久しぶりの投稿ですが、いよいよ普通の魔法使い霧雨魔理沙とのび太が邂逅します……。
果たしてどうなる事やら。
音の壁を超えるような速度でのび太の目の前に現れた、魔法使いのような格好をした女の子。
ただし本当に魔法使いなのかはのび太には分からない、言うなれば魔法使い(仮 とでも言った所か。
なにしろもし本当に魔法使いだったとしても、のび太の知る魔法使いとは似ても似つかぬ格好だったのだから、こればかりは仕方がないと言えるだろう。
少なくとものび太の知る魔法使いの少女……満月美夜子と比べても、かなりの温度差がある格好なのは間違いない。
『のび太の魔界大冒険』
かつてもしもボックスで科学文明の世界から魔法文明の世界へとのび太とドラえもんが入り込んだ時、その魔法世界では魔界星と言う悪魔の母星が地球を目指して大接近を開始しており、のび太たちはその地球を救う運命の戦士に選ばれた事があった。
その魔界星の接近に「魔界接近説」と言う警鐘を鳴らし続けていた満月博士の一人娘、そして共に魔法世界の地球を魔界接近による侵略の魔の手から救った仲間であり、かけがえのない友人でもある美夜子。
その時の美夜子はと言えば、ホウキよりもさっそうと絨毯で空を飛び回り(何しろプロの絨毯レーサーを目指そうかと言う実力者だった)、魔法や剣を使って魔界の悪魔や魔物を薙ぎ払うと言う、驚きの活躍を見せてくれた。
それを考えれば、今目の前にいる魔法使い(仮 の女の子はのび太から見るとひどく異色な存在に見えたのだ。
でもいつまでも見てばかりもいられない、紫に背後から声をかけられた時と同様に、のび太は意を決したように謎の魔法使い(仮 の女の子に声をかける事にした。
ちなみに、もちろん最初に紫を怒らせたようにうかつにおばさんなどとは口にしない。あくまでもお姉さん、と呼んでおく事で彼女たちの怒りを回避する術をのび太は既に学習していた。
「あ、あの……お姉さんは、一体誰ですか?」
「ん? そう言うお前こそ誰だ? この辺じゃ見かけない顔だよな。……ひょっとして外から来たのか?」
が、やはり音の壁を突破するほどの速度で飛行していただけあり、とにかく着地する事に全神経を注いでいたらしい魔法使い(仮 の女の子は、のび太の質問にようやく目の前に霊夢とは違う別の誰かがいる事に気が付いたらしい。
質問を受け、のび太のつま先から頭のてっぺんまでまじまじと観察するように眺めながら、誰かと尋ねるのび太に逆に誰なのかを聞いてくる。
そもそものび太の格好が幻想郷の住民が身に着けている服装は個々で異なっているが、人里に暮らす幻想郷の一般人は明治時代からそう変化が見られない。つまりは木綿などの服が多いのだ。これは子供の格好とになればなおさらである。
その点だけでも化繊のシャツを羽織り、ズボンを履いているのび太の格好は幻想郷の同年代の子供と比べてもと大きく異なっている、また博麗神社に男の子がいる事自体が極めて珍しかった。
となれば、と言う推理から魔法使い(仮 の女の子は、少し考えてからのび太を外から来た子供であると判断したらしい。
「そうよ。この子はのび太って言うの。昨日から泊まってる博麗神社のお客様よ」
「初めまして、僕はのび太、野比のび太って言います」
そんな魔法使い(仮 の少女に応えたのはのび太ではなく、その背後から現れた巫女の声だった。
その言葉に納得したように頷く魔理沙の様子から、霊夢と魔理沙の二人はかなり気心の知れた間柄だと言うのが伺える。
「のび太か、なるほどな。私は魔理沙、霧雨魔理沙だ。普通の魔法使いなんだぜ」
「魔法使い? でも、なんだか僕の知ってる魔法使いとはだいぶ格好が違うような……」
「何? のび太、これはどこに出しても恥ずかしくない魔法使いの格好なんだぞ。これのどこが間違ってるんだよ?」
魔法使い(仮 あらため、ようやく自己紹介をされた普通の魔法使い、霧雨魔理沙。しかしのび太にとってみれば、魔法使いとは魔法世界で知り合った美夜子さんの格好なのだ。
少なくとも魔理沙の格好はのび太にとっての魔法使いのイメージからは大きくかけ離れたものだった。
そんなのび太の反応がお気に召さなかったようで、むぅ、と頬を膨らませては「どこが間違ってるんだ?」とのび太に自分の格好……つまりは黒い帽子に黒い服、白いエプロンを見せつけるように、魔理沙はくるりと可愛らしく一回りして見せた。
「えっと……ホウキ以外全部、かな……?」
「全部!? おいおい、それは酷いな。そもそものび太は外の世界から来たんだろう? まず魔法使いを見た事がないのに似合わないってのは取り消してもらおうか」
外の世界=魔法の息の根が止められた世界。魔理沙のこの認識は間違っていない。
出来杉がかつて『魔法は本当にあるのか』と言う質問をしてきたのび太に語った、魔法も科学も根は一つであり、後から発展した科学によって結果として魔法と言う学問は息の根を止められた。つまりこの世界に魔法はもう、無い。
確かに出来杉は、はっきりと筋道立ててのび太にそう説明している。出来杉の言う通りこれは紛れもない事実であり、魔理沙の目の前にいるのがもしも普通の子供だったなら、魔理沙の認識、つまり『魔法を見た事もない』と言う言葉は間違ってはいない。
しかし魔理沙の目の前にいるのは外でもない、のび太である。魔法世界、魔法文明へもしっかりともしもボックスを使い冒険に出かけた事があるのだ。
「え、いや……その、実は僕魔法を見た事があるんですけど……。悪魔や、大魔王とも戦ったし……」
「魔法を見た事がある!? そんなはずないだろう、だって外の世界じゃ魔法はないはずだぞ!」
「落ち着きなさい魔理沙、のび太の言っている事はたぶん本当よ。のび太はただの外来人の子供じゃないのよ」
「おいおい霊夢、だってどこからどう見ても、外から来た普通の子供じゃないか」
魔法を見た事がある、さらには大魔王などと言う存在とも戦ったと言うのび太の言葉に、自然と魔理沙の言葉も大きくなってしまう。
何しろ今までの自分の常識、外の世界ではもう魔法は廃れているのだ……と言うそれをあっさりとひっくり返されたのだから、それも仕方のない事と言えるだろう。
おまけに霊夢までもがのび太の肩を持ち、ただの子供ではないなどと言い出すのだから魔理沙としては信じられないと言った面持ちでのび太へと視線を送っていた。
「確かに私も最初はそう思ったわ。でも、のび太の持っている未来の道具を見たら、魔理沙だって絶対にのび太はただの子供じゃないって信じるはずよ。現に、今だって魔理沙が着地した場所で山になってた落ち葉はのび太が全部集めたものなんだから」
霊夢が持つ常識を散々ひっくり返して粉々にしてきた、昨日からののび太の行動。
そもそもやって来る段階からどこでもドアで博麗大結界に引っかかる事なく幻想郷に入り込み、自身と紫の目の前でその効果を披露し、続いてグルメテーブルかけで簡単に満腹になるまで食事を楽しませる。
昨日のたった数時間の間に起きた、怒涛の出来事を霊夢は魔理沙に興奮したように、熱心に説明して見せた。
また、今朝の朝食後にのび太に依頼した境内の落ち葉掃除についても、終わらせた所こそ確認はしたものの霊夢はねじ式台風を使った所を実際に見た訳ではない。
それでも霊夢はのび太が何らかのひみつ道具を持ち出して使った事は気が付いてるらしく、自分がやるよりも早く掃除を終わらせた事についても、暗にひみつ道具を使う事で普段以上の速さで終わらせたのだと言い切ったのだった。
「おいおい、博麗大結界を素通りして無限に出てくる料理? 魔法だってそんなとんでもない事するのには相当に時間も準備も必要なんだぞ」
「確かに普通ならね、でものび太はごくあっさりとそれをやってのけるのよ」
「あ、あの……だったら霊夢さん、魔理沙さんも疑ってるみたいですし……僕が掃き掃除に使ったこのねじ式台風、使ってみます?」
「ねじ式台風? また新しい道具ね、それが境内の掃除に使った道具なのかしら?」
どちらにしてもせっかく集めた落ち葉の山は、魔理沙の乱暴すぎる着地によって完全にバラバラになってしまっているのだ。
それならもう一度ねじ式台風で集めるのだから、疑っている魔理沙への説明も兼ねて実際に二人に見てもらった方が手っ取り早い……そう考えたのか、のび太は手にしたねじ式台風を霊夢へと渡すと、極端にネジを巻かないようにだけはしっかりと説明して実際に霊夢に使ってもらう事にしたのだった。
「……だから、ネジを巻きすぎないようにだけは気を付けてください」
「分かったわ、こんな感じでいいのかしら?」
「はい、それくらいでいいと思います。後はこれを軽く放れば風が起こって落ち葉を集めてくれます」
キーコキーコと、のび太に言われた通りにネジを数回巻き、自分の背よりも少し高いくらいの空中に放り出す。
魔理沙が博麗神社にやって来る前に、のび太がやっていた事と同じ事を霊夢がやって見せると、ねじ式台風は再びその周りにヒュオオオオ……と風が渦を巻き、散り散りになった落ち葉を見る見るうちに集めてゆく。
その姿はまさしくねじ式の台風そのものだった。
「うおっ!? すげーっ!! 風が起こってる、おいのび太、これはなんて魔法なんだ!?」
「えっと、これは魔法じゃなくて未来の道具なんです。ねじ式台風って言って、ネジを巻くと小型の台風を起こせるんです」
「こんなすごいのに魔法じゃないのか? まあ魔法も道具もどちらでも面白そうだし、なあのび太、これ私に貸してくれよ」
「へ?」
「いいだろ? 減るもんじゃないしさ」
「え、で、でも……」
のび太からねじ式台風の説明を受け、おまけに霊夢が実際に説明通りに使っている様子をみてすっかり魔理沙はひみつ道具の魅力に取りつかれてしまったらしい。
そもそもひみつ道具とは、分類するのなら魔法ではなく科学の産物であるのだけれども、自分に利益になりそうだと踏めば魔理沙にとってはどちらでもいいようで、平然とのび太に貸してくれと、それこそまるで外の世界のジャイアンのように頼みこんで来たのだからのび太からすれば驚き以外の何物でもなかった。
確かにのび太の性格は他と比べてもお人よし、に分類されるだろう。それでもしずかや、信用のできる出来杉と言った友人たちならともかく、出会ってまだ三十分も経っていない相手から道具を貸してくれと言われて、素直に貸せるほどはお人よしではない。
これはのび太自身が、あくまでもドラえもんのスペアポケットを借りてそこから道具を取り出してその効果を発揮しているから、と言うのが一つ。
後は、単純にひみつ道具の効果が持つ危険性からだった。
タケコプターやどこでもドア、グルメテーブルかけにどこでも蛇口くらいならまだ危険や事故は起こりにくいと言える。
これはのび太でも使えており、なおかつ事故も起きていないと言う事からもそれは伺える。
では、ねじ式台風は? あるいはもっと他のひみつ道具まで万が一にも貸してくれと言われたら?
ちなみにねじ式台風は、最大限までネジを巻いた場合、かなり強力な台風となる事を実際にジャイアンが起こしているためにのび太は知っている。
あくまでも一例であるとは言え、事故が起こるかもしれないような道具をほいほいと貸す訳には、のび太もいかなかった。
『ドラえもん、よく僕がひみつ道具を貸してってお願いしたら、しつこいくらいに説明したり勝手に使うなって怒ったけど、ごめんねドラえもん……あれはこういう事なんだね』
初めて親友と同じ立場になって、やっとその意味が分かったのび太。
そして親友の説明をよく聞かずに使って、ひどい目にあったりした経験をいやと言うほど持つのび太の答えは、もう決まっていた。
「いいだろ? ちょっとだけだからさ」
「魔理沙、のび太だって困ってるじゃない。その辺にしておきなさいよ」
「大丈夫だって霊夢。道具一つ借りるだけだぜ、別に九十九神になりかかってるとか、怪しい事はないんだしさ」
「だ、ダメですよ。これは貸しません」
すでにひみつ道具の恩恵に預かっている霊夢ものび太の側につき、魔理沙を説得にかかるものの、魔理沙は聞き入れる様子がない。
それでも、のび太ははっきりと、貸さない、と言ってのけた。
しかしよくよく見てみれば、のび太のその手足は震えているのが見てとれる。
なにしろ女ジャイアンとでも言えそうな、魔理沙の言葉。
安全カバーをドラえもんが用意してくれた分、かつて世界平和安全協会を名乗る二人組を前にした時の方が、まだのび太にとっては安心できたのだろう。
「ほぅ……人の格好にケチまでつけて、道具も貸さないと……そこまで言うからには、覚悟はできてるんだろうな?」
「魔理沙、やめなさい! それ以上は本当にのび太が無事じゃ済まなくなるわ! そうなるなら、私が相手よ!」
その証拠にのび太の言葉に、魔理沙の目つきがそれまでの笑顔から一変、鋭いものに変わる。
その辺りまで魔理沙はジャイアンにそっくりだ。
そんな様子を見て、いよいよ語気を強めて魔理沙を制する霊夢の声。これ以上は本当にのび太の身が危ないと霊夢は判断したらしく、いつでものび太と魔理沙の間に割って入れるように身構え、袖の中に手を入れている。
魔理沙が妙な動きでのび太に手を上げようとすれば、即座に霊夢の袖の中からお札や針が飛び出し魔理沙へと向かうだろう。
それについて、その袖だって四次元ポケットじゃないかとツッコミを入れる者はあいにくとこの場には誰もいなかった。
「霊夢とのび太か……。それなら、私とのび太で弾幕勝負をして、私がのび太に勝ったら道具を借りてく。のび太が勝ったら道具も借りないし、私の格好にケチをつけた事も、水に流す。それでどうだ?」
「な、ちょっと! 何勝手に話を進めてるのよっ! のび太は幻想郷に来たばかりで弾幕なんて見た事もないのよ!」
「え、えっと……霊夢さん。弾幕勝負って、なんですか?」
博麗神社の境内に、穏やかではない雰囲気の魔理沙と霊夢の言葉、それに鋭い目線とが交差する。
そしてその二人を他所に、事情が全く呑み込めていないのび太は「弾幕ってなんだろう」と一人、首をかしげていた……。
ええと、次回いよいよのび太と魔理沙が弾幕勝負を行う事になります(多分
それにしても、原作でも死ぬまで借りておくとか平然と言ってるけど、どう見ても魔理沙はジャイアンだよなぁ……だからたぶんジャイアンと魔理沙は気が合うかもしれませんね。
二人とも雑貨屋や道具屋の子供だし(魔理沙は勘当されてるけど)。