ドラえもん のび太の幻想郷冒険記   作:滄海

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すみません、大変お待たせしました!
迷った……ここで、レミリアたちに引き合わせるか、それとも某ひねくれものに引き合わせるか、それでだいぶ未来が変わりますので。
どちらになったかはお読みいただければわかります。

さてさて、数か月間空白期間開けてしまい申し訳ありません。幻想郷冒険記の最新話です。おそらくこの次でドラたちの幻想入り編は終わらせられると思います。
のび太と再会、できるといいな……(汗


それでは、どうぞよろしくお願い致します。


野比のび太はどこにいる?(その3)

……地獄のような時間がようやく終わりを迎えた後、ジャイアンの周囲はさんたんたる有様だった。

 

「どうだ俺さまの歌声は、いい声だろう! あーやっぱり歌はいいよな、こうしてみんなを感動させる事ができるんだから」

「「「「……………………」」」」

 

 果たして1曲だけだったのか、それとも普段空き地で行われるリサイタルのように数時間、熱唱したのだろうか……。そんな事さえもはや考えられないほどに体と心にダメージを与えてくる、まじんのマイクを手に大音声で歌うジャイアンの、幻想郷の天地が上を下へと二回三回ひっくり返ったかと思うような地獄の時間もジャイアンが満足するまで歌い切った事で、ようやく終わりを迎えた。

 空気砲やショックガンと言った護衛用のひみつ道具をためらう事なく地面に放り出し、皆力いっぱい耳をおさえていたけれども、残念なことにその程度で耐えられるほどジャイアンの歌声は甘くはない。ジャイアンが『力いっぱい心を込めて』歌い切った事で満足そうにしている中、他の4人はジャイアンの歌声(+まじんのマイクによる増幅効果付き)がどんなものか分かっていたとは言え、あまりのひどさに意識を失う寸前だった。

 

「ありゃ、みんなどうしたんだ? ……あっ、そうか! みんな俺さまの素晴らしい歌声に声にもならないほど感動しちゃったのか。悪い悪い、ちょっと最近歌ってなかったからつい張り切って歌ったからな。悪かったよ」

「みんな、大丈夫……?」

「なんとか生きてるよ」

「私も大丈夫よ」

「僕もなんとか、まさか幻想郷にきてまでたけしくんの歌を聴く事になるとは夢にも思わなかったけどね……」

 

 もちろんジャイアンはドラえもんたちが意識を失いそうになり、それでもどうにか痙攣しながら息も絶え絶えになりつつもかろうじて意識を保っている様子に悪い悪いと申し訳なさそうにしているが、その理由が自分の歌声にあるとは、残念ながら露ほどにも思ってはいない。

 いや、むしろ自分が美しい歌声の持ち主で、その歌声のすばらしさに感動のあまり皆こうなっているのだと本気で勘違いしている辺り余計に始末が悪いのだけれども、残念ながらその点について指摘できる人物はジャイアンがリサイタルを開催しようとすると『近所迷惑な歌はおやめといつも言っているだろ!』と叱ってくれるジャイアンの母親くらいしかいなかった。

つまりは、今ここでジャイアンの歌に文句を言える人物はいないのだ。

そしてそんな近所迷惑な歌を耳もとで聴かされた気の毒な門番はと言うと……。

 

「……………………」

「あらら、この中国の人も、完全にのびちゃってる……」

「そりゃあ仕方ないよ。だってあのジャイアンのへたくそなひどい歌を耳元で聴かされたんだもの」

「たしかに。魔物だって逃げ出すようなジャイアンのへたくそな歌だものね」

「お前らぁ!! 俺さまの歌をなんだと思ってやがるんだ!!」

「まあまあ、それよりもこの人をどうにかしなくっちゃ。このままじゃ中にも入れないよ」

 

 そう、みんなが言うように中国の人らしい門番は完全に白目をむいて気絶してしまっていた。無理もない、何しろジャイアンの歌はちょっとその力を強めてしまえばコンクリートの壁にひびを入れ、生き物(かつて魔界大冒険で冒険した、魔界星の魔物も含む)がこの世のモノとも思えない悲鳴を上げながら逃げ出すような代物である。

 しかも常日頃から(耳に入れたくもないのに)聴かされる事によって、いやいやながら訓練を受けているドラえもんやスネ夫、しずかとは違い件の門番はジャイアンの歌なんてひどいものは聴いた事がなかったはずで、そんな人物が耳元であの酷い歌を聴かされたのである。むしろよくぞ命まで落とさずに済んだと褒めたたえるべきであろう。

 しかし、ジャイアンの歌を至近距離で浴びてよくぞ無事でと褒めたたえたいところだけれどもドラえもんの言う通りそれはつまり、この門番が目を覚まさない限りこの真っ赤な屋敷の中には入れないという事でもあった。

いくらドラえもんたちでも、今までの大冒険で仲間がさらわれて助けに来た、とかどうしても中にいる人物たちに見つからないようにこっそりと潜入する必要がある、と言った理由でもないのに無断で人の屋敷に入る事が非常識な行動である事くらいは承知している。

 

「ようし! ここは俺さまの素敵な歌声で目を覚まさせてあげよう。きっと嬉しくて目を覚ますに違いないんだぜ!」

「「「「え”っ」」」」 

 

そんな状況を打破するべく、ジャイアンが名乗りをあげたが言うまでもなくそれに対するみんなの反応は酷いものだった。

皆一様に顔色を真っ青に、あるいは逆に血の気が引いて顔面蒼白になり、畏れおののいている。

よりにもよって、かつて『キャンデーなめて、歌手になろう』において声紋をコピーするキャンデーを使おうとして、日本中を阿鼻叫喚のどん底に陥れた事さえある、あのひどい歌を意識不明患者の耳元で聴かせようものなら、次こそは間違いなく命を落とすだろう事は想像に難くない。

ちなみにこのジャイアンの言葉にいったいどういう思考をしていたら、そんな残酷な事をしようと思い付けるのか。等という事を考えてしまった諸兄諸氏には申し訳ないがそれは野暮というものである。なぜなら、これがジャイアンなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、そうと決まれば全力で歌いきるぜ! ジャイアンリサイタル、魂のアンコールと行こう!!!」

「ね、ねえどうするのさドラえもん」

「ど、どうするって言っても……」

「くっ……仕方がない、ここはみんなで耐えるしかないよ」

「そんな……」

「ねえ、君たち……」

「「「「「!?!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうすれば地獄を回避できるのか、逃げる事もかと言って止められる人間はこの場にはおらずドラえもんたちにまさしく絶体絶命のピンチが訪れた時、救世主は現れた。いや当人からすれば救世主などと言う意識はなかったのかもしれない、しかしドラえもんたちからすればそれは恐怖のジャイアンリサイタルを回避できるのなら、救世主以外の何者でもない。

 かと言って手放しに喜べる訳でもなかった。何しろここは幻想郷、そしてまだこの地でドラえもんたちは誰とも意思疎通をしっかりと図ってはいなかったのだから。

 そんな事もあって、いきなり背後からかけられた声に、驚きの表情と共に全員が声のした方へと向けば、そこにいたのは角の生えた、そして全身に矢印の意匠が施されたなかなか個性的な格好をした人物が一人、笑顔でドラえもんたちの事を見ていたのだった。

 

「なあ、お前たち地球人だろう? こんな所で一体何をしているんだ?」

「……おい、誰だお前」

「悪い悪い、私の名前は……いや、そんな事よりも、お前たちはどうしてこんな場所に? ここは簡単には入って来れない場所だぞ」

「……ねえドラえもん、あの人、なんだか怪しいんじゃない?」

「確かに……でも、さっきの空を飛んでた子たちだって背中に羽が生えてたりしたんだし、僕らが普通なら来られない場所に来てる、って言っているようにきっと向こうも警戒してるんだよ」

「そうなのかしら、ならいいんだけど……」

 

 ドラえもんたちを守るように、腕っぷしの強さの自信からかジャイアンがみんなを守るように前に出ながら、怪しい矢印の服に名前を言えと言うも矢印の服の人物は一瞬答えようとするものの、しばらく考える風に黙った後、はぐらかすように今度は逆にジャイアンたちに、どうしてこんな場所にいるのか、と質問をしてくる。

 ジャイアンの歌の恐怖から助けてくれた救世主にもかかわらず質問に質問で返してくるという言動、しかも別に侮辱したでも喧嘩を吹っ掛けたでもなく、ただ初対面の相手に名前を尋ねただけのはずなのに、名前も教えてくれないというのは小声でドラえもんへとささやいたスネ夫の言葉通り非常に怪しかった。

 少なくとも、今までドラえもんたちがいろいろな世界へと冒険の旅行に出かけた時に出会った人々も、確かに中には裏でたくらみを持っていた人や種族もいたりした。しかし、そんな彼ら彼女らも初対面の時には大抵の場合は名前を名乗ってくれていた。だからこそ今回も名乗ってくれると思っていたのだ。しかしどういう訳かこの人物は自分の名前を知られたくないらしい。

 もともと短気なところに、この曖昧な態度である。とうとうしびれを切らしたジャイアンがゲンコツを振り上げながら、はた目から見たら脅迫だと言われても仕方のない事を言いだした。 

 

「おい、お前! さっさと白状しろ! それになんか怪しい事をしたら、みんなの空気砲やショックガンが火を噴くからな! おいみんな! はやく空気砲を拾って怪しい動きをしたら撃ってくれ!」

「ジャイアン、そんな無茶苦茶な!」

「うるせえ! こっちには秘密道具もあるんだ。なんか怪しかったら四の五の言わずにやっつけりゃいいだろ!」

「まあまあ、確かにやり方はとても乱暴だけどさっきの事もあるから、対策だけはしっかりしておく必要があると思うよ。でも、怪しいからすぐにやっつけるというのはどうかと……」

「そうよタケシさん、乱暴はよくないわ」

「うるせえ! で、お前は一体何なんだよ! いきなり話しかけてきて……」

「いや、お前たちの仲間が一人足りないじゃないか。まあるいメガネに見るからに間抜けそうな顔をしている……その一人がどこにいるのか、案内しようと思って……」

「のび太くん!!」

「「のび太!!!」」

「のび太さん!!」

「野比くん!!」

「おい、のび太の居場所を知っているのか!? 教えろ! のび太はどこにいるんだ! のび太は無事なのか!?」

「く、苦しい……は、放せっ!」

 

 まあるい眼鏡をかけて見るからに間抜けそうな顔……本人が耳にしたら怒りそうな説明だがドラえもんたちにはそれで十分だった。名前を出されなくても、そんな特徴を持った人物はたった一人しか心当たりがないからだ。

 矢印の服を着た人物がその特徴を挙げたとたんにドラえもんたちはいっせいに取り囲む、その挙動の速さと来たらまるでクイックでも飲んだかのよう。特にジャイアンはよっぽどのび太の事が心配なのか、もともと件の人物のそばにいた事もあり、ためらう事なくその胸ぐらをむんずと掴むとはげしく揺さぶりながらさっさと教えろ! とすごんでいる。

 もちろん、掴まれた側である怪しい矢印の服の人物からすればいきなり首を絞めて居所を吐け、とすごまれたのだからたまったものではない。青い顔をして目を回しながらも、どうにかこうにかジャイアンの手を振りほどくことに成功したものの、足元はまだふらついている。

 まさかのび太の情報を口にした途端ここまでの反応を示すとは思っていなかったらしい。まあ、いきなりそれまで大人しくしていた子供たちが、いきなり特定の単語を口にしたら暴れだしたのである。なかなか想像しにくいのは間違いない。

 

「なんて乱暴な……。その人間は、この幻想郷の博麗神社と言う場所にいる。なんなら、案内してやろうか」

「はくれいじんじゃ、そこにのび太はいるんだな!?」 

「まさか、のび太くんの事を知っている人がいるなんて……」

「よかった、のび太のやつ無事だったんだ!」

「でも、神社に保護されていたなんて……てっきり村や集落にいるとばかり思っていたから、このまま村を探していたら見つからないかもしれなかったよ」

「よかったわ、早く行きましょう」

 

 またドラえもんたちにとっても、この予期せぬ来訪者からの情報はまさしく『渡りに船』だった。出木杉の言う通り、人のいる集落にのび太は保護されているだろう、出木杉含めてドラえもんもジャイアンも、スネ夫もしずかも皆そう先入観的に思い込んでいたのだ。

 今までの冒険の中でも、大抵の場合ははぐれてしまっても誰か現地の住民が保護してくれている、という事が多かったため今回もきっとのび太は迷子になったところを現地に暮らしている人々に助けてもらっている……そう考えていたら、保護された先は神社と言われたのだ。間違いなくドラえもんたちには、神社を探すという選択肢は入っていなかった。ここでもし村を探しに移動してしまえば、きっとそこでのび太の居場所を調べる事になっただろう。

 そして……。

 

「これでよし、とひとまずお医者さんカバンで気付け薬をかがせたから、もう少しで目を覚ますと思うし……復元光線で門とかひびが入っている場所も直したから大丈夫かな。それじゃあみんな、準備はいいね? すみません、案内お願いします」

「おーし、はやく行こうぜドラえもん」

「のび太さんが心配だわ」

「神社で境内の掃除でもしてるかもよ」

「博麗神社か、それにしても幻想郷で一体どんな神様を祀っているんだろう。外の世界と同じ神様なのか、それとも全く外の世界で知られていない神様なのか、興味深いなあ……」

 

 それから、ジャイアンの歌で意識を失ってしまっている門番に、ドラえもんが取り出したお医者さんカバンで治療を施し、復元光線で真っ赤な屋敷の門などを復元光線で修理した後で、謎の人物の案内に従って博麗神社へと向かう事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは本当に全くそれも意図したわけではない偶然だった。元々、それは肉片からでも再生できるという生まれついての力を持っていた。とはいえ、当然肉片から元の完全な身体に復活を遂げるにはそれ相応の時間がかかるし、その間は全くの無防備なのだから再生する途中で何か事故があればそれこそ復活どころかそのまま命が尽き果てる可能性もあった。

 しかし、まさか時間をかけて再生しようというその途中で、自らの欠片ともいうべき肉片を欠片残さず食らい尽くした者がいた、と言うのはそれにとって全くの予想外であったしなおかつ、嬉しい誤算でもあった。

 当然一から再生を行い、完全な復活を遂げれば完全に力も姿も、十全に使いこなせるようになるのは間違いない。だが、そんな完全な復活よりは力もはるかに弱まってはしまうものの、自分の肉片を食らった相手を侵食し、その精神と肉体を乗っ取る方が完全な復活ではないにせよ、はるかに行動しやすくなるし、何よりも活動を始められる時間が短くなるのだから。

 そう判断したソレは、迷うことなくただちに侵食を開始した。

 当然、最初はこちらが意識を奪おうとする事に気がついたのか、宿主とでも言うのか。自身を食らった者は乗っ取られまいと精神も肉体も激しく抵抗した。しかし何しろ外からの侵食や洗脳ではなく体内からの侵食を防ぐ手立てなど、そうそうありはしない。自分自身の肉体と同化しようとしているのだから、切り離す事は非常に難しいのだ。

 こうして宿主との間に激しい主導権の奪い合いがあったものの、最終的にはソレ、が主導権を握る事に成功し、精神も肉体も支配下に置いたソレはゆっくりと、新しく自身の肉体となった宿主の身体を使い、活動を開始したのだった。

 宿主の身体を乗っ取った時に、当然その記憶も宿主同様に己のものとした事で自身が今いる世界が地球の、幻想郷であるという事は把握している。宿主がこの世界に対し反旗を翻し、返り討ちにあった事も……。

 ならば大々的に動くのはまずい。

 そう考え、潜伏していた時に見つけたのが……憎い地球人だったのは偶然なのか、あるいは必然なのか。さらに自身の記憶から彼らの人数が足りない事、そして残る一人がここ幻想郷へとたどり着いている事を宿主の記憶から抜き出し理解したソレはゆっくりと、彼らの背後から近寄ると、声をかけたのだった。おそらく、何らかの事情で幻想郷へとやって来た残る一人を探しに来たと推理して。

 幸いにも、彼らが知るであろう元の姿とは大きくかけ離れているためこちらから正体を明かさない限りは彼らが自身の正体に気が付く事はないだろう。

 

「……なあ、お前たち地球人だろう?」

 




さてさて、矢印の服装の怪しい人物。しかもその中身は全くの別物になっているという驚愕の事実発覚。
さて、その侵食してしまった中身は果たして一体誰なのでしょうか? もし犯人はお前だー!!! と言う心当たりがある方は、心のうちにとどめておいてもらえると助かります。

さてさて、いよいよのび太の居場所が判明したドラえもんたち。果たしてのび太は博麗神社にちゃんといるのでしょうか?

次回、乞う! ご期待っ!!!
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