村雨と提督の小笠原旅行記   作:fire-cat

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貞頼さんの後、何やってたっけ……?

暫く悩んでました。


7月26日――旅行第3日目 後編――

「次は~青灯台(あおとう)前~。停まりま~す」

 アナウンスと共にバスが止まる。

「到着っと。どこ行くの?」

「ん? いや、髭剃り壊れたからね、T字の四枚刃買っておかないと、熊五郎になっちまう」

「な~んだ。それだけ? だったら宿で待ってても良かったかな?」

 がっかりと言った表情な村雨。

「村雨が一緒だからな、どこか……ああ、まだ3時前だから、何か軽く食べるか?」

 村雨の表情が明るくなり、

「ケーキ!」

「ケーキ? ん、わかった(TOMATONかハートロックかHALEだな。……島バナナのケーキあるのはハートロックだが、あれとTOMATONは出航日のお楽しみにしておくか)」

 ケーキ♪ ケーキ♪ とご機嫌な村雨と一緒に買い物を済ませる。

「明日の台風は大きいって話だから……飲み物ももう少し買っておくか」

 生協でネタとしてDr PepperチェリーやA/Wクリームソーダを購入していく。

 精算を済ませ、向かいのスーパーへ。

「うぉっと。混んでるなぁ~。買い出しと重なったか。良いや、次行こ」

 列を見て、どうするの? という村雨の視線を感じ買い物を諦める男。特に目的があったわけではないのであっさりと諦める。

 向かいのアサヒ薬局に入り、四枚刃のT字カミソリを購入。

「後は……あ、農協行こう。あれ食べるの忘れてた」

「あれって?」

「ついてのお楽しみ」

 ほどなく農協に到着した二人。男がさっそく注文する。

「塩ソフトクリーム二つ」

「コーンですか、カップですか」

「コーンで」

 出されたソフトクリームを舐めながら、買い物散策。

「このソフトクリーム、味が濃いね」

「ああ。上に掛かってる島塩で余計にそう感じるのかもしれないけど、濃いと思うな」

「それで、買い物終わったの?」

「あ、土産で買い忘れてたのがあるからちょっと引き返す」

「もう、慌て者」

 農協へ引き返し、塩やジャムやカートを買い込む男。去年は無かったオガスコ――タバスコ風辛味調味料や一時期人気となった薬膳島辣油も買い込む。

「からいっすやからいっしょは良いか。村雨、買う?」

「買ったよ、それ」

「んじゃいいか。後は……島バナナかな」

「そんなに買っちゃって……持ってくの、あっ、まさか」

 何かに気が付いた村雨。仕方ないなぁという態で買い物に付きあう。

 精算を済ませると、物陰で艤装を展開する村雨。

「やっぱりこうなるのよね……。まあ良いけど、まだまだ余裕あるし」

 男が購入した土産品を村雨のドラム缶に詰め込む。

「終わったら行きましょ、ケーキ」

 艤装を収納する村雨。

「はいよ。んじゃ行くか」

 青灯台近くのHALEに立ち寄り、自慢の島のフルーツを使ったチーズケーキや島蜂蜜をかけた自家製ヨーグルトを堪能する2人。

「ここも変わったよなぁ」

「そうなの?」

「ああ。昔は確か空き地だったんだよな。車が止まってたりしたけど」

「何時頃の話?」

「確か……日食の時はあったような気がしてるんだよな。だから2008年頃かな? 日食が2009年だったから。あの時はドコモ以外携帯が通じなくて大騒ぎだったな。ドコモユーザーだから他人事で面白かったけど」

「もう、そんなこと言わないの、偽悪趣味なんだから。今はどこの携帯も通じるの?」

「2012年からドコモ、au、ソフトバンクは通じているな。……あ、思い出した、此処出来たの2012年だ。震災の年にはこの店寄った覚えなかった」

「昔から来ているとそういう違いも判るのね」

「ああ、結構違う所が……そう言えばパパブッシュの植えたノヤシも枯れてたんだ」

「パパブッシュって誰?」

「米国の第41代大統領。第43代大統領がその息子でその名前もブッシュだから、親はパパブッシュ。来島した2002年に植えたらしいんだけどね、2012年には枯れてた。今じゃ跡形もなくなって他の木が植えられているな」 

「あらま」

「2008年に撮った写真あるけど、帰ったら見るか? そこのペリーの石碑の脇にあったんだ。幕に覆われていたんだよな」

「見せて!」

 そんな取り留めのない雑談をしているうちに明るくなっていた空模様が再び悪化する。

 支払いを終えた二人がバスを待っていると、ぽつりぽつりと降り出してくる。

「あ、ヤバッ。バスいつだっけ?」

「あと5分くらいね」

「ん~。持つかなぁ……」

 

 バスに乗り込むのと同時に激しい雨が降り出す。

「――まで」

 男が二人分の料金を入れ宿の名前を告げるとバスが走り出す。

 清瀬交差点以降はバスに行き先を告げるとトンネル出口等の危険地域以外は停まって貰える。

 交差点を過ぎ宿の前でバスが停まる。

「うわ~。土砂降り」

 傘をさす時間も惜しみ駆け出し、宿の受付に。

 傘を返すと部屋に駆け込む。

「うわ~。水着までぐっちょり。着替えて来るね」

 そう言うと村雨は着替えをもって浴室に入る。

「こりゃいかんな。俺も着替えるか」

 男も室内で着替えかけ、村雨に声をかける。

「村雨、俺も着替えるから出るときは教えてな」

 変な事故を防ぎ手早く着替えたところに村雨から声が掛かる。

「出ていい?」

「良いよ」

 男の答えに扉を開ける村雨だったが顔を覗かせるだけで出ようとしない。

「どうした?」

「うん。……ボタン取れちゃった。着替え取りたいから、ちょっと外に行ってもらえる?」

「とってきてやろうか?」

「え? だ、ダメ。見ないでよ?」

「ハイハイ。外に出てるな」

 男が苦笑いして外に出る。

「飲み物買ってくるから、何か飲むか?」

「ごめんね。飲み物はお任せ」

 階段を降り適当な飲み物を買って、扉をノックする。

「入っても良いか~?」

「良いよ~」

 中に入ると村雨は別の服に着替え、ボタンを取り付けていた。

「おや。ソーイングセットなんか持ち歩いてるのか」

「当然でしょ? 持ち歩かない娘なんかいるの?」

 どうだろうね。と言ったやり取りから鎮守府の雪風や時津風が私服をよく破き陽炎が縫直している事や扶桑や山城が鎮守府の皆の浴衣を作っている事、着物の娘はほとんどが私服は自分達で反物を買って着物を作っている等、男の目に触れない様子に話が移り、やがて夕食時となる。

 

 男が申し込んだのは夕食が付かないプランである。従って夕食は別の場所で済ませる必要があるのだが宿が飲食店も経営している為、二人は一日目はそこで食事を済ませている。

「今日はどうするの?」

「この雨の中村雨を連れ出すのもなんだからなぁ……。またそこで済ませるか」

 激しい雨の中、村雨を連れて街中まで行くのを渋る男。村雨もまたずぶ濡れになるのはあまり良い気もしないので特に反対はせず、一日目と同じ店での食事となった。

「ん~。昨日はバジリコパスタ、ハーブソーセージとチリビーンズ、アカムツと島オクラのグラタンにシャンディガフに林檎のコンポートのバニラ乗せだったからな。今日は……」

「昨日は……島モロヘイヤと生ハムのパスタ、ニース風サラダ、林檎のコンポートのバニラ乗せに生パッションフルーツジュースだったから、今日は……」

 

憲広鰹のカルパッチョ・島モロヘイヤと生ハムのパスタ・3種のチーズプレート・林檎のコンポートのバニラ乗せ・生パッションと島ラムのカクテル
村雨尾長鯛のポワレ・ハルタマのジェノベーゼパスタ・林檎のコンポートのバニラ乗せ・生パッションフルーツジュース

  

「あ、私が食べたパスタね」

 どことなく嬉しそうな村雨。

「昨日食べているの見てて美味そうだったからね。その他はなるべく注文が重ならないようにしてみた」

「え? どうして」

「少しづつ交換、良いかな?」

「ん。良いよ」

「でも林檎のコンポートのバニラ乗せはお互いに外せないな」

【挿絵表示】

 

 周囲に人がいないのを良い事に和気藹々とした雰囲気の二人。

「うん。このカルパッチョいけるな。この生姜のソースが良い味出している。ほれ」

「ポワレも良いよ。はい」

 自分が注文した品を少しづつ交換する2人。

 最後に飲み物とデザートの林檎のコンポートのバニラ乗せが出される。

「うん。やっぱりこの林檎のコンポート、美味しい。しつこい甘さもないし」

「だな。バニラの濃い味もコンポートにあってるしな」

 そう言って男が生パッションと島ラムのカクテルを口に含む。それを村雨が物欲しげに見つめる。

「ね、この生パッションフルーツジュースと交換しない?」

「こら、ダメだぞ。未成年が……」

 窘める男に、

「ほんとにそう見えるの? 未成年って」

「え?」

「憲広から見て本当に未成年……子供なの、私?」

 思わぬ言葉に動揺する男。

「どうした? 突然」

「……少し背伸びしてたかもしれないけど、旅行中は子供に見られないように頑張ってみたんだ。でもダメなの? 子供なのかな」

「え? いや、村雨がどうとかじゃなくて、駆逐艦の扱いは子供だ、ろ?」

「そんなの、あの絵で判断してるだけでしょ? 実際の私達の姿知らないよね」

「まあ、普通はな」

「もう一度聞くけど、憲広から見て本当に子供にしか見えないの?」

 男が黙り込む。意識がカクテルから離れた事を察し、

「隙あり!」

 村雨が男の手元からカクテルを奪う。

「あ、こら!」

「ごちそうさま。代わりにこっちをどうぞ。村雨の口づけ済だよ?」

「こら! お前、今のはこの為か! 本気で考え込んだぞ」

 男が猛然と抗議する。

「……本気だよ。答え、30日までには聞かせてね」

 儚い笑みを浮かべそう言うと席を立ち、男を残し立ち去る村雨。

 その言葉を受け、男が考え込む。

 それは閉店まで続いていた――。

 

 

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