幻想郷冒険記、妖々夢編最新話の投稿です。
さてさて、白玉楼へと足を踏み入れるのび太たち。果たしてどうなる事やら……?
どこでもドアで妖夢を先頭に、霊夢とのび太が白玉楼へとやって来てその重厚な、紅魔館とはまた違う立派な造りの門をくぐった先、そこに広がっていたのはとても広い和風のお屋敷の庭だった。
スネ夫がよく外の世界で「うちの庭って広いじゃない?」などとのび太にしずか、ジャイアンへと自慢げによく話を振ってくるがこの白玉楼の庭を見たらスネ夫の家なんてただの小屋である。そう思わず口にしてしまうほどに、初めて訪れた白玉楼の庭は広く、そしてまたのび太の感性で見ても立派なものだった。
「わぁ………………スネ夫の家の庭なんかめじゃないや」
「スネ夫? 何よそれ、変な名前ね」
「霊夢さんは何回か来てますけど……のび太さんはまだ来た事がありませんでしたよね? ようこそ白玉楼へ。どうですかこの広さ、それに庭の美しさ。ここまでのものはここ幻想郷でも、そうそうないと思いますよ」
周囲をぐるりと見まわしてみても、庭、庭、庭。それもただの庭ではない、お屋敷の庭にふさわしい、立派な日本庭園である。この庭だけでスネ夫の家が一体何軒入ってしまうのか? それほどに広い庭の説明と共に、妖夢がえへんと胸を張りながら『実はこの庭の手入れをしているのも、私なんです。なにしろ私はこの白玉楼の庭師ですから』と得意そうに自慢するが、確かにこの広さの庭を一人で手入れをし管理をしているというのなら自慢をしても何ら問題はないだろう。それほどまでにここの庭は立派であり、広かったのだ。
白い砂利が敷き詰められた枯山水、色とりどりの木々がほどよく立ち並び、しかもその木々の枝葉はきれいに整えられている。庭については全く知らず、見ていたらそれだけで退屈になり眠りそうなものだが、さすがにここまで外の世界では見られないような広さを持つ立派な庭ともなれば、話は違ってくるらしい。
眠気のねの字も吹き飛んでしまった様子で夢中になり、庭を見回すのび太だったが、そんなのび太を他所に幻想郷でのび太の保護者が板についてきた霊夢は実はついたった今しがたこの白玉楼の敷地に足を踏み入れる前に、のび太が命の危機に遭った事を忘れてはいなかった。
「ほらのび太、あまりキョロキョロしてるとまたさっきみたいに事故につながるわよ! さっき白玉楼の門から階段覗き込んであまりの高さに気絶して転げ落ちそうになったの、もう忘れたの?」
「う…………」
そう、霊夢の言う通りなのだ。と言うのも、霊夢とのび太を案内しようと妖夢が博麗神社の境内でどこでもドアを開けた先は白玉楼の立派な造りの門の前だったのだけれども、今回のように何処でもドアを使わずにこの白玉楼と言うお屋敷にたどり着くためには本当ならば長ーい、それこそ上るのが嫌になるような階段を登ってこなくてはならなかったりする。
当然その階段は白玉楼の立派な門の前まで続いているのは言うまでもない。
つまり、どういう事かと言うとどこでもドアで白玉楼の門前まで何の苦労もなくやって来たのび太は、振り向いてしまったのだ。立派な構えの門とは逆の、自分たちの背中側に何があるのかを見てみようとして。そしてその視界の先にあったのは、長い階段の一番上と言うとても眺望のいい景色と、高所恐怖症の小学生にとっては目もくらむような長さの、下までずーっと続いている長い長い、長すぎる階段だった。
ここで仮にタケコプターがあれば、別に高い所を飛び地上を見下ろしたところで何の事はない。何故ならタケコプターがあれば、墜落、転落。表現に差はあれど落っこちる事はないからだ。
しかしタケコプターもない生身一つの身体で、その目もくらむような階段を見下ろすのはあまりにも、高所恐怖症でもあるのび太が行うには無謀すぎた。
「ひ…………っ」
「ちょっと、馬鹿のび太っ! 何やってんのよ、のび太はそのままじゃ飛べないんだから、下まで落っこちたら命がないわよ!!」
「え、あの……ひょっとしてこの子、飛べないんですか?」
「そうよ、このままじゃ人里にいるただの子供と同じよ」
「むしろどうしてそんな普通の子が鴉天狗や閻魔様、紅魔館の吸血鬼と戦って勝負になるんですかっ!」
「そりゃあ決まってるじゃない、のび太が普通の子じゃないからよ」
「もう訳が分かりませんっ!!」
案の定、その長い階段の下を、階段の始まりが見えないほどに長い階段を見下ろしてしまったのび太はそのままかくん、と気絶してしまったのだ。
そのまま気絶して、あわや長い階段を一番下まで真っ逆さま……に転げ落ちようとしたところで、のび太が転落しそうになった事に気がついた霊夢が間一髪、その手を掴む事でどうにかのび太の転落事故は防がれた。もしここでのび太が転落してしまったらそのまま先日魂が身体から抜け出したため、閻魔の四季様に戻してもらったばかりなのにもう一度あの世に行く羽目になっていただろう。
幸い霊夢がのび太の腕を掴んで転落を阻止したため、そんな事にはならなかったけれどものび太の保護者役を紫からも仰せつかっている霊夢からしたら、心臓が止まるどころの騒ぎではなかったのだ。ちなみに、しばらくして気絶から回復し目を覚ましたのび太が霊夢から0点をとった時のママばりに怒られ、そして心配したんだからと、泣かれたのは言うまでもない。
ついでに、霊夢と禅問答のようなやり取りをした妖夢に至っては訳が分からないと完全に頭を抱えていたのだけれども、気絶していたのび太が二人の間でそんなやり取りが交わされていたとは知る由もなかった。
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「あらあら、うちの庭は気に入ってもらえたみたいね」
「へ?」
兎にも角にも、そんな命の危機に瀕していたとは思えない、普段通りののん気さでスネ夫の家の庭などてんで問題にならないとまでのび太に言わせるほどに立派な白玉楼の庭のあちらこちらをきょろきょろとみていたのび太に、コロコロと透き通るような、どこか妖しい雰囲気を漂わせた声が投げかけられた。
奇しくもそれはのび太が幻想郷に初めて足を踏み入れた時に背中から賢者八雲紫に声をかけられた時とそっくりで……。声のした方へと振り向けばそこにいたのは、八雲紫とはまた違う、水色の着物を着て、幽霊が頭に付ける三角の布……天冠のようなものがついた帽子をかぶる女の人が立っていたのだった。
「幽々子様、ただ今戻りました」
「おかえりなさい妖夢、この子が例の子ね?」
「え? それじゃあ……この人が妖夢さんが言っていた、ゆゆこさま?」
「ええ、私の名前は西行寺幽々子。よろしくね」
「……あ、ゆゆこさまって……」
「そうよのび太、彼女が妖夢の言っていた幽々子。宴会に来るといつも一人だけ他のみんなよりも暴飲暴食して一生懸命作った料理やお酒をどんどん食べ尽くしていく、食欲の悪魔みたいな奴よ」
「あらあら、さすがにまだ私の事をよく知らないだろう子の前で、そこまでいう事は無いんじゃないかしら……?」
「いずれ分かる事でしょ? だったら今知っておいた方がいいじゃない」
彼女の自己紹介に、もう既に何回も食べ物を食べ尽くされるという被害に遭っているのだろう。普段の軽い雰囲気ではなく本当に、怨めしそうにあるいは忌々しそうに霊夢が幽々子の説明をしてくれた……のだけれども、その説明はかなり刺々しい。どうやらこれまでの出来事で霊夢はこのゆゆこさまに対して相当に不満が溜まっているらしかった。
もちろんここまでくれば、のび太の頭がいくらぐうたらでのんびり屋であっても理解できる。自分の目の前に立っている女の人こそが、ここに来る目的にもなった『ゆゆこさま』なのだと。
ただしあいにくとその姿は、ここに来る前に妖夢から話を聞いたのび太が頭の中で勝手に想像していた『ゆゆこさま』とはだいぶ違っている。だからのび太は、ためらう事なく思っている事を口にしてしまうのだった。
それが自分の身に、さらなる騒ぎを引き起こすとは夢ほども想像せずに。
「えぇ……だって、あのカシムみたいに何にもおっかない武器を持ってないじゃないですか……本当に本物なんですか?」
……子供の言葉や思考、発想と言うのは時として実に残酷な武器になる。もちろんのび太も『人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむ事のできる人だ』と将来しずかのパパから人物評を下されるくらいにまっとうな人間であり、そこに一切に悪意がある訳ではない。
ただ、ほんの少し、ほんの少しだけ思った事を口に出してしまっただけなのだ。
「カシム……? 変な名前ね。のび太、外の世界じゃそんな物騒な賊がいまだにはびこってる訳?」
「失礼ねぇ。……って言うか、武器って何よ。……妖夢、あなた一体この子に何を吹き込んだのよ?」
「だからっ! 武器とか凶器とか強盗とか、そう言う物騒な話題から離れて下さいっ! 私も幽々子様も、賊じゃないんですってば!!」
のび太の言葉に、妖夢とゆゆこさま、それに霊夢も含めてそれぞれが反応をしてみせたが、これは仕方がない事だった。何故ならのび太の頭の中では、ゆゆこさまは妖夢以上におっかなくて、武器を手にしては食べ物や金品。はては命までを略奪していく賊の頭と言うイメージが組みあがっていたのだから。
というのも、これはかつて『のび太のドラビアンナイト』で、しずかを助けに794年のアラビア・の中心とも言うべき都市バグダッドへと赴いた際に夜の砂漠でその地を根城としていた盗賊団「砂漠のサソリ団」首領のカシムに襲われ、当代のカリフであるハールーン・アル・ラシード王に救われなければ危うい状況だった事に加え、その後も船で出航したはいいものの船員に化けたカシムの手によって夜の、しかも嵐のアラビア海へと放り出され、最後には悪党アブジルと共に黄金宮殿を乗っ取るという悪行を重ねてきた様子をその目でしっかりと見て来たのだから。
そのため、のび太の頭の中では賊=盗賊=カシムという実に分かりやすい方式が組み立てられていたのである。
もっとも、時間を超える術を持つという事を知らない妖夢と幽々子は、のび太がかつて過去のアラビアで盗賊団の手によって生きるか死ぬかという文字通りの危機に陥った事があるなど知る由もない。つまりはのび太のそんなトラウマにもなりそうな経験からくる話も、彼女たち二人にとってみれば子供が頭の中で想像した話、程度にしか考えが及ばなかったのだ。
そして、その事が不幸を呼ぶ事になる。
「もう許せません! こちらからお願いして招いた客人だからと我慢していましたが、私はともかくとして幽々子様への悪口雑言。どうやら言っても分からないようですね、それならば少し痛い目に遭ってもらいます!!」
「……へ? え、ええ!? 決闘って刀を持って切り合うんですか……? 武蔵さんじゃあるまいし……電光丸、ちゃんとポケットにあったかな……?」
「何をぶつぶつと言っているんですか! ここまで幽々子様を侮辱したのです、今さら逃げようとしたってそうはいきませんよっ」
のび太の度重なる発言に、とうとう妖夢が怒りだ出してしまったのである。
それはもう、怒り狂ったジャイアンもかくやと言う迫力と共に、腰に佩いていた刀をギラリと引き抜くとその切っ先をのび太に突き付けて決闘ですと言い放ったのだ。もちろん言われたのび太としても、まさか道具を貸して欲しいからという理由でやって来たのに、いきなり決闘だなどと言われてしまい完全に目を白黒させている。
退屈だからとほんの暇つぶし程度の気持ちで冥界へとやって来たのび太は、今まさに絶体絶命の、ライオン仮面やオシシ仮面もびっくりのピンチへと陥っていた……。
……一方その頃、博麗神社からのび太の元へとたどり着くべく、ドラえもんたちはたずね人ステッキの指し示した妖怪の山へと移動を開始していた。
「しかし、ずいぶんと大きな山だねえ……富士山よりも高いんじゃないかしら?」
「なあドラえもん、本当にあのドジでノロマののび太があんな高い山に登れるのかよ」
「ホントホント。案外山に登る前に、山道に入る前にくじけて『ドラえも~ん!!』なんて、弱音をはいてるかもね」
「ちょっと二人とも、そんな風に言うもんじゃないわ」
「でも、あれだけ高い山だと山頂まで登るとなると相当に時間がかかるだろうし……ちょっと低めに飛んで、地上の様子もしっかりと確認できるようにしておいた方がいいかもね。あまり上空過ぎると、野比君のことを見落としてしまうかもしれない」
「確かにそうだね。七万年前のヒカリ族を探した時も大変だったけど、今回はヒカリ族のみんなよりももっと少ない、のび太くん一人を見つける作業なんだ。木々のてっぺんすれすれくらいまで高度を下げながら飛んで、のび太くんがいても声が届くようにしながら、慎重に飛んでいこう」
「「「「はーい!(まかせとけ!)」」」」
あまりにも高い、外の世界の山々と比較してもそれでも遜色ない、あるいはもっと高いかもしれない妖怪の山を見て、それぞれ好き勝手な事ばかりを口にするメンバーたち。もちろん、彼らはのび太がこの山のどこにもいない事など知らなかったし、一体どんな種族が根城としているかもまた、知る由もなかった。
そして、のび太を探すのなら向こうからも自分たちを見つけやすい、あるいは気がついてもらいやすいように、と言う出木杉の意見に従って木々の梢すれすれの高度を飛びながらめいめいのび太の名前を呼び始めたドラえもんたち。
その良かれと思って行った行動が、吉と出るか凶と出るかは、ドラえもんたちにも分かるはずがなかった……。
幽々子様への暴言に、とうとう堪忍袋の緒が切れてしまった妖夢ちゃん。
のび太と妖夢の決闘はどうなってしまうのか!?
そもそも、電光丸にせよフワフワ銃にせよ、ひみつ道具を前にした場合勝負になるのか? ひみつ道具と楼観剣、どちらに軍配が上がるのか? そもそも本当に決闘するのか?
いろいろと混沌としてきましたが次回も、乞う! ご期待っっっ!!!