くんの口から幻想郷の話がやってきました。
 彼の能力をもってすれば、彼なりに独自に動いていたのび太の捜索活動の中で、可能性の一つとして神隠し、ひいてはその先にある幻想郷と言う噂へとたどり着いても不思議ではないのかな、と。
 一応補足しておきますと、この世界でも時空乱流は起こります。時空乱流で消滅する人間もいるので、それも神隠しと呼ばれていますが出木杉の説明にもあったように東方的な、博麗大結界を『なんらかの』理由で超えてしまい、幻想郷へと足を踏み入れてしまった人々の蒸発も、神隠しと呼ばれています。
 ただ、22世紀の未来社会では、時空乱流による消滅説のみがどういう訳か広まっていますが、そもそも途中でも言及されたように22世紀において幻想郷は消滅してしまったのか? それはおいおい明かされる事でしょう。


それでは次回、乞うご期待っっっ!!
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